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ある性転者の告白 第13章-5

「それじゃ、今日は、一つ目のテストを受けてもらうからね。フフフ・・。」
 涼子は、私がうつむきながら恥ずかしそうにしている仕草に、CDの効果を感じ取ったのか、満足そうな笑みを浮かべながら言いました。
 私は不安な思いを抱きながら、涼子の口元を無言のまま見つめました。
「あなた、この前新宿で男たちの視線を浴びて、オチンチンが固くなっちゃったって言ってたけど、もしかしたら、それって私たちのご機嫌を取るために嘘言ってるんじゃないかなって思ったのよ。だって、タマタマがないのに、そんなことあるのかなってね。それで、もう一度小島先生に聞いてみてびっくりしたんだけど、タマタマ取っちゃっても、オチンチン勃っちゃったり、射精したりもするんですってね。もちろん、精子は入ってないから透明な液体みたいだけどね。だから女として見られて興奮したからじゃなくて、男としての射精本能があなたのオチンチンを固くしちゃったのかもしれないって。それ聞いて、ちょっとがっかりしちゃったのよ。それで一つ目のテストは、その確認をすることにしたの。フフフ・・・。あ、言い忘れたけど、その中には、ちょっとしたお薬が入っていたんだけど、気づいた? フフフ・・・」
 涼子は思わせぶりに言うと、私の目の前に置かれた、空のグラスに目を落としたのです。そのグラスは、私が十分ほど前に、アイスティーを飲み干したばかりのものです。そう言えば、どことなくいつもと違う苦みのようなものを感じられたことを思い出しました。
「え・・・?な・・・なんかお薬が・・・?」
 私は急に不安に襲われ、口ごもりながら言いました。
「フフフ・・・そんなに心配しなくても大丈夫よ。別に悪いお薬じゃないんだから・・・。ただ、ちょっとね、あなたの性欲を刺激するためのお薬・・・まあ、催淫剤みたいなものかな。普通の男の人なら、これを飲むと、すぐにオチンチンが勃っちゃって、我慢できなくなるんだって。でも、タマタマまで取っちゃった、あなたには効いてないみたいね。だって、何も反応してないみたいじゃない? あなたのオチンチン。フフフ・・・。」
 その言葉に、私はドキっとしました。
 と言うのも、数分前から何となく身体が火照ってきて、呼吸が徐々に荒くなっているのに気づいていたからです。しかも、スカートの中を覗かれまいと太股の上に置いた掌に、わずかに固さを増した自分の小さなペニスの反応も感じ取れるのです。催淫剤の効果は、睾丸を失っていてもはっきりと現れていたのです。
「あ・・・あの・・・実は・・・さっきから・・・あの・・オチンチンが・・・あの・・・」
 私はじっと下を向いたまま、かすれるような小さな声で言いました。
 もしも涼子の説明が本当であるなら、催淫剤によって効果が現れるということは、喜ぶべきことでした。なぜなら、男性としての機能が完全に失われたわけではないことの証明になるからです。
「んん?オチンチンが・・・? オチンチンがどうしたの? ええ? まさか、固くなっちゃったとか?」
 涼子はわざとらしく驚いて見せると、私の下半身に目をやったのです。
「は・・はい・・・実は・・・そうなんです・・・オチンチンが・・・固くなって・・・。」
 私は羞恥心を抑え、正直に告げたました。いえ、本当のことを言うと、かすかだった下半身の反応が、徐々にはっきりと現れてきていて、抑制が効かなくなってきたからなのです。
「あら・・・そうなの?なんだ、やっぱり、心の中は男のままだったってわけなんだぁ・・。ふぅん、そうかぁ・・・。なんか、残念ね。」
 涼子は落胆した表情を浮かべながら、小さくため息をつきました。しかし、次の瞬間には、口元に冷淡な笑みが戻り、言葉を続けたのです。
「じゃあさ、ここで、みんなの前で、見せてご覧なさいよ・・・。あなたの固くなった、オチンチンを。フフフ・・・。」
「ええ? あ・・あの・・・こ・・・ここで・・・ですか?」
「そうよ、ここでよ。決まってるでしょ? 服を脱いで、見せるのよッ。」
「そ・・・そんな、恥ずかしい・・・です。皆さんの前で・・・裸になるのは・・・許して・・・。」
「何言ってるのよ?これは最初のテストなのよ。そんなことじゃ、合格なんてできないじゃない。ああ、もういいわ。面倒くさいから、充ちゃん、聡ちゃん、脱がせちゃいなさいよ。早くッ。」
 涼子は、ニヤニヤしながら私たちのやり取りを聞いていた本城と田中に目配せをしました。
 二人は小さく頷くと、村井の方に顔を向け、同意を求めるような視線を送ったのです。村井はニヤリと相好を崩すと、黙ったまま大きく頷きました。
「い・・・イヤ・・・お願い・・・裸にするのは・・・イヤ・・・イヤァ・・・」
 私は目の間に仁王立ちになった本城と田中に哀願するように見つめながら身を固くしました。けれども二人はそんな私の言葉など耳に入らないかのように、下卑た笑みを口元に浮かべながら、身体を押さえつけてきたのです。
「や・・・やめてぇーっ・・・」
 私は両手足を必死になってバタつかせましたが、屈強な二人の若者の力によって押さえつけられると、その後は何一つ抵抗らしい抵抗を示すことができませんでした。男性としての筋力がこんなにも衰えているのだということを実感させられた瞬間でもありました。
「それにしても、ホントにいい身体してやがるぜ。なあ、お前たち?」
「本当っすよね、オッパイの形なんて完璧っすよねぇ。ああ、たまんねぇ・・・。」
「俺は、こいつのプリンってしたケツとシュッとした長い脚がいいっすよ。ああ、ダメだ・・・チンポ勃ってきたぜ。」
「バカ野郎、今日は我慢しろ、涼子に言われてるんだからな。アハハハ。」
 私は、そんな下品な言葉を浴びながら、彼らのギラギラした視線を避けるように、ソファの片隅で小さくうずくまるしかありませんでした。
「ほら、隠しちゃダメでしょ? 私たちに見せてごらんなさいよ。あなたのオチンチンが勃ってるとこ・・・。ほら、早くッ。」
涼子はそう言うと、下半身を隠していた私の右手首をつかみ、強引に引き離そうとしました。
「ああ、は・・恥ずかしい・・・お願い・・・見ないでぇ・・」
 私は消え入るような小さな声をあげながらも、最後の抵抗を示そうと右手に力を込めました。けれども、それは全くの無駄だったのです。女性である涼子の腕力が、男である自分のそれを上回っていたからです。ほっそりとして力のない手首はいとも簡単にねじ上げられてしまったのです。
「あらぁ・・・確かにピンとして勃っちゃってるみたいだけど・・・。それにしてもちっちゃいわねぇ・・・。ほら、見て、見て・・・私の小指よりも小さいじゃない、イヤねぇ・・・ホント・・・これで、オチンチンの勃起なんて言えるの? アハハハ・・。」
 涼子はそう言いながら、左手の小指を、私のペニスに添えるようにして、村井たちに見せつけるのでした。
「ホントに情けねぇくらい小せぇなぁ。だけど、これは、もうチンポじゃねぇんだろ?なぁ・・・涼子?」
「あ、そうだったわ。クリちゃんだったんだものね。まあ、クリちゃんとしてなら、ちょっと大きめかもね・・・アハハハ・・・。」
「お・・・お願いです・・・もう・・・もう、許して・・・オ、オチンチン・・見ないでぇ・・」
 私は両手で顔を覆いながら、必死に訴えたのです。
「バカね、このくらいでテストが終わるわけないでしょ? それに、オチンチンだなんて言っちゃダメじゃない。女の子なんだから、クリちゃんって言うのよ。ほら、こんなにちっちゃくて可愛いんだもの。フフフフ・・・。じゃあ、今度は、ちょっとクリちゃんの感度を調べてみようかしらねぇ・・・フフフ・・・」
 涼子は、情けないほどの小さな勃起を示している私のペニスに指先を触れてきたのです。その瞬間、ピクンっという小さな電流が全身を走り抜けていきました。
「アン・・・い・・イヤ・・・」
「あらあら、結構敏感なクリちゃんね。フフフ・・。じゃ、これは、どう・・・? でも、それにしてもちっちゃいわねぇ・・・。これじゃ、握ることもできないじゃない・・・情けないわねぇ・・・。赤ちゃんのオチンチンの方がよっぽど立派よ・・・フフフ・・・。」
 涼子は、人差し指と親指で私のペニスをつまむと、村井たちに見せつけるようにゆっくりとさすり始めたのです。
「アアンン・・・だ・・・ダメ・・・お・・お願い・・・止めて・・・」
 小さな電流が徐々に大きな波動に変わり始め、体中を駆け抜けていきます。口元から小さなあえぎ声が、無意識のうちにこぼれ出るのを抑えることができません。
「アア・・・アアンン・・・」
「まあ、ホントに女の子みたいね。そんな可愛い声上げちゃって。フフフ・・・。でも、こんな可愛いクリちゃんが射精するなんて、信じられないなぁ・・・。そうだ、ねえ、あなた、私たちの前で、オナニーして見せてよ。そんな完璧なプロポーションをした女の子が射精するところなんてめったに見られるものじゃないもの。あ、そうそう、充ちゃん、ビデオ用意してよ。せっかくだから、撮っておこうよ・・・アハハハ・・・」
 私は、何度も首を左右に振りながら拒否しましたが、涼子はそんな私の反応を楽しむかのように、ペニスへの刺激を続けたのです。催淫剤で敏感になった私の身体からは、抗う理性の心が消えていきました。


ある性転者の告白 第13章-4

 念書にサインしてから3日後の朝、私はその日指示されたオフホワイトのキャミソールとデニム地のタイトミニという比較的カジュアルなスタイルでリビングに向かいました。メイクは服装に合わせ、薄目のナチュラルメイクです。
 私がリビングに入ると、彼らは待ちかねたように迎え、奥のソファに腰掛けるように促しました。
 かなり低いソファだったので、座る瞬間タイトミニの裾がたくしあがり、思わず前を両手で隠しましたが、本城と田中の若い情欲をぎらつかせた視線が私の太股あたりに注がれているのがわかりました。その女性的な行動は、自分でも信じられないくらい自然に出たものでした。
 
 実は3日前、テストを受ける事に同意してすぐ、涼子から1枚のCDを渡されました。涼子の説明によれば、そのCDは心を落ち着かせるための、いわゆるリラクゼーション効果のあるもので、部屋にいる時はずっと流しておくようにとのことでした。私は心の中の不安を少しでも抑えることができるのならと、その指示に従いました。
 CDから流れる音は、音楽とも、何かの合成音とも判断の付かない不思議なもので、時折、音の合間に意味のわからない、人間の囁きにも似たかすかな声が入っていました。
 聴き始めはなにやら違和感を感じ、とてもリラクゼーション効果があるとは思えませんでしたが、継続的に聴き続けていると、心の中に落ち着きというか、安堵感のようなものを感じるようになっていきました。そして再生が五回目くらいになるとドキドキするような不安と緊張がすっかり消えていて、優しく穏やかな気持ちだけが広がっていきました。それは、まさに甘美とも言えるほどの快感でした。もちろん、そんな気持ちは、この2ヶ月間で一度も味わったことがありません。私はその快感に浸るように、CDをエンドレスに流し続け、そのまま深い眠りに落ちたのです。
 翌朝、かすかな小鳥のさえずりと小さな窓から差し込む朝の光で、目を覚ました私は、
久しぶりに熟睡したことを実感しました。精神的にも肉体的にも疲れが全く残っていないのです。ベッドサイドのCDプレーヤーからは、相変らず心地いい音が流れ続けています。
 私はその音に包まれながら、ベッドから起きあがると、シャワーールームに入り、着ていたパジャマと下着を脱ぎました。目の前の鏡に私の顔と上半身が映っています。 
 その時、自分の表情がいつもと違っていることに気づきました。暗く沈んだ表情は消え、無意識のうちに明るい、微笑みさえ浮かべているのです。それまで鏡に映し出される自分の女性化した姿を見ることは、決して慣れることなどできない辛い瞬間でしかありませんでした。ですから鏡越しに微笑むことなど、まして無意識のうちに微笑むことなどありませんでした。
 私は意識して、不機嫌な表情を作ってみました。けれども、無意識のうちに心の奥からわき上がってくる快活な感情が、自然と微笑みをもたらしてくるのです。しかも、あれだけイヤだった着替えやメイクも、いつしか鼻歌交じりに進めている自分がいたのです。
 そして、準備を終え姿見に向かい、最後のチャックをする時になると、微笑みが大きな笑顔に変わっていて、
「うん、今日はきれいにできた・・・可愛いわよ・・奈緒美・・・フフフ・・・。」
などと、無意識の内に、鏡の中の自分に語りかけているのに気づき、ハッとしました。
 
 私の心にそんな変化をもたらした最大の要因は、もちろん常時体内を流れている女性ホルモンの活発な動きによるものでしたが、実は涼子から与えられたCDが、それを助長する役目を果たしていたのです。
 CDから流れる音は、確かに私の心を落ち着け、穏やかで優しくしてくれる効果がありました。けれども随所に入る囁きのようなかすかな声には、別の目的があったのです。それは、村井と涼子が、私の手術を担当した医師である小島に相談して特別に作らせた、一種の催眠療法用のCDだったのです。
 その目的は、私に、自分は生まれながらの女であるという錯覚を与えると同時に、体内での女性ホルモンの吸収を、より活発化し、ひいては女性としての本能、つまり、無意識のうちに女性としての性欲までも開花させることにあったのです。 
 そのCDを単なるリラクゼーションのためのものだと信じていた私は、その後、部屋にいる時は、ほとんどエンドレスにその音がもたらしてくれる幸福感に身を委ねたのです。これによって、私の心の女性化は急激に進み、CDを聴かなくなってからも止まることはありませんでした。実際に、あえて意識をしないと、男性としての自分を見失ってしまい、自然に女言葉を口にしたり、女言葉でものを考えている自分に気づき、ハッとする機会が増えるようになっていったのです。
 ですから、前述したような仕草、つまり、本城や田中の若い情欲を露わにした視線を受けた時に、女性としての羞恥心から、本能的にスカートの裾を気にしたり、恥じらいの表情を浮かべたりしたのは、ごく自然なことだったのです。


ある性転者の告白 第13章-3

「これから、10日間、あなたにテストを受けてもらいたいのよ。それに合格すれば、手術を受けさせて、すぐに解放してあげる。どう?受けてみる?」
 私の心には言いしれぬ不安が沸き上がってきましたが、反対に、一日でも早く手術を受け解放され、結花との再会を果たしたいという願いが抑えきれなくなり、彼らの真意を探る心の余裕がなくなっていました。   
「わかりました。テ、テストを・・・テストを受けます・・・受けさせてください。」
 涼子はフッと納得したような笑みを浮かべると、さらに言葉を続けました。
「そう?受けるのね。そりゃ、そうよね、一日でも早く解放されたいものね。でも、いい? テストは厳しいわよ。」
「は・・・はい。でも、テストって、どんな・・・・?」
「フフフ・・・それはね今は内緒・・・。でも、それじゃ不安でしょうから、ちょっとだけヒントね。 あのね、あなたに受けてもらうのは、言ってみれば、『女性化確認テスト』かな? 2ヶ月前にあなたがここに来てから、私は復讐するために、あなたを女の子にして、屈辱的な経験をさせてやろうって思ったの。それは、わかるわよね? だからいろいろな特訓をしたり、女性ホルモンを使ったり、騙して手術まで受けさせたってわけ。あなたの身体が日に日に女性化するのを見たり、他の男から犯されるのを見たりすると、ホントに痛快だったわ。私の心の中にそんなサディストの血が流れていたのかって改めて気づかせてもらった。でも、今日、その女性化があなたの身体だけじゃなくて、心の中にまで進んでいるのがわかったわけでしょ? そうしたら、急に復讐心が薄れてきて、もうこのくらいにしておこうかなって思ったの。村井ちゃんに言ったら、お前がいいならそうすればいいって言ってくれたわ。でもね、いざ、そうしようと思ったら、なんか急に惜しい気がしてきたの。きっと、まだ、あなたへの復讐心が完全に消えたわけじゃなかったのね。で、あなたの心の中に女の意識が残っている内に、女としての恥ずかしさを、少しだけ味わってもらおうと思ったの。もちろん、これが最後・・・これで私の気持ちも踏ん切れるわ。」
 涼子は、ほとんど言いよどむことなく、思いを正直に告白するように言ったのです。そして、それを語る表情には、まさに一点の、嘘偽りも感じさせないものでした。
 私は、涼子の「女としての恥ずかしさを味あわせる」という言葉の中身に不安を抱きながらも、真剣な表情で「復讐心が薄れてきた」と語る、その言葉を信じ、涼子の申し出に同意したのです。もちろん、その奥には一刻も早い再手術と解放のチャンスを逃したくないという思いがあったのは当然のことですが。
 しかし、それは巧妙に仕組まれた企みへと、私を導いていくための演技に過ぎなかったのです。涼子の胸の内に燃えさかる復讐心は、決して薄らいでいたわけではなく、むしろそのサディスティックな嗜好とも結びついて、いっそう大きなものになっていたのです。
 その後の10日間で私が受けることになる屈辱的な体験は、決して涼子が言ったような「少しだけ」などという生やさしいものではなく、今、思い出しても口に出すことが憚られるほどのものでした。また、この時、本城と田中がその場にいなかったことにも、大きな理由がありました。彼らは村井から受けた、もっと大きな指示を実行するために、なんと私の恋人である結花のもとを訪れていたのです。
 いずれにせよ、そんな彼らの邪悪な企みを微塵にも感じ取ることのできない私は、村井の差し出す、『十日間のテストに合格すれば、すぐに手術を受けさせ、解放する』という内容の手書きの念書にサインをしてしまったのです。

ある性転者の告白 第13章-2

 私は村井たちの待つリビングに向かいながら、これから繰り広げられるであろう、屈辱的な行為、つまり、村井たちの性欲のはけ口としての道具、いえ単なる性具として扱われる自分の姿が頭に浮かび、暗く沈んだ気持ちになるのでした。
 リビングには意外にも村井一人だけがソファに腰掛けていて、本城と田中の姿はどこにも見あたりませんでした。
 私は少しホッとし、自分の想像が杞憂であることを期待しました。
「さてと・・・」
 リビングに入ってきた私と涼子を見て、村井が小さな声で言いました。
 私はその声に身を固くし、じっとうつむきながら次の言葉を待ちました。
 その言葉はあまりにも意外で、一瞬、自分の耳を疑ってしまう程でした。
「お前もこの2ヶ月間、よくがんばってきた。それでな涼子とも相談したんだが・・・、そろそろ解放してやろうかってな。な?涼子。」
「そうなのよ。まあ、ちょっと、納得いかないけど、私だって鬼じゃないからね。夫のこれ以上かわいそうな姿を見るのも忍びなくなってきたし・・・」
 私は目を丸くしながら、二人の顔を交互に見つめました。
「なんだ? うれしくないのか?」
 村井は私の驚きの表情をじっと見つめながら言いました。
 それは聞き間違いではなかったのです。
 確かに村井の口からは「解放」という言葉が出たのです。しかも、涼子もそれに同意しているというのです。そんなことうれしいに決まっています。でも、その時の私は彼らの言葉を素直に受け止めることなどできなくなっていたのです。なぜなら、彼らの言葉巧みな罠によって、これまで幾度となく騙されてきたからです。
「そ、それは・・・・、う、うれしいですけど・・・でも、何か・・・」
 下心があるんではないか。と言おうとしましたが、もし、本当なら彼らの機嫌を害することになってしまうと思い、喉の奥に押し込みました。
「なんだ、うれしくないようだな・・・。じゃ、いいぜ。約束通り、あと一月だ。」
「い、いえ、そういうわけじゃ・・・ないんです。 ホ、ホントに、ホントに・・・解放してくれるんですね?」
 村井は黙って頷くと、涼子の方に目配せをしました。
「本当よ。でもね、よく聞いて。それには、条件があるわ。」
「じょ、条件・・・?」
 私は、やはり、と思いました。彼らが無条件に解放することなど考えらません。


ある性転者の告白 第13章-1

 悪夢の外出から戻る玄関に入ると、私はその場から逃れるように、急ぎ足で部屋に戻りました。そして、極度の緊張と不安による疲れから、そのままベッドに倒れ込むと、そっと目を閉じました。眠ることで、ほんの一時にせよ、過酷な現実から逃避できると思ったからです。
 けれども次から次へと心にわき上がってくる不安を抑えることはできません。
 その不安の原因は、もちろん涼子に指摘された「心の女性化」のことでした。
(今日、自分の身に起こったことは夢なんだ、いや、たとえ現実だとしても、涼子に専門的な医学知識などあるはずがないし、心まで女性化しているなんてあり得ない。)
 私は、自分の心に何度も言い聞かせました。でも、それなら、あの男たちの視線を受けながら、自らのペニスが反応を示した現実をどう説明したらいいのでしょう。
 結論の出ない堂々巡りを繰り返しながらも、肉体的な疲れのせいで、いつしか合歓凛落ちていました。
 
**********************
 それから一体どのくらいの時間が経ったでしょうか。
 私は涼子の声で眠りという一時の安らぎから、厳しい現実の世界へと引きずり戻されたのです。ぼうっとする視界の中で時計に目をやると、八時を少し回っているのがわかりました。与えられた安らぎの時は、二時間ほどでした。
「あらあら、メイクも落とさないで眠っちゃダメじゃない・・・。お肌が荒れちゃうわよ・・・。さあ、起きて・・・、リビングでみんな待ってるから・・・。」
「きょ・・今日はもう、このまま・・・休ませていただけませんか・・・?お姉様・・・。」
 それは本心でした。私は、涼子の機嫌を損ねないように言葉を選びながら、懇願するように言いました。
「あら、そんなに疲れちゃったの?でも、大事な話があるのよ。奈緒美ちゃんにとってもいい話よ、きっと・・・だから、さあ、早く起きて・・・。」
 心に一旦は落ち着いていた不安がまた沸いてきます。これまでも、涼子が優しい口調で語りかけるときには、たいていその裏に残酷な企みがあったからです。けれども、たとえそうだとしても、拒否することは許されません。心の女性化が進んでいるならなおさらです。一刻も早い再手術によって、進行を止めなければならないことは、他の誰よりもわかっていることです。
 私は小さく頷くと、放心状態のままベッドから力無く立ち上がり、ドアに向かってフラフラと歩き始めました。
(今日は・・・いえ、今日だけは、ひどい仕打ちを受けることがありませんように・・・)
 でも、そんなささやかな希望を見透かしたかのように、涼子は残酷な言葉を投げかけてくるのです。
「あらあら、ダメじゃないの、そのままじゃ・・・。お化粧、ちゃんと直してからじゃないと・・・フフフ・・・。いい? 奈緒美ちゃんのお化粧は、自分のためにしてるんじゃないのよ。男の人を喜ばせるためのものだってこと忘れちゃ、ダメよ。 アイメイクは、男の人を色っぽく誘う目元を作るためだし、それにルージュだって・・・フフフ・・・男の人が、自分のオチンチン、しゃぶらせたいって思わせるためにしてるみたいなものだってこと・・・。さあ、わかったら、早くお化粧直しなさい。」
 私はこみ上げてくる屈辱感に耐えながら、ドレッサーに向かうと、涼子に指示されるままメイクを直しました。
(そうなんだ・・・この目も頬も唇も・・・この屋敷では、何一つ自分のものはないんだ。彼らを喜ばせるためのもの・・・彼らの性欲を刺激し、それを受け止める道具に過ぎないんだ・・・。)
 私の心に一種の諦観にも似た思いが、心の中に芽生えていくのでした。


ある性転者の告白 第12章-4

 私は、店員から商品の入った袋をひったくるようにして受け取ると、急いで店を後にし長い階段を駆け上りました。ところが階段の途中で、慌てていたために、手にしていた袋を落としてしまったのです。そして、その袋を取り上げようと、身をかがめた瞬間、階段の下から人の視線を感じ、その方向に目をやりました。
 するとそこには店内にいた客の一人が、こちらに視線を送りながら、立っていたのです。表情を見ると、口元に下卑た笑みを浮かべ、垂れ下がった目には、イヤらしい鈍い光が浮かんでいます。私は、ハッとしました。階段の下からは、直立しているだけでも、パンティが見えてしまいそうな超ミニワンピースなのです。それが、上半身を屈めた姿勢を取ってしまったら、どんな光景がその男の視界に入ったか、すぐに想像ができました。
 私はその視線から逃れるように、一気に階段を駆け上がると、上で待っていた本城と田中のそばに駆け寄りました。後を着いてきた男は、私に連れがいるのに気づいて、チェッっと舌打ちをすると、何食わぬ顔でその場を立ち去って行きました。
 私は、ホッとすると同時に、今の自分は、男の身でありながら、同性である男から、性の対象としてしか見られていないんだという現実を知り、その情けなさに涙が止めどなく溢れてくるのでした。   

 車に戻ると、私は解放された安堵感に思わず、声をあげて泣き出してしまいました。
「あらあら、かわいそうに。そんなに泣いちゃって。でも、奈緒美ちゃんが可愛いから、注目されたのよねぇ、うらやましいわぁ・・・・フフフ」
 涼子はまるで子供をあやすような口ぶりで優しげに言いました。
 私はそんな扱いを実の妻から受ける屈辱感と、男でありながら男から性の対象として見られているという情けない思いが、一気にわき上がり、思わず、大声で叫んでしまったのです。
「ち、畜生・・・も、もう、こんな屈辱的なことはごめんだ。こんなこと二度としない。絶対にしないからなっ」
 言葉は男言葉でしたが、声はすっかり泣き声になっているのがわかりました。
 すると、涼子は、キッとした鋭い顔つきで私をにらみつけました。
「何言ってるのよ。私があんたから受けた屈辱はこんなもんじゃないわよ。それにしても、あんた、また、男言葉使って。もう、どうなっても知らないわよ。ホントに、ちょっと、油断するとこうなるんだから・・・」
「てめぇ、また、そんな言葉使いやがって、いい加減にしないと、ホントに送っちまうぜ、テープも写真も・・・・・。」
 村井の凄みのある言葉は、私にそれ以上の抗議を許しませんでした。いえ、反抗などできないことは、最初からわかっていることです。けれども、どうしても止められなかったのです。その日朝から耐え続けてきた屈辱的な出来事に、気持ちが一気に爆発してしまったのです。抗議すらできない無力感に、私はうつむいてすすりなくことしかできませんでした。
 村井は、そんな私の仕草に女らしさを感じたのか、満足げにハンドルを握ると、車を走らせましたが、涼子は、私が反抗したことをまだ根に持っているようで、時折、からかうように声をかけてくるのでした。
「ねえ、どうだったの? みんなに大きなオッパイとかお尻とかジロジロ見られたんでしょ・・・?隠してもダメよ。充ちゃんと聡ちゃんに聞いたんだから・・・。そりゃ、すごかったって・・・ジロジロ見られるだけじゃなくて、いっぱい声かけられたんだってね? ね、どんな気分なのよ。男のくせに男からそんな目で見られたり、声かけられるのってさぁ・・・フフフ」
「は・・・恥ずかしかった・・・だけ・・・それだけ・・です」
「あら、そうかしら? だって、あなたの望んでたことじゃないの。男の人からもっと可愛がってもらいたいから、手術してオッパイ作って、タマタマまで取っちゃったんでしょ?フフフ・・。ホントは、うれしかったんでしょ?隠してもダメよ・・・フフフ・・。」
 私は涙の跡が残る顔を涼子の方に向け、にらみつけるような視線を送りました。
 しかし、涼子はそんなことは全く意に介しません。
「ねえ、それにしても、おかしなものね。だってそうじゃない? ちょっと前までは、あなたが、そんな格好している可愛い女の子のこと、ジロジロ見てたわけでしょ? こんな子とエッチしたいなーとか思いながらさ・・・フフフ。 それが今は、反対にジロジロ見られてるわけよね? エッチしたいなーとか、あの口でしゃぶらせたいとか思われて、あなたのこと見てオチンチン勃っちゃった人だっているわよ、きっと。ハハハ・・・可笑しい・・・ もしかしたら、そのままトイレに駆け込んでオナニーとかしちゃってる人だっているかもよ。フフフ・・・。 ねえ、男のくせに他の男からそういう目で見られるのってどんな気分? やっぱり、情けなかったりするわけ? ハハハ」
 確かに涼子の言うとおりです。その日の出来事で、私は男の身でありながら他の男から性の対象として見られる存在になってしまったことが、どれほど屈辱的で情けないものか、はっきりと思い知らされたのです。
「あ、でも、そんなことないか。あなたはもう、男じゃないものね。そんな男のプライドなんか、少しも残ってないでしょ? フフフ・・・」
 私は今にも叫び出したい気持ちを抑えこみ、小さく首を振るだけで、後はただ涼子の言葉をうつむいて聞いていることしかできませんでした。
「ところでさ、あなた、男たちからジロジロ見られている時に、オチンチン、変な感じになっちゃったりしなかった? ううん・・・だからさぁ、オチンチンが勃っちゃったりしなかったかって聞いてるの。ねえ、どうなの?」
私は涼子の質問にハッとしました。
 と言うのも、街中で見ず知らずの男たちから、次々に注がれる熱い視線を受けるという屈辱的な状況の中で、私の小さなペニスは反応を示していたのです。それは、男性自身の勃起と言うには、あまりにもか弱く情けないものでしたが、確かに、変化は示していたのです。もちろん、身体にフィットするボディコンのワンピースを身につけているにしても、私のあまりに小さくなったペニスでは、外見からその変化を見て取ることはできないでしょうが。
「ねえ、どうなの? これは、まじめな話なんだから、はっきりと答えてよ。医者が言うには、手術をしても勃起するような人は、それ以上どうしても女性化は進められないんですって。その場合は、すぐに再手術して、元の男の身体に戻すべきだって。だから、正直に言いなさい。あなたのためなんだから。」
 涼子の表情にはそれまでの冷たい笑みが消え、真剣なものに変わっていました。
「は、はい・・・実は・・アソコが・・・・固くなって・・・大・・・大きくなって・・・。」
 私は、彼らの前で性器の変化を口にするという、逃げ出したいほどの羞恥心を抑えながら質問に正直に答えたのです。再手術を受け、元の男の身体に一刻も早く戻りたいという一心でした。
「ああ、そう・・・やっぱりね・・・。男たちの視線を浴びて、オチンチン、勃起しちゃったんだぁ・・・ふーん・・・」
「は、はい・・・だから・・・だから早く、再手術して・・・。」
 私は懇願するようなまなざしを涼子に向けました。
 すると涼子の表情に、再び冷たくサディスティックな笑みが戻ってきたのがわかりました。
「アハハハ・・・引っかかったぁ・・・。そんな話、全部ウソよ。だって、男たちにジロジロ見られて、興奮して、勃っちゃったんでしょ? 男の視線に感じちゃったってことじゃない、それって・・・? 心の中まで女の子になったってことじゃない。フフフ・・・。でも、よかったじゃない。お望み通り、女の子になれて・・・アハハハ・・・。」
「そ・・・そんなこと・・・嘘・・・嘘ですっ・・・。」
 私は必死になって、涼子の言葉を打ち消そうと、頭を何度も何度もふりました。けれども男たちの視線に反応して、ペニスに変化が現れたことは事実です。それが、本当に心まで女性化していることを意味するとするなら・・・。私は、背筋に冷たいものを感じました。
「女だって、感じると固くなっちゃうものなのよ。クリちゃんが・・・ね。ああ、そうだ・・・。これからは、あなたのオチンチンのこと、クリちゃんって呼んであげるね。ちっちゃくって女を喜ばすこともできなくなったオチンチンだもんね。その方がぴったりでしょ? これからは、男のイヤラシイ視線に感じて固くなっちゃうクリちゃん・・・。まぁ、よかったわね、感じやすいクリちゃんで・・・アハハハハ・・・。」
 涼子の甲高い笑い声が車の中に響き渡りました。
 けれども、そんな耳障りな騒音より、心までもが女性化しているという現実に直面させられたことの方が遙かにショックが大きかったのです。
(どうすればいいんだろう・・・? このままだと、もう、男に戻ることはできなくなってしまうんじゃ・・・・。)
 私の心には言葉にできないほどの不安が渦巻いていくのでした。

ある性転者の告白 第12章-3

 私は以前歩くのはかなり速い方でした。でも高いヒールでの早足は、まったく早足になっていません。先を行く本城と田中に追いつくどころか、少しずつ離れさせるだけでした。
 土曜日昼下がりの新宿は、人通りが途絶えることはなく、道行く人々から向けられる視線は決して止むことはありませんでした。もちろん、その視線だけでも十分に恥辱的なこだったのですが、中には直接、声をかけてくる男もいたのです。
 そのほとんどが、顔と身体を褒め、つきあって欲しいという誘いでしたが、中には、
「ねえ、そんな格好して、男が欲しいんだろう? だったら、相手してやるよ。いくら?」
という露骨な表現で声をかけられたり、
「ねえ、彼女、君なら、絶対に稼げるよ。そこのヘルスなんだけど、働いてみない。」
というような風俗の勧誘まで、数え切れないほどの言葉を受けることになったのです。
そのたびに私は逃げるように歩みを速め、
(お願い・・そんな目で・・・見ないで・・・僕は・・・男・・男なんだから・・・)
と心の中で何度も何度も呟きました。
 つい、2ヶ月前までは、私自身が、可愛くてスタイルのいい女性に対して抱いていた感情を、今は、全く逆の立場で自分が受ける側に立っていることをいやというほど実感させられてしまったのです。
  
 私が指示された店にやっとの思いで辿り着くと、そこにはすでに、本城と田中が待っていて、たばこをくゆらせていました。
 私は一度大きく深呼吸をすると、細く長い階段を地下に向かって降りていきました。振り返って見上げると、お目付役の本城と田中は相変わらず、一階の階段付近で立っているのが見えました。
 そこは、新宿の裏道にあるいわゆるアダルトショップと呼ばれる店でした。
 私は思い切って、黒っぽいドアを押し開け、店の中に足を踏み入れました。その瞬間中から伝わってくる異様な雰囲気に、思わず足がすくんでしまいました。私自身、そのような店に立ち寄った経験がないわけではありませんが、その時とは感じる雰囲気が違うのです。その原因はもちろん、店の中の客たちが私に向ける異様な視線によるものでした。
 私は一刻も早くその場かれ逃れたいという思いで、客達の好奇の視線が向けられる中、カウンターの中にいる中年の店員の方に近づいていきました。そして、男の声だと感づかれることのないように、できる限りささやくように告げました。
「あ、あの、このお店で、一番、大・・・大きな、バ・・・、バイブ・・・が欲しいんですけど・・・」
「はあ、何?何だって?」
 店員は大きな声で聞き返しました。
 私は、少し声のトーンをあげて繰り返しました。
「ああ、バイブね。一番大きなやつかぁ・・・どれかなぁ・・・」
 店員はニヤッと笑い、まるで周囲に聞かせるかのような大きな声で言うと、色とりどりのバイブが置かれたコーナーから、黒いグロテスクな商品を取り出し、カウンターに置きました。
「そ、それから・・・このお店で、一番、イヤらしい・・・あの・・・あ・・・穴あき、パ・・・パンティ・・・も」
「ああ、穴あきパンティね。一番イヤらしいやつかぁ・・・ヘヘヘ・・・」
 店員の声にその場にいた客すべての視線が、一斉に私に向けられ、そのままじっと動かなくなりました。彼らの視線は、そんなイヤらしいオーダーをしているのが「女性」客であり、しかも、あまりにも過激で挑発的な服装をしているということに気づいて、男の欲望をあからさまに表した色に変わっていったのです。
 店員はニヤニヤしながら、奥の方から小さな箱に入った商品を取り出すと、
「はい、穴あきパンティ・・ね。ほら、これイヤらしいでしょう・・・? こんなんで迫られたら、彼氏もたまんないよ。ヘヘヘ・・」
 と言いながら、カウンターに置きました。
 客たちのなめ回すような視線が全身に注がれています。中にはわざわざ近づいてきて、大きく開いた胸元をジロジロ、凝視する客さえいます。
(ああ・・恥ずかしい・・逃げ出してしまいたい・・・。でも・・・もう一つ・・・もう一つ、言わなくちゃ・・・。)
 私はその客の視線を避けるように、背中を向けながら、蚊の鳴くような小さな声で言いました。
「あ、あの・・・逞しい男性の、ヌ・・・ヌード写真集も・・・」
 店員は、ニヤついた顔をいっそう崩しながら、カウンターを出ると、表紙にたくましい筋肉質の日本人男性のヌード写真が載った雑誌を手にして、戻ってきました。
「これで、いいかなぁ・・・ねぇ、ところで、お客さん、これで何するの?一人でオナニーでもするの? もったいないねぇ・・あんたみたいに可愛くて、いい身体した女の子が一人でするなんてさぁ・・・。ねぇ、よかったら、俺とつきあわない? いくらならオーケーなの? ヘヘヘ・・・」


ある性転者の告白 第12章-2

「じゃ、いい? すぐに出かけるわよ。」
 涼子はバックを持って立ち上がると部屋のドアに向かって歩き出しました。
「ま、待って・・・ください。ま、まだ、着替えもしてないし、それに、メイクも・・・メイクも落としてないし・・・」
 涼子は、そんな私の顔を、冷たい笑みを浮かべながら、見つめ返して言いました。
「ん? 何言ってるの?もう、すっかり準備できてるじゃないの。奈緒美ちゃんは、そのままで出かけるのよ。決まってるじゃない。ねぇ、村井ちゃん」
 いつの間にか、ドアの外に村井が腕組みをしながら立っていました。
「ああ、そうだ。そんな色っぽい身体になったんだ。世間の奴らに見せてやらなくちゃ・・・な。アハハハ・・・。」
 村井は大声で笑うと、
「じゃ、車で待ってるからな。」と言ってその場を離れました。
 てっきり男の服装での外出を予期していた私は、もちろん必死になって抵抗しました。 しかし長期間の女性ホルモンの影響か、体力も筋肉も極端に衰えていて、田中と本城という二人の若く屈強な男にかかれば、全く無駄な抵抗でした。
 私は村井と涼子が先に乗り込んでいた車の後部座席に無理矢理押し込められたのです。 
 
 黒塗りのベンツが新宿の繁華街に到着したのは、昼下がりのことでした。
 涼子が助手席から後ろを振り向き、口元に意味ありげな笑みを浮かべながら言いました。
「さあ、着いたわよ。今日はね、奈緒美ちゃんに、お買い物をしてきてほしいの。このメモに書いてあるから、忘れないでね。あ、そうそう、逃げようなんて気、起こしても無駄よ。充ちゃんと、聡ちゃんに一緒に行ってもらうからね。それから、制限時間は2時間よ。それを、ちょっとでも過ぎたら、わかってるわよねぇ フフフ・・・。」
 その時にはすでに抵抗する気力さえ失せていた私は、涼子の差し出すメモを手に取り、そこに書かれた店の場所と名前、そして買い物のリストに目を通しました。
 その瞬間、彼らの意図がわかり、顔から血の気が引いていくのを感じました。でも、どうすることもできないことは、自分が一番よくわかっています。私は最低限の要求を試みました。
「せめて、こんな格好じゃなくて、コ、コートくらい、羽織らせてくれませんか?」「ばか、それじゃ、何にもなんねぇんだよ・・・。」
 私の隣に座っていた本城が強い口調で言うと、それに答えるように村井も涼子も笑いあうだけでした。
 車窓から見える光景から、そこがアル○前であること知らせてくました。
 私は本城と田中に押されるように車から降ろされ、ふらつきながらその場に立ちました。
 と、その瞬間です。付近にいた人々の視線が一斉に私に注がれたのです。土曜日の昼下がりということもあって、アル○前には待ち合わせなどで多くの人々が集まっています。
 私は、その集中する視線に、改めて今の自分の姿がどんなに目立つものなのかを意識せざるを得ませんでした。
 体に張り付くようなショッキングピンクのソフトボディコンのワンピースに白いミュール、そして、光沢のある黒いストッキングが初秋の日差しを浴びて反射しています。そして派手目のメイクを施してはいますが、恥ずかしげにずっとうつむいていて、それだけを見れば外見とはのアンバランスで、豊満な胸と腰つきは服の上からもはっきりと見てとることができるはずです。
 また、ワンピースの丈は極端に短く、今にもパンティが顔をのぞかせそうで、ウエスト部分の大半はシースルーになっていて、女性ホルモンの影響で白く透き通った肌をこれでもかと言うほど露出しています。
 さらに目を凝らすと、Dカップの豊かな双乳が作り出す谷間と、ツンと突き出た乳首のふくらみがノーブラであることを誇示しているのです。
 これでは、まるで人の視線に晒されることを望んでいる露出狂の女の子だと思われても仕方ありません。
(ああ、恥ずかしい・・・逃げ出したい・・・)
 私は心の中でつぶやきましたが、いつまでもその場にとどまっていることは許されません。なぜなら、2時間以内に買い物を済ませて戻ることが、絶対命令だったからです。気づくと、本城と田中はすでにかなり前を歩いています。時々こちらを振り向きながら。
「ま、待って・・・」
 私はそうつぶやくと震える足で歩を進めました。 
 多くの目に晒されながら一人で歩いている方が、より一層の恥辱を味あうことに繋がるということがわかったからです。
 もしも、男連れだったら、ましてその男が本城や田中のようなやくざ風の男なら、自分のこの姿は、彼らの趣味だということがわかるでしょう。つまり私は、無理矢理そんな恥ずかしい姿をさせられている哀れな存在に見えるはずだと思ったのです。逆に周りに連れがいなくて、一人でこんな格好をしていれば、男が欲しくてたまらない淫乱女にしか見えないでしょう。
 私は二人に追いつこうと足を速めました。でもミュールの高いヒールが、その行動を妨害したのです。
 私は数歩足を出しただけで躓いてしまったのです。ただでさえ丈の極端に短いワンピースの裾からは、ピンクのパンティがはっきりと顔をのぞかせたの違いありません。
 その瞬間、先ほどまで好奇の視線を向けていた、男達から声があがりました。
「おおお、丸見えじゃん、パンツ・・・なぁ?」
「ああ、パンツもピンクだぜぇ、色っぽいなぁ・・。」
「しかし、それにしてもいい女だな。すげー、可愛いじゃん。」
「なあ、体だっておいしそうだぜ。モデルかなんかかな?」
「違うだろう?あんな格好してるんだぜ。露出狂の変態女にきまってるじゃねぇか。」
「そうだろうなぁ、でも、あんな可愛い子なら、俺、一発お願いしたいなぁ・・・。」
 周囲から聞こえてくるのは、男たちの欲望丸出しの遠慮ない会話だけではありません。それだけでも、私の羞恥心を高めるには十分でしたが、それ以上に、女たちの蔑みと嫉妬の声の方が強烈でした。
「なによ、あれ・・・あんな、格好して・・・、もう、男が欲しくて欲しくてたまらないって感じじゃない。」
「ねぇ、ホントにあんな女がいるから、男たちに舐められるんじゃない。」
「そうよねぇ、あのでっかいオッパイだって、作りものに決まってるじゃない。ねぇ?」 
 私はすぐにその場を逃げ出したいと思い、何とか立ち上がろうとしましたが、高いヒールと極度の緊張感がそれを阻みます。その時、一人の中年男が駆け寄ってきて、手を差し伸べてくれました。
 私はその男の手に支えられながら、ようやく体を起こすと、軽く会釈をしただけで、本城たちの後を追おうと歩き出しました。
「ちょっと待ってよ。ねえ、君、どこの風俗勤めてるの? おじさん、そこ行くから、相手してよ。ねえ、教えてよ ヘヘヘ・・・」
 中年男は、先ほどの優しい行動とはうってかわって、下品な笑みを口元に浮かべながら、声をかけてきたのです。
 新宿という場所柄もあるのでしょうが、その時の私の姿は、きっと風俗嬢にしか見えなかったのかもしれません。
 私は恐怖のために、体に震えがおこるのがわかりました。とにかく再び転ぶことのないように足下に注意を払いながらも、できる限りの早足でその場を離れたのです。
 離れ際に中年男の言った、
「ちぇっ、なんだよ。ちょっと可愛い顔してると思いやがって、風俗嬢のくせに・・・男にサービスしてナンボだろうが・・・」
という屈辱的な言葉を聞きながら・・・。


ある性転者の告白 第12章-1

 果たして、どのくらいの間眠り込んでいたのでしょうか。
 私はドアを叩く小さなノックの音で目を覚ましました。
 飲み物を持って部屋に入ってきた涼子の表情は、先ほどまでの嫉妬に駆られた激しいものから穏やかなものに変わっていました。 
「ねえ、奈緒美ちゃん、たまにはお外に出てみない?あなただって、そうしたいでしょ?」
 涼子はベッドサイドのテーブルに飲み物を置きながら言いました。
「え? 外?」
 私は思わず、小さな声で聞き直しました。
 と言うのも、初めてこの屋敷に足を踏み入れてから約2ヶ月間、外出という外出は一度もしていません。唯一の外出は、あの悪夢のような手術のための外出だけだったのです。もちろん、庭に出ることくらいはありましたが、門の外に足を踏み出したことはありません。
 私は外出できるという開放感から、自然と口元に笑みが浮かんでいました。
「ホ、ホントですか? 外に出ていいんですか・・・?ありがとう・・・ございます、お姉・・・様」
 私は涼子の機嫌を損ねて、外出が中止にならないように慎重に言葉を選びました。た。
「あら、やっぱり、うれしいのね。奈緒美ちゃん・・・フフフ」
 
 しかし同時に頭の中に止めようもない不安が芽生えてきました。
 そうです。私の身体は、この屋敷に初めて足を踏み入れた時とは、大きく変ってしまっているのです。Dカップの豊満なバストと豊かな曲線を描く下半身を持つ身体になってしまっているのです。しかも、絶えず体に流れる高濃度の女性ホルモンのために、肌も白くきめ細かくなっていましたし、髪の毛もかなり長くなっています。さらに、毎日のメイクのために眉も整えられ、たとえノーメイクでも、女性にしか見えない風貌に変化しています。これでは、男の服装をしても身体の変化を隠しきることはできないのではないかと思ったのです。
 だからと言って、2ヶ月ぶりの外出という開放感の高まりを抑えることは、やはりできません。
(まあ、胸を「さらし」か何かできつく巻いて、ゆったり目のジーンズか何か履いていれば、何とかなるだろう。)
と、自分を納得させ、わき上がってくる不安な気持ちを打ち消したのです。
 ところが、そんな不安を抱くことは、まったくのムダでした。なぜなら、私が男の服装をすることなど、その時もその後も決してあり得ないことだったからです。


ある性転者の告白 第11章-7

「それにしても、ちっちゃいわねぇ。もともと大して大きくなかったけど、これじゃ、赤ちゃんのオチンチンよりちっちゃいじゃない。これじゃ、女とHすることもできないわよ。アハハハ・・・。あれ? ちょっと待って。あなた、タマタマ取って、ホルモン入れてもらったら、こんなオデキみたいなオチンチンになるってこと、お医者さんから言われてたんでしょ? それでも、お願いしたってことは、こううなることを望んでたってことよね? そうなんでしょ?」
 もちろん、手術前に医師から受けた説明など全くありません。そもそも、手術自体、だまされて秘密裏に行われたことなんですから・・・。
 しかし本城や田中の前では、手術は自らの希望によって行われたものだいう姿を演じなければならないのです。それがこの部屋に入る前に受けた涼子からの指示でした。
「ねえ、どうなのよ? 早く答えなさいよっ!」
 涼子の鋭い口調に、ドキっとして、私は重い口を開きました。
「は・・・はい・・・、知ってました・・・・で、でも・・・それでも・・・手術して・・・ほしかったんです。」
「ふーん、あきれた人ね、ホントに。普通、男の人って大きいことを自慢するもんでしょ? それなのに、ちっちゃくしたかったってこと? ハハハ・・・。それで、オチンチンちっちゃくした代わりに、胸とかお尻とかバカみたいにデカくしてって頼んだわけね。 ねえ、いっそのこと、そんな役に立たないオチンチン、ちょん切っちゃえば? で、本物の女の子にしてもらえばいいんじゃない? どうなの? そうしたいんでしょ?」
 たとえ演技とはいえ、さすがにこの質問には、すぐに同意することはできません。もし同意を示せば、二度と男に戻ることができなくなってしまうような気がしたからです。 私は、もはや「オデキ」と呼んだほうがふさわしいほどに矮小化したペニスを、好奇の目に晒すという屈辱的な姿のまま、涼子に哀願するような視線を送りました。 
 しかし、そんな私の真意など復讐心と嫉妬心に駆られた涼子には思い知ろうという意すらすれ感じられません。むしろ早く返事をしろと言わんばかりの、冷酷な視線を送ってくるだけです。
「どうなの?何とか言いなさいよ。ホントの女の子になりたいんでしょ? オチンチン、ちょん切って、ホントの女の子にしてって言っちゃいなさいよっ。」
 私は、この屈辱的なやり取りから開放されたい一心で、涼子の望むであろう言葉を口にしたのでした。
「は・・・はい、ホントはオチンチン切ってもらって・・・ほ、本物の女の子に・・・してもらいたい・・・・です。」
「アハハハ・・・、やっぱりねぇ・・・。そういうことなのよね。それにしてもかわいそうなオチンチン・・・いらないなんて言われちゃって・・・でもHもできなんじゃ、役にたたないもんね。アハハハ・・・でも、男にしか興味がなくなったからって、そんなバカでかいオッパイ見せつけて、男、誘ってんじゃないわよ。特に、村井ちゃんにはね・・・。わかってるわね。まあ、村井ちゃんだって、本気にはならないでしょうけどね。ハハハ・・・。」
 涼子は最後に捨てぜりふを残し、嫉妬心を込めた一瞥をくれて、リビングを出ていきました。
こうして屈辱のやりとりはやっと終わりを迎え、彼らの好奇に満ちた視線からも解放されたのです。
 部屋に戻った私は、精神的にも肉体的にも疲れ切って、着替えもしないままベッドに倒れ込んむと深い眠りに落ちていきました。

ある性転者の告白 第11章-6

「そんな口聞いて、どうなるかわかってるわねっ? 後悔しても知らないわよっ。いいのね・・・本当にっ・・・。」
 涼子が村井に同意を求めるように目配せをしました。
「ああ、涼子の言う通りだ。俺たちはお前がどうなろうと知ったこっちゃねぇ。お前が後悔するだけだからな・・・。」
 村井がソファに座ったまま、冷たい視線を私に向け、ドスの利いた低い声でいいました。その目の奥に宿る、他人を圧倒する力強い光は、私から男に戻るチャンスを永久に奪い去ることのできる、そういう力を持っている存在であることを、思い知らせて余りあるものでした。
「ご・・・ごめんなさい。な、奈緒美が・・・・奈緒美が悪かったです・・・口答えして・・・ごめんなさい・・・」
 私は、卑屈にも、頭を下げ、謝罪の言葉を口にしました。
(何で、僕が・・・何で・・・謝らなくちゃいけないんだっ・・・)
 内心、大声で叫びだしたい思いを必死に抑え、その感情を隠すために、じっと下を向いていました。手足の先が小さく震えているのを感じながら。
「まあ、今回だけは、大目に見てあげるけど、二度とそんな口聞いたら、許さないからね。覚えておきなさいよ。」
「は・・はい。ご・・ごめんなさい。二度と・・・二度と・・・逆らいませんから・・・。」
「フフフ・・・、じゃ、さっきの質問に答えなさいよ。みんなも聞きたがってるわ。そんなデカいオッパイにしてもらって、しかもタマタマまで取っちゃって、今更、男として女を愛するなんて信じられないのよ。だから、きっと、あなたが奥さんになって、結花が旦那さんになって、オカマちゃんとオナベちゃんの逆転夫婦になるのが望みなんじゃないの? ね、そうなんでしょ? はっきり言いなさいよッ」
 涼子の質問は、明らかにそう答えなければ、許さないという絶対的な強制力がありました。
「ご・・・ごめんなさい。黙ってて・・・。ホントは、涼子お姉様のおっしゃる通りです・・・。奈緒美が女になって、夫になった結花に愛されたいの。それが、奈緒美の夢なんです。だから・・・だから・・・手術して・・・もらったんです・・・。」
「ふーん、でもさ、あなた、さっき、男の人に愛されたいって言ってたじゃない? 結花は女じゃない? それでもいいの? ああ、そうか、わかったわ。結花にも手術させて男に性転換してもらいたいんでしょ? ねぇ、そうなんでしょ?」
 まるで誘導尋問です。でも、逆らうことなどできません。私は、その誘導尋問のレールに乗っていくしかないのです。
「は・・・はい。結花にも・・・手術してもらって・・・奈緒美の・・・旦那さんになってもらいたいんです・・・。奈緒美・・・奥さんになって・・・愛されたいんです・・・」
「アハハハ・・・やっぱりねぇ・・・。そうだと思ったわ。そうじゃなきゃ、自分から手術なんて望むわけはないものねぇ・・・。それにしても、結花もかわいそうね。そんなふうに思われてるなんて・・・きっと、ショック受けるでしょうね? でも、『愛する直樹さんのためなら、いいわ、私、男になる。』なんて言い出すかもしれないわよ。ハハハ・・・」
 私は一刻も早く、この陰湿な屈辱的な言葉のやりとりの時間が過ぎ去ることだけを願って、うつむきながら耐えるしかありませんでした。
「それにしても、ホントに情けない人ね?あなたって・・・。それでも、男なの?私の夫なの?いくらタマタマまで取っちゃったからって、心は男のままでしょ?オチンチンだってついてるんでしょ・・・?一体、どんなオチンチンしてるのよ。みんなに見せてあげなさいよ。」
 涼子はいきなり超ミニのワンピースの裾をたくし上げると、パンティに手をかけ、ストッキングごと、一気に太股まで引き下げたのです。
「い、いやっ・・・だめぇ・・・・・・。お願い・・・ヤメテぇ・・・」
 抵抗することのできない私は、ただ哀願するしかありませんでした。
「あら? ないじゃない、オチンチン。イヤだぁ、まさかオチンチンまで取っちゃったのぉ?」
 涼子のわざとらしいその言葉に、村井だけでなく本城も田中もソファから立ち上がり、私のそばに近づき身を乗り出すようにして、露出した下半身に視線を集中させました。
「あ・・・あったわ・・・あった・・・プッ・・・それにしてもなぁに、これ?
ホントにオチンチンなの? 小さすぎでおできかと思っちゃったわ。アハハ・・・。」
 涼子は、私の男性自身が睾丸の摘出と女性ホルモンの影響によって、小指の第二関節ほどの長さになってしまっていることは何度も見て知っています。でも、初めて目にしたかのような驚きを示すことで、私の羞恥心をより一層高めようとしているだけなのです。
 私はあまりの屈辱に耐えきれずに、露出した下半身を両手で隠そうとしましたが、その動きは、涼子と村井にあっさりと抑えられ、はなない抵抗に終わったのでした。
「あははは・・・ホントだ。これ、チンポかよ。おできだぜ。まるで・・・。」
「それに、タマもホントになくなってるんだな。ペターっとしてるぜ。」
 私の下半身の変化を初めて知った、田中と本城は驚きの声を上げました。。


ある性転者の告白 第11章-5

 新生「奈緒美」としての自己紹介が終わると、それまでニヤついた顔で聞き役に徹していた村井がおもむろに口を開きました。
「それにしても、こんないい女になるとはなぁ。俺、本気でこいつを俺の女にしちまおうおうかなぁ・・・。アハハハ・・・」
「そ、そりゃないよ。兄貴・・・。俺だって、こいつ、彼女にしたいっすよ。なあ、聡?」
「そうっすよ。俺も、こんなに可愛いなら、男だってかまわないっすよ。それに、こいつ、自分から女になりたがってるんでしょ?なら、俺、全然、オーケーっすよ。へへヘ・・・」
 三人の男達の冗談とも本気ともとれる言葉に、涼子が割って入りました。
「何を馬鹿なこと言ってるのよ。この人、仮にも私の夫よ。男なのよ。勘違いしないでよ。ホントに・・・。」
「いやぁ、だってよ。あのオッパイといい、ケツといい、ふるいつきたくなるほどいい女だぜ。しかも、あんな格好してると尚更な・・・。ホントに、どうせなら、お前じゃなくて、こいつにしておけばよかったぜ・・・アハハハハ・・・」
 村井の言葉に、それまで笑顔を浮かべていた涼子の表情が一瞬にして曇り、やがて敵意に満ちた視線を私に向け始めたのです。そこには明らかに女の嫉妬心が鈍い光になって現れていました。
「いや、冗談だ・・・冗談に決まってるだろう?本気にすんなよ・・・。」
 涼子の顔色が変わったことを察知して、村井はいいわけがましく言いました。
 しかし、涼子の私に向ける視線は冷たいままでした。その目の奥の鈍い光には背筋が寒くなる思いがしました。

「それにしても、自分から女の子に生まれ変わりたいなんて言い出すとは思わなかったなぁ・・。」
 ソファから静かに立ち上がると、涼子は私に近づきながら口を開きました。
 口元には冷たい笑みが、そして、目には再び燃え上がった復讐心に新たな嫉妬心が加わって、冷酷な鈍い光が宿っています。
「ねえ、あなた、私から女の子になりきるための指導を受けて、女の子願望が芽生えたって言ったわよね・・・? ねぇ、それってホントなの? なんか信じられないなぁ・・ねぇ、どうなの?」
 私には、涼子の質問の意図がわかりません。そのように振る舞うように指示したのは他でもない涼子だったからです。
 いいえ、もし、本心を素直に口にすることが許されるなら、はっきりと、
『手術はだまされて受けたものだ。自分から進んで受けたなんて、そんな話は全部でたらめなんだ。今すぐにでも男に戻りたい。そして、この場から逃れ、結花と暮らしたいんだ。』
 と大声で叫びたいくらいです。
 私は黙ったまま、涼子の次の言葉を待つしかありませんでした。
「ホントはさぁ、ずっと前から、女の子願望があったんじゃないの? こうなることを期待してたんじゃない? それで、私たちが、あなたを女の子にしようとしているのを知って、うれしかったんでしょ? 違う? そうじゃなかったら、自分から手術してなんて頼むわけないもの。 ああ、そうか、だから、あんな情けないこと・・・、他の男のチンポしゃぶったり、お尻を犯されても喜んでたわけかぁ・・・それで、もっと愛されたくて、本当の女の子になりたくなっちゃったんだぁ・・・そうなんでしょ?」
「そ、そんな・・・・喜んでたなんて・・・うそ・・・無理やり・・・」
 私は思わず声を上げ、涼子を睨みつけました。
 その瞬間、涼子の目に今までに見たこともない鋭い光が走りました。
 私は涼子の質問の意図がどこにあるのか、その時はっきりとわかりました。
 涼子は、彼らの前で、質問に同意させることによって、私により一層の屈辱感を味あわせたかったのです。そうすることで、自分のやり場のない復讐心と新たに宿った嫉妬心のはけ口にしようというサディスティックな思いが沸いていたのでしょう。
 そうであるなら、私には受け答えをためらうことは許されません。もしも、彼女の気分を害したなら、男に戻れる道が完全に閉ざされるかもしれないからです。
「は、ハイ・・ホントは・・そうなんです。ずっと前から・・・女の子に・・・なりたかったんです・・・だから・・・ここで、皆さんにその願いをかなえてもらって・・・すごくうれしかったんです。それに・・・皆さんに・・か・・可愛がってもらっている内に、もっと、男の人に愛されたいって思って・・・お願いしたんです・・・手術を・・・」
 私は俯いたまま、静かに答えました。涼子の目からは強圧的な光は消え、口元に冷酷な笑みだけが残っていました。それは私の答えが、満足のいくものだった証でしょう。「ふーん、じゃ、願いが叶ったってわけね。よかったじゃない、ホントに。で、どんな気分、お望み通りのナイスバディになって、男の注目を浴びるのって? え? どんな気分なのよ?」
「ご・・・ごめんなさい・・・。」
 私は思わず、謝罪の言葉を口にしてしまったのです。私は涼子を差しおいて、村井達の関心をひきつけた事になぜか、罪の意識を感じいたのです。
 しかし、その言葉は、涼子の女としてのプライドを激しく傷つけてしまったようで、いっそう屈辱的な言葉のやり取りへと導く結果になってしまいました。
「ええ? 何で謝るのよ・・・。ああ、そうか、私をずっと騙してたから? もちろん、オカマだって知ってたら、結婚はしなかったけど、でも、まあ、そんなことは今更、どうでもいいわ。それよりさ、結花って女、あなたがそんなオカマだってこと知らないわけでしょ? どうすんのよ。結花って、もしかしてレズ?」
「ち、違います・・・普通の・・・」
 私は激しく頭を振り、打ち消しました。
「ふーん、じゃ、どうするわけ?男として愛してあげられるの?オカマのあなたに?
ああ、それとも、結花って、オナベだったり? アハハ・・・あなたが奥さんになって、結花が旦那さんになるとか? それって、おかしい・・・ハハハ」
 私はどう答えていいかわかりませんでしたが、自分の愛する結花を嘲笑するような言葉にいたたまれなくなり、思わず声を上げてしまったのです。それはリビング全体に響き渡るような声でした。 
「ゆ、結花は、普通の女性だっ・・・。ぼ・・・僕は結花を男として愛し、普通の結婚を・・・するんだっ・・・もう、これ以上、結花をバカにすると、ゆ・・・許さないぞっ・・・。」
 リビング全体に張りつめたような緊張感が走り、数秒間の沈黙が流れました。 
 おそらくその場にいた誰もが、私の口からそのような言葉が発せられることは予期していなかったのでしょう。彼らの呆然とした顔つきがそれを物語っていました。
 けれども、その真実からの訴えによって、涼子の気持ちが萎えることはありませんでした。いえ、むしろ、より一層の復讐心と嫉妬心にかき立てる結果になってしまったのです。


ある性転者の告白 第11章-4

「み・・・充様・・聡様・・・お久しぶりです。今日は・・・生まれ変わった・・奈緒美をご覧になってくださいね・・・。奈緒美ね・・・ずっと・・女・・・女の子になるためのご指導を受けていたら・・・ホントに・・・女の子に・・・なりたくなっちゃったの・・・だから、お兄様とお姉様に無理に・・・お願いして・・・・手術を・・・して・・・もらったの・・・。胸と・・・あそこの・・・。それに・・・これからも・・・もっともっとホントの女の子に近づけるように・・・体の中に・・・女性ホルモンまで・・・入れてもらったの。だから・・・もう・・・胸のパットもお尻のパットも入っていません。全部・・・全部・・・本物です・・・。」
「おい、ホントかよ?そのデカパイも本物なのかよ?」
 本城が信じられないというような口ぶりで大きな声を上げました。
 私は、あまりの恥ずかしさに顔が紅潮し、黙って頷くだけでした。
「ほら、みんな、信じられないって言ってるのよ。見せてあげなくちゃダメじゃないッ」
私は涼子の強い口調にドキッとして、広くあいたワンピースの胸元に手を当てると、さらに大きく広げて見せたのです。Dカップの豊満な双乳が、まるでボロンっと音を立てるようにこぼれ出ました。
(は、恥ずかしい・・・こ・・こんなこと・・・。)
「うおぉ、本物・・・本物だぜ・・・、なあ、ちょっとさわらせてみろよ。」
 本城は、ソファから立ち上がると、私に近づき、いきなり荒々しい手であらわになった胸を揉みしだくように触ったのです。
「おお、柔らけぇ・・・。形もきれいだしよぉ・・・それに、ほれ、乳首だって・・・」
 本城の指先が、ツンとした乳首に触れました。
「アン・・・イ・・イヤ・・・」
 私の全身に電流が走り、口元から思わず、小さな声が漏れてしまいました。
「おい、なんだ、感じるのかよ?さすがに本物は違うんだなぁ・・・。」
 本城の指の動きが早くなり、それにつれて、かすかだった電流が大きくなって、全身を駆け抜けていきます。
「アアン・・・だ・・・だめ・・・や・・・やめて・・お願い・・・。」
 私は本城の手を避けようと体をよじらせましたが、いつの間にか、背後に来ていた田中の両腕によって、その動きが止められてしまいました。しかも、本城によって弄ばれていた胸の膨らみに、その田中の手も容赦なく伸びてきたのです。
(だめ・・・絶対に感じては・・・だめ・・。我慢・・・我慢しなくちゃ・・・ああ、で・・・でも・・・アア・・。)
 二人の手の動きを必死になって理性で抑えようと努めましたが、まるで本能からわき上がるような性感の高まりを抑えることはできません。
「アアン・・・か・・感じるぅ・・・だ・・・だめ・・・これ以上されると・・・ダメ・・・アアンン・・・」
 私の発する声が、切なげなあえぎ声に変わっていきました。もはや自分の意志ではどうにもならなくなってきていたのです。
その時です。涼子がソファから立ち上がり、本城と田中に向かって言いました。
「わかったでしょ? 二人とも・・・。今日は、それくらいにしてあげなさいよ。退院して間もないんだから・・・。それにまだご挨拶も終わってないし・・」
 本城と田中は私の胸から名残惜しそうに手を離すと、再び、ソファにどっかりと腰を下ろしました。
「さあ、続けなさい。ご挨拶・・・。」
 私は、まだ残る性感の高まりと戦いながらも、ゆっくりと口を開きました。
「お・・おわかりいただけましたか? 奈緒美のこのオッパイが・・・本物だってこと・・・。それに、お尻だって、こんなに大きくしてもらったの・・・。」
 私はそう言うと、くるっと後ろを振り向き、少し前屈みになって、お尻を突き出して見せたのです。
「おお、ホントにいいケツしてるなぁ・・。たまんねぇなぁ・・」
 田中は、目を大きく見開きながら言いました。
「ちなみに、上から、88のDカップ、60、86っていうのが今のサイズよ。理想的でしょ? ね?」
 涼子が、退院前に病院で計測した私のスリーサイズを告げました。
 私はなぜか、そのことにとても激しい羞恥心を覚えました。考えてみると、自分のスリーサイズを伝えるなどという経験は今までに一度もなかったからです。そのような紹介を受けること自体、もはや自分が他人にからは女性としてしか認識されていない証のような気がしたのです。
「奈緒美、これからも、どんどん本物の女の子になるように努力しますから・・・皆さんも、今まで以上に・・・奈緒美のこと・・・可愛がってくださいね・・・。」
 私は、全身から火のでるような羞恥心におそわれながらも、一通りの挨拶を終えました。その視線の先には、満足そうに微笑む涼子と村井の顔が見えました。


ある性転者の告白 第11章-3

 その後、時折涼子からの指示を受けながら、自らの手で、その日の派手なワンピースに合う、かなり濃いめのメイクを施し、肩までのびるストレートロングのヘアウィッグをつけ、最後に光沢のある黒いストッキングに包まれた足先に白いミュールを通しました。
「うーん、完璧・・・、ホントにセクシーな女の子になったわ。うん。ホントに・・・。」
 涼子は、支度を終えた私の全身を眺め回すと、改めて感心した口調で言いました。
「あ、そうそう。素敵な女の子になった奈緒美ちゃんに、お祝いのプレゼントがあるのよ。」
 涼子は、バックから小さな小箱を出すと、その中からゴールドに輝くリング状のものを取り出しました。そして、私のストレートロングのウィッグを掻き上げると、耳に近づけたのです。
「うん、これなら似合いそうね・・・・。うん。」
 涼子は納得したように言うと、リングの先にある細い針のような部分を私の耳たぶに刺したのです。
「イ・・イたっ・・・」
 耳たぶから、チクッとする痛みが走り思わず、小さな声を上げました。
「うーん、やっぱり、ピアスの穴を開けてもらって、正解ね・・・。イヤリングよりオシャレだもの。それに、これ、奈緒美ちゃんにぴったり。よく似合ってるわ。」
 姿見に映る私の両耳に大きなゴールドのリングが揺れています。そんな派手なピアスを付けた姿は、印象もがらりと華やかに変わって見えます。

 準備を全て整えると、涼子と共に部屋を出ました。
「いいわね、これから、改めて、生まれ変わった奈緒美ちゃんをみんなに紹介するんだから、さっき指示した通りにしなくちゃだめよ。そうしないと、奈緒美ちゃんのタマタマ、処分してもらうからね。そうしたら、男には二度と戻れないんだから、わかってるわね?」
 リビングに向かう長い廊下を歩いている時、涼子は強い口調で念を押しました。
 準備が終わって、見事なまでに挑発的で悩殺的な女性に姿を変えた全身を、ミラー越しに見て、深いため息をつく私に涼子は追いうちをかけるように冷酷な指示をしたのです。
 それは、詳細を知らされていない本城と田中には、私が長期間にわたる女性化指導のせいで、心の中に女性願望が目覚め、自らの意志で豊胸手術や去勢手術を受けたと言ってあるから、彼らの前ではそのように演じるようにという指示でした。
 もちろん、そんなことは全くのデタラメですが、涼子のこの指示に逆らうことはできません。何しろ、私が男に戻ることができるかどうか決め手は彼らの手に握られているのですから。私は、ただ黙って頷きくことしかできませんでした。

「こ・・・こりゃ、すげぇや・・・ホントにいい女だぁ・・。」
 リビングに入った私を一目見るなり、村井が感嘆の声を上げました。
「ホ、ホントに・・・すげぇ・・・。」
「ああ、これが、男だなんてなぁ・・・驚きだぜ、全く・・・。」
 村井に続いて、田中と本城も口々に驚きの声を上げました。
「じゃ、改めて紹介するわね。生まれ変わった奈緒美ちゃんでーす。どう?色っぽいでしょ?女の私が見ても、そう思うんだから・・・。男から見たら、たまんないって感じでしょ? フフフ・・・。さあ、奈緒美ちゃん、自己紹介なさい。」
 涼子は私の背中を軽く押し、それから村井たちの座るソファの端に腰を降ろしました。
 逃げ出したくなるほどの羞恥心の中で、しばらく黙ってうつむいていた私に、すべてを知っている村井と涼子がにらみつけるような視線を送ってきます。
「さあ、どうしたの? 早くしなさい」
 涼子は、口元は笑っていますが、キッとしたキツイ目の奥の光は有無を言わせない強制力がありました。
 私は、その目の奥に、(言うことを聞かなければ、男には戻してあげないわよ。)という無言の圧力を感じ取り、とうとう重い口を開いたのです。


ある性転者の告白 第11章-2

 「いつまで、かかってるのっ・・・? 遅いじゃ・・・」
 私が姿見の前で呆然と立ちつくしていた時、いきなりドアが開き、涼子が厳しい表情を浮かべながら、入ってきました。けれども、その表情も私の姿を視界に捉えると、みるみる柔らかいものに変わっていきました。
「お、驚いたぁ・・・すごいじゃない・・・ホント、女の目から見ても、うっとりするくらいのスタイル・・・。それに、その服もセクシーじゃない・・・」
 涼子は、そばに近寄り、姿見に映る私の全身をなめ回すような視線で眺めたのです。
「で・・・でも・・・これ・・・小さすぎて・・・。」
 私は鏡越しに、涼子を訴えるような目で見つめながら、ワンピースの引き上げと引き下げを繰り返して見せたのです。 
「あら、そんなことないわよ。だって、こういう服着るときは、ノーブラに決まってるもの。」
 涼子はそう言うと、いきなりワンピースの中に手を入れ、ブラジャーの前ホックとストラップを外し、するっと抜き去ったのです。
「ほら、こうすれば、全然気にならないでしょ?ね?」
「で・・・でも・・・これじゃ・・・・は・・・恥ずかしい・・・」
 確かにブラジャーの露出はなくなりました。しかし、フィット感のある素材が、大きくて丸みのある胸の形をはっきりと示し、広く開いた胸元からは、豊かな双乳の作る、深い谷間を晒しているのです。しかも、ツンと突き出た乳首が服の上からもその突出をを示しています。
「やっぱり、本物はいいわよねぇ・・・。ほら、乳首まで・・・、ねぇ、ちょっと触らせてみて・・・いいでしょ? 女同士なんだから・・・フフフ・・・」
 涼子は、私の胸に両手を伸ばして、全体を包むようにしたかと思うと、ゆっくりとその感触を確かめるようになで回し、さらには下から全体を持ち上げてみたり、指先でポンポンと弾ませるように弄びました。
「イ・・・イヤ・・・恥ずかしい・・・です・・・・」
 男の身でありながら、妻の手で乳房を弄ばれるというあまりに恥辱的な行為に、思わず、身をよじりました。
 しかし、そんな私の反応が、涼子のサディスティックな嗜好を刺激したのか、手を離すどころか、よりいっそう力を込めて、弄び続けるのでした。
「ねぇ? どんな感じ? 男のくせに巨乳を揉まれるのって・・・フフフ・・・」
「は・・・恥ずかしい・・・恥ずかしいです・・・りょ・・・涼・・・い、いえ、お・・お姉様・・・止めて・・・お願い・・・」
 自分の身体が元の男の姿に戻るまでは、一切の抵抗をしないと心に誓っていた私は、涼子の機嫌を損ねないように言葉を選びながら哀願しました。
「ウソ! ホントは恥ずかしいんじゃなくて、感じちゃうんじゃない? ホントの女の子みたいに・・・。」
「そ、そんなこと・・・そんなことないです。だって、ホントはお・・男なんですから・・・」
 それは本心からの言葉でした。いくら本物そっくりに作った胸の膨らみとは言え、そこを刺激されて、女性としての性感を覚えるということなどあるはずがないと思っていたからです。
 でも、それは間違いでした。私の身体の中にはずっと高濃度の女性ホルモンが流れていて、その効果による内部からの女性化がどんどん進行していることを忘れていたのです。
「あら、そうかしら?そうは、見えないけど・・・じゃ、これはどう?これでも、感じない?」
 涼子は、服の上からツンと突き出ている乳首を、その指先で弄び始めたのです。
 その瞬間、全身を未知の感覚が駆け抜けていきました。
「アン・・イヤ・・・アアン・・・。」
 私は思わず、小さな喘ぎ声を出しました。
 涼子の指先は、小さな振動を繰り返しながら乳首を刺激し続けます。その動きに反応するかのように、全身に電流のようなゾクッとする性感の高まりが走りぬけていきました。
「アア・・・・、ダメ・・・、お・・・お願い・・・ヤメテ・・・」
「フフフ・・・、やっぱり感じてるんじゃない。ダメよ、ウソ言っちゃ・・・。女の子は胸が感じて当たり前なのよ。あ、ごめんなさい。あなたホントは男だったのよね。でも、男ならこんなに乳首が敏感なわけないし・・・だから、もうホントの女の子になっちゃったってわけね アハハハ・・・」
 涼子は大きな笑い声を上げると、弄んでいた指先をさっと離しました。
「さ、早く支度しなさい。みんな待ってるんだから・・・。」  
 私は涼子に促されるまま、ドレッサーの前に座りました。


ある性転者の告白 第11章-1

 約二週間ぶりの屋敷は、なぜか以前と違った印象を受けました。いえ、どこと言って変わったわけではありません。変わったのは屋敷の方ではなく、庭から屋敷を見上げている私の方だったのですが・・・。
 私は、歩を進めるたびにプルンプルンと柔らかな揺れを示す、豊かな双乳の感触に、相変わらずの違和感を覚えながら、屋敷の玄関へと足を踏み入れました。
 その日は、まっすぐに部屋に入ると、一歩も外には出ませんでした。夜になり、あの希望のカレンダーに入院中の約二週間分の×印をつけ、約束までの残りの日数を数えました。
(もう少し・・・、もう少しだ・・・。あと35日・・・。身体を元に戻してもらうためにも、そして晴れて結花と再会するためにも、耐え抜かなくては・・・。そのためには、村井たちの機嫌を損ねないように・・・。がんばれ・・・がんばるんだ。)
 私は、そんな言葉を何度も独り言のように呟くと、自分を勇気づけたのでした。

 翌朝、目覚めた私は、いつものようにドアの下に置かれたメモを取りあげると、支度を始めました。
 その日の指示は、ショッキングピンクのソフトボディコンのワンピースで、その昔、ディスコなどでいわゆるイケイケギャルと呼ばれる女の子たちが身につけていたような、派手なデザインの服でした。
 私は深く大きなため息を一つすると、意を決したように、ドレッサーから指示されたワンピースを取り出し、専用のランジェリーボックスから、同系色のフロントホックのブラジャーとハイレグのパンティを取り出しました。
 男性として筋肉をすっかり失ってほっそりとした、そしてむだ毛の全く生えていないなめらかな脚先から、パンティの持つシルクのスルっとした滑るような感触が、少しずつ上に移動していきます。
 そして最後にグッとウエストに向かって引き上げた時、股間にはほとんど異物感がなく、しっかりとしたフィット感だけが伝わってきました。私は改めて、睾丸を失い、矮小化したペニスしか持っていない自分の姿を認識したのです。
 いえ、それは感触だけではありません。パンティを身につけた姿を鏡に映し出してみると、股間にはほとんど盛り上がりがなく、代わりに、ふくよかで丸い大きめの線を描くヒップラインが際だっています。
 次に同系色のブラジャーを手にとると、それまでの癖でシリコンパットに手を伸ばそうとしました。けれども、パットはどこにも見つかりません。
 そうです。シリコンパットは涼子たちによって廃棄されたのでしょう。なぜって、私にはそんな擬似的な巨乳を作るような道具はもはや不要になっていたからです。両の胸には、大きくふくよかなDカップの双乳が、呼吸にあわせて上下に波打っているのです。
 私は、厳然たる事実に、涙が溢れてきましたが、もちろんその場を逃れることなどできないことはわかっています。
 私は涙を拭って、ブラジャーの肩ひもに腕を通し、豊満な膨らみの全てをカップの中に収めると、少しずつ位置を調節しながら、フロントホックを留めました。
 シリコンパットによらない、自然な胸の膨らみは、カップサイズと寸分の狂いもなく、フィットしています。その感触は二つの豊かな膨らみが、もう簡単には取り外すこのできない身体の一部であることを実感させるものでした。
 私は、ブラ越しの感触を確かめるように、カップ全体を手のひらでさすってみました。そして指先が、ツンと突き出した女性特有の乳首の先端に触れた瞬間、全身に生まれた初めて経験する、ゾクッとするような感覚を覚えたのです。
(な・・・何?こ・・・この感覚・・・これが・・もしかしたら・・・女の感覚?)
 慌てて手を引っ込めましたが、もう一度、未知の感覚を確かめようと、今度は強めに指先をあててみました。
「アンッ・・・」
 ゾクッとする感覚が、再び全身を駆け抜け、思わず口元からかすかな声がこぼれました。
 私は背筋に恐怖を感じ、指を離しました。それは、男としての感覚を失いたくないという無意識のうちの本能のなせるわざだったのかもしれません。
 
 姿見に映し出された私のランジェリー姿は、自分で言うのもおかしいのですが、完璧なまでの美しい女性的な曲線を描いています。
 豊かなバストとふくよかなヒップラインを強調するようにきゅっとくびれたウエストラインは、もうコルセットも必要なくなったことを実感させてくれます。さらに女性ホルモンの影響で透き通るように白く木理の細かくなった肌と、女性的な顔立ちとが、女らしいランジェリー姿にマッチしていて全く違和感がありません。
 いいえ、もちろん、そんなことを喜んでいたわけではありません。
 身体中に常時流れる高密度の女性ホルモンによって、これからもますます女性化が進むのだと思うと、本当に元の身体に戻ることなどできるのだろうかという、言いようもない不安な思いだけが強まっていきました。
 しかし、私には彼らの言葉を信じるより他にすべはないのです。
 私は全ての邪念を振り払うかのように、一度大きくかぶりを振ると、ショッキングピンクのワンピースを手に取り、両手で広げてみました。素材は、ちょっと大きめのタオルのようで、広げてみなければとてもワンピースとは思えません。けれども、以前にも同様の服を着せられたことのあったので、それが優れた伸縮性を持ち、172センチと女性にしてはかなり長身の私の身体をも包み込んでくれることを知っていましたから、大して不思議な感じは持ちませんでした。
 私は、その柔らかなタオルのような布きれを丸めると、脚から上に引き上げていきました。ファスナーの付いていないボディコンのワンピースは、水着のように、そういう着方をするものだということを涼子から教えられていたからです。
 伸縮性のある素材が身体にピタッと張り付くように、引き上がっていきます。ところが、お尻のあたりを通そうとすると、かなり窮屈でなかなか上がってくれないのです。以前にそのような服を着せられた時には、ヒップパットを着用していたのに、そんなことはありませんでした。それは、自分のヒップサイズが、パットによって作られたサイズを上回ってしまったことの証だったのです。
 私は悲しみを振り払うかのように、腕に力を込め、ワンピースを胸の高さまで一気に引き上げると、袖に腕を通しました。ぎゅうっと締め付けられるような感触が全身から伝わってきます。
 私は頭を上げ、視線を目の前の姿見に移しました。
 ショッキングピンクの布きれが、私のDカップのブラジャーの辺りに全て丸まったように集まっていて、おヘソから下の部分は完全に露出状態でした。セクシーなハイレグのパンティも露わになったままです。
 私は力を込めて引き上げたせいだと思って、裾を持つと、今度はそれを下に引き下げてみました。と、その瞬間、私は、目の前に映る自分の姿に愕然とし、白かった頬に一気に赤みが差していくのがわかりました。
「な、何・・・? こ・・・この服・・・」
 それは胸元が大きくカットされていて、そのままではフルカップのブラジャーの上部が露出しているのです。またウエスト周りは、かなり薄い透過性のシースルーになっていて、一見すると素肌が露出しているに見えてしまいます。しかも、スカート部分の丈は、股下数センチほどの超マイクロミニで、女性ホルモンの働きによってもたらされた、うっすらと脂肪がのった太股と、それに続く細くしなやかな二本の脚を露出しています。
 私はとっさに、露出しているブラジャーを隠そうと、全体を引き上げてみました。しかし、そうすると裾はさらに持ち上がり、丸みを帯びたヒップを覆うパンティが顔を覗かせてしまうのです。


ある性転者の告白 第10章

 悪夢のような手術から約二週間後、ようやく退院の許可が出ました。
ベッドから起きあがって、まず最初に感じたのは、自分の身体の重みでした。いいえ、決して体重が増えたのではありません。むしろ体重は、入院前に比べ、五キロも減り、
五十キロを切っていました。二週間もの間、ずっとベッドに横になっていたために全身の筋力が衰え、細く弱々しい脚が、減少した体重さえ重いと感じ取ってしまったからだと思います。そして、その後、今に至るまで、細くしなやかになった手脚に男性として生きていた時代の筋肉が戻ることはありませんでした。体内に流れる大量の女性ホルモンが、その形成を決して許すことはありませんでした。
 私は自らの身体の変化を実感しなければと思い、ふらつく足取りで立ち上がりました。と、その時、今までに経験したこともない感覚に襲われたのです。それは、私の両肩にかかる胸の重みでした。Dカップの豊満な膨らみが、私の動きに呼応するように、上下左右に揺れ、その揺れが肩にまで伝わってくるのです。この「胸が揺れるという感触」は、それまで、屋敷の中で毎日身に着けていたシリコンパットでも感じてはいましたが、それはあくまで、「胸のあたりが揺れている」という感覚であって、「胸そのものが揺れている」という感覚とは全く異なっていました。つまり、一体感がまるで違うのです。 パジャマのボタンを二つ外し、視線を落としてみると、そこには、くっきりとした双乳の深い谷間が見えます。
 私は恐る恐る手を伸ばし、その双乳に触れてみました。ポワンとした柔らかな感触が指先に伝わると同時に、胸の方からも、指先の接触を感じたのです。そんなこと、神経が通っているのだから当たり前のことなのですが、その時の私は、その柔らかな肉のかたまりが自分の肉体の一部になっているという現実を思い知らされ、呆然と力が抜けていくのがわかりました。
 
 手術によってもたらされた身体の変化は胸だけに止まりません。
 包帯が外された後、初めて一人でトイレに行った時に経験した出来事がもたらした衝撃は、今でもはっきり覚えています。
 それまでベッドから一歩も出ずに、用を足すのも看護士の手を借りていた私は、自分のその部分にそれほどまでの変化が生じているとは実感していませんでした。
 長期に渡る女性化調教のせいで、私の足は自然と女子トイレへと向かいました。そしてトイレの中に入ろうとドアを開けた時、ちょうど入れ違いに30歳くらいの一人の女性が入れ違いにトイレから出てきたのです。私は、一瞬ハッとしました。なぜなら、その時の私は、全くのノーメイクだったからです。男が病院の女子トイレに入るのを目撃したその女性が大声を上げるのではと思いました。でも意外にも、女性は私の顔を見るなり、にっこり微笑み、小さく会釈までしたのです。
 パジャマ越しにでもわかる胸の膨らみのせいなのでしょうか。それとも、長期間にわたる女性ホルモンの投与によって作られた、ふくよかなヒップラインのせいなのでしょうか。いえ、もしかしたら、やはり女性ホルモンの投与により、女性的になったフェイスラインによって、たとえノーメイクでも男性としての特色をすっかり消し去っていたのかもしれません。
 いずれにせよ、その時の私は他の人から見れば、女性そのものであり、女子トイレに堂々と入っても不自然ではない存在になっているのは明らかでした。私は大騒ぎにならなかったことにホッとはしたものの、同時に、自らに突きつけられた現実を改めて思いしらされたのでした。
 次に奥の個室のドアを開け、中に入ると、そのままパジャマのズボンを膝までおろしました。尿意がかなり迫っていたので、立ったまま用を足そうと思ったからです。私は女性用のショーツを身につけていたにも関わらす、その脇から自分のペニスを引き出そうと手を入れました。
 ところが、手に伝わってきた感触は、ペニスと呼ぶにはあまりにも頼りなく、小さく細い、まるで大きめの「デキモノ」に触れたような感触だったのです。女性用の伸縮性の高いショーツから小さな「デキモノ」を引っ張り出すことはかなり困難でした。私は、そのまま漏らしてしまいそうになり、あわててショーツを膝まで下げると、便座に腰掛け用を足しました。
 上から見下ろすと、「デキモノ」の先端からは、一本の筋となって尿が出ているのがわかります。つまり、その「デキモノ」こそが、私の変わり果ててペニスそのものだったのです。よく見れば、それは小指の第2関節ほどの長さしかありません。
 そして、尿の解放が終わった後、「デキモノ」を裏返し、その後ろを見ると、あったはずの二つの睾丸の丸いふくらみは姿を消し、ただ陰嚢の皮膚がだぶついているだけなのです。しかも、もっとよく確認しようと、目を近づけようとすると、今度は豊かな胸の膨らみが視界を遮るのです。
(ああ・・・とうとう・・・こんな身体になってしまった・・・。あああ・・・。)
 私は、その個室の中で嗚咽しました。屈辱と後悔と情けなさといった、言葉にできない多くの感情が一度に絡まり合って、心に迫ってくるのでした。
(で・・・でも、一生このまま元に戻れない訳じゃないんだ。残り、たった一月・・・たった一月辛抱すれば、元に戻れるんだから・・・。)
私は彼らの言葉を信じ、そう自分に言い聞かせると、かすかな勇気と希望が沸いてくるのを感じたのです。


ある性転者の告白 第9章-3

「な・・・なんてことを・・・。お・・・お前たち、僕を、だましたんだな・・・?」
 私は、その時になって初めて、彼らの言動がすべて私を陥れるための邪悪な罠だったことに気づかされたのでした。
 涼子が長期間に渡り、精神安定剤入りの痛み止めと称して、私に飲ませていたのは、高濃度の女性ホルモンを含有するもので、そのために、私の体が女性化し始め、知り合いの医者と組んで偽りの病名をでっち上げ、さらに死への恐怖心をあおりながら、まるで私が、自らの意志で進んで手術を受けるかのような状況を作り上げたのです。
 しかも、豊胸手術の前に、錠剤による長期間のホルモン服用を行ったのは、わずかながらでも膨らんだ段階で行った方が自然で女性的な胸を作れるからという医者からのアドバイスを受けた結果であり、彼らの企みが、周到に計画されたものであったことの証でもあります。
(ああ、僕は・・・僕はもう・・・男ではなくなってしまった・・・)
 私は、彼らに対する抑えきれない怒りと、後悔の為に、全身の震えが止まりませんでした。しかも、そうしている間も、体内には、高濃度・高密度の女性ホルモンが全身に流れ、女性化を促しているのです。さらにそれを抑えるべき男性ホルモンは、睾丸を摘出したことで生成されなくなってしまっています。つまり、私は、もはや男として機能を失い、限りなく本物の女性に近づくプロセスを歩み始めているのです。
 そんな絶望感から、私は、抑えきれない激情から、契約のことなどすっかり頭から消え去っていて、使い慣れた男言葉で堂々と彼らに向かって罵詈雑言を浴びせかけました。さらには、近くにあったコップをつかみ、思い切って村井の方に向かって投げつけました。コップはバリンという金属音を残し、ドアノブに当たると、小さな、ガラス片になって粉々に砕け散りました。
 その瞬間、村井の顔が鬼のような形相に変わり、ベッドに近づいたかと思うと、私の頬を思い切り強く殴りつけたのです。
「いい加減にしろ。お前が同意したんじゃないか。俺たちはお前にどうするか、尋ねたんだぜ。」
「そ・・そんな・・・裏に手術の内容が書いてあるなんて、一言も言わなかったじゃないか。全部、お前たちの罠だったんだ。」
「裏を見て、確かめなかったのは、お前のせいだろうが・・・。でも、まあな、俺たちも鬼じゃねえよ。」
 村井はそう言うと、優しげな表情に戻り、諭すような口調で言いました。
「お前の胸はシリコン入れただけだからな、いつだって取り出せるんだ。それに、体の中に入れたホルモンだって、いつでも取り出せる。」
「で、でも、去勢手術は・・・もう、絶対にやり直せないじゃないかっ・・・。」
「それだって、お前の睾丸は、ちゃんと保管してあるから安心しろ。契約が終われば、お前は自由の身だ。そうすれば、ちゃんと元に戻してやるんだ。嘘じゃねぇ・・・。」
「・・・・・・・」
 私は、その言葉に耳を疑い、無言で涼子の方に視線を送りました。涼子はそれに応えるように大きく頷いてみせました。
「ほ、ホントか?本当に元に戻れるのか?」
 もちろん、村井の言葉はにわかかには信じがたい内容です。ん。しかし、藁にもすがりたい心境であった私には、その言葉に期待を寄せるしかなかったのです。
「ああ、本当だとも・・・。なあ、涼子?」
「本当よ。私だって、契約が終わってまで、あなたを女のままにしておきたいって思ってるわけじゃないもの。契約が終われば、男に戻してあげるから、結花って女と一緒になったらいいじゃない。私たちは、この契約の間だけ、あなたにできる限り、本物の女に近づいていてもらいたいって思っただけよ・・・。だから、その証拠にそこは残しておいてあげたじゃない?」
 涼子はそう言うと、私の下半身を指さしたのでした。
 確かにそうです。もしも私に復讐を果たすつもりなら、この手術でペニスまで除去し、完全な女に作り替えてしまう方が、よかったはずなのです。と言うことは、彼らの言っている、元に戻すという話も、もしかしたら本心なのかもしれない。私はわずかばかり残った、理性の欠片を総動員して、できる限り心を落ち着けて考えました。
 
 懸命な皆さんなら、摘出した睾丸を元に戻すなんて話が作り話であることは、おわかりでしょう。しかし、愚かな私は、後に運命の瞬間を迎えた時に、初めてそのことに気づくことになるのです。ここでは、彼らが、私へのあまりにも陰湿な計画を実施するために、あえて、男としての最後の証であるペニスを残したということだけをお伝えしておきます。

「しかし、もし、お前が俺たちの指示に少しでも反抗的な態度をとったら、お前のキン○○は、処分してやるからな。そうなれば、たとえどんな手術をしても、二度と男には戻れないんだからな。わかったな。」
 村井は、わずかながらも希望を持ちかけているのを、私の表情から読みとったのでしょう。ゆっくりと諭すような口調で言いました。
 私には、かすかだろうと、すがれる希望の灯は他にありません。心は決まりました。
「わかりました。男に・・・男に戻してもらえるんなら、どんなことでもします。二度と反抗的な態度は・・・とりません。ですから、どうか、処分するのだけは・・・・それだけは、お止めください・・・。」
 私は、卑屈にも、その憎むべき行為を指示した村井に向かって哀願したのです。それは、まるで、子犬が主人にすがりつくような屈辱的な姿でした。


ある性転者の告白 第9章-2

 私の意識が再び戻るまでに、一体どのくらいの時が経ったでしょうか。
 ただ意識が戻って、最初に気づいたのは、両足がそれぞれベッドの脚に縛りつけられていることでした。
 私は、そんな逃げ出すことのできない状態で、施された手術の全容を告げられたのでした。
 小島によって行われた手術は、男である私の胸に、豊満なDカップの乳房を与えただけの生やさしいものではありませんでした。(それだけでも、十分衝撃的なものではありましたが。)
 手術後の痛みが下半身からも生じていることに気づいて、私は背筋が凍る程の恐怖に震えながらも、男であることの証があるべき所に、自由になる右手を、恐る恐る伸ばしてみました。
「あ、ある、あった。」
 力の抜けるほどの安堵感に包まれました。包帯ごしではありましたが、大量の女性ホルモンの服用によって小さくなったとはいえ、男である証・・・ペニスの感触が確実に伝わってきたのです。
 しかし、さらに指先を後方に這わせてみると、陰嚢の部分にあったはずの睾丸の丸い膨らみが、まったく感じられません。平面的で、ペタッと皮膚が付着している感触しかありません。
「い・・・一体、な・・・何をしたんだ・・・?お前たちっ・・・。」
 私は、病室中に響き渡るような、大声で叫びました。
 涼子はフッと冷たい笑いを浮かべて、手にしていた紙切れを差し出すのです。
「だって、あなたがサインしたんでしょ・・・? この同意書に・・・。ねえ、村井ちゃん?」
 涼子の問いかけに、村井も黙って頷きました。二人の表情には勝ち誇ったような会心の笑みが浮かんでいました。
 私は、涼子から渡された同意書、つまり、私がサインをしてしまった手術同意書に目を通しました。確かに表側には、あの時、確認した文面と、その手術を同意するためのサインしか書かれていません。しかし、裏返して見るとサインをした時にはその存在すら気づかなかった内容の文面が書かれていたのです。

『患者、高野直樹は、以下の手術を受けることを同意いたします。
 1,性同一性症治療のための睾丸摘出及び豊胸手術
 2,継続的なホルモン治療のための高濃度女性ホルモンの体内埋め込み手術
 3,付属して、ピアス用の穴開け施術 』




ある性転者の告白 第9章-1

 朦朧とした意識の中で目覚めたのは、殺風景な病室のベッドの上でした。
 私の不完全な意識は、かすかな記憶の糸を辿っていました。
(そうだ、僕は、手術を受けたんだ。身体の女性化を止め、完全に元の状態に戻すための・・・・。そうだ、医者は成功の確率は五十%だと言っていた。と言うことは、こうして意識があると言うことは・・・そうか、成功したんだ。手術は成功したんだ。やった・・・。よかった・・・助かったんだ・・・。)
 私は心の中で叫びつづけました。両方の瞳からは、命が救われた喜びに熱い涙が溢れてくるのがわかりました。
「あ、気づいたのね?よかったわね・・・手術は成功ですって。」
 私の意識が戻ったことに気づき、涼子が優しげな口調で話しかけてきました。
 私は、その言葉に応えるように、ベッドから起きあがろうとしましたが、その瞬間、ズキンという鈍い痛みが全身に走りました。
「い、痛っ・・・、痛いっ・・・。」
「あらあら、まだ起きちゃだめよ。大きな手術だったんだから・・・。」
涼子のいたわるような言葉に、私は小さく頷くと、
「手、手術はうまくいったんだよね?僕は助かるんだよね?」
と、思わず、忘れかけていた男の口調で尋ねました。
 私は一瞬ハッとしました。村井がこちらに視線を送っているのに気づいたからです。また脅されるのではと思い、たじろぎましたが、村井の言葉は意外にも優しげなものでした。
「ああ、成功だ。完全に治ったそうだ。」
 私は、『完全に治った』というその言葉を聞き、身体の力が抜けるほどの安堵感を覚えました。同時に、さすがの村井でも手術後の人間になら、優しさを見せることができる。つまり、彼にも良心のかけらくらいは残っているんだということを知り、私の安堵感は一層増したのです。

 しかし、そんな安堵感は、一瞬にして消え去りました。
 次に涼子の口から発せられた言葉は私の心を奈落の底に突き落として余りあるものだったのです。
「それにしても、こんな手術に同意するなんて、あなたも、すっかり変わったわね。それとも、みんなに可愛がられて、男に戻る気がなくなっちゃったのかしら・・・?ね?村井ちゃん?」
「ああ、そうかもな。『一生、奈緒美ちゃんでいたいの』・・・なんてな。アハハハ・・・。」
 私には二人の会話の意味がまったく理解できませんでした。しかし、何か邪悪な企みが実行されたことだけは、その雰囲気からわかります。私は、体中に走る鈍い痛みに抗いながら、横になったまま両手を伸ばすと、あの思春期の少女のような膨らみを示していた胸に触れてみました。
「こ、こんな、こんなことって・・・」
 その瞬間、あまりの衝撃に心臓が止まりそうになりました。
 あの思春期の少女のような膨らみはすっかり姿を変えていました。いえ、なくなっていたのではありません。それは、より大きな、いえ、豊満な乳房に姿を変えていたのです。しかも、その先端には、女性特有のツンと突き出た乳首と、それを取り囲むように丸い乳輪さえ示しています。
「あああ・・・、なん・・・なんてこと・・・」
 あまりの衝撃に、私の口から発せられたのは、言葉にならないうめき声だけでした。
「フフフ・・・、どう?Dカップのバスト・・・気に入った?私も奈緒美ちゃんが寝てる間に触ってみたけど、すごいじゃない?本物そっくり・・・。これなら、もっともっとみんなに可愛がってもらえるわよ。よかったわねぇ・・・。フフフフ・・・。」
「い、いやだ・・・も、戻してくれっ・・・お、お願いだ・・・元に戻してくれ・・・」
 私はありったけの声を振り絞って叫び、両手足をこれでもかとバタつかせ、ベッドから飛び起きようとしました。しかし、その瞬間、全身を貫く耐えられないほどの激痛に意識を失ってしまったのです。


ある性転者の告白 第8章-3

 そこは、町はずれにのある古びた個人病院でした。
 玄関に入るなり、村井は受付に断ることもせず、ずかずかと廊下を進むと、診察室と書かれた部屋に入っていきました。受付にいた中年の看護婦らしき女性も、そんな村井を止めません。私はすこし不思議に思いましたが、それが許されるほどの知り合いなのだろうと、大して気にも留めませんでした。
「ここはね、村井ちゃんの知り合いの病院なの。腕は確かだって。だから、奈緒美ちゃんも安心しなさい。」
 涼子は私を安心させようと、落ち着いた口調で説明しました。
 しばらくして、診察室に呼ばれた私を白衣を着た医師らしき中年の男が招き入れました。その隣には、村井が無言のまま、立っていました。
 男は、自らを『小島』と名乗り、すぐ診察を始めるから、服を脱いで横になるよう指示しました。私は心の中で、できる限り不安を打ち消しながら、ゆっくりと服を脱ぐと、指示された診察台に横になりました。
「ほほぅ・・・。こ・・・これは・・・。」
 小島は、全裸の私をなめ回すような視線を送ると、一言つぶやいて後はただ黙り込んでしまいました。
 私は、その視線にどことなくいやらしい雰囲気を感じ取り、左右の腕で、小指ほどに小さくなってしまった男性自身と、思春期の少女のような膨らみをみせている胸を隠しました。約二ヶ月もの間、女性として過ごしてきたことで自然にそんな恥じらいの仕草が出るようになっていたのかもしれません。
 小島は、その手を強く押しのけ、無言のまま一通りの診察を続けると、なにやらカルテらしきものにペンを走らせました。
「これは、性同一性障害の一種ですな。但し、ホルモンのアンバランスにより、このまま、放置しておくと、心臓に負担がかかり、やがて生命そのものに危険が及ぶでしょう。」
 今思えば、小島の説明には、やや芝居がかったものがあり、もしも、その時の私に冷静な判断力が残っていたら、目の前の男が、村井たちとグルになって自分をだましていることに気づいたかもしれません。けれども、女性ホルモンの服用にすら気づいていない私には、それ以上の疑いの気持ちはありませんでした。自らの身体の変化を止めるために、目の前の医師の言うことを信じるしかなかったのです。
「せ・・生命の・・・危険? つ・・つまり、死ぬってことですか?」
 私は、小島の目を見つめながら、真剣な顔つきで尋ねました。
 もし、ここで死んでしまうことにでもなったら、これまで約二ヶ月もの間、屈辱に耐えてきたことも無駄になってしまう。もしかしたら、いくら脅迫されたとは言え、このような立場になることを選択した自分に罰が当たってしまったのかもしれないという思いさえ沸いてきました。しかし、だからと言って、このまま死を受け入れることはできません。なぜなら、それは愛する結花との永遠の決別を意味しているからです。私の脳裏には、魅力的な微笑みを浮かべている結花の面影がはっきりと浮かんできました。
「ど、どうしたら・・・治るんでしょうか?」
 私は、うわずった声で、小島の目を凝視しながら尋ねました。
「いや、これは、手術するより他はないですな。しかし、普通の手術ではないので・・・。」
 小島の言葉は、私の心に、より一層の不安をもたらしました。
「先生、それは・・・どんな手術なんですか?」
 私は、できる限り冷静に尋ねました。
「いや、要は、一方のホルモンの活動を抑えてやればいいだけなんだが・・・。なかなか、難しい手術でなぁ。」
「そ、それをすれば・・・・手術を受ければ・・・治るんですか?」
 私の叫ぶような質問に、小島は、うなずきながら、
「ああ、成功すれば、完全に治る。ただ、難しい手術だからな。成功の確率は五十%だが・・・。」
「五,五十パーセント・・・」
 私は、思わず小島の口から出た数字を繰り返しました。
 つまり、成功するか失敗するか、いえ、生きるか死ぬかの確率が半々だということです。それは、あまりに危険な賭だと思いました。しかし、もしこのまま放置すれば、確実に死が訪れてしまうのです。結花との生活だけを夢見ていた私には、もはや選択の余地はありませんでした。手術をし、成功すれば『完全に治る』という言葉を信じて、手術に同意するしかなかったのです。私は、小島の差し出す手術の同意書に、震える指でサインをすると、小島の目をすがるように見つめながら、絞り出すような声で言いました。
「お・・・お願いします・・・先生。ぼ・・・僕を助けてください・・・。」
 ほどなくして手術室に運ばれ、麻酔注射を打たれた私は、全身から力が抜けていき、やがて深い眠りに落ちたのでした。


ある性転者の告白 第8章-2

 それから、十日ほど経ったでしょうか。その間も、少しずつ変化していた身体は、とうとうはっきりとした女性の身体的特徴を示すまでになっていたのです。
 手足のむだ毛と髭は、まるで永久脱毛をした後のように、完全に消え失せ、跡形もなくなっているのです。体つきもすっかり女性的になり細いままのウエストラインとは対照的に、バストとヒップが、ふくよかな曲線を描いているのです。
 そして最も恐ろしく感じたことは、自らの男性を示すシンボルが極端に小さくなってしまっていて、たとえ朝であっても、勃起することがほとんどなくなっていたのです。 私は、涼子に気のせいではなかったことを、動揺を抑えきれないあわてた口調で伝えました。
「裸になって、見せてみて。」
 涼子は意外な程冷静な口調で言いました。
 私は、そばに村井がいることも忘れ、涼子の言う通り全裸になると身体を向けました。 その瞬間、涼子は、驚いたような様子を見せ、
「確かに、変だわ。ねえ、村井ちゃん・・・?」
と、傍らにいた村井に同意を求めるように言ったのです。
「ああ、おかしいな・・・。でも・・・こんなことがあるのか?」 
 村井にも驚きの表情が浮かんでいます。しかし、二人の言葉にはどことなくわざとらしい雰囲気が感じられ、気のせいか、ほくそ笑んでいる感じもします。けれども、まさかだまされて、女性ホルモンを大量に飲まされていたなどということは、夢にも考えていなかったので、とにかく我が身に起こっている、ただならぬ変化を何とかして止めたいという一心で、村井の運転する車に乗り込みました。目的地は告げられませんでしたが、話しぶりから病院であることだけはわかりました。


ある性転者の告白 第8章-1

 涼子の差し出す「鎮痛剤」の服用は、約20日の間続きました。なぜなら、その間も屈辱的な肛交という行為が収まることはなかったからです。しかし、その薬のおかげで、少なくとも肉体的な痛みからは、逃れることができました。
 ところが、ある晩、私は自らの身体に現われ始めた変化に気づきました。
 いつものように村井たちに汚された身体から、その情欲の残滓を洗い流すため、シャワールームに入ってハンドルを回し、シャワーヘッドからの心地よい水流を感じながら、目をつぶりました。ところが、身体を流れ落ちるシャワーの水流がいつもと微妙に違っているような気がして、思わず閉じていた目を開けました。
 胸の辺りを伝う水流が、なぜかかすかな曲線を描いているのです。やせていて胸板も薄く、直線的な体型の私には、何となく違和感がありました。私は、自分の胸の辺りをそっと手のひらで触れてみました。
(ん?ど・・・どうしたんだろう?太ったのか?)
 手のひらに、何となくふくよかな肉の弾力が感じられるのです。しかも、その中心部には固いしこりのような感触もあります。しかし、これまでの過酷な日々の中で、食欲も落ちてしまっているので太るはずがないのです。その証拠に、ウェスト部分にはまったく肉は付いてはいません。私は抑えようのない不安に襲われ、他に変化がないか確かめようと、視線を下に落としてみると、両脚に残っていた脱毛の跡がほとんど見えないことに気づいたのです。そう言えば、この3日間は脱毛そのものも行っていません。さらに、口元に手をやると、指先に髭剃り跡がほとんど感じられず、ツルッとした感触だけが伝わってきます。
 動揺した私は、バスルームから飛び出すと、ずぶぬれのまま姿見の前に立ち、全身を映してみました。
(ああ・・・やぱり・・・。)
 身体の変化を感じたのは、やはり、気のせいではなかったのです。胸だけでなく、腰回りもどことなく丸みを帯び、全体的に曲線的になっています。さらに凝視するように目を近づけると、皮膚そのものも白っぽくなり、肌のきめが細かくなっているのです。もともと男性的な野性味にかけていたとは言え、そこまで女性的だったわけではありません。
 私は急いで涼子を呼ぶと、それらの身体の変化を一つ一つ、説明しました。
しかし、涼子は、フンッと鼻で笑うと、
「そんなの気のせいよ。いくら、女の子の格好して、村井ちゃんたちの相手をしているからって、身体まで女の子になるわけないじゃない。きっと疲れているのよ。さあ、そんなこと気にしないで、薬飲んでゆっくり寝なさい。」
と言うだけでした。
 私は、涼子の言う通り気のせいなのだと自分に言い聞かせ、その晩も与えられた錠剤を飲み眠りにつきました。私に希望をもたらすカレンダーの×印は、すでに40個程になっていました。
 

ある性転者の告白 第7章

 屈辱的なビデオ撮影をきっかけに、彼らの欲望はまるでそのタガが外されたかのようにエスカレートしていき、とどまることを知らないかのようでした。
 私は、毎朝、指示された様々なコスチュームとメイクを施すと、リビングに向かい、求められるまま、彼らの性欲に応えることになったのです。彼らは私を一人のメイド、いえ、一匹の性奴としてしか扱ってはくれませんでした。
 もちろんそんな中でも、唯一の希望として毎晩カレンダーにつける×印を心の支えとして耐え続けました。
 しかし、ただ一つだけ、どうしても耐えきれないことがありました。それは、精神的にも肉体的にも過酷な肛交という行為です。もちろん、口を使わされたり、手を使わされたりすることにも、口には出せないほどの屈辱感に感じはしましたが、肛交という行為はその屈辱感に加えて、肉体的な苦痛を伴うものだったからです。特に、いわゆる巨根を持っている村井による肛交は、まさに筆舌に尽くしがたく、初めて挿入された時は、あまりの激痛に悲鳴を上げ、気を失ってしまったほどです。しかも、その出血を伴う痛みは3日間も続いたのです。
 その後、私は、肛交だけは避けようと、積極的に自らの口や手での奉仕に努めました。そうすることでしか、肛交を回避する手段はないと思ったからです。しかし、そんな私の真意を見抜いたように、いえ、嫌がる私にいっそう加虐的な嗜好を刺激されたのか、却って、その行為を求めてくるようになりました。
 私は、激痛と屈辱感から来る大粒の涙を流しながら、その行為に抵抗すらできずに、必死になって耐えました。もちろん、一日一人だけではありません。一人が終わると、休む間もなく、次の相手をしなければならないのです。しかも、そのたびに彼らの趣味に合わせてメイクを直し、コスチュームを着替えます。ナース服を脱いだかと思うと、次はバニーガールスタイルというように・・・。
 そして、3人目の放出を受け止めた後になると、決まって下腹部に鈍い痛みを感じ、トイレに向かいます。彼らの放出する大量の精液が、まるで浣腸液の代わりにでもなったのでしょうか、鈍い便意が引き起こされるからです。便器の中に、白濁した粘り気のある液体が、血液と絡まって落ちるのを目にする時、私の中には、言いようもない無力感が情けなさがこみ上げてくるのです。

「ホント、奈緒美ちゃんも、かわいそうね。これじゃ、休む暇もないものね。それに、一人一人趣味が違うから、そのたびにシャワーを浴びてメイクし直さなくちゃならないし・・・。普通の女なら、一度お化粧落とせば、その日はもうお化粧なんてしたくもないけど、奈緒美ちゃんはそうはいかないものね。だって、奈緒美ちゃんのお化粧は自分のためにするんじゃなくて、男性に喜んでもらうためにするんですものねぇ。ねぇ?どういう気分?男のくせに、男の人を喜ばすためだけにお化粧する気分って・・・?ねえ、どうなの?『直樹』さん・・・フフフ・・・」
 新たなメイクを施すために、ドレッサーの前に座っている私に、涼子が容赦ない言葉を投げかけてきます。ただでさえ、屈辱感に耐えている私は、メイクの手を止めて、涼子を恨みがましく睨みつけます。
「あら、何・・?その目・・・。反抗的な目しちゃって・・・。ほめてあげてるんじゃない、可愛い子は得だって・・・、さあ、早くしなさいよ。次は、このワインレッドのルージュでしょ?これで、また、村井ちゃんのオチンチン、おしゃぶりしなくちゃいけないんでしょ?アハハハ・・・。」
 私は、長い廊下に響き渡るような涼子の笑い声を聞き、持っているルージュを思わず、叩きつけようとしましたが、最後の自制心がそれを抑えました。そういったあからさまな反抗的な態度を取ることは、自殺的な行為だと知っていたからです。私は、反抗することすら叶わない、自らの無力感と戦いながら、再び、男たちの欲望を満たすためのメイクに戻るしかありませんでした。

 そんな耐えるだけの日々が数日続いた頃、私は慢性的に続く肛門の痛みと精神的な苦痛から、睡眠が全くとれなくなっていきました。そして、ついには睡眠不足と過労から、彼らの前で倒れこんでしまったのです。
「ねえ、奈緒美ちゃん、私があげている精神安定剤、ちゃんと飲んでるの?」
メイド部屋のベッドに全裸で寝かされた私に涼子が怪訝そうな顔つきをしながら言いました。
 そう言えば、涼子から与えられる錠剤を最初の二,三日間、服用しただけで、パッタリと止めていたのです。なぜなら精神安定剤としての効力が全く感じられなかったからです。
 それにしても、なぜ涼子は、精神安定剤の服用を確かめるのに、私の全身をなめ回すように見つめているのか、その理由がわかりませんでした。
 しかし、それも後日、判明しました。その時の涼子が確認したかったのは、私の身体の変化だったのです。そうです。涼子が私に服用を強いたのは精神安定剤などではなく、高密度の女性ホルモンだったからです。もちろん、その時には、全く思いもよらないことでしたが・・・。
 私は、指示に従っていないことで、また脅迫されるという恐怖から、黙ってうつむいたまま小さく首を振りました。
「だめじゃない。ちゃんと飲まなくちゃ・・・。じゃあ、今日から、これ飲みなさいね・・・。これはね、ただの精神安定剤じゃないの。よく効く痛み止めも入っているの。奈緒美ちゃん、これからも、あの人たちにお尻を使わなくちゃいけないんだから、少しでもその痛みを和らげなくちゃ・・・ね。」
 私は思いがけない涼子の気遣いに、自然と涙が溢れてきました。いくら復讐心があるとは言え、やはり妻のことです。きっと、苦痛にゆがむ私の表情を見て、人間的な同情心が沸いてきたのでしょう。涼子の言葉にはそんな優しさが感じられました。
「お、お姉様、ありがとう。奈緒美、う、うれしいです。」
 私は涼子の気が変わらないように、細心の注意を払って、謝意の言葉を選び、差し出された錠剤に何の疑いも持たずに飲み込みました。
 数十分後、私の肛門の慢性的な痛みが少しずつ消えていき、いつしか深い眠りに落ちていきました。涼子の言ったように、服用した薬には、よく効く鎮痛剤が入っていたのは確かでした。けれど、その中には他の要素も含まれていたことに、私が気づいたのは、もっとずっと先のことでした。


ある性転者の告白 第6章-4

 私は、撮影が終わった瞬間に彼らが見せた、異常なまでに興奮しきった表情を今でも決して、忘れることはできません。中でも、涼子は自分の指示したセリフと演技により満足いく仕上がりになったことがよほどうれしかったのか、それとも私に屈辱的な行為を強いることで自らの復讐心を満たすことができたからなのか、満面の笑みを浮かべていました。
「ホントに、演技とは思えないくらい自然だったわよ。いくら弱みがあるからって、男としてのプライドを持っていれば、こんなことできるはずないもの。ねえ、あなた、ホントは、ずっと、女の子願望あったんでしょ・・・?それも、いつも男が欲しくて溜まらないような淫乱な女の子になりたいって・・・?」 
 私は、黙ってうつむいたまま、激しく頭を振りました。しかし、涼子の冷酷な言葉はとどまることを知りません。
「うそついてもダメよ。そんなわけないもの。だって、あなた、今、何したかわかってるの? 男のくせに、他の男のオチンチンしゃぶったのよ。ザーメンまでゴックンって・・・、そんなこと普通できないわよ。それに、自分からお尻を突き出して、『入れて欲しい』なんて・・・フフフ・・完全に男、捨ててるとしか思えないわ・・・。あなたの前についているそれ、一体何?え?オチンチンじゃないの?男なら、そのオチンチンで女を犯したいって思うのが普通でしょ?それなのに、あなたったら、他の人のオチンチンで犯されたのよ。そんなことよくできたわねぇ・・・。アハハハ・・・。まあ、もっとも、ここでの生活に、あなたのそのオチンチン、使い道はないものね。かわいそうよねぇ・・・、男として、ザーメンぶちまけることもできないんだもの・・・フフフ・・。でも、よかったじゃない。女として、ここにいる男性たちのザーメン、たくさんもらえるんだもん。なんか、うらやましいわぁ・・・。ま、せいぜい、これからもエッチな服着て、男性たちに喜んでもらうことね。そうすれば、もっともっと、ザーメンもらえるわよ。あなたの役立たずのオチンチンの代わりに・・・ね。がんばってね、奈緒美ちゃん・・・。アハハハハ・・・。」
 興奮した涼子のサディスティックな高笑いが、部屋中にこだましていました。私は涙を浮かべながら、そんな屈辱的な言葉をただ黙って聞いているしかありませんでした。
屈辱と絶望とで疲れ切った私は、とにかくその場から逃げ出したいという思いしかありませんでした。ですから、涼子から最後の挨拶をするように言われ、手渡されたメモ書きの屈辱的な内容も、何のためらいもなく口にしたのです。
「奈緒美、これからも・・・たくさんたくさん、可愛がってもらいたい・・・の。だって、そうすれば・・・奈緒美の・・・この役立たずのオチンチンの代わりに、たくさんの男性の・・・お役に・・・立てるんですもの・・・。奈緒美、自分にオチンチンがあることなんか忘れて、これからも・・・皆さんに女の子として可愛がってもらえるように・・・が・・がんばりますので、お兄様も・・・充様も、聡様も・・・・ザーメン、たくさん、たくさん・・・奈緒美に・・・ください・・・。」
 そんな強いられた屈辱的な言葉を最後に、その日の悪夢のような出来事は終わりました。こうして彼らの手中に、私を脅す新たな、そして絶対的な材料がまた一つ加わったのでした。


ある性転者の告白 第6章-3

 本城の痙攣が収まり、熱い樹液の放出が終わるのがわかると、奈緒美(私)はゆっくりと口を離します。そして、本城の顔を見上げ、ニコッと微笑むと、唇を静かに開き、白濁した精液が舌に溜まっているのを示し、そして再び、唇をしっかりと結ぶと、ゴクリと音を立てて、白濁を嚥下していくのです。
「奈緒美、うれしい、先生が感じてくれて・・・。ねえ、気持ちよかったでしょ?奈緒美の、オ・ク・チ・・・。」
 本城は、深い深呼吸をしながら、
「う、うん・・・、すばらしかったよ。でも・・・、どこでこんなこと覚えたんだい?奈緒美は・・・。」
「あのね、奈緒美、いつも先生のこと考えながら、バイブ使って・・・、練習してたの。」
「そうか、私のためにそこまでしていてくれたのか。奈緒美は本当に可愛い女の子だね?わかったよ、奈緒美。これから、君は、僕の恋人だ。男子学生の高野直樹はもういないんだ。」
「ホント?そう思ってくれる・・・?奈緒美のこと、本当の恋人だと思ってくれるのね?」
「ああ、ホントだよ。」
「うれしい・・・。」
 私は、本当にうれしさを抑えきれない様子で、大量の放出で萎えた本城のそれにもう一度、唇を寄せ、舌先をのばすと、ゆっくりと、撫でさするように這わしていくのです。
「ど、どうしたんだよ。奈緒美。もう、終わったじゃないか・・・?」
「だって、先生、奈緒美のこと、恋人だって言ってくれたじゃない?」
「言ったけど、だからって・・・、もう・・・」
「恋人なら、奈緒美、先生と・・・、セ、セックス・・・したいの。」       「ええ?だ、だって、君は男・・・・じゃないか?」
「いや、先生、奈緒美のこと、女の子だって言ってくれたじゃない。」
「し、しかし・・・」
 本城はそう言いながらも、若さの証明なのでしょう。私の奉仕によって、またまた誇張を示し始めるのです。
「先生だって、ほら、また、こんなになってきたでしょ・・・?フフフっ・・。ね、先生、今度は、奈緒美のここに、先生のオチンチン、ちょうだい・・・。」
 奈緒美(私)は、体をよじってマイクロミニに覆われた臀部を持ち上げると、そこを手で触れてみせるのです。それはまるで、自分から好きな男を誘惑し、肛交を催促する淫乱な女子高生をそのものです。
 
 その後のビデオの内容は、皆さんのご想像の通りです。私は、遂に憎むべき男の手によって犯されてしまったのです。私は、激しい痛みの中で、本城の2度目の放出を肛門で受け止めながら、止めどなく流れる涙を抑えることはできませんでした。けれども、そんな涙も、ビデオの画面を通して見てみると、好きな男性を、初めて受け入れることができたという喜びに震える一人の女子高生の姿にしか見えません。
 

ある性転者の告白 第6章-2

  設定は、ある一人の高校生(私です。)とその家庭教師で大学生の(本城充)の間で繰り広げられる安物のお芝居です。年齢の設定は本城の方はほぼ年齢通りですが、私の方は、実際の年齢よりも、6つも若い設定です。設定はいかにも不自然ですが、そんなことはどうでもいいことです。なぜなら、そのビデオは、彼らにとってその後の脅迫の材料として握っていたいだけだったからです。後に、裏ルートで販売されるようになったのは、あくまで副次的なことでした。
 ビデオは、最初に安っぽいタイトルが入り、次に、勉強机に向かう一人の男子高校生役の私が映ります。詰め襟の制服をきちんと身につけ、教科書に視線を落としています。そこへ、家庭教師役の本城が入ってきます。
「どうだ?勉強は進んでいるか?受験ももう少しだから、がんばるんだぞ。」
 本当にわざとらしいせりふです。でも、そんなことはどうでもいいことです。何度も言いますが、内容なんて全く意味を持たないビデオなんですから。
「はい、でも、ここのところがわからなくて・・・。」
 高校生(私)は、そう言うと、教科書の問題を指し示します。
「どれどれ・・・。あ、うん、それはな・・・」
 本城がペンを取り出し、あれこれ説明し始めます。
 高校生(私)は、そんな本城の横顔に憧れを抱いた熱い視線を送ります。
 やがて、いったん部屋で一人になった高校生(私)は、机の引き出しから、一枚の写真を取出し、ため息混じりに見つめるのです。その写真には本城の微笑みを浮かべた顔が写っています。
「ああ、先生・・・・、ぼ、僕、先生のこと・・・す・・・好きです。だから、僕、先生にだけは、ホントの秘密、教えてあげる・・・。」
 写真に向かってそう言うと、椅子から立ち上がり、制服を脱ぎ始めます。すると、詰め襟の制服の下からは、淡いピンクのブラジャーとパンティが現れます。
 やがて、画面が切り替わり、ドレッサーの前に座っている高校生(私)が映し出されます。そして、次々に手際よくメイクを施していくのです。その表情は、好きな男のことを考えながら、夢見心地になっている少女そのものです。
 すべてのメイクが終わり、ウィッグを被ると、ドレッサーからセーラー服を取り出し、袖を通し始めます。あの、極端に短いスカートにも両脚を通します。
「ぼ、僕、ホントは、お・・・女の子になりたいの。女の子になって、先生に、あ・・・愛されたい。お願い、先生、『奈緒美』を・・・愛して・・・。」
 すっかり女子高生に姿を変えた高校生(私)は、挑発的なセーラー服姿で、机に座ると、何事もなかったように、教科書に目を落とすのです。       
 次の瞬間、ドアが開く音がして、
「やあ、ごめん、ごめん、待たせちゃ・・・・」
 本城の驚いた顔が大写しになります。
「あ、す、すいません。へ、部屋を間違えたみたいだ・・・。」
 本城はそう言うと、ドアを閉め、部屋を出て行こうとします。
「ま、待って、先生。ぼ、僕・・・直樹だよ。高野直樹だよ。」
「えっ?何だって?本当に直樹君か?」
 私は黙って頷くのです。
 再び、画面が切り替わって、
「そうか、よくわかったよ。君は本当は、女の子になりたかったんだね。そういう人がいるっていうのは、先生も聞いたことがあるよ。でも、君がそうだとは思わなかったけどね。」
「・・・・・」
「だけど、女の子になって、どうしたいんだ?君は?」
「ぼ、僕、せ、先生のこと、す・・・・好きなんです。だから、女の子になって・・・せ、先生に・・・、愛されたいって・・・。」
 本城のわざとらしい、驚いた表情が映し出されます。
「な、何だって、き、君はそんなこと、考えていたのか・・・?だけど、私にはそんな男同士の趣味はないしなぁ・・・。」
「ごめんなさい、先生・・・。男の子の直樹じゃ、愛してくれませんよね。」
 高校生(私)は、心を落ち着かせる大きく息を吐くと、
「でも、これからは、女の子の『奈緒美』だと思って・・・、愛してくれませんか・・・?お、お願いです、先生・・・。な、奈緒美、先生のこと好きなの。ね?お願い。奈緒美を・・・嫌いにならないで・・・。」
 と、女言葉で言いながら、本城の胸に顔を埋めるのです。
「わかった。わかったよ、君の気持ちは・・・、そうか、奈緒美って言うんだね。君の名前は・・・。」
「先生・・・、奈緒美っ呼んでくれますか?そして、奈緒美を愛してくれますか?」
 画面の中の奈緒美(私)は、上目遣いに見上げながら、切なそうな声で聞くのです。
「わかったよ、な、奈緒美。でも、私は、さっきも言ったけど、男同士の経験なんてまったくないんだ。だから、君に女の子として魅力を感じることができるかどうか・・・。」
「ねぇ、先生・・・、今から、奈緒美がどんな女の子か、見せてあげる・・・・。それでも、奈緒美のこと、魅力のない女の子だと思ったら・・・、奈緒美、あきらめる。先生のこと・・・。」
 奈緒美(私)は、椅子から立ち上がり、部屋の中央で、本城の視線を意識するように、いろいろなポーズを取り始めるのです。
 それは、やがて、立って微笑むだけのソフトタッチなものから、だんだんと大胆なものに移っていきます。後ろを振り向いて少し前屈みになり、淡いピンクのパンティをチラッとのぞかせながら、微笑み返したかと思うと、床にしゃがんで両膝を腕で抱えながら、足先だけを少しずつ広げ、前からパンティをあらわにしたり、まるで男を誘うかのようなポーズをとり、そのたびに、媚びを含んだ視線を本城に投げかけるのです。
 ビデオカメラは、時折、本城の顔を映し出します。彼の顔にだんだんと興奮の色が露わになっていき、息づかいも荒くなっていくのがわかります。
「も、もう、いいよ、奈緒美・・・、これ以上そんなポーズを見せられたら、せ、先生・・・、が・・・我慢ができなくなっちゃうから・・・。」
 奈緒美(私)は、その言葉を無視するかのように大胆なポーズをとり続けます。
「わ・・・わかった。君は本当に可愛いくて、魅力的な女の子だってこと認めるよ。先生もな・・・奈緒美のこと、好きになりそうだよ。」
「ホント・・・?先生・・・?奈緒美、うれしい・・・。」
「ホントだよ。先生、奈緒美のこと見てたら、ホラ、こんなになっちゃったよ。」
 本城はそう言うと、ズボンの前を右手で盛んにさすり始めるのです。
 奈緒美(私)は、ポーズを取るのをやめ、本城のそばに近づくと、その足下に跪き、ズボンのファスナーに手を伸ばすのです。
 その時、私は、背筋にこれまで生きてきた中でも経験したことのない、激しい悪寒を感じたのを覚えています。いくら、諦観の中にあったとは言え、現実に、これから自分が行うことを想像すると、とても撮影を継続することはできなかったのです。私の激しい抵抗により、撮影は何度も中断しました。その証拠にこれ以降の画面は、数カ所に渡り切れ目が入っていて、途切れ途切れの撮影であったことがわかります。もちろん、最終的には、彼らの脅迫に屈することになるのですが。
「な、奈緒美・・・。な・・・何をするつもり・・・?」
 本城が困ったような表情で足下に跪いている私を見つめます。
「ううん、先生、大丈夫。奈緒美に任せて・・・。奈緒美、先生に喜んでもらいたいの。」
 奈緒美(私)は、上目使いにしながらささやくように言うと、ファスナーに手をかけ、ゆっくりとおろし、そこから、本城の、すでにたくましくいきり立った誇張を窮屈そうに引き出すのです。
「ああ、すてき・・・。先生、奈緒美を見て、こんなに興奮しているのね。奈緒美、うれしい・・・。ね、先生、奈緒美に・・・ちょうだい。先生の・・・、オチンチン・・・、奈緒美にちょうだい。」
 奈緒美(私)は、ピンクのルージュの引かれた唇から赤い舌先を覗かせ、誇張の先端に触れていくのです。
 本城はその瞬間、ピクッと体を反応させます。
 奈緒美(私)舌の動きは、誇張全体を上下にさすりあげたり、時には唇に含んで、チロチロと動かしてみたり、さらには喉奥まで飲み込んでみたりと、まるで自ら男の性を求める淫乱で男性経験の豊富な女子高生にしか見えません。
「な、奈緒美、き・・・君は・・・ホ、ホントにすてきな・・・お、女の子だよ。ああ・・・、き、気持ちいい・・・。」
 奈緒美(私)は、本城の言葉に応えるかのように、上目使いに媚びを含んだ微笑みを見せながら、喉奥まで誇張をくわえ込むと、ジュルジュルという隠微な音をさせながら、顔を激しく上下します。
「ね、奈緒美に、先生の、セ、セーエキ・・・ちょうだい。いっぱい、いっぱい・・・ちょうだい・・・。」
 奈緒美(私)は、唇を離すと、憂いを含んだ瞳を向けながら、囁きかけるのです。「い・・いいんだね、く・・口に出しても・・・、いいんだね・・・先生、奈緒美のく、口に出しちゃうよ。いいね・・・?」
 奈緒美(私)は何度も小さく頷きながら、激しく頭を上下させます。頬をすぼめ、思い切り吸い込んでいるのが画面からもはっきりとわかります。
「い、イクよ。イク、イク・・・・」
 次の瞬間、本城は、くぐもった声を発すると、奈緒美(私)頭を両腕でしっかりと支え、ぐいっと引き寄せるのです。それは、自らの情欲を最後の一滴まで、喉奥に注ぎ込んでやろうとする男の征服欲の現われのようです。
 今思い返すと、この時の苦しみは、本当に涙が出るほどでした。しかし、私をもっと悲しくさせたのは、口の中で本城の誇張が一気に膨らみ、次から次へと容赦なく喉奥を襲ってくる熱い樹液を受け止めながらも、それをはき出すことさえ許されないという現実、しかも、そんな行為を男でありながら女として演じなければならないという現実を拒否することもできない無力感を伴ったものでした。


ある性転者の告白 第6章-1

  男でありながら、一人の女子高生として、他の男の「性欲」に奉仕する・・・そんな屈辱的な行為に同意した私に用意されたのは、またしても、例のビデオカメラでした。
 入念な打ち合わせの後、録画のスイッチが押されると、あのプライベートビデオの撮影時に使われた小さなイヤホン越しに涼子の指示が次々と飛んできます。まるで安物のアダルトビデオのような、芝居がかったその後のやりとりもせりふもすべてイヤホン越しの指示によるものです。
 それからの約2時間の撮影は、私にとって地獄のような時間でしたが、あまりにも信じがたい行為の連続だったこともあって、まるで、夢の中で、うつろなまま時間だけが経過していたようにも思えます。
 その時の私の様子は、プライベートビデオのパート2「女子高生 直樹(奈緒美)」編として今も映像に残っています。聞くところによると、一部の闇ルートでニューハーフ女子高生もののビデオとして出回っているそうですが、その当時の私には単に彼らの手元に私を脅迫するネタが、また一つ増えたという厳然たる事実以外のなにものでもありません。
 私はこの告白で、すべてをお話するように言われていますので、このビデオの内容についてもお話しなければなりません。ごらんになっていらっしゃらない方の方が多いと思いますので、恥を忍んで、その内容をお話いたします。
 

ある性転者の告白 第5章-3

 ところが、次に村井の口から出た言葉は、冷水を頭から浴びせるかのような衝撃的なものでした。
「それじゃ、終わりだ・・・。契約の話も何もかもな・・・・。但し、二億円は即刻払えよ。それから、例の写真も会社に、それからっと、ビデオを結花って女のところに送るからな。充、準備しろ。さあ、終わりだ終わりだ・・・。」
 村井は本城の方に視線を送ると、そのまま、部屋を出ようと、ドアに向かって歩き出したのです。
 村井が「やめる」と言ったのは、これから始まる行為のことではなく、契約のことだったのです。
「ま、待ってくれ・・・。お願いだ、まってくれぇ・・・。」
 私はそれまで抑えていた、感情を爆発させるかのように叫んだのです。
 その言葉に、村井は一瞬足を止めると、ヤクザらしい、すごみのある表情で睨みつけてきたのです。私は、指示を思い出し、言葉を選ぶように言い直したのです。
「お、お待ちください、お兄様・・・。お・・お願いです。そ・・・それだけは、おやめください。」
 村井は、きびすを返すと、部屋の中央に戻ってきました。
「じゃ、どうするんだ?俺の言うことも聞けねぇ、契約も終わらせたくねぇって言われてもな・・・。第一、今、お前、男の言葉を使ったじゃないか?それだけで、契約は終わりなんだぜ・・・。ホントはな。」
 村井の言葉は、いつしかドスのきいたヤクザ口調に戻っていました。
 私の全身の力が一気に抜け、抵抗しようとする気力も失せていきました。残ったのは、脱力感とある種の諦観だけでした。
「わ・・・わかりました。指示には・・・指示には、従います・・・・こ、これで・・・いいですか?」
「なんか、イヤイヤじゃねぇか・・・、それじゃあよぉ。」
 イヤイヤに決まっているじゃないか。何を言ってるんだと怒鳴りつけてやりたい思いでしたが、私は、それを押し殺し、村井の顔を睨みつけたのです。 
「何だ?その反抗的な目は・・・・?いいんだぞ。やらないなら、やらないで・・・。俺の方はかまわねぇからな・・・。」
 村井の言葉は、私の弱みを全て握っていることによる有無を言わせない迫力のある言葉でした。
「ご・・・ごめんなさい・・・、もう、反抗的な目は・・・しませんから・・、お願いします。許して・・・ください。」
 私は、卑屈にも、頭を何度も下げ、自分の本心を悟られないように気をつけながら、言いました。
「そうか・・・わかりゃいいんだ。でも、言っておくけど、これが最後だぜ・・・。もし、今度、そんな目をしたり、男言葉を使ったりしたら、その時は・・・わかってるだろうな?」
「わ、わかりました・・・。二度と・・・二度と、反抗的な目をしたり、男言葉を使ったりは・・・しません・・・。だから・・・だから・・・」
 私は、こみ上げてくる屈辱感に涙が溢れてきて、今にもこぼれ落ちそうになりました。
「フフフ・・・、やっと、わかったようね・・・。自分の立場が・・・。いい?あなた、お化粧してるってこと忘れちゃだめよ。そんな可愛い顔して、にらんでみても、迫力も何もないの。わかる・・・?さあ、わかったら、私の言うとおり言い直しなさい。いいわねっ?」
 涼子は、私に近づき、耳元で、これから私が口にしなければならない屈辱的なセリフを囁くのでした。そして、抵抗することを完全に放棄した私は、そのセリフをただ意味もなく、オウム返しのように繰り返したのです。
「ホ・・・ホントに・・・、反抗して・・・ごめんなさい。奈緒美は・・・奈緒美はいけない子でした。これからは・・・絶対に言いつけを・・・守ります。お兄様やお姉様、それに充様や聡様の・・・素直な可愛い・・・・お・・・女・・・女の子になります。その証として・・・これから、充様の・・・お・・・お相手・・・お相手をさせていただきます。いいえ、イヤイヤなんかじゃありません・・・。奈緒美は・・・奈緒美は・・・男の方が・・・す・・・好きなんです。男の方から・・・愛されたいって思ってたの。だから・・・お願い・・・奈緒美を・・・奈緒美を・・・女の子として、可愛がって・・・。ね? 充様・・・。」
 私の屈辱的なセリフが終わると、部屋中にはやし立てるような笑い声が響いたのでした。
「あらあら、そんなこと言っちゃって・・・。ホントにあなたって情けない人。男のプライドっていうものがないのかしら・・・全く。もしかしたら、こうなることを望んでたんじゃないの?そうでなくちゃ、言えないわよ、そんなセリフ・・・。仮にも私はあなたの妻なのよ。その妻に向かって『お姉様』なんてよく言えるものね。でも、もういいわ。あなたのそんな姿見てたら、夫だなんて思えないもの。これからは、せいぜい、可愛い妹だと思ってあげるから、あなたもそれに応えて、素直な女の子にならなくちゃだめよ。いいわね?奈緒美ちゃん・・・。」
 私は、そんな涼子の蔑んだ言葉にも、ただうつむきながら、黙って聞いているより他に術はなかったのです。 


ある性転者の告白 第5章-2

 リビングでは安っぽい「撮影会」が行われました。もちろんモデルは男でありながら、挑発的なセーラー服を身につけ、女子高生を演じている私です。約二時間ほどの間、村井たちの指示により、様々なポーズをとらされました。通学途中で一人佇むポーズや、窓辺の椅子に腰掛けて読書をするポーズといったソフトなものから始まって、まるでアダルト雑誌のグラビア写真のように、ちょっと前屈みになってチラッと下着を見せながら挑発するような視線を送る女子高生のポーズまで、彼らの指示は留まることを知りません。その間、田中の手に握られたデジカメのシャッター音が間断なく続いていました。
(早く・・・早く・・・終わってくれ・・・。)
 私は、激しい羞恥心の高まりの中で、それだけを念じながら、その苦痛に必死になって耐えたのです。すでにビデオテープまで撮られていた私には、こんな撮影だけなら、なんとか耐えることができるという思いもあったのです。しかし、彼らのサディスティックな嗜好は、そんなもので収まるほど、生やさしいものではありませんでした。
 ポーズのアイディアも、出尽くし、『可憐な女子高生』の撮影会が一段落すると、本城が村井に向かって、口を開きました。
「なあ、兄貴ぃ・・・。もういいだろう?例のやつ・・・やろうぜ。なんか、こいつ見てるとムラムラしてきて、俺・・・これ以上我慢できねぇよ。」
 本城は、周囲の目も憚らず、下品にもズボンの前に手をやり、右手でさすりながら言ったのです。
「バカ野郎・・・、まだ、早いんだよ・・・。しょうがねぇなぁ、本当に・・・。アハハハ・・・」
 村井の言葉は、本城をたしなめているようではありましたが、その表情からは、何か下心がありそうな雰囲気がありありと浮かんでいました。
「村井ちゃん、そりゃ、充ちゃんだって、かわいそうよ。若いんだから・・・。こんな可愛い子が、あんな短いスカート履いて目の前にいるんだもの、我慢できなくなるわよねぇ・・・。」 涼子が村井に向かって言いました。
「ホントにしょうがねえやつだな、お前は・・・。じゃ、やるか、例のやつ・・。涼子、奈緒美に説明してやれよ。」
 涼子は、小さく頷くと、その言葉に促されるように、部屋の片隅で無言で座り込んでいる私に近づき、言ったのです。
「あのね、奈緒美ちゃん・・・、充ちゃんがね、奈緒美ちゃんを見てて、我慢できなくなっちゃったんだって・・・。いいわねぇ、可愛い子はモテモテで・・・。フフフっ・・・。わかるわよね?我慢できないっていう意味が・・・?でね、奈緒美ちゃんに、鎮めてもらいたいらしいんだけど、どう?してあげてくれる?」
 その言葉を耳にした瞬間、私は背筋は、スーッと凍りつくほどの悪寒が走りました。
 いくらセーラー服を着て、女子高生を演じているとは言っても、私は、男です。涼子の言葉の意味がわからないわけはありません。
「な、何を・・・、何をバカなことを言ってるんだ・・・。」
 私は、思わず、この2週間ばかり使わなくなっていた男言葉で言い返しました。
「あら?そんな言葉、使っていいの?契約違反じゃないの?フフフ・・・。」
 涼子はそう言うと、村井の方に視線を送りました。
 村井はその言葉に反応するかのように、先ほどまで浮かべていた笑みを消し、キッときつい顔に戻り、私をにらみつけたのです。
 私はハッとし、とっさに言い直しました。
「そ・・・そんな、お・・・お姉様のおっしゃっていることが・・・わ、わかりません。」
「困ったわねぇ。男の『直樹』だったら、私の言ってること、すぐ、理解できるはずなのに・・・、女の子の『奈緒美』ちゃんには無理なのかなぁ?」
 涼子は私の屈辱感を煽るようにわざとらしい言葉を投げかけてきました。
「だからぁ、充ちゃんの性欲を奈緒美ちゃんが鎮めてあげるのよ。わかるでしょ?」
「・・・・・・・」
「ああ、もう、じれったい、充ちゃんのオチンチンから、溜まってるザーメンを抜いてあげるの。奈緒美ちゃんが・・・・ね。わかった?どうなの?するの?しないの?」
 私は全身から力が抜けていきました。しかし、次の瞬間、男の身でありながら、他の男の性欲を鎮めるという行為が、どれほど屈辱的なことかを想像し、とっさに大声で叫びました。
「そ、そんな、こと・・・。で、できませんっ・・・。できるはずが・・・ありません。」
 思わず、男言葉が出そうになるのを、ぐっと抑え、彼らの気持ちを逆撫でしないよう、言葉を選んだのです。自分の激する感情まで抑えなければならない惨めさのために、全身にたとえようもない震えが走りました。
「そうかぁ・・・。そりゃ、そうよね、できるはずがないわよね。いくら可愛い女子高生に化けたと言っても、奈緒美ちゃんは、ホントは私の夫の直樹なんだものね・・・?男のくせに、男の相手なんかできるわけないものね・・・。だ、そうよ・・・、村井ちゃん。なんか無理みたいよ。」
 涼子は、口元に冷たい笑みを浮かべて、村井に言ったのです。
「そうだなぁ、仕方ないなぁ。あきらめるか・・・、なあ、充?」
 村井のその言葉は、本城をたしなめるようなものでしたが、その奥には、はっきりと下心のあることが、わかりました。しかし、それでも、屈辱的な行為を避けることのできるかすかな望みが、村井の口から発せられるのを待ちました。
「じゃ、やめるか。」
村井は一言、そう言うと、おもむろに立ち上がりました。
 私は、ホッと胸をなで下ろしました。自分の必死の願いが通じたのだと思ったのです。


プロフィール

サテンドール

Author:サテンドール
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女性化小説なら国内・海外を問わず大好きです。

特に屈辱系・羞恥系・強制系・寝取られ系・立場逆転系・年齢退行系・SISSY系などなど・・・。

happy よりは、unhappy ending が好み。
(ちょっと、性格がゆがんでるのかも^^)

私事ですが、以前某サイトに 
「高野奈緒美」のペンネームで
『ある性転者の告白』という拙い小説を掲載させて頂いておりました。事情があって途中で掲載を止めましたが、その完結編も当ブログでご紹介できればと思っています。

それとランキングにも参加させていただきますので、
ポチッとクリックいただければ幸いです。

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