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『再会』 その9 (最終回)

 およそ一ヶ月後のある日・・・・・

社長室には、森島香織と朝倉真穂の2人のOLが慶子に呼び出されていた。
 新人受付嬢の教育係である彼女たちの指導が行き過ぎではないかという、ある男性社員からの報告があったからだ。

「では、この報告にあることは事実なのね?」
 慶子は2人の顔を交互に見ながら問いかけた。
「はい。事実です。」
 森島香織がきっぱりとした口調で答えた。(何か問題でもあるのでしょうか)とでも言いたげな自信に溢れた態度だった。
 
 24歳の若さではあるが、高校卒業後、慶子の勤めていた会社に一般職として入社し、社会経験はそれなりに長い。その後、慶子が独立した際に進んで参加を希望した子でもあった。ただ正直に言うと、慶子自身は香織の参加にはあまり気が進まなかった。なぜなら香織は仕事も遅く、決して有能なOLとは言えなかったからだ。だが、長年一般職として勤務していたこともあり、いわゆる雑務には長けていた。慶子の独立に進んで参加を希望してきた社員のほとんどが大卒のエリートサラリーマンとキャリア志向の強いOLだったことで、いわゆる「下働き」をする人物がどうしても必要だったのだ。つまりある意味、妥協の産物として香織の採用が決まったのであった。
 だが、「下働き」は、いくら小規模の会社とは言え一人というわけにはいかない。少なくとももう一人は欲しかった。そこで、白羽の矢が立ったのは香織と同期で、同じく高校卒業後一般職として採用された朝倉真穂だった。
 実際のところ、慶子の本当に欲しかった人材は真穂の方だった。仕事の覚えも早いし、てきぱきとこなすし、さらに性格もいい。常に明るい笑顔を浮かべ、「慶子先輩、慶子先輩」と人なつっこい可愛らしさもあった。
 だが、皮肉なもので、慶子の独立に対して真穂は参加の意思を示さなかった。「超」の付くほどの安定志向である真穂にとって、新たな環境に身を置く決断はできなかったのだ。
ただ、もし親友である香織が参加するなら自分も参加しても良いという返答をよこした。慶子にとってはそのことも香織採用を決断する要因となったのである。
 比較的長身のスラリとした体型で勝ち気な香織と、ぽっちゃり気味の小柄でおっとりした真穂という、まるでデコボココンビのようなコントラストのある二人が親友になったのには大きな理由があった。もちろん、同じ高卒で同期入社、同じ一般職採用と共通点も多かったが、もっと大きな要素として「同病相憐れむ」的な要素が大きかったのである。実は二人もまた鬼上司、坂下智則部長の哀れな犠牲者であったのだ。男性社員ほどではなかったにせよ、周囲からは常に「やりすぎ」との陰口が囁かれるくらいだったし、彼女たちへの同情の声の方が大きかったくらいである。そんな彼女たちにとってお互いを慰め、同情し合う関係がその後唯一無二の親友同士としての関係に変わっていったことは当然の結果だと言える。
 
 今、この二人のOLが一人の新人受付嬢の教育係を務めているのだ。
 もちろん、「沙也香」というその新人受付嬢が、実は「坂下智則」その人であることなど二人には知るよしもないが。
 
 ただ、この元部下二人が元上司を指導教育する立場になっていることには、皮肉な運命や巡り合わせの妙などいう要素はなかった。そこには人為的な意図があるだけである。
 沙也香の「おば」である有希江が慶子にたってのお願いということで頼み込んだことなのだ。
 いずれにしても新人を指導する教育係は不可欠だったので、慶子はその願いを叶えることにしただけのことであり、他意はなかった。
 だが、有希江には明確な「他意」があったのだ。それはまさに真性S女にしか思いつかないような残酷な「他意」だった。
 有希江は、この二人のOLが坂下部長のしごきを恨んでいたことを知っていた。その二人がもし沙也香の本性を知ったらどういう言動をとるだろう、その時の沙也香の感情は果たしてどんなものだろう、そしてその時の表情は・・・・などということを考えると、燃え上がるSごころが抑えきれなくなってくるのだった。
 
  
「でも、社長、沙也香さんの指導については私たちにお任せ頂いたものと思っていましたが・・・。」
 香織の瞳には自信の光が宿っていた。
「ええ、確かに任せたわ。でも、これはさすがにやりすぎではないかしら?この報告書には、ミニスカートの裾をまくり上げてショーツ丸出しの格好で、オフィスを歩かせ、しかもブラウスのボタンを外させて、そこに『露出狂女 沙也香』とボディペイントがされてあり・・・とあるわ。これが確かならやはりやりすぎでしょ?」
「でも、社長、沙也香さんは男性が近くにいるとしょっちゅう転んだり、物を落として、それを拾ったりするんです。それもあの受付用のマイクロミニの制服ですから、いつもショーツ丸見えで・・・。だから、恥ずかしい思いをさせれば気をつけると思って、罰としてやったことです。間違っているでしょうか。」
「ああ、そ、そう・・・で、では・・・こちらの報告はどう? こちらにはこう書いてあるわ。男性クライアントが受付の前で待っていると、キャンディーを持って近づいて、
誘惑するような声と表情で『当社では、キャンディーサービスがございます。待ち時間にお一ついかがでしょう。ただ、お客様からのお返しもいただくことになっております。私にもお客様お持ちの太くてかた~いスティックキャンディいただけますか?あちらの個室で』などと語りかける・・・・と書いてあるわ。これは、どうなの?」
 慶子の問いかけに、初めて真穂が口を開いた。
「あ、あの・・・それは、私がやらせました。沙也香さんはいつも受付に男性クライアント様がおいでになると、決まって脚を開いて下着を見せながら、ロリポップキャンディーを舐めたり、ペンの先を口に銜えたりするんです。それも舌をペロペロ出しながら。下品だからやめなさいって何度も注意したんですけど、『口が寂しくてついやってしまうんです。癖なので許して許してください』って言ってやめようとしないんです。だから、もっと恥ずかしい思いをさせればやめると思って・・・。これもやりすぎですか?社長?」

 慶子は深く大きなため息をついた。
(ホント、あきれちゃうわ。)慶子は心の中でそう思った。
 目の前の香織と真穂に対してではない。
 もちろん、彼らの指導はやりすぎである。もしも、彼らが別の女性社員にこのような指導をしたとすれば、「それは絶対にやりすぎよ。すぐにやめなさい」と、慶子は叱責したにちがいない。
 だが、今回は彼女たちを責めるわけにはいかなかった。
 なぜなら、これは沙也香自身が意図的に招いた結果だと言えるからである。
 
 
 今からほぼ一ヶ月前の初めての出勤日、レースクィーンと見紛うばかりの超マイクロミニドレスの受付用制服に着替えた沙也香は羞恥に頬をひきつらせながらも、慶子に挨拶をするため社長室を訪ねた。 
 二人きりになって、慶子は沙也香の、いや坂下智則としての本心を聞こうと真剣な口調で話を切り出した。
「坂下部長・・・あなたの本心をお聞かせください。これはあなたの望んでいる姿なのですか?」
 意外にも慶子から「坂下部長」と呼びかけられ、一瞬ハッとした表情を浮かべたが、すぐに元の顔に戻って静かに重い口を開いた。
「いや・・・実は・・・自分でもよく、わからないんだ。これが・・・望んでいたことなのか・・・どうか。」
 できるだけ、昔の声を取り戻そうとしながら、小刻みに言葉を継いだ。
 だが、悲しいかな長期間に渡り、女性言葉と高いトーンでの会話しか許されていなかった智則の話しぶりは不自然を通り越して滑稽ですらあった。
 慶子は思わず笑い出しそうになるのを必死にこらえた。
「私も部長の指導の厳しさに恨んだこともあります。でも、そのおかげでここまでやってこれたということも事実なので、感謝している部分もあるんです。ですから、部長、もし私に力になれることがあるのならおっしゃってください。まだ、今なら、引き返すことができるはずです。このままエスカレートしたら必ずいつか・・完全に・・・」
 慶子は智則の股間に目をやった。
 智則にはその視線の奥に隠された意味が分かっている。
(いつか・・完全に・・「性転換手術」を受けさせられることになる)という意味なのだろう。
「ああ、確かにそうかもしれない・・・でも・・・」
「でも?」
「うん、それでも・・・・いいような気もしているんだ。」
「え?いいって・・・完全に女性になってもということですか?」
「ああ、それがもしかしたら自分にとって最も幸せなことのようにも思えるんだ。」
 慶子には智則の顔に微かな笑みが浮かんでいるのが見えた。

 慶子はわずかの間の後、思い切って口を開いた。
「で、では・・・せめて、キャリア女性としての道を歩んだらどうなんです?部長のキャリアなら十分それも可能なのではないですか?」
「いえ・・もう、それはできないわ。」
「うん?どうして?」
 智則の言葉は女性言葉に戻り、声のトーンも高くなっていた。
 それによって不自然さと滑稽さは消え、慶子の受け答えも元部長に対する口調ではなくなっていた。
「だって、私の身体はもう有希江おばさまのものだもの。有希江おばさまに命じられることが私の幸せなの・・・。」
「有希江はあなたにキャリア女性として生きることは許さないと?」
「ええ、おばさまはおバカでドジで、どんな命令にも従順な可愛い女の子が好きだって。」
「それにしたって、あんな辱めを受けても平気なの?しかも宮田君の相手までさせられて。」
「おじさまの相手は・・・確かに辛いけど・・・でも、その後には『ご褒美』がもらえるし・・・」
 慶子は智則の言う、『ご褒美』のシーンを思い出していた。
 あんな屈辱的な出来事をこの男は『ご褒美』と称してありがたがっているのだとわかると、慶子の心に微かに残っていた霧のような部分が晴れていくような思いがした。
「よくわかったわ。あなたが心の底からMであるということ、いえ、有希江という女性によってMにされてしまったと言った方がいいかもしれないけど。それがあなたの本心から出ているということは確かなようね。いいわ。私もこれからはあなたが坂下部長だったという記憶は捨てる。あなたを沙也香という何もできない、新人受付嬢だと思ってあつかうわよ。いいわね。」
 智則は無言のまま小さく頷いた。
 これでよかったのだろうか、もしかして引き返すなら今なのではないかという思いも微かに残っていたのである。
 だがそんな心の迷いを次の慶子の声が吹き飛ばした。
「何、黙ってるのっ? 沙也香はただの新人受付嬢でしょ? 目上の人が言うことに返事もしないとはどういうこと? しっかりと目を見てお返事なさいっ!」
「は、はい・・・申し訳ありません。 沙也香は・・・社長に新人受付嬢としてあつかっていただけてうれしいです。こ、これからも・・・厳しく指導してください。お願いします。」
「まあ、いいでしょう。自分のこと『沙也香』なんて名前で言うのは社会人としては失格よ。だけど、沙也香はそうしていなさい。そのほうがお望み通りおバカでドジな女の子に見えるからね。フフフ・・ ところで、沙也香、あなた、今日おばさまやおじさまから何か言われて来たの?」
「は、はい・・・お仕事がんばってと言われました。」
「ふ~ん、それだけ?」
「い、いえ・・・あの・・・皆さんに可愛がってもらえるように何でも言うことをよく聞きなさいと言われました。」
「後は?」
「あの・・・いっぱい・・・いっぱい・・・恥ずかしい思いを・・・してきなさいと。」
「フフッ、また言われたのね? で、どんな風にしろって?」
「あの・・・できるだけ・・・おバカでドジで・・・エッチな・・・女の子として振る舞いなさいと言われました。」
「ハハハ・・・わかったわ。また、帰ってからエッチで恥ずかしい告白させられるのね?沙也香の好きな『ご褒美』をもらうために。そうなのね?」
「は、はい・・・」
「わかったわ。でもあんまりやりすぎないでよ。仮にもここは私の会社なんですからね。フフフ・・」

「あと・・・社長様に一つだけ、お願いしたいことがあります。これは沙也香の心からのお願いです。おばさまもおじさまも知りません。社長様にだけお願いしたいことです。」
 沙也香の目に真剣な思いが浮かんでいた。演技ではなく本心からの言葉を口にするつもりなんだと慶子は感じた。
「うん?なに?言ってごらんなさい。私に叶えられることかしら?」
「はい・・社長様にしか叶えられないことです。」
「あら、ずいぶん信頼されたものね、いいわ、言ってみて。」
「あの・・・こちらの会社は皆さん、元々沙也香の部下だった人たちです。」
「ええ、そうね。ほとんどそうだわ。『沙也香の部下』っていうのは変な感じだけどね。フフっ・・・」
「それに、沙也香の教育係として森島香織さんと朝倉真穂さんが受け持ってくださると先ほど聞きました。」
「ええ、おばさまからのたっての要望でね。」
「ああ、やはり・・・」
 沙也香の目に悲しみの色が浮かんだ。

「あの・・皆さんに、沙也香の正体を言わないで欲しいんです。もし沙也香の正体がわかったら、きっと皆さん、沙也香のこと・・・あの・・・いじめると思うし・・あの・・・」「ああ、黙ってて欲しいということね?特に森島さんと朝倉さんは、昔思い切りしごいた部下だから、知られたらどんな苛めにあうかわからないものね?」
「は、はい・・・」
「ふ~ん、でも沙也香は本当はMで、苛められたいんじゃないの?だったらみんなに言って苛められた方がうれしいんじゃない?」
「そ、そんな・・・お願いです。黙ってください。他のことは何でもします。だから、沙也香の正体だけは・・・黙っててください。」
「フフフ・・・そんな慌てなくても大丈夫よ、冗談だから。いいわ、約束する。他の人には黙っててあげる。私は有希江ほどサディストじゃないから、そこまでのことするつもりはないわよ。アハハ・・・」
 沙也香は心からの安堵の笑みを満面に湛え、社長室を後にした。
 それから約一ヶ月、沙也香と慶子の間の「女同士」の約束は未だ破られてはいない。  
 
 慶子は、いまだに社長室に呼び出されたことに納得のいかない表情を浮かべている森島香織と朝倉真穂に視線を向けた。
 屈辱的な行為を自ら招いたのが、沙也香である以上、これ以上二人を責めるのはおかしな話である。それにもし今回、やりすぎを自重させても根本的な解決にはならない。なぜなら、沙也香の恥ずかしい振る舞いが収まることはないからだ。それをしなければ沙也香にとって「ご褒美」を得られる手段はないのだから。

「いいわ、話はよくわかった。あなたたちはこれまで通り、沙也香さんの指導教育を受け持ってもらいます。それにあなたたちのおかげで沙也香さんの男性クライアント受けはとてもいいみたいだしね。」
 慶子の言葉に香織と真穂は顔を見合わせて、ニコっと微笑みあった。
「それはそうよねぇ~?」
 香織は意味ありげな表情を真穂に向けた。
「うん、ねぇ~ ククク・・・」
 真穂は含み笑いをしながら相づちを打った。
「んん?なに?何か秘密があるの?」
「社長、沙也香さんのテクってすごいんですって。もう最近では沙也香さんの『キャンディーサービス』目当てに、アポイントよりずっと前にいらっしゃる男性クライアントさんで待合室が一杯になることもあるんですよ。ククク・・・」
「そうそう、一昨日なんか、午前中だけで7人もいらっしゃったんです。で、ランチタイムになって沙也香さん誘ったら、あまり食欲がないって言うんですよ。で、ダイエットでもしてるの?って聞いたら、何て言ったと思います?フフフ・・・」
 真穂の問いかけに、慶子は小さく首を振った。
「午前中、おいしいミルク飲み過ぎでお腹一杯なのって言いながら舌をペロって出すんだもん、もうびっくり。社長、あの娘みたいな娘を言うんですよね『先天性色情狂』って?ククク・・・」
「ええ、きっとそうね。『かわいそうな』娘なのね、たぶん。」
 
 慶子は二人を退室させると、応接用のソファに腰を下ろし目を瞑った。
 脳裏に沙也香の様々な姿が浮かんでは消えていく。
 先ほど二人に言った「かわいそうな」は、きっと慶子の真意とは違って取られたに違いない。
 二人にとって、沙也香は頭の弱い、色情狂の「かわいそうな」女の子であり、慶子にとっては、本来は男であるにも関わらず、無理矢理そのような姿を演じなければ、喜びを味あうこともできない「かわいそうな」女の子であった。

 その時、携帯電話が鳴った。表示を見ると、「YUKIE」だった。
 一頻りの挨拶を終えると、話題は沙也香のことに移った。
 有希江からしてみれば、それが目的で掛けた電話なのだから当然のことである。
「ねえ、慶子、運命の『再会』はまだ?」
「うん?何よ。運命の『再会』って?」
「もう~決まってるじゃない。社員のみんなと坂下部長との『再会』よ。」
「え?なに?どういうことよ。」
「もう~慶子、本当に鈍いわね。沙也香の正体をみんなにバラしちゃうことに決まってるじゃない。」
「何言ってるの? そんなことするつもりはないわよ。」
「ええ?どうして?知らせれば面白いことになるじゃない?フフフ・・・」
「うん?面白いことって、何よ?」
「だって、みんなもう沙也香が淫乱で、露出狂で、Mっ娘だってこと知ってるんでしょ?」
「うん、まあね・・・でもそれ、有希江が無理矢理させてることじゃない?」
「アハハ・・そんなことはどうでもいいの。で、そのMっ娘、沙也香ちゃんが、実は昔自分たちをいじめ抜いた坂下部長だって知ったら、それも自分の意志でそんな女の子になったって知ったら、みんなどうすると思う?」
「・・・・・」
「特に、今教育係をしている森島香織と朝倉真穂が知ったらどうなるかしら? ああん、ダメ、私話しているだけで感じてきちゃうわぁ・・・フフフ」
「もう~いい加減にしないと、本当に地獄に堕ちるわよ。有希江。」
「特にさ、小柄な朝倉真穂が腰にディルドウを付けて、沙也香のアナルを犯している姿とか想像すると、なんか濡れてきちゃうのよ・・・ 一番可愛くて素直だった子に、鬼上司が犯されて、しかもアンアン悶えるのよ。見物だと思わない?ああ、そうだわ。もしそうなったら、私、真穂にディルドウ送るわ。今より、1サイズ・・・ううん、2サイズくらい大きいやつ。さすがにそれだと苦しむだろうな~。もしかしたら、出血して泣き叫ぶかもしれないわ。何かゾクゾクするわ。ねえ、慶子、早くみんなに知らせちゃおうよ。」
 有希江は一方的に自分の思いを伝えると、電話を切った。最後に、「『再会』の日程が決まったら連絡して。ビデオカメラ用意して行くから」と付け足して。

 電話を切って、慶子はもう一度目を瞑った。
 再び沙也香の姿が脳裏に浮かんできた。だが、今度浮かんできたのは、これまで目にした沙也香の姿ではなかった。有希江の話した沙也香と朝倉真穂の空想のアナルセックスシーンだった。
 有希江が沙也香を犯すシーンは目の当たりにした。それももちろん衝撃的な光景だったのだが、大柄な有希江が小柄な沙也香を犯していると見れば、自然な姿と言えなくもない。だが、小柄な沙也香が自分よりも更に小柄な女の子に力づくで犯される姿はどうだろう。しかも有希江によると、これまでに経験したことのない巨大ディルドウを用意すると言う。沙也香はきっと泣き叫ぶだろう。そしてかつていじめ抜いた女の子に涙ながらに懇願するに違いない。
 空想の中の沙也香が震える唇で言う。
「真穂様・・お願い、痛くしないで・・・・優しくして・・・」

 慶子は高鳴る鼓動を鎮めようと深呼吸をした。だが鎮まる気配はない。むしろ鎮めようとするほど、呼吸が荒くなっていく。
 慶子は今日、おろし立ての高級シルク製のタンガを履いてきたことを後悔した。
 触れてみるまでなく、ヴァギナから大量の愛液が溢れ出しているのがわかる。
 慶子の右手はいつの間にか欲望に促されるまま、スカートの中に延びていた。
 社長室には慶子の抑えた喘ぎ声が響いた。


 慶子がソファからゆっくりと立ち上がり、乱れたブラウスとスカートを直したのは、それからおよそ30分後のことだった。
 呼吸はやっと落ちついてきた。これほどの短時間の内に2度もアクメを迎えたのは初めてのことだった。
 慶子はふぅ~っと大きくため息をつくと、内線電話の受話器を取り、ボタンを押した。
 
「ああ、久保寺専務? 明日の朝、始業前にミーティングをするので、みんな必ず出席するように伝えておいて。うん?ううん、その件じゃなくて・・・。新人受付嬢の沙也香さんの件でみんなに知らせておきたいことがあるから。」

 慶子は受話器を置くと、携帯電話の着信履歴から最も直近のナンバーをプッシュした。 液晶には「YUKIE」という文字が浮かんだ。
 呼び出し音が耳に響いている間、慶子は独り言を呟いた。
「ごめんね、沙也香、約束守れなくなっちゃった。どうやら私も有希江と同じ『趣味』があるみたい。」

 5回の呼び出し音の後、有希江の声がした。
 慶子は挨拶もせず、いきなり話を始めた。
「ねえ、有希江、さっき言ってた新しいディルドウって、すぐ手に入るの?」

              【終わり】

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『再会』 その8

 その後しばらくして、沙也香の「ご褒美」の時間がようやく始まった。
「じゃ、そろそろご褒美の時間にしようかしら?」
 有希江の言葉に、反応して、沙也香の顔にようやく笑みがもれた。
「そうそう、さっきも聞こうと思ってたんだけど、『ご褒美』って何なの?」
 慶子が立ち上がった有希江を見上げて言った。
「フフフ・・それは、沙也香が一番好きなこと。ね、沙也香ちゃん?」
 沙也香の顔に再び燃えるような赤みが差す。

「ほら、社長さんが、聞いてるのよ?答えて差し上げなさい。」
「は、はい・・・あの、おばさまのディルドゥで・・沙也香のお・・お尻を・・犯していただきます」
「あ、あ・・・そ、そう・・・」
 慶子は少し慌て気味に答えた。あまりに直接的な表現に一瞬たじろいだのである。
「フフフ・・そういうこと。沙也香の一番好きなことだものねえ? 沙也香の一番幸せな瞬間よねぇ?」
 有希江はからかい気味に言った。

 しかし、その日の「ご褒美」の時間はすんなりとはいかなかった。
 どうやら有希江がいつもと違う指示をしたかららしい。
 有希江は、沙也香にディルドウをリビングに持ってくるように指示した。
 沙也香は怪訝そうな顔をしながらも指示に従った。
「今日は、社長さんに見てもらいながらにしましょうね。」
 有希江の言葉に沙也香は驚いた表情を見せ、小さく首を横に振った。
「フフっ・・ダメよ、あなたの雇用主にはあなたがどんなエッチな子か知っておいてもらわないといけないもの。」

 その後、約2時間に渡ってリビングで繰り広げられた光景は、慶子の記憶の片隅にその後ずっと残っていた。
 新鮮で、刺激的で、官能的な、そして隠微な光景だった。
 沙也香への「ご褒美」とは言いながら、実際には誰のためのものなのかわからなかった。 有希江は、それを「飴と鞭」だと言った。ご褒美を受け取る前には先に「役目」を果たさなければならないのだと説明した。その役目とは雅明と有希江に対する奉仕だった。
 有希江は、慶子も奉仕を受けてみるかと聞いてきたが、慶子は遠慮した。沙也香への同情心が多少なりともあったからだ。

 沙也香は最初に雅明の前に跪くと、予め教え込まれていたセリフを自然な調子で口にした。恐らく相当な回数を経ているに違いなかった。
「おじさま、今日も沙也香にご奉仕させてください。沙也香は昔、おじさまの大事な恋人を怒らせてしまいました。そのためにおじさまを辛い目に遭わせてしまって本当にごめんなさい。沙也香をおじさまの昔の恋人の「沙也香さん」だと思って、心ゆくまで弄んでください。沙也香は「沙也香さん」と似ていますけど、心の中は淫乱で、変態で、どうしようもないマゾっ娘です。どんなひどい目にあっても感じちゃう、そんな娘です。どうか遠慮なさらずに沙也香のこと、おもちゃだと思って使ってください。」
 沙也香はそんなセリフを時折、熱い視線を雅明に向けながら、そして熱い吐息をもらしながら、口にした。
 沙也香は初めにうずくまると、舌先を伸ばして、雅明の裸足のつま先に触れた。
 その後足先の奉仕から、ふくらはぎ、膝、太股とじっくり時間をかけて進んでいき、雅明の太く逞しいペニスの先端にチュッチュッと音を立てながら、口づけを繰り返した。
「おじさまのおチ○ポ、とっても逞しくて素敵・・・沙也香、女の子だからおチ○ポないでしょ?だから、おチ○ポ大好きなの。ね、おじさまの・・・沙也香にちょうだい。」
 そんな沙也香のセリフに決められたシナリオがあるかのように雅明が返す。
「ほう~、じゃあ、その沙也香のおマタの所にあるのは何かな?」
「クリトリスよ、おじさま。沙也香のクリトリス、ちょっと大きいの。クラスのみんなが苛めるのよ。ねえ、おじさま・・どうしたらいいの?」
「う~ん、そうだな~、ではお医者さんに頼んで取ってもらおうか、全部取って、すっきりしてもらおう。その方が沙也香も嬉しいだろう?」
「うん、嬉しい、おじさま、早く沙也香のクリトリス取って・・・お願い・・」
 決められたセリフとは言え、最後のセリフはさすが屈辱的に感じたのか、口にしながら視線は雅明の目から外れていた。

 沙也香の唇が再び雅明の屹立したペニスに触れる。全体に小さな口づけを繰り返した後、大きく舌先を伸ばして、全体をゆっくりなめ回していく。時折、卑猥な音が慶子の耳にまで届いてくる。
 慶子は改めて、この光景を演じている2人に思いを馳せた。
 ソファに座り大股開きでふんぞり返っている体格のいい男は、間違いなく元同僚の宮田雅明である。一方その股間に顔を埋め、貪るようにペニスを頬張っているのは、どう見ても一人の少女である。だが、その実、過去の一時点では間違いなく雅明の鬼上司だったのだ。それがどういう運命の悪戯なのか、『自分にはペニスすらないから、男の人のペニスが好き』などというセリフを元部下に投げかけている。それも嫌われないよう媚びを売りながら。運命の歯車さえ狂わなければ、今でもこの男を叱りつけ、『恥』の告白をさせていたのかもしれないのだ。しかし現実には自分の方が部下であった者に『恥』の告白をしなければならない。しかもわざわざ自ら恥辱を受けるのを好むかのように演じながら。
 これほどの屈辱は他にあるだろうか、慶子はそう思い、微かな同情は示しつつも、内心はじっと好奇の目を向けていた。
 儚げでか細い沙也香の懸命な奉仕を見ていると、慶子の中に隠れている嗜虐性が芽生えていきそうで怖い。
 もしかすると、有希江がこれほどまでのS性を表すようになったのは、沙也香自身の持って生まれたM性が原因なのではないだろうかとさえ思えてくる。

 やがて沙也香の口唇奉仕は、夥しい量の白濁液が、右頬から右瞼までに一筋の線を画き、さらに、沙也香の口中を直撃して終わった。むせながらも何とか燕下した沙也香は、しかしその場をすぐには離れない。丁寧な「後始末」をしなければならなかったからだ。沙也香は顔に残った白濁を拭おうともせず、柔化し始めたペニスをおいしそうな音をたてながら「掃除」した。そして最後に顔に残る白濁を指ですくいとり、口へと運んだ。その姿には言いようもない背徳感が漂っていた。

「鞭」の洗礼を受けた沙也香は、いよいよ「飴」を求めて、有希江の近くに歩み寄る。
 だが、すぐに「ご褒美」にありつけるわけではなかった。
 ソファには大胆にもショーツを脱ぎ捨て、深く腰を下ろした有希江が口許に好色な笑みを浮かべながら手招きしている。
 沙也香は有希江のスカートを優しく丁寧にまくり上げると、露出した股間に顔を埋めていく。
 その瞬間、ピクっと有希江の身体が反応する。沙也香の舌先が有希江の敏感な部分に触れたのだろう。
 しばらくしてピチャピチャといかにも卑猥な音がし始めると、徐々に有希江の胸の膨らみも上下に波を打ち始めた。呼吸が深く荒くなっているのが慶子の目にも明らかだった。
「そうよ、そう・・・ホントに、沙也香はクンニが上手ね。まだ夫だった頃に知っていたら、離婚することもなかったかもしれないのに・・・・」
 有希江は乱れる呼吸の中で、沙也香に皮肉混じりに語りかける。右の手のひらでしっかりと沙也香の三つ編みの根本を抑えながら。
「でも男だった頃は、クンニを嫌がっていたわね。そんなこと男のすることじゃないなんて言いながら。そのくせ私にはいつもゆっくりと丁寧なフェラを求めてきた。でも何ていう皮肉かしらね、今の沙也香はクンニもこんなに上手だし、そのうえ、上手にフェラまでできるようになったんだもの。変われば変わるものね。」
 有希江のからかいの言葉に、羞恥心がわき上がったのであろう。沙也香の頬から首筋にかけてうっすらと赤みが差しているのがわかった。同時に慶子の目は沙也香の瞑った左の目尻から、一筋の涙が流れ落ちる瞬間を捉えていた。

 沙也香によるクンニ奉仕は長時間に及んだ。
 沙也香の顔が有希江のヴァギナから解放されたのは、彼女の2度目の絶頂感がようやく鎮まった後のことだった。
 有希江は、唾液と愛液とですっかり覆われた沙也香の顔を見つめて、クスッと小さく笑うと、かすかに頷いて見せた。
 その瞬間、沙也香の顔が崩れた。恥ずかしさに紅潮しつつも喜びを隠し切れない表情だった。
 沙也香はスクッと立ち上がると、先ほど指示されてベッドルームから持ってきていたディルドゥをテーブルの片隅から取り上げ、それを有希江に手渡した。
 有希江はそれを左手で受け取ると、右手で羞恥に俯く沙也香の頭を軽く撫でた。
 それはまるで、投げたボールを口に銜えて戻ってきた子犬に対する主人からの行為のようだった。
 有希江はディルドウから延びる細いストラップを、手慣れた手つきで自らの腰に装着すると、そのまま跪いてじっと待っていた沙也香の前に仁王立ちになった。
 沙也香は、リアルな形状と大きさを持つディルドウを目の前にしながら、震える声で屈辱のセリフを口にした。
「おばさま・・・今日も沙也香を女の子にしてください。沙也香のイヤらしいアナルま○こを、おばさまの逞しいおチ○ポさまで犯してください。お願いします・・・」
「フフっ・・いいわ。お望み通り、今日も本当の女の子にしてあげる。さあ、女の子らしく、ご奉仕なさい!」
 有希江の言葉に小さく頷くと、沙也香はエロチックに黒光りするディルドウの先端に唇を寄せ、チュッチュッと音を立てて口づけをした。
 それから舌をのぞかせると、擬似ペニスの全体にネットリとした愛撫を重ねた。
「フフッ・・今日は特に念入りにご奉仕なさい。今日はローションなしで犯してあげるから。沙也香のアナルま○こがローションなしでも大丈夫なくらい、十分に使い込んでいることを社長様にも見ていただかないとね。」
 沙也香の瞳に微かな恐怖心の光が浮かんだが、すぐに目を瞑ると小さくコクリと頷いた。

 ひとしきり擬似ペニスへの愛撫が終わると、有希江は沙也香を立ち上がらせ、逆に自らが跪き、超ミニのプリーツスカートをたくし上げた。すでに医療用テープが外されてあったために、沙也香の「クリトリス」が姿を見せる。
 慶子はハッとした。小さいのだ。哀れなくらい小さいのだ。太さも長さもまるで小指ほどしかない。
 いや、「クリトリス」として見るなら、確かに大きい。だが、それは本来・・・
 慶子はエストロゲンの効果とはこんなにも顕著な形で現れるものなのかと思いながら、しばらく沙也香の「クリトリス」を凝視した。
 しかし、視線をもう一度、沙也香の顔に向けると、今抱いた印象が薄らいでいくのを感じた。長い睫毛をフルフルと揺らしながら俯いている少女の顔を見ていると、もはやそこは紛れもなく「クリトリス」にしか見えなくなってくる。性的興奮を感じているにも関わらずエレクトの兆しすら見せずにダラリと垂れ下がっているそれは「クリトリス」以外の何物でもないように思えたのだ。
 
 次に慶子が目撃した光景は、ある意味コミカルに映った。
 有希江はピンク色の細いリボンを、沙也香の「クリトリス」の根本に巻き付けると、キュっと力を入れて結んだ。
「んっ・・・」
 一瞬、沙也香の口許が痛みに歪んだ。
 慶子が怪訝そうな顔をして見つめているのに気づいた有希江が微笑みながら口を開いた。
「フフっ・・これはね、大事なおまじないなの。沙也香をもっともっと従順で可愛い女の子にするためのね。」

 有希江に命じられるまでもなく、沙也香は四つんばいの姿勢になると、有希江の方に物欲しそうな表情を向けた。
「違う! 今日はこちらに顔を向けなさい。」
 有希江の指示に従って、沙也香は位置を変えた。慶子から見ると、沙也香の顔に正対することになる。
 慶子にはその意図がすぐにわかった。有希江は沙也香の犯される時の表情を自分に見せようとしているのだ。

 沙也香の背後に回り、跪いた姿勢で位置を確認した有希江は、見つめる慶子に軽くウインクをすると、一気に擬似ペニスの先端を沙也香のアナルに差し入れていった。
「うっ、くっぅ・・つぅ・・・」
 沙也香の眉間に苦痛の皺が寄った。
「フフっ・・・ほら、ローションなんかなくても、沙也香ちゃんのアナルま○こは、どんなペニスでも飲み込んじゃうんだから。良かったわね、巨根の雅明に鍛えてもらったおかげよ。ちゃんとおじさまの目を見てお礼を言いなさい。」
 沙也香はゆっくりと瞼を開けると、切れ切れの呼吸の中で、雅明に向かって言葉をかけた。
「お、おじさま・・沙也香の・・アナルま○こ・・・おじさまのおかげで・・・とても・・・名器になりました・・・これからも・・・もっともっと・・・鍛えてくださいね。」
 沙也香の屈辱的なセリフに、雅明は満足そうな笑みを浮かべると、
「ハハハ・・・かしこまりました。坂下部長、ご命令とあらば、いつでも部長のアナルま○こを使わせて頂きます。でも、私のような無能な部下のチンポにご満足頂けますかどうか。先日のように2度も3度も求められても、なかなかご期待にお答えすることはできません。どうぞ、お叱りにならないでください。」
 と、芝居がかったセリフで返した。
 有希江は、それがよほど可笑しかったのか、一瞬ピストン運動の動きを止めると、声を上げて笑った。
 だが、沙也香にとってはこれほど屈辱的な言葉はなかったのだろう。固く目を閉じると、嫌々をするように激しく顔を左右に振った。その動きに合わせ、左右の三つ編みがスィングしながら沙也香の頬をなぞる。同時にそれは頬を流れ落ちる涙を払った。
 その悲しげな様子は、確かに慶子の心に同情心をもたらしはしたが、一方で彼女の脳裏に浮かんだのは、かつて叱りつけていた部下に背後から犯される沙也香の姿だった。しかもその顔には苦悶と共にあきらかな喜悦の色が浮かんでいる。
 慶子は本能的にその光景を「見てみたい」と思った。できれば、今有希江が雅明に変わってくれたらとさえ思った。
 慶子は思わず両太股に力を入れた。しっかり閉じ合わせないと、熱く燃えたヴァギナから夥しい量の愛液が溢れ出しそうだったからである。

 やがて、断続的に続いていた沙也香のうめき声のトーンに明らかな変化が現れる。
 鼻にかかった甲高い声がはっきりとした喘ぎ声へと変わっていった。
 表情にもそれまでとは違った喜悦の色が広がっている。
 それが何を意味するかは、慶子にはすぐにわかった。
 沙也香にまもなく絶頂の時がやってくるのだ。沙也香にとって待ちに待った「ご褒美」の瞬間がやって来るのである。

 だが、沙也香は意外な行動を取った。首を振り、その快楽が絶頂に向かうのを拒否しようとしているのだ。
 その理由は、沙也香の「クリトリス」に結ばれたピンクのリボンの謎と共にすぐに明らかになった。
 このままの状態で、前立腺への刺激によって絶頂へと導かれても、沙也香の「クリトリス」から「愛液」の放出は叶わない。それがどんなに苦しいことか、沙也香にはきっとわかっているのだろう。おそらくこのような仕打ちを受けたことも一度や二度ではないのかもしれない。
「フフッ・・あら、沙也香、もうイキそうなのね? いいのよ、イッチャって。おばさまに沙也香のイクところ見せてちょうだい。」
「い、いや・・・おばさま、お願い・・このままじゃ・・」
「うん?どうしたの?いいって言ってるのに・・ホラホラ・・・」
 有希江は更に巧みにディルドウの律動を操作した。
「あ、あああん・・・おばさま、お願い・・・外して・・・お願い・・・」
「フフフっ・・そう?外してもらいたいのね。クリトリスのリボンを・・・。それじゃ、今日はおばさまじゃなくて、せっかくだから慶子社長にお願いしてみなさい。」
 沙也香の瞼がうっすらと開く。薄く開いた目の周りにはほんのりと赤みが差し、色白の肌に映えている。唇が微かに震え、そこからため息混じりの喘ぎが間断なく漏れていた。
 それは女の慶子から見ても妖しげな魅力を感じさせるのに十分であった。
「しゃ、社長様・・沙也香の・・・リボン・・取って・・・アアン、お願い・・・取ってください・・・アンンン・・・」
 慶子は沙也香のせっぱ詰まった表情に気圧されて、前屈みなると、沙也香の「クリトリス」に手を伸ばそうとした。
「だめ、慶子、ちょっと待って。」
 有希江の声に慶子は思わず手を止めた。
「沙也香ったら、社長さんの前だからって、遠慮してるのね。ダメよ、そんなんじゃ。いつものようにお願いするのよ。そうしないと、ここで終わりにするわよっ!」
 有希江は強い口調で言うと、腰のグラインドを止めた。
「イ、イヤ・・・やめないでっ・・・」
 沙也香の悲痛な叫び声を無視して、有希江はゆっくりと腰をひき始めた。
 (このまま終わりにするわよ)という無言の合図だった。
 沙也香はその動きに敏感に反応した。
 一度目を瞑り深く息をすると、もう一度瞼を開け、慶子の目を見つめながら口を開いた。
「あ、あの・・・しゃ、社長様・・・沙也香ね・・・秘密があるんですっ・・・沙也香女の子なのに・・・クリちゃんから、ミ、ミルクが出ちゃうんですぅ・・・きっと、沙也香が悪い子だから、神様のバチが当たったんだと思います・・・リボンがあると、ミルク出せなくて・・沙也香、とっても苦しいんですっ。お願い、社長様・・・リボン取って・・沙也香・・・ミルク出したいのぉ・・・」
 沙也香はそう言うと、もう一度目を瞑りじっと次の動きを待った。顔は羞恥で上気していた。
 慶子は有希江の顔を見た。有希江は大きく一度頷いてみせた。
 慶子はもう一度沙也香の股間に手を伸ばした。しっかり結ばれているとは言え、たかが細いリボンである。それは容易に解けた。
(そんなに苦しいのなら、自分でも解けるのに。手足が縛られているわけでもないのだから。)と慶子は思った。
 だが、それは間違いだった。やはり沙也香は縛られていたのである。目に見えない「服従」というロープによって全身だけでなく心までも拘束されていたのだ。だからこそ、沙也香には手を伸ばしてリボンを解くという簡単な行為にさえ許しを請う必要があったのだ。

 その後、すぐに有希江の擬似ペニスによるアナルセックスは再開した。
 すでにぎりぎりの所まで追い込まれていた沙也香は最後に、慶子の顔をしっかりと見つめながら、
「社長様・・・沙也香、イきますぅぅ・・・」
という甲高い叫び声を上げ、あっけなく果てた。
 沙也香の「クリトリス」からは確かに「ミルク」が「滴り落ち」た。
 それは「ペニス」からの「ザーメン」の「噴出」とは明らかに異なるものだった。
 柔らかいままの「クリトリス」から「滴り落ち」たものは、沙也香にとっては確かに「ミルク」だったに違いない。

 
 1時間後、慶子は自宅に戻るタクシーの車中にいた。 
 マンションを出る際に有希江が引き留めるように言った言葉を思い出していた。
「あら、もう帰っちゃうの?これからが面白いのに。私と雅明のセックスを沙也香にお手伝いさせるの。屈辱に耐えながら、必死でご奉仕する沙也香の顔は何回見ても飽きないわ。ねえ、慶子も見ていったら?本当に面白いんだから・・・。」
 慶子の脳裏に、ベッドで絡み合う有希江と雅明に献身的な奉仕をする沙也香の姿が浮かぶ。
 沙也香による、有希江への献身的なクンニ奉仕、雅明への丁寧なフェラ奉仕、そしてセックス後の有希江の熱く濡れたヴァギナへの舌を使った後始末・・・そんなシーンがリアリティのある映像として浮かんでくる。
 
 実のことを言えば、マンションを後にする時、慶子は後ろ髪を引かれていた。
 有希江の言う、「女になった寝取られ夫の屈辱シーン」を見てみたい衝動がわき起こっていた。
 だが、一方で怖さもあった。これ以上沙也香のM性に接していると、自分も有希江と同じような真性S女へと変わっていきそうな気がしてならなかった。 
「元同僚のセックスシーンを見なきゃならないほど、セックスに飢えてるわけじゃないわよ。」
 と、半ば冗談めかして、慶子はマンションを後にしたのだった。

 慶子は、タクシーが途中、工事のために未舗装になった道路を通り抜けた時、思わず小さな喘ぎ声を漏らした。
 車の上下動が、すでにショーツをグッショリと濡らすまでに熱くなっていたヴァギナを巧みに刺激したからである。
 タクシーが未舗装部分を抜け、通常の舗装道路に入った時、慶子はタクシードライバーに急いでくれるように頼んだ。このままでは無意識の内に車中でのオナニーに浸ってしまいそうだったからである。

 〔続く〕

『再会』 その7

 すでに慶子にとっても、目前の沙也香が、元は坂下智則であり、またリリーであったということは動かし難い事実として認識されていた。
 だが、そうだとしても、いやそうだからこそ、沸いてくる大きな疑問があった。
 それは目の前の信じがたい光景を作り出している、根本に関わる疑問とも言えた。

「でも・・・どうしてなの?」
 慶子が呟くような声で言った。有希江に向けてなのか、自分に向けてなのか、はっきりとはしない問いかけだった。
「うん?どうしてって?」
「うん、つまり・・・どうして彼・・・いえ、彼女ははこんな悲惨な生き方を選んだの?それにどうして有希江はこんなひどい仕打ちを彼女にしたの?」
 
 慶子の問いかけに、一瞬の間をおいてから有希江は口を開いた。
「その二つの質問に対する答えは単純かもしれないわ。少なくとも私に対する質問にはね。
答えは私が根っからのSだからってこと。男を苛めることが・・・ううん、男と言っても、智則のように小柄で体格も劣っているような男を見ると苛めたくて仕方がなくなるのよ。もちろん、私の中にそんな性癖が眠っていることを気づかせてくれたも智則だったってことなんだけどね。」
「で、でも・・有希江、今、宮田くんとつき合ってるんでしょ?彼の前でもSなの?」
「アハハ・・ううん、違うわよ。今も言ったでしょ?小柄で体格も劣っている男を見るとって。雅明みたいなガッチリマッチョにはM・・・とまではいかないけど、それなりに『子猫ちゃん』になっちゃうわ。ね?雅明?」
「子猫」という比喩がよほどおかしかったのか、それまで黙って会話を聞いていた雅明は声を上げて笑った。 
 慶子もそれにつられて微かに微笑みはしたが、まだ心からの笑顔を見せる余裕はなかった。落ちついてきたとは言え、心には戸惑いがこびりついていた。

「それから、もう一つの質問ね。 沙也香が何でこんな悲惨な生き方を選んだのかってことね? う~ん、それは私から答えることではないわね。ここにいる沙也香に答えてもらった方がいいわ。沙也香、あなたの口から答えなさい。」
 有希江はそう言うと、沙也香の手を取り、慶子と有希江の間に座らせた。三人がけソファの真ん中に座る華奢で細身の少女を豊満な熟女2人が挟む格好である。
 有希江は沙也香の震える肩に手を回し、薄手のブラウスの上から優しく撫でながら、囁くような声で語りかけた。
「さ、社長様に、沙也香の気持ちお伝えしなさい。正直にね、嘘をついてはダメよ。いいわね。」
「は・・・はい・・・」
 それは、消え入りそうな小さな声だった。

「あの日の夜・・・あの『リリー』と『ラベンダー』のタトゥーを入れた日の夜、沙也香は何をしたんだったかしら?」
 なかなか話し出そうとしない沙也香を見かねて、有希江が話のきっかけを振った。
 決して苛ついているような様子ではなく、むしろ楽しげな笑みさえ浮かべている。
「は、はい・・・どうしても、忘れられないので・・・これからも会って欲しいってメールしました。」
「それだけじゃなかったでしょ?隠さないで言いなさい。」
「・・・はい・・・あの、『ラベンダー』さんとのセックスがどうしても忘れられません。お願いです。また、『リリー』を・・・イジメテください。ってメールしました。」
「フフッ・・そうね、それで2週間後に沙也香の・・いえ、智則のマンションでもう一度会ったんだったわね。そこでどんなお話したんだっけ?」
「あ、あの・・・有希江おばさまは、もう『ラベンダー』と『リリー』の関係は終わりよ、どうしても続けたいなら新しい関係にならなければいけないわとおっしゃいました。『レズパートナー』としてではなく、『主人と奴隷』の関係に。」
「うん、で、それを沙也香は受け入れたんだったわね。どうしてそんなこと受け入れたりしたのかしら?」
「あの・・・それは・・・その・・・・」
「はっきり、言いなさい。おばさまに犯されたアナルセックスが忘れられなくなったからだって。そして自分がどうしようもないMっ娘だということに気付かされたからだってっ!」
「は、はいっ・・・・、おばさまはその時、もう主人と奴隷なんだから、この前のようなプレイはできない。 奴隷はご主人様にアナルを犯して頂く代わりに・・・おクチと舌でご主人様の大事な所に・・ご奉仕させていただくのだと。」
「フフッ・・そうね。それから沙也香は私のヴァギナにご奉仕したんだったわね。沙也香のクンニはとっても上手だったわ。3回もイっちゃったもの フフフ・・・ その後は?どうしたんだっけ?」
「はい・・・沙也香のアナルを・・・ディルドゥで・・・犯していただきました。」
「どうだったの?気持ちよかったの?」
「は、はい・・とっても。」
「忘れられなくなっちゃったのよね?自分がMッ娘だって気づいたのよね?」
「は、はい・・・沙也香はお尻を犯されないと感じない、変態Mっ娘になってしまいした。」
「フフフ・・・やっと正直に言えたわね。ヨシヨシ・・・」
 有希江は真っ赤になって俯いている沙也香の頭を軽く撫でるように触れた。
 それに呼応して沙也香の頭が有希江の肩にもたれかかっていった。

 慶子にはこの場の会話が有希江によって強制されたものなのか、それとも沙也香の意志によるものなのか、判別することはできなかった。だが、それはもはやどうでもいいことのようにも思えた。
 沙也香がアナルセックスの虜になったためにM性に目覚めたというストーリーが、仮に作り話であろうと、真性S女である有希江に沙也香が心から仕えているという事実は疑いもなく存在しているのだ。
 ゲイ・レズカップルの養女として、またセックスペットとして暮らすことを選択したのも、全財産を捨て生命の危険まで承知の上で、美容整形手術を受けることを選択したのも、そして男として生まれながら、女として生きることを選択したのも、すべては動かし難い事実なのである。
 沙也香に残されたものは、二十歳そこそこに見える可愛らしい容貌と、手足の長さが際だつ華奢でか細い肢体、それとコントラストをなすかのような豊満なEカップのバストとふっくらとしたヒップ、そして、有希江との唯一の心の絆を示す『リリー』と『ラベンダー』の色鮮やかなタトゥーだけである。
 例えどんなに屈辱的な仕打ちを受けようと、どんなに恥辱的な目に遭わされようと、沙也香にはそれを拒否することはできないのだ。そうであるなら、その屈辱や恥辱を進んで受け入れ、そこに喜びや快楽を得られるM性を持ちたい。いや、M性を持つように自分の心を変えていかなければ・・・と無意識の内に考えたのかもしれない。 
 今日、目の前で目にした沙也香の揺れ動く言動を見ていると、慶子にはそのように思えてならなかった。

「ところで、慶子、なんでこの娘に沙也香って名前を付けたかわかる?」
 有希江は沙也香の頭を撫でながら、慶子の方に視線を向けた。
 ぼうっと考え事をしていた慶子は、一瞬ハッと目を開いた。
 有希江はクスッと悪戯っぽく微笑むと、雅明に目配せをした。
 雅明は合図を待っていたかのように小さく2回頷くと、バッグから黒革の手帳らしきものを取り出し、慶子に手渡した。
 手帳らしきものと思ったそれは、フォトケースだった。
 開いてみると、左側に顔のアップ、右側にはセーラー服を身につけた全身写真が収められていた。
いずれも今有希江の肩に頭を凭せ掛けている沙也香の写真だった。
 写真の下にも「沙也香」と名前が書き込まれている。

「え?これが何だって言うの?」
 慶子は有希江の方に視線を向けた。沙也香の固く目を閉じ、小刻みに震えている姿が目に入った。何かに怯えているような様子である。
「日付を見て。」
 有希江の言葉に従って、写真下の日付を見る。
 ○○年3月24日とあった。10年以上前の日付だった。
「え? この日付・・・?」
 慶子はそう言いながら、写真の細部を凝視した。確かに幾分写真の色合いが古めかしく感じられなくもない。
「フフ・・でしょ? だって、その写真、ここにいる沙也香のものではないもの。」
「ええ?でも、名前が沙也香って。」
「ええ。その写真の子も沙也香なのよ。つまりここにいる沙也香と写真の沙也香は別人。」
 確かにそう言われてみると、似てはいるが、顔の輪郭の微妙な違いや、耳の位置、髪型、そしてよく見ると、体型がかなり違うのがわかった。写真の沙也香に比べて目の前の沙也香はよりやせているにも関わらす、より豊満な胸をしている。それに制服もデザインは同じだが、目の前の沙也香のそれはスカート丈もブラウス丈も超ミニサイズにデフォルメされていてとても写真のように実用的なものとは言えない。

「え?じゃあ、この写真の子って一体誰?」
 慶子は雅明の方に視線を送った。雅明はそれに応えて頷いてみせた。
 慶子は再び写真に目を落とし、次に目の前の沙也香を見た。なぜか、先ほどよりも震えが大きくなっている。有希江の指先がそれを慰めるかのように沙也香の髪の毛を撫でている。
(何をこんなに怯えているのかしら?似ている人の写真があったくらいで・・・・・
え?ちょっと待って、そうじゃないわ。似ているんじゃないわ。似させられたのよ。写真の子に似るように、手術で・・・・)
 慶子の心に落ち着きかけていた動揺がまた広がってきた。
「まさか、この写真の子に似せて整形したってこと?」
「フフフ・・・そう、当たり。まあ、完全コピーってわけにはいかないけど、かなり似てるでしょ?双子って言ってもバレないレベルじゃない?」
「で、でも、どうしてこの写真の子に似せる必要があったの?」

「ねえ、慶子、覚えている?雅明が入社の頃につき合っていた彼女がいたこと。で、ある人のせいで別れてしまったこと。」
「え? ああ、覚えているわ。確か当時女子大生だったのよね?部長に命じられた残業のせいで誕生日祝いができなくて・・・・え?ま、まさか・・・」
 慶子は雅明を見た。雅明はゆっくり立ち上がると、写真を慶子から受け取り、ため息をついた。
「ああ、この写真の沙也香は俺の恋人だった。誰かのせいで別れることになってしまったけどな。」
 慶子はもう一度目の前の沙也香に視線を落とした。全身の震えは更に大きくなっている。
「私は、最初はそんな気はなかったのよ。でも雅明がどうせ整形するなら俺のアイディアを入れてくれって言うから、まあ、おもしろそうだな~って賛成したってわけ。それにしても男の恨みっていうのも恐ろしいものだと思ったわ。失恋の原因を作った人をその失恋相手に似せて恨みを晴らすなんてね。しかも、その晴らし方が昔自分が受けた屈辱を性的辱めに変えて、それも昔その人が使っていた言葉を言わせながら・・・」
「まあ、俺の場合はちょっと歪んでいるのかもしれないがな。それだけ恨みも大きかったってことだ。」
 有希江の言葉を遮って、それまで沈黙していた雅明が言った。これだけは言っておきたいという気持ちが現れているように思えた。
沙也香の震えはまだ収まっていない。いや、収まるどころか、雅明の最後の言葉に反応したのか、ブルッと大きい痙攣をしたかと思うと、固くとじ合わせた瞼から一筋の涙が流れ落ちるのを慶子は見た。
 
「あらまあ、すっかり怖がっちゃって、こんなに涙も流して・・・」
 有希江は沙也香の身体を抱き起こすと、頬に伝った涙を指先で払った。
 沙也香はうっすらと目を開けた。長い睫毛が今だにフルフルと揺れている。
「もう大丈夫よ。おじさまも沙也香がいい娘だったら、これ以上意地悪言わないわ。ね、そうでしょ?雅明?」
「ああ、もう言わないよ。その代わり、いい娘でなかったら、すぐにお仕置きだからね。わかったね?沙也香?」
 雅明の言葉に沙也香はもう一度目を瞑った。何かを思い出そうとしているようだ。
 恐らく、このように言われたときにどう答えなければならないのか教え込まれているのだろう。
「は、はい・・・おじさま・・・沙也香は、昔・・本当にいけない娘でした。その時お仕置きされなかった分、今たくさんお仕置きしてもらって、感謝しています。これからも、ちょっとでも悪い娘だったら、お仕置きしてください。それと・・・それと・・・一杯、恥ずかしい思いをさせて欲しいです・・・だって、『恥辱を自分の宝とせよ』ですから。」
 沙也香の精一杯の言葉に有希江と雅明は顔を見合わせて笑った。
 慶子も釣られて笑みをこぼしたが、決して心からの笑みではない。
 自分もどちらかと言えばS女だと思ってはいたが、有希江や雅明からみれば可愛いものだ。とても自分にはここまでサディスティックな感情は持てないだろうと思いながら、彼らの笑い声を聞いていた。

 〔続く〕

『再会』 その6

 次の瞬間目にした光景に、慶子は我が目を疑った。
 なんと沙也香はソファに座る雅明の太股に、自らの臀部を乗せ、そのまま頭を雅明の逞しい肩に凭せ掛けたのである。超マイクロミニなので、雅明の太股には沙也香のピンクのショーツが直接触れているはずである。
 雅明は、慶子に一瞬視線を送ると、露わになった沙也香の生足の太股を優しくなぞりながら、低い声で言った。
「さあ、じゃ、今日もお勉強始めようね。今日はどういう恥ずかしいことがあったのかな?
さあ、言ってごらん。」
「あの・・・朝、超ミニのワンピースでお散歩しました。途中で長い階段があるから、そこで、下から来る人を待って・・・わざと前屈みになって・・・白いショーツ・・・見てもらいました。」
「うん、それは恥ずかしい思いをしたね。でも言いつけ通り、わざと見せたんだね?自分から恥ずかしい思いをするために?」
「は、はい・・・」
「どうして自分からそんなことするの?」
「あ、あの・・・『恥をかけるだけかけ』・・・だからです。」
「うん、よくできた。じゃ、次の恥ずかしいことは何だった?」
「あの・・・シースルーのブラウスにノーブラで・・・エレベーターに乗りました。鏡に映る他の男の人に、ウインクして・・・舌を出して、胸を突き出して、微笑みました。」
「うん、ちゃんとエロい微笑みをしたんだろうね?」
「は、はい・・」
「なんで、そんな恥ずかしいことをしたの?」
「あの・・・『恥は人を大きくする』・・・だからです。」
「うん、そうだ。よくできた。じゃ次はどんな恥ずかしい思いをした?」
「あの・・・ピザのデリバリーのお兄さんにノーブラのチューブトップとマイクロミニスカート姿を見せました。」
「うん?それだけか?」
「い、いいえ・・・ピザのお金払うときに、わざと落としたふりをして・・ショーツを見てもらいました。それから・・・お兄さんにお金払うときに・・・耳許で、『ありがとう』って言いながら・・・お兄さんのジーパンの前をちょっとだけ・・触りました。」
「お兄さんのペニスは硬くなっていたか?」
「は、はい・・とても・・・」
「そうか、じゃ今度来たときはジーパンの上からではなくて、ジーパンの中に手をいれてやるんだよ。いいね。」
「は、はい・・・」
「それにしても、そんな恥ずかしいことを自分でするなんて、一体どうしてだ?」
「そ、それは・・・・『恥を喜べ』・・・だからです。」
「うん、そうだな、よろしい。 じゃ、次の恥を言いなさい。」
「はい・・・慶子社長様に・・沙也香がエッチで淫乱な女の子だと思って頂くために・・エッチな言葉、たくさん聞いていただきました。」
「ほう、例えば?」
「あの・・・沙也香はエッチな服を着て、男性の視線を浴びると、あそこが・・ジュンってしちゃうって。だから、社長さんの会社のエッチな制服着てお仕事するのが楽しみですって。」
「慶子社長は、沙也香のこと、淫乱な女の子だと思ってくれただろうか?」
「は、はい・・・きっと。」
「せっかくだから、そこにいらっしゃる慶子社長に聞いてみたらいい。」
 雅明の言葉を受け、沙也香は視線を慶子に向けるために顔を上げた。
「しゃ、社長様・・沙也香のこと・・・淫乱で、エッチで、露出狂の変態女だって思っていただきましたよね?」
 沙也香の囁くような問いかけに、慶子は思わず小さく頷いた。
「うむ、どうやら、思ってもらったようだな。では、最後に聞く。何で自分のことをそんな恥ずかしい女だって思わせなくてはいけないんだい?」
「それは・・・『恥辱を自分の宝とせよ』・・だからです。」
「よろしい、今日もよくできたね。」

 慶子は目の前で繰り広げられる信じられない光景をただ黙って眺めていたが、ある重大なことに気づいた。
『恥をかけるだけかけ』『恥は人を大きくする』・・・・は智則の口癖だった言葉だ。
 雅明は智則から受けた「恥」の教育を、沙也香に授けているのだ。
 自分が強制されたように「恥」の告白をさせることによって。
 だが、何のために?
 もしかして口では批判的ではあったが、内心は智則の指導方針を正しいと思っていて、今その指導をおじ代わりの自分が、年少者に授けているということなのだろうか。
 いや、それにしてはおかしい。今沙也香に告白させた「恥」は性的な恥辱ばかりである。 とても若い女の子に告白させるような恥ではない。
 これは性的暴力以外の何物でもない、と慶子は思った。
 なぜ、そんな仕打ちを沙也香にしなければならないのだろう。
 慶子は有希江に視線を送った。しかし有希江は目の前の光景を微笑みながら眺めている。 瞳の奥にはS女性特有の冷たくも射るような鋭い光が宿っている。

「では、よくできた沙也香にご褒美をあげよう。でも、その前にしなくてはいけないことがあるよね。それは何だっけ?」
「あ、あの・・・淫乱で、エッチで、露出狂の沙也香は・・お仕置きをうけなくてはいけません。」
「うん、そうだね。お仕置きはどういう風にするんだっけ?」
「は、はい・・あの・・・おじさまやおばさまに・・お尻を・・・叩いて・・・いただきます。」
「うん、その通りだ。今日は、慶子社長も来ているから、3人に叩いてもらおうね。さあ、まずはおじさまからだ。いつもの姿勢になりなさい。」
 雅明の言葉に沙也香は素直に従った。抵抗などできないことを悟っている目である。
 沙也香は、雅明の太股に上半身を俯せ、マイクロミニのお尻を高く突き出した。
「では、今日は一人5回ずつだ。ただしこのパドルを使ってな。」
 雅明はテーブル下の入れ物から木製の平たい扇状のものを取り出すと、沙也香のピンクのショーツを一気に膝下まで引き下げた。
「あっ」
 沙也香の口から、小さな声が漏れる。恐怖のためか唇が震えているのがわかる。
 パシーッ 
 第一撃の破裂音が、部屋中をこだました。
「あっんん・・っ・・・」
 沙也香の口許が苦痛に歪んだ。
 パシーッ
 第二撃がより強い響きをもたらす。  
「うっっ・・・」
 沙也香の目に涙が溢れてきたのがわかる。
 パシーッ、パシーッ、パシーッ
 続けて3回の破裂音がリズミカルに続く。
「う、う、うっ・・・」
 沙也香の声がいつしか嗚咽に変わっていた。
 だが、沙也香にはそのまま苦しみをやり過ごす余裕は与えられてはいなかった。
 ゆっくり立ち上がると、雅明に向かって、
「おじさま、悪い子の沙也香にお仕置きしてくださって、ありがとうございます。」
 と涙ながらに言うと、雅明の手からパドルを受け取り、それを有希江に手渡したのである。まるで、自ら進んでスパンキングを要求しているかのような行為である。

 その後、有希江も慣れた手つきで5発のスパンキングを沙也香の形のいいヒップに打ち下ろした。
 スパンキングパドルは、沙也香の手を経て、慶子の手に渡った。
 パドルの柄は汗でじっとり湿っていた。恐らく興奮した有希江の手の汗だろう。 
 その汗の量から、有希江がどれだけ性的興奮を得ていたか伝わってくるようだった。
 慶子は、自ら閉じた太股に横たわってきた沙也香をしっかりと引き寄せると、前2人のやり方を真似て、パドルを露出したヒップに打ち下ろした。
 パシュゥ~ 間の抜けた音だった。遠慮がちに振り下ろしたことが伝わってきた。
 2発目、3発目、徐々に澄んだ破裂音に近づいていく。
「うっ、くっ、くっう・・・」
 沙也香の苦痛の声が高くなっていく。頬から涙が流れ落ちるのが見えた。
 慶子は思った。なぜ自分はこの娘を叩いているのだろう?
 沙也香の悲しげな顔を見ているととても叩くことなどできないはずなのに、手の動きを止めることができない。自分はもしかしたら、有希江以上のサディストなのでないかという気さえしてくるのだ。
 5発目のスパンキングは、最も甲高い響きを部屋中に残した。
 慶子は手がじっとり汗ばんでいるのがわかった。同時に、自身のヴァギナにも熱い湿りを感じていた。
 
 沙也香は慶子の手から、パドルを受け取ると、
「社長様、今日は、悪い娘の沙也香のお仕置きをしてくださって、ありがとうございます。」 と俯きながら言い、深いお辞儀を残して、慶子の前を離れた。
 ピンク色のショーツはすでに有希江の時に足首から抜き取れている。
 後ろだけ完全に捲れ上がったマイクロミニの裾からは、腫れ上がったヒップが露わになっている。
 慶子は沙也香の後ろ姿に目をやった。
 痛々しいまでに鮮やかな赤色がヒップの頂点を中心に広がっている。
 恐らく、スパンキングは日常的に行われているのだろう。
 右側のヒップには、いつのものなのか、紫とピンクの色鮮やかな痣が残っている。
 その痣はまるで筆で画いた絵画のようにさえ見える。
 
 絵画のように?
 いや、それは紛れもなく絵画だった。
 紫色の花とピンク色の花を人工的に画いた絵画であった。
(いやだ、この子、こんな所にタトゥーしてるんだわ。)
 慶子は更に神経を集中して凝視した。
 紫色の花はラベンダーだった。そしてピンク色はオトメユリを画いていた。
 二つの花が絡まり合った美しいタトゥーだった。
 きっと相当な腕のタトゥーアーティストの手になるものだろう。
 慶子は一枚のキャンパスを見るように沙也香のヒップを見つめていた。

 その時だった。慶子の背筋を味わったことのない電流が走った。
 『ラベンダー』と『オトメユリ』・・・・『ラベンダー』と『リリー』・・・
 右のヒップへのタトゥー・・・

「ええ? ええっ?」
 慶子の口から意味不明の言葉が漏れる。悲鳴とも喘ぎとも何とも言えない声だった。
 慶子は有希江の顔を見た。その顔には満足げな笑みが浮かんでいた。
 そのまま視線を雅明に向けた。やはり同じような笑みだった。
 
「フフフ・・・やっと気づいたみたいね。そうよ。慶子が思っている通り。」
 有希江の冷静な口ぶりは、目の前の事実が現実のものであることを証明しているかのようだった。
「ここにいる、『沙也香』こそ『リリー』なのよ。ううん、もっと言えば、私の元夫『坂下智則』、そして私たちの元上司『坂下部長』 まさに劇的な『再会』でしょ?びっくりした? フフフ・・・」
 慶子の耳には有希江の言葉と共に、自らの激しい鼓動が聞こえていた。あまりの衝撃に口を開いても言葉は出てこなかった。

「あんまりびっくりしたので、言葉も出ないって感じかしら?無理もないわ。もし私が慶子だったとして、今この場にいたらきっと同じ反応だと思うから。でも、夢でも幻でも作り話でも何でもないわ。目の前に見えてるのはすべて現実よ。」
「で、でも・・・有希江、あなた、『リリー』とは別れたって言ったじゃない?」
「フフフ・・確かに言ったわ。『リリー』とは別れたって。でも、ここにいるのは『リリー』ではないわ。新しく生まれ変わった『沙也香』という女の子。」
「『生まれ変わった』って・・・おかしいじゃない。だってこの子、本当の・・・」
「んん? 本当の・・・女の子だって言いたいの?」
 慶子は黙って頷いた。その視線は震えながらじっと立っている沙也香の無毛の股間に向けられていた。そこには男性を示す一点の証すら見えなかった。
「フフフ・・・沙也香、よかったわね、あなたのこと、本当の女の子だって認めてくれたわよ。でも、社長さんに嘘をついたままではいけないわね。ほら、あなたの秘密、社長さんに見てもらいなさい。」
 有希江はそう言うと、嫌がる沙也香の右足を力ずくで持ち上げると、そのままガラステーブルの上に乗せた。
 慶子の目前に沙也香の股間の深部が露わになった。そこには医療用のテープで巧みに固定されたペニスらしきものがあった。
「ホルモンの影響ですっかり小さくなっているけど、確かにペニスでしょ?もっとも、今ではエレクトすることもないから、本当にクリトリスみたいなものだけどね。」
 有希江の言葉に、慶子はゴクリと生唾を飲んだ。疑いが一つ氷解したことで、また一歩信じがたい現実を直視しなければならなくなったのだ。
 
「それにしても・・・・」
 慶子の心に最大の疑念が浮かんだ。
「この子の顔、あの『リリー』の写真と全然違うじゃない。第一この子、どう見ても20代前半にしか見えないわ。そんなのメイクで何とかなるわけないし、普通に整形したってここまで変われるわけないじゃない。 フフフ・・・やっぱり別人なのね? もう~ 有希江も人が悪いわねぇ。 どこかのニューハーフの子なんでしょ?」
 慶子の言葉に有希江は、フッと小さく微笑むと、ゆっくりとした口調で話し始めた。
「そう思うのは無理もないわね。確かに普通の整形でここまで変わるわけないわ。もし技術的にできたとしても危険だし、医者だってオーケーはしないでしょう。それに費用だって莫大だわ。でも私には洋順病院院長という強いサポーターがいるのは話したわよね?」
「ええ?つまり・・・整形で変わったってこと?」
「ええ。でも、院長もさすがに最初は拒否したわ。ここまで変えるには骨格も相当いじる必要があって、命の危険もある。だからどうしてもというなら、万一のことがあってもすべて自己責任であるという本人の同意書と誓約書を提出するようにと言われたわ。」
「ひ、費用は? だって・・さっき、費用は莫大だって・・・」
「ええ、費用は普通の整形手術費用とは、それこそ桁が二つ違ったわ。」
「どうしたの?有希江が払ったの?」
「フフフ・・・そんなことしないわよ。まず、『坂下智則』名義の預金、証券、不動産をすべて処分させた。それから、退職金も全額ね。つまり手術のために全財産を投げ出したってことね。だから今、残っている財産は、このアイドル並みの可愛い顔とモデル並みの魅力的な身体、それだけ。これからはそれを使って生きていくしかないの。ね、そうよね?沙也香?」
 有希江の問いかけに、沙也香は何も答えなかった。ただ、小さく一つ頷いて見せるだけだった。
「でもそこまでして作った費用なんだけど、残念ながらそれだけでは足らなかったのよ。手術前のいろいろな準備とか手術後の諸々とかもあってね。で、ある人に援助をお願いしたってわけ。その人はね、ある条件を満たしたら援助してもいいって言ってきたの。」
「条件って?」
「それは3年後、帰国したら一緒に暮らすこと。それも自分たちの娘としてね。」
「帰国? 娘? あっ・・・」
「フフフ・・・そう。私の姉夫婦のことよ。姉たちには子供がいないの。だから、沙也香を養女とすることを条件に援助に同意してくれた。それに、姉夫婦ってちょっと変わってるのよ。実は・・・姉はレズだし、義兄はゲイなのよね。まあ、世間体のための偽装結婚みたいなものね。だから子供もいないんだけどね。だから、そんな姉夫婦の所に沙也香が養女として暮らすってことは、どういうことか、慶子にもわかるでしょ?フフフ・・・」
「うん?どういうこと?」
「もう~、鈍いわねぇ。 男でも女でもない沙也香は、姉にとっても義兄にとっても、単なる娘ではないってこと。」
「あ、ああ・・・そういうこと・・・」
 慶子は目の前で肩を震わせながら、じっと会話の行方を聞いている沙也香の表情を見上げた。
 頬に赤みが差し唇をキュッと結んで、じっと恥辱に耐えているのがわかる。
 時折、頬を流れる涙が、細い顎を伝って、ブラウスの胸元に落ちていくのが見えた。

 〔続く〕

『再会』 その5

 二人の会話にしばらくの沈黙が流れた時をまるで待っていたかのように、ドアホンが鳴った。
「あ、彼だわ。今日はちょっと早く来るって言ってたから。ちょうどいいわ、慶子、彼に会って行ってよ。」
「え?うん、それは別にいいけど・・・。」
 慶子はコンパクトを取り出し、顔を映してみた
「大丈夫よ。そんなに赤くなってないから。それに気を使う相手でもないわ。」
「ん?どういうこと?」

 やがて、長身で体格のいい男性のシルエットが玄関先に浮かぶ。
 ドカドカという力強い足音がリビングに近づきドアが開いた。
「え?もしかして宮田くん?」
 慶子の素っ頓狂な声がリビングに響いた。
 ドアのそばに立ってこちらに微笑みかけているのは、元同僚で同期だった宮田雅明である。
「フフフ・・驚いた?私の今彼で~す。」
 有希江が悪戯っぽい笑顔で言った。
「へ~、驚いたわぁ。こういうことになってたんだぁ。」
「ハハハ・・そういうことです。俺も、まさかこんなことになるなんて予想もしてなかったんだけどね。まあ、運命の悪戯って言うか何て言うか。」
 
 雅明の言葉には含みがあった。
 雅明と有希江と慶子との3人は同期の中でも、配属された部署が同じで特に親しい間柄にあった。だが、それはあくまで友情の範囲であって、恋愛感情にまで発展することはなかった。と言うのも、入社当時、雅明には3歳年下でまだ大学に通う女子大生と熱愛中だったし、有希江も慶子もそれなりにボーイフレンドには苦労しているわけではなかったからだ。
 ところが、ある日雅明の恋愛関係に破局が訪れる。
 原因は雅明の仕事だった。多忙で残業も多かったため、女子大生の彼女は寂しさのため他の恋愛を求めてしまったのである。世間ではよくある話だが、純粋な雅明は思い悩み、思い切って直属の上司である坂下智則に相談した。だが、智則は恋愛に対するアドバイスをするでもなく、同情するでもなく、逆に雅明の勤務態度を叱責したのである。その叱責は確かに正しいものではあったのだが、恋愛に傷ついている若者の心には、傷口に塩を塗られるような痛みだったに違いない。
 雅明は何とか彼女の気持ちを取り戻そうと、彼女の誕生日に高級レストランを予約し、プレゼントを用意して、一世一代の勝負に気持ちを沸き立たせながら、就業終了時間である6時を待った。
 ところが、彼を待っていたのは、臨時の残業命令だった。
 今日だけはどうしても残業はできないと智則には伝えてあったにも関わらずである。
 もちろん、入社1年目の彼には残業命令を拒否する力などない。
 当然の結果として、彼の恋愛は終焉を告げた。
 確かに恨むのはお門違いなのかもしれない。だが、それでも若い雅明には怒りのぶつけ場所が欲しかった。雅明は密かに智則を恨み続けたのである。
 
 その後彼は何人かの女友達と恋愛関係になることもあったが、決して長続きはしなかった。どうしても失った彼女のことが忘れられなかったのである。
 ところが、そんな彼にも、身近に心を癒してくれる女性がいたのである。それまで親しすぎて気づかなかったが、望月有希江その人だった。
「いや、彼女はやめておけ。相当遊んでるみたいだし、わがままだし、苦労するぞ。」
 彼から恋愛相談を受けた友人は決まってそう言った。
 だが彼には、入社以来ずっと近くの席にいて、本当の有希江はそういう人間ではないような気がしていた。確かに放縦で、社交的で、美しい容貌も相まって、派手には見える。しかしその実、内面はしっかりとしていて優しさもあると雅明には思えたのである。
 
 残念ながら、この評価は「あばたもえくぼ」のようなものであった。
 有希江の内面は雅明の手に負えるような生やさしいものではない。
 放縦性と社交性に加えて淫乱性をも内面に秘めた、いわゆる悪女であって、若い雅明にかなう相手ではなかったのである。
 つまり、周囲の冷静な目の方が評価としては正しかったのだが、ひとたび有希江の魅力に嵌ってしまうと、それらの評価を肯定する勇気は失せていった。
 有希江の方はというと、そんな真剣な恋愛感情などは欠片もなく、言い寄ってくる男の中の一人として弄んでいたに過ぎない。
 
 そんな有希江が、ある日婚約を発表する。
 相手は自分ではなく、よりにもよって、あの坂下智則だと言う。
 雅明にとっては二重のショックだったのである。
 雅明の恨みは有希江ではなく、智則に向かった。
 入社1年目のあの恨みがまた再燃してしまったのである。
 だが、そんな恨みも決して表には出せない。内に秘めてじっと耐えるしかなかったのだ。サラリーマンとは因果な商売だと、雅明は酒で憂さを晴らしながら、時折呟くのだった。
 そんな経緯をすべて知っている慶子にとって、有希江の新しい恋人として雅明が今、目の前にいることが驚きだったのである。 


 3人の元同僚の前には、その日3本目のワインが置かれている。
 すでに2人で2本のワインを開けている有希江と慶子は、もっぱらサラダとオードブルに手を伸ばしている。ワインは雅明がほぼ独占しているようなものだった。
 3人は数年ぶりの「再会」を乾杯で祝すと、すぐに同僚時代の思い出話に花を咲かせた。

「あの頃もよく3人で飲みに行ったよなぁ。2人の方が酒が強くて参ったけどな。」
 雅明がワイングラスを傾けながら言った。
「何言ってるのよ。私じゃないわ。有希江が強かったの。私はすぐ赤くなる乙女だったわ。」
「よく言うわよ。私、赤くなってからが強いのなんて言って、それからボトル一本空けちゃった人が。アハハ・・」
「アハハ・・まあ、どっちもどっちだってことだ。ところで、慶子、会社うまくいってるの?」
「あ、うん、まあね、何とかやってるわ。一緒について来てくれた子たちもがんばってくれてるしね。」
「ああ、あの時な。こっちは結構優秀な人材抜かれてかなり困ったんだぞ。アハハ」
「それはまた失礼しました。でも引き抜いたわけじゃないのよ。みんな一緒にやりたいって言ってくれた人たちばっかりよ。」
「やっぱり、それは慶子の人柄よね。入社してすぐに人気者になっていたものね。慶子の周りにはいつも笑顔が絶えなかったしね。」
「アハハ・・それはどうも。でも、人気があるのは同性ばかりなんだよねぇ。もう~、男ってどうして見る目ないの~?」
「え?慶子って今フリーなの? いいやつ紹介しようか?」
「う~ん、今は間に合ってます。仕事がもう少し軌道に乗ってきたらね。お願いするわ。」
「もう~、そんなこと言ってたら、おばあちゃんになっちゃうじゃない。いいわよ、雅明、適当なの見つけて、慶子に押しつけちゃいましょう。」
「ひどいわね、有希江。適当なのってどういうことよ?」
 3人の笑い声がリビングに響いた。久しぶりの再会を心から喜んでいる屈託のない笑いだった。

 だが、談笑は慶子の一言をきっかけにぎこちない方向へ向かいだした。
「それにしても、あの頃飲み会行くと、宮田くんたち男子社員って、愚痴ばっかり言ってたわよね。女子社員はいつもその聞き役だったわ。」
「うんうん、そうだったわ。特に、慶子は聞き上手だったから余計でしょ?」
「うん、もう、母親じゃないよってつっこみたくなったわよ、本当に。フフフ・・」
「うん、まあ、とにかくきつかったからな。男子社員は特にな。」
「特にあの頃の坂下部長のしごきはすごかったよね。男子社員は陰で泣いてたもの。」
 慶子の言葉に、雅明と有希江が一瞬顔を見合わせた。

「ねえ、坂下部長の口癖って、私が退社した後も続いてたの?」
「ああ、あれね、ずっと続いてたよ。『恥をかけるだけかけ。恥は人を大きくする。恥を喜べ。そして恥辱を自分の宝とせよ。』だろ。」
「アハハ・・うん、そう。でも言葉はいいかもしれないけど、やり方がすごかったわよね。」
 慶子の言葉に雅明は黙って頷いた。

 智則は当時部下を厳しく叱る時、『恥をかけるだけかけ。恥は人を大きくする。恥を喜べ。そして恥辱を自分の宝とせよ。』を3回暗唱させ、土下座の姿勢でその日にあった「恥」を大声で告白させた。また時には「恥」を倍加させるために、女子社員のいる前でパンツ姿にさせ、やはり「恥」の告白をさせたりもした。
 雅明自身、その洗礼を受けたのは一度や二度ではない。ただでさえ恨みを抱いている智則に挑みかかろうとしながらも必死に感情を抑えたことも、一度や二度ではなかった。
 恐らく、これで業績が上がらず、また智則自身の評価も低ければ、すぐに問題視される事柄だったかもしれない。だが業績面も、智則の評価自体も顕著だったので問題として表面化することはなかったのである。
 
 慶子は話題が坂下智則に及んで、ハッとした。
 そう言えば、先ほどまで有希江との会話で取り上げていた「リリー」こそ智則その人なのだ。
 自分が部下の時代に、厳しい表情で叱りつけてきた坂下部長と、先ほど最後に見せられたランジェリー姿の美しい「リリー」が同一人物であるという認識を持ち続けることは難しかった。
 慶子は有希江の顔をのぞき込んだ。
(ねえ、どこまで話していいの? 宮田君は、どこまで知ってるの?)という問いかけの視線だった。
 有希江はその視線の意図を察してかどうか、黙って小さく頷くだけだった。
 慶子にはその頷きが肯定なのか否定なのかの判断がつかなかった。だから智則の話題にこれ以上深入りはしないよう口を紡いだ。

 リビングにわずかの間沈黙が流れたが、それを破ったのは有希江だった。
「あら?そう言えば、沙也香、出てこないわね。大好きな雅明おじさまが来てるのに。気づいてないのかしら。それとも疲れて寝ちゃったのかしら。」
 有希江はそう言うと、ゆっくりと立ち上がり廊下隅の部屋に向かった。

 慶子の位置からは、部屋のドアを叩いた後、中に入っていく有希江の姿が目に入った。見間違えなのか、光の加減なのか、有希江の顔に微かな険しさが浮かんでいる気がした。
 しばらくして部屋を出てきた有希江の後を追うように、沙也香が着いてきていた。
 有希江の影に隠れて服装はよく見えないが、どうやらどこかの高校のセーラー服のように見える。
 リビングの照明が当たる。
 やはり沙也香が身に纏っているのはクラシックスタイルのシンプルなセーラー服だった。だがよく見ると、シンプルなのは色合いや生地のデザインだけで、カットの仕方は独特だった。まず真っ先に気がついたのはスカート丈の極端な短さだ。シンプルなプリーツスカートなだけに余計に異様さが目立つ。前屈みになどならなくとも、今慶子の座っている低いソファからの視線だけで、ピンクのショーツの一部が覗いて見える。
 夏服セーラーのブラウスは伸びをしなくても、形のいい臍を露出するくらい短い。そして意図的に生地を薄く作っているのか、ピンクブラのフロントにある小さなリボンまで透けて見えている。
 視線を上げてみると、クラシックスタイルのデザインに合わせたのだろうか、髪を三つ編みに編み込んで、メイクもナチュラルで質素であった。

「沙也香ったら、今日は慶子社長さんがいらしてるので、お勉強の時間はなしにして欲しいなんて駄々こねるものだから、ちょっと今叱ってたところなのよ。」
 有希江の言葉を聞いて、改めて沙也香の俯く表情を見てみると、瞼が腫れているのがわかる。恐らく先ほどまで泣いていた跡なのだろう。
 怪訝そうな表情を浮かべる慶子に気づいて、有希江はさらに言葉を続けた。
「沙也香はね、雅明おじさまが大好きなのよ。特にお勉強を教えてもらって、良くできた時にご褒美をもらうのが特に好きなの。ね、沙也香ちゃん?」
 有希江の問いかけにも、沙也香は黙って俯きながら立っているだけだった。
「あら?どうしたの?沙也香はお返事もできない悪い子だったかしら?」
 言葉付きこそ優しげだが、有希江の口調には無言の強制力があった。
「あ、ご、ごめんなさい・・・で、でも・・今日は お願い、許して・・・ください。」
「まあ、そんなこと言って。おじさまお気に入りのセーラー服を着て、お勉強の時間待ってたくせに。」
「そ、それは・・・あの・・・社長様が・・・あの・・・」
「うん?慶子がいなくなってからのことだと思ったわけ?」
「は、はい・・。」

 2人のやり取りを見て、咄嗟に慶子が口を挟んだ。
「ああ、ごめんなさい。何か大事なお勉強があるなら、邪魔しないわ。だいぶ長居してしまったし、そろそろお暇するわね。」
 慶子はそう言って、腰を上げようとした。
「待って。まだ、座ってて。慶子には沙也香のお勉強ぶり見てもらいたいの。だって、今度から沙也香の雇用主になるんだもの。ねえ、雅明?」
 それまで、微笑みながら、無言でその場のやり取りを見ていた雅明は大きく一つ頷いてみせた。
「ああ、しっかりと見てもらった方がいい。沙也香がどういう子なのかってことを知ってもらうためにもな。」

 なかなか動こうとしない沙也香に有希江の叱責が飛んだ。
「沙也香! いい加減になさい。いつまでも駄々こねてないで、早くおじさまとお勉強をするの。ちゃんとできたらご褒美いただくんでしょ? ほら、いつものようにっ!」
 有希江の声にビクッと反応した沙也香はそのまま雅明の座るソファの元に近づき、震える声で言った。
「ま、雅明・・おじさま・・今日も、沙也香に・・お勉強教えてください。それで、もしいい子にお勉強できたら・・・いつものように ご褒美・・ください。」
 沙也香の言葉に雅明は相好を崩し、自分の右の太股の辺りを手のひらで二つ叩いた。

 〔続く〕

プロフィール

サテンドール

Author:サテンドール
=============================================
女性化小説なら国内・海外を問わず大好きです。

特に屈辱系・羞恥系・強制系・寝取られ系・立場逆転系・年齢退行系・SISSY系などなど・・・。

happy よりは、unhappy ending が好み。
(ちょっと、性格がゆがんでるのかも^^)

私事ですが、以前某サイトに 
「高野奈緒美」のペンネームで
『ある性転者の告白』という拙い小説を掲載させて頂いておりました。事情があって途中で掲載を止めましたが、その完結編も当ブログでご紹介できればと思っています。

それとランキングにも参加させていただきますので、
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