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私立明倫学園高校 第3章-2

その後、説明は担任教師に代わり、より具体的で詳細な内容に変わっていったが、その前に生徒達が一様に驚いた出来事があった。
 明日からの実践的な「特別指導」の担当教師として、二人の女性が紹介されたのである。
 一人はロングヘアーでハーフのような顔立ちをしていて、美人ではあるが冷たそうなイメージの女性だった。名前を高岡真希といった。
 そしてもう一人はセミロングのボブヘヤーで、少し丸顔の現代風美人だった。真希ほどではないが決して優しいというイメージは感じ取れない。名前を宮田里佳といった。
 二人はいずれも三十台前半に見えたが、はっきりとした共通点があった。
 共に背が高く、体つきも豊満で体格もいい。
 すっかり華奢な体つきに変化している生徒達では、誰も体格的に優る者はいないだろう。
 また、二人にはいわゆる典型的な女性教師の特徴が見えない。
 派手なメイクと服装、そして自己紹介の時の妙に色気のある視線と話し方は、六本木や銀座のクラブのママ、いや時折見せる冷徹で蔑むような視線から受ける印象では、どこかのSMクラブの女王様という雰囲気すら醸し出している。いずれにせよ、この二人が担当教師となるという「特別指導」というものの一端に触れたように思え、明彦の背筋には悪寒が走った。

 担任教師からは明日から行われる「特別指導」の時間割と準備する物、また注意事項等の説明があった。
 時間割と言っても、各時限の開始時間と終了時間が書かれているだけで、その具体的内容は全くわからない。準備物や注意事項もそれほど目新しいことはなかった。
 ただ一点だけ気になったのは、明日から制服が変わることと、それがすでに各自の部屋に準備されているので部屋に戻ったら確認するように言われたことだった。

「では、最後に順次カウンセリングルームに行くこと。カウンセリングが終了した者は教室には戻らず、そのまま各自の部屋で明日からの準備をしなさい。」
 担任教師はそう言って、教卓の前から離れ、教室の脇に立っている二人のカウンセラーに何やら話しかけた。

 カウンセリングはすぐに始まった。
 五十音順なのか、席順なのか、または他の要素によるのかわからないが、生徒の名前が順次呼ばれていった。
 明彦の順番は9人目だった。
 カウンセリングそのものは慣れているので何の違和感もなかったが、それを口にしたときの学園長の何やら意味ありげな笑みが気になり、言いようのない不安が明彦の心には渦巻いていた。 
 だが、その不安はすぐに解消された。いや、解消されたと言うよりは、カウンセリングが始まってすぐ深い眠りに落ちてしまったために忘れてしまったと言った方が正しいかもしれない。
 カウンセラーからは入室後すぐに飲み物が与えられ、立て続けにいくつかの質問がなされた。
 今の心境は? これからの「特別指導」への不安は?などの質問に答えていると、いつしか睡魔に襲われ眠り込んでしまったのだ。

 深い眠りから覚めた時、明彦の心はそれまでに感じたことのない幸福感に満たされていた。もちろんこれまでもカウンセリングで眠りに落ち、その後起きたときに感じる心地よさの経験はあったが、今回のそれは全く異質のものだった。
 心の奥底からわき上がってくる本能の喜びといった種類の感情である。それは同時に性的な恍惚感すら伴うようなものだった。
 
 明彦が目覚めたことに気づいたカウンセラーは、ソファの斜め前に座り、静かに低い口調で声をかけた。
「では、気が付いたようだから、いくつか質問します。すぐに終わりますから、終わったらそのまま部屋に戻ってください。」
 カウンセラーはいつもと同じ丁寧な口調だった。担任教師や学園長のような口調の変化はなかった。
 明彦は黙ったまま小さく頷いてみせた。
「まず、君の名前と、学校名、そして学年とクラスを言ってみてください。」
 明彦はあまりにもばかげた質問に思わず吹き出しそうになった。
 カウンセリングはすでに何度も受けているし、質問をするカウンセラーとも何度も顔を合わせているのだ。何を今更そんなこと、と明彦は思った。
「山本あ・・き・・・あき・・・・」
 明彦はそこまで言うと、どういうわけか舌がもつれ言葉が続かない。
 カウンセラーはその様子を、やや口許をゆるめながら見つめた。
「あ・・・あき・・・な・・・あきな・・・です」
 明彦は自分の口から出た言葉に耳を疑った。
 なぜ、「あきな」などという名前が出たのだろう。明彦の全身から冷や汗が出てきた。「ほう、あきな・・・というのですね。山本明菜ですね。なるほど可愛らしい名前だ。で、学校名と学年、クラスは?」
 明彦は激しく首を振った。名前の間違いを訂正しなければと思ったからである。
 しかし、首を振ることはできてもそれを言葉にすることはできない。言葉にしようとするとなぜか声が止まり、それでも無理して出そうとすると喉に熱い固まりのような圧迫感がこみ上げてくるのだった。
 だが、驚きは名前だけではなかった。それ以外への質問に対しても、明彦の心とは裏腹の言葉が口をついて出てくるのだった。
「きょ・・・恭純女子学園三年・・・特別指導クラス・・・です。」
「ほう・・名前が明菜で、女子学園の3年生・・・ということは君の性別は女子ということですね?」
「・・・は、はい・・・女子・・・です」
 明彦の目には涙が溢れていた。
 それは、思った言葉が口をついて出ないもどかしさと悔しさからの涙ではあった。
「しかし、君はいったんは『性別を偽って』、明倫学園男子部に入学しようとしたね?それはどういう理由からですか?」
「は、はい・・それは・・・あの・・・男子の方が進学に有利だと思って・・・」
 明彦は口をついて出る言葉に抗うことをあきらめた。抗おうとすればするほど望まぬ答えが口をついて出そうに思えたからだ。
「ほう、しかしそれをあきらめたんだね。それはどうしてですか?」
「はい、それは・・・嘘をつくのは悪いことだし・・・それに・・・女の子の方が楽しいし・・・勉強よりもいっぱいおもしろいことあるし・・・」
 明彦の口調は徐々に変わってきていた。それに伴って声の調子も幾分高くなっているのがわかった。
「ほう、おもしろいこと・・・例えば?」
「お、お化粧とか・・ファッションとか・・・ドラマとか・・・お買い物とか・・・それに・・・」
「それに?」
「お、男の子の・・・話とか・・・」
 明彦の顔に赤みが差し、それを見たカウンセラーの顔には笑みがこぼれた。
「ふ~ん、そんなにいろいろなことに興味があったらお勉強なんてできないよね?進学はどうするの?あきらめちゃうの?」
「は、はい・・・進学はしません・・・」
「ほう・・・まあ、君の成績は小学生並みだからね、とても進学はできないだろうけど・・・では、卒業したらどうするの?」
「あ、あの・・明菜のこと、大事にしてくれる逞しい男性に可愛がってもらって・・あの・・幸せにしてもらいたいなって。」
 カウンセラーの言葉が徐々に砕けたものになるにつれ、明彦の口調にも明らかな変化が現れてきた。
 勉強などそっちのけで、頭の中には享楽的な興味だけが占めているような、いわゆる「頭空っぽの女子高生」そのものだった。いや、自分の名前「明菜」を一人称にしているのを聞くと、もっと幼い印象さえ受ける。

「なるほど・・・そんな他力本願の生き方が明菜ちゃんの望みなんだね?」
「た・・・たり・・・き・・ほ・・・?」
「ハハハ・・・ごめんね。難しい言葉を使って。他の人に頼って生きること・・・つまり強い人から言われたとおりにすることが、明菜ちゃんの夢なんだね?」
「あ、はい・・・だって、明菜、頭悪し・・・それに強い人に命令されたりするのが好きだし・・・明菜、これでも、尽くすタイプなんだもん。」
「ハハハ・・そうか・・・じゃ、『特別指導』は明菜ちゃんにはピッタリだね。せいぜい、先生の言うことをよく聞いて、優秀な生徒になってね。そうすれば、きっと逞しくて強い男性をゲットできるからね。」
「はい・・・がんばりますっ・・・『特別指導』、今からとっても楽しみなんですぅ・・」


 カウンセリングを終え、部屋に戻る途中、明彦は何度も自分の心に問いかけた。
 どうして自分の本心を口にすることができなかったのか、一体自分に何が起きたというのか。
 だが、そんな問いかけもすぐに忘れてしまった。いや、問いかけをしたという事実すらすぐに記憶の彼方に消えて行ったのである。
 そして部屋に戻った時には、新しい制服ってどんな感じなんだろうという、ごく普通の女子高生らしい関心事にしか心は向いていなかった。

 部屋に戻ると、すぐに机の上の紙片とパンフレットが目に入った。
 パンフレットは光沢のある白い表紙にピンクの文字で「スタイルブック」と印字されている。
 その上にA4大の紙片が添えられてあり、そこには以下のように書かれてあった。

「衣装ダンスの中に、これからの制服、およびその他の衣類が掛かっている。
 今後、授業の際には指定された衣類及びメイクその他で出席すること。
(それぞれ前日のホームルームで指示する。)
 初日はスタイル1、ノーメイクで出席のこと。」

 明彦は紙片の意味がすぐには把握できなかった。
 とりあえず、スタイルブックと書かれたパンフレットを開いてみた。
 最初に目に飛び込んできたのは、「スタイル1」というピンク色の文字と、制服を着た
美少女モデルの大きな写真、レモンイエローのブラとショーツ姿の中くらいの写真、そして靴と小物類を写した小さな写真だった。

 明彦は一旦スタイルブックを机に置くと、衣装ダンスを開けてみた。
「え?どういうこと?」
 衣装ダンスには見慣れない衣類がぎっしりと並んでいる。
 恐らく部屋を空けている間に職員の手によって、衣類が入れ替えられたのだろう。
 明彦は念のため、ランジェリー類の入ったタンスを開けてみた。
 真新しいランジェリー類がぎっしりと収められていた。
 それまでに一度も着たことのない種類のランジェリーもある。それが、ガーダーベルトやストッキング、テディ、キャミソール、3イン1などであることは「教養の時間」で身につけた知識でわかる。だが女子高生のセーラー服の下には決して似つかわしくないそれらのランジェリー類を今まで実際に身につけたことはなかった。
 
 入れ替えられたのは衣類だけではなかった。
 シューズラックに収められた靴は20足を超えていた。これまでの学生らしいローファー以外にパンプスやブーツ、ミュールなどもあり、かなり高いヒールのものも含まれていた。
 ドレッサーに目をやると、それまでも決して少なくはなかったメイク類がさらに充実していて、およそ女子高生には似合わないような色のコレクションもあった。

 明彦には朧気ながら意図がわかってきたような気がした。
 「スタイル1」と指示された場合には、写真を頼りに衣装ダンスから同じデザインの衣類とランジェリーを選び、靴や小物も写真の指示通りのものを身につけるということなのだろう。
 明彦はもう一度「スタイル1」の写真を確認した。
 パステルカラーのセーラー服は一般の制服にしては少々派手で、どちらかというとアイドルが身につけるようなデザインではあったが、丈も胸元のカットもごく普通のスタイルだった。
 明彦は衣装ダンスから同じデザインの服を探した。
 左から3番目に、確かにそれはあった。予想は正しかったのだ。

 再び机に戻るとスタイルブックのページを捲ってみた。
 明彦の顔が徐々に青ざめていく。
 スタイル1、スタイル2、スタイル3・・・・とページが進むにつれ、女子高生の衣類とはかけ離れていったのである。
 中にはナース服、メイド服、レースクィーン風、バニーガール風などといった明らかなコスプレ用衣装まで含まれていた。
 しかも映っているモデルもスタイル1の女子高生らしい美少女から、徐々に派手でヘビーなフルメイクをした女性に変わっていて、まるで風俗雑誌の写真のようである。
 明彦はもう一度衣装ダンスを開けた。本当にスタイルブックにあるような衣類が並んでいるのか確かめようと思ったのだ。
 残念ながら、確かにそれらはタンスの列に並んでいた。
 
 明彦はそれらを身につけた自分の姿を想像してみた。
 頬に燃えるような赤みが差した。抑えようのない羞恥心が明彦を襲ったのだ。
 男の「明彦」の心がこれから予想できる恥辱的な出来事に耐えきれなくなっていた。
 確かに先ほどのカウンセリング時には、なぜか女の「明菜」としての言動しか採れなかったが、それでも心の中は「明彦」なのである。
 
 羞恥心はやがて激しい動悸をもたらし、冷や汗、悪寒、頭痛へと変化していった。
 明彦は乱れた呼吸の中で、カウンセラーの言葉を思い出した。
「これから、気分がすぐれなくなった時は、これを一錠飲んで、『明菜は従順で可愛い女の子。自分の意志はいらないの。強い人の言う通りにしていれば間違いはないの。』と五回ゆっくり唱えなさい。そうすれば、きっと気持ちが落ちつくはずだから。」
 カウンセラーはそう言って、明彦の手に錠剤の入った瓶を手渡したのだった。

 明彦は襲い来る苦しみと闘いながら、カウンセラーのアドバイスに従った。
 白い薬を一錠飲み込むと、ゆっくりと決められた言葉を唱え始めた。
 一回目・・・二回目・・・
 徐々に苦しみは和らいでいった。
 三回目・・・四回目・・・
 苦しみは消え、なぜか幸福感が沸いてきた。
 そして五回目
「明菜は従順で可愛い女の子。自分の意志はいらないの。強い人の言う通りにしていれば間違いはないの。」
 と、ゆっくり唱え終えた時、明彦の心には羞恥心も不安も消え、むしろこれからいろいろな服装やメイクができることへの期待感に興奮すら覚えたのだった。
その瞬間、明彦の心には「明彦」の影はなく、完全に「明菜」が独占していたと言っても過言ではない。

 明彦はまるで夢の中にいるような恍惚とした安堵感を感じながら、入浴を済ませ、ベッドに入った。
 気づくと、就寝前のスキンケアも怠りなく行っていた。さらに驚いたことには、それまでナイトウエアとして着用していたパジャマが、淡いピンクのベビードールに置き換えられていたことにも何ら違和感なく受け入れていたことだ。
 シースルーの生地から透けて見えるBカップのバストが作る浅い谷間と身体全体の柔らかな曲線を姿見に映すと、そのセクシーな姿に明彦は満足そうな微笑みまで浮かべるのだった。

  (第4章へ続く)

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私立明倫学園高校 第3章-1

教室のプレートは「3年Sクラス」と書き換えられてあった。
 傍目からは2年Sクラス生が、進級の日を迎え3年Sクラス生となったことを示している。
 明彦は真新しいプレートを涙で潤んだ瞳で見つめている。
 昨日までなら、教室のドア付近に立てば、中からクラスメートの明るい会話が聞こえてきていた。しかし、今はそんな声は聞こえてこない。時折耳に入るのは、むせび泣くような声だけだった。
 明彦は思いきってドアを開けた。 
 教室の中にはすでに10名ほどが、昨日までと同じ席に着いていた。
 彼らの目は一瞬、明彦の方に向けられたが、次の瞬間には視線を落とし、ただ机の上を呆然と眺めるだけだった。
 昨日までの彼らの表情とは全く違っている。
 それはもちろん、昨日教師から告げられた残酷な事実、つまり自分を女の子だと思いこんでいたのは、単に精神操作という洗脳によるものであるという事実に、精神的ショックを隠しきれないためだったが、実はもう一つの理由があった。
 彼らの表情が違って見える最大の理由は、メイクをしていないということだった。
 恐らく彼らは今朝起きて着替えをする際に、自分は本当は男なんだということを思い出したに違いない。昨日まであれだけ楽しかったメイクが嫌悪の対象になったのである。
 それでも彼らはセーラー服の着用を拒むことはできない。恐らく下着も女性ものを身につけているに違いない。
 なぜなら、彼らの部屋には、ひとかけらの男性物も残っていないはずだからである。
 それは明彦も同様だった。本当は男なのだという事実を知らされた今、ブラやショーツなど身につけたくもない。しかしショーツを履かずにスカートを履くことなどできない。
 それならせめてブラはしないでおこうとも思った。だが、ブラなしでBカップのふっくらとした膨らみを支えることはできないし、はっきりと突起した乳首の摺れを防ぐこともできない。
 明彦は顔から火の出る思いで、ブラとショーツを身につけたのだった。

 その後、教室は、順次生徒で満たされていった。セーラー服にノーメイクというのが、すべての生徒の共通項だった。
 中には、あえて男子としての自分を意識しようと、外股で大きな足取りで席に向かう者もあった。だが悲しいかな、その姿には滑稽な程の違和感があった。
 長期間に渡る指導により身に付いた女性としての仕草が無意識にうちに現れ出てしまうのである。少女が慣れない男の子のまねをしている、それが傍目から見た素直な印象だった。

「ちきしょう、俺をこんな目にあわせやがって。 絶対に許さないからなっ」
 明彦の後方から声が聞こえてきた。声の主は後藤亮太だった。
 本人は、自分の悔しさをぶつけようと、意識して声を低めて、すごんでみたのかもしれない。だが端から聞いていると、少女が男の子の話し方を真似ているようにしか聞こえない。これもまた長期間にわたる女性としての話し方指導による結果であった。
 明彦はハッとした。きっと今自分が同じような言動をとれば同じ結果になるのだろう。
 そう思いは明彦だけではなかったようだ。と言うのも、後藤亮太の声に積極的な反応を示す者は誰一人としていなかったからである。
 いくら男としての言動を意識して取ってみても、その結果は滑稽な演技にしか見えない、自分にもたらされた変化はそこまで達しているのだという冷徹な事実を、彼らは一様に感じ取っていたのである。
 最後に教室に入ってきたのは親友の宮永裕樹だった。
 裕樹の目は腫れていた。きっと直前まで泣いていたに違いない。
 明彦は裕樹に視線を送った。裕樹もそれに返したが、言葉を発しないまま隣の席に着いた。

 
 10分ほどして、担任教師は前日と同様に、二名のカウンセラーと四名のSP風の男たちを伴って教室に入ってきた。ただ、前日と違っていたのは、今日はもう一人の同行者がいたことである。
 同行者は学園長であった。
 実は彼らにとって学園長の姿を直接目にするのは、入学式以来、約2年ぶりのことであった。
 学園長の来室という予想外の出来事に、教室に流れる緊張感は一気に高まった。
 しかも、彼の顔には入学式で見せたような凛とした雰囲気は消えていて、口許には奇妙な笑みさえ浮かんでいる。それは教育者としての笑みと言うよりははむしろ、25名のおとなしく、従順そうなセーラー服の「女子生徒」を前にした、どこか卑猥で好色な笑みに感じられた。
 明彦は学園長の教室中をなめ回すような視線が自分を捉えたとき、背筋に寒気が走り、思わずセーラー服のスカートの裾を押さえ、ブラウスの胸元に右手を添えた。

 学園長は、担任教師に促され教卓の前に歩み出ると、もう一度教室全体に視線を送り、相変わらず好色な笑みを浮かべながらゆっくりと口を開いた。
「今日から、お前たちも3年生だ。まずはおめでとう。今、男子Dクラス生、女子Fクラス生にも挨拶をして来たところだが、彼らは皆希望に溢れた表情をしていた。お前たちもきっと希望に満ちあふれていることと思う。残念ながら表情からは、そんな様子は見えないが・・・。」
 学園長の言葉には明らかな皮肉が込められていた。彼もまた担任教師と同様、呼びかけの言葉は「お前」であった。
「今日は3年生初日として、お前達に言っておくことがある。とても大事なことだから、きちんと聞くように。説明中の私語は一切禁止する。違反した場合の罰則は・・・・もう言う必要なないだろうな。フフフ」
 学園長は、教室後方に無表情のまま直立している4人のSP男たちに視線を送った。
 教室中に冷たい恐怖感が走った。昨日の出来事を忘れている者は一人もいなかった。
 その上、彼らの心には強者に対する卑屈なまでの従属性が残ったままである。厳しいカロリー計算とスポーツ禁止とによって、哀れなほど華奢な体格に変化している彼らにとってSP男たちはまさに「強者」以外の何者でもなかった。
 現に明彦は彼らの射るような視線を一瞬たりとも正視できなかった。いや正視しようと試みることさえできなかったのである。

「まず第一に、お前達は正式には、我が明倫学園高校3年生になったわけではないということを覚えておきなさい。お前達の学籍は昨日の段階で抹消されている。つまり現在、明倫学園高校3年生と言えば、それは男子Dクラス生と女子Fクラス生のみを指しているということだ。」
 生徒全員の視線が学園長に注がれるが、誰一人言葉を発しようとする者はいない。
 それは、罰則が怖いからではない。学園長の言っていることの趣旨が全く理解できないからである。
「ハハハ・・・お前達何を言ってるのかわからないようだな。では、具体的に説明しよう。お前達がこの2年間で学んだ高校履修単位は0である。つまり形式的には2年間一度も高校の授業には出席していないことになっている。従って、単位不足によって退学処分とするというのが学園の方針であり、そのことはすでにお前達の保護者にも連絡済みである。当然ながら、保護者からは事情説明を求められたので、すべてを説明してある。その内容は、『お前達には特別な性癖、つまり女になりたいという願望があり、寮内では女装して過ごしている。恐らく家にいては発散できなかった願望を、寮の中でなら果たすことができると思ったのだろう。そのため願望を満たすことに時間を費やして授業どころではなかったようだ。学園側としてはご子息を退学させる以外に方法がない。』というものである。もちろん、保護者達は最初、我々の言葉を信じようとしなかった。だが、私たちがお前達の直近の姿を画像に収め、送付したことでその問題は解決した。その後の保護者たちの反応は程度の差こそあれ、ほぼ一様だった。何とか卒業だけはさせて欲しい。そのためにはどんな手段でもかまわない。場合によっては寄付金の増額で何とかならないか、と。それはそれは、涙ぐましい親心だ。ハハハ・・・。」
 学園長の顔には遠慮のない笑みが溢れていた。
 生徒達はその笑顔に邪悪な心を感じ取り身体を一層固くした。
「そこで、我々は保護者達にお前達の卒業を約束する代わりに、学園が行うあらゆる『処置』に対して一切の異論を挟ないこと、またどういう結果になろうとも責任を追及しない旨を唱った新たな誓約書を提出してもらっている。つまりお前達にこれから行われる『特別指導』という名の『処置』には保護者からの全面的な支持があるということだ。もちろん保護者達は、学園側がお前達『変態息子』を更正させ、その上で卒業に必要な指導が行われると思ってのことだろうがな・・・アハハ」
 

 その後、学園長と担任教師による説明は優に2時間を超えて行われた。
 途中、声を上げて抗議する者、また走って逃げ出そうとする者もいたが、その度にSPによって強引に抑えつけられ、それでも抵抗を続ける者には容赦のない平手打ちの洗礼が待っていた。
 見せしめというにはあまりに凄惨な光景に、ほとんどの生徒は無言のまま震えるしかなかった。彼らの心の中にある「強者に対する卑屈なまでの服従性」が教室全体を覆いつくしていたのである。
 もちろん、それは明彦とて例外ではなかった。
 もしかして洗脳教育を受ける前の彼だったら、無駄だとわかっていても抵抗し、平手打ちを浴び、机に泣き伏している3名の生徒の中に加わっていたかもしれない。
 だが、今の彼にはその片鱗すら見ることができなかった。
 恐ろしい光景に身体を震わせ、こぼれ落ちる涙を拭おうともせずにじっと瞳を閉じるしかなかったのである。

 学園長の説明が終わった時、教室全体を満たしていたのは、絶望に打ちひしがれた生徒達の声にならない嗚咽だけだった。
 明彦は隣の裕樹に目を向けたが、声をかけることはできなかった。呆然と前方の一点を見つめるその顔は、恐怖からか、絶望からか、病的な程蒼白だった。

 Sクラス生たちをそこまでの思いに追い込んだ学園長の説明とは、どのようなものだったのか。
 その要点は次の通りである。

 まず、前提として彼らSクラス生の明倫学園高校における学籍を削除し、代わりに姉妹校である恭純女子学園特別生としての学籍を与える。
 無論書類上のことであり、「特別指導」はそのまま現学生寮内で行う。
 今後、一年間で高校卒業に必要な単位を「書類上」付与するが、実際に高校の授業を行うわけではなく、その時間をすべて「特別指導」に費やす。
 そこには一人の脱落者も許さない。すべての生徒が習得するよう徹底的な指導を行う。その点は、我々明倫学園のモットーだから。
 学園長は最後に皮肉を込めてそう言うと、大きな笑顔を見せた。

「では、肝腎な『特別指導』の内容だが・・・、これは、一言で言って実生活に関わる内容と言っていいだろう。つまり、お前たちのような小学生並みの知能と体力しかない者たちが今後生きていくために必要な知識と技能の習得、それが目的だ。」
 学園長は、生徒たちの顔に『特別指導』という聞き慣れない言葉に対する疑問の色が浮かんでいるのを感じ取って、そう言った。
「それが、具体的にどのようなものかわかる者はいるか?」
 学園長は初めて生徒たちに問いかけた。
 しかしその顔には、学問的な興味からではなく、目の前の「女子高生」達をからかいながら楽しんでいる様子が見て取れた。 
「うむ・・・やはりお前達のように知能が低い者には無理だったかな。」
 学園長は、誰一人として反応がないのを見て嘲笑気味に言った。
 そんな嘲笑にさえ、誰一人として反発を示そうとしなかったのは、言うまでもなく、意識の底を流れている強者に対する従属性と、SP男たちによる厳しい処罰に対する恐怖心からだった。
  
「では、質問を変える。知能もない、体力もない、そんな人間が生きていくにはどうしたらいいと思う?」
 学園長はそう言うと、教卓に置かれた座席表を頼りに一人の生徒を指さした。
 指さされた生徒は、一瞬ビクッとしたが、何とかゆっくりと立ち上がり口を開いた。
「べ、勉強して・・・知能を高め・・・運動して・・・体力をつければいいと・・・思います。」
「ハハハ、そんなことをしても間に合わない。小学生なみの学習しかしていないお前たちが大学に進学するのは不可能だ。一年後には自ら生きる術を身につけていなければならない。少なくとも『女子高生』になった『変態息子』の帰りを迎えてくれる家はないだろうからな。だが、心配することはない。お前たちは知能と体力を失いはしたが、代わりに得た貴重な財産がある。それをうまく使いこなせば、すぐに幸せな生活を送れるようになる。『特別指導』はそれを教えるのが目的だ。  では、次の質問をする。その貴重な財産とは何だ?」
 学園長は、先ほどの生徒の後ろの座席を指さした。
 指名された生徒はゆっくりと立ち上がったが、無言のまま前を見つめるだけだった。
「わかった、着席しろ。本当にお前達の頭の悪さにはあきれてしまうな。お前達が持っている貴重な財産は、今までに指導で身に付いた女としての知識、振る舞い、話し方。そして女性ホルモンによって作られたその女らしい身体だ。それを十分に活用して幸せな生活を送ることを考えろ。 では、次、それをどのように活用したらいいと思う?」
 学園長は北田晃一を指さした。昨日、説明中に私語をしてSP男に平手打ちの洗礼を受けた生徒である。
 晃一は、昨日のことを思い出したのか、卑屈なほどの恐怖心を露わにしながら、ゆっくりと起立した。
「・・・わ、わかりません・・・」
 蚊の泣くようなという形容が正にピタリとするか細い声だった。
 だが、学園長は着席を許可しなかった。恐らく昨日の私語の見せしめをするつもりなのだろう。晃一を立たせたまま質問を続けた。
「では、質問を変える。女らしい振る舞いや、女らしい身体に魅力を感じ、本能的に求めるのは誰だ?女性か?男性か?」
「だ、男性・・・だと思います。」
 晃一はやや声を大きくして答えた。当然の質問だと思ったからである。
「うむ。その通りだな。お前達のように頭は悪いが、その分振る舞いも体つきも女らしい者を好む男は多い。しかもそういった男たちの多くは支配的で攻撃的な傾向がある。従ってお前達のように強者への服従性を持ち合わせた者は、彼らにとっては魅力的な存在であるということだ。つまりお前達はそんな男たちに従属し、より気に入られるよう努力することで幸せな生活を送ることができるというわけだ。『特別指導』はそのための具体的指導を行うためのものだ。」
 
 学園長の説明が進むにつれ、自分の置かれた状況の深刻さに気づいていった生徒達は、一様に蒼白な顔色になり、遠慮なく声を上げて泣き出す者もいた。
 男でありながら、他の強い男に従属し、しかもより気に入られるよう「女」として努力する生活・・・それはあまりにも屈辱的な姿に思えた。
 そんな思いが教室中に溢れつつあるのがわかったのか、学園長はさらに言葉を続けた。
「お前達の中には、男でありながら、なぜそんな惨めな生き方をしなければならないのかと思っている者もいるかもしれない。だが心配する必要はない。女性ホルモンによってもたらされる変化は身体だけではない。お前達の心も女性的意識に変えつつある。それに加えて精神操作までされているのだから、『男でありながら』などという意識は間もなく消えてなくなるだろう。それにこの説明終了後に行われるカウンセリングではそんなお前達の心の悩みも解消されるだろう。」
 学園長は口許に意味ありげな笑みを浮かべて言った。 
 
 学園長は説明の最後にと一言付け加え、
「お前達にもそろそろ、クラス名、つまりなぜ『S』クラスという名称だったのかを知らせる時が来たようだな。『S』は『Subservience』つまり『従属、卑屈』を表す英単語の頭文字だ。まあ、お前達では誰も知らない単語だろうが、それももう知る必要もないことだ。3年『Sクラス』はもう存在しないからな。アハハハ」
 明彦は、学園長の言葉には、もはや何の驚きも感じなかった。
 クラス名など今更何になるのか、そんなことよりこれから先への不安と恐怖心が心を占有していたのだった。
 ただそれでも微かに心によぎったのは、「だったら、『Dクラス』の『D』は一体何を意味しているんだろう」という思いだった。その思いは同時に、Dクラスに在籍している親友、兵藤良介と女子Fクラスに在籍している恋人、村瀬美穂を思い出させることにも繋がった。

 (続く)

私立明倫学園高校 第2章-2

 2年生授業最終日を迎えたSクラスの教室は、担任教師の来室を待つ25名の「女子生徒」のおしゃべりに包まれていた。
 みんなの話題の中心は3年生をどういう形で迎えるのかにあった。
今日を迎えるに当たって、不安を抱えている者もいたが、それも宮永裕樹の「女子生徒としてFクラスに編入されるはず」という言葉に、その不安も消えていた。
 ただ明彦には、もしFクラスに編入されたら、美穂との再会はどんな形になるのだろう。美穂は自分を理解してくれるだろうかという、不安が消えてはいなかったが。

 数分後、担任教師が2名のカウンセラーと4名の見慣れない男を伴って教室に入ってきた。
 教師もカウンセラーにも男達にも笑顔はない。
 4名の男たちは一様に体格に恵まれ、屈強そのものというイメージで、それが厳つい顔つきと妙にマッチしていた。
 彼らを見た教室の「女子生徒」たちは一斉におしゃべりを止め、視線を教壇に向けた。

「今日は、大切な話があるので、よく聞いて欲しい。これは君たちの今後を決める大事な話だ。説明中の私語はもちろん、質問も受け付けない。違反した者には罰則があるのでそのつもりで。」
 Sクラス生全員からも笑顔が消えた。ただならぬ雰囲気に不安を隠せない者もいた。
「君たちは、それぞれ自分が『性同一性障害』であり、心は女だと信じているね?」
 全員が大きく頷いた。
 教師の口許に初めて笑みが浮かんだ。明るい笑みではない。口許をゆがめた冷淡な笑みだった。
「それは、間違いだ。君たちは『性同一性障害』でも何でもない。君たちは正真正銘、心も体も男子である。それなのに、なぜ心の中は女子だと思い、今のような化粧をしたり、セーラー服を着るのが自然だと思うようになったのか?それはこの寮での『精神操作』によるものだ。まあ、一種の催眠状態に君たちはいるということだ。ここにいるカウンセラーの先生たちによってなされたことだ。」
 教師は教壇脇に立っているカウンセラーに視線を送った。

「そ、そんなわけないわ。だって、私たちみんな、身体だって・・・」
 最後列に座っていた北田晃一が席を立ち、胸を張って見せた。
 それは目立つほどの胸の膨らみではないが、それでも胸を張ってみせればブラウスの奥に小さな丘があることは容易に見て取れた。
 教師は晃一の突然の発言にも動じるそぶりを見せず、変わりに教室後方に立っている4人の男たちに目配せをした。
 男の一人が北田晃一の席に近づき、右手を振り上げたと思った直後、激しい勢いで晃一の頬を張った。
 ピシィーという湿った破裂音が無音の教室に鳴り響いた。同時に晃一の細い身体が崩れ落ちた。
 頬を打たれた痛みからか、あまりに突然の出来事だったからなのか、晃一の目には涙が溢れれ、口許からは嗚咽が漏れ始めた。
「先ほども言ったはずだ。私語も質問も禁止だと。違反したら罰則が待っているということも。」
 みんなの視線が晃一に向けられた。晃一の嗚咽だけが教室中に響いていた。

「まあ、北田の言いたいこともわかる。自分たちは身体も女性的になっているのだから、女であると言いたいんだろう。ハハハ・・・だが、それはおかしい。例え性同一性障害だとしても、それは精神の問題であり、肉体まで女性化するわけはないからだ。では、お前たちの身体はどうして女性化したのか。それは・・・食事の時に与えられてきた『スペシャルドリンク』と呼ばれるもののせいだ。あの主成分は高濃度の『エストロゲン』だと言ってある。その『エストロゲン』がどのようなものか、調べた者はいるか?」
 教師の質問に誰一人手を挙げる者はいなかった。
 呼びかけもいつしか「君」から「お前」に変わっていた。そのことが彼らの緊張感をより一層高めていた。
「ハハハ・・・いないだろうな。 お前たちには、未知な物を調べようとする意欲も知恵もないだろうからな。なぜならこれまで2年間の学習でお前たちの能力は小学校低学年並のレベルに落ちているのだから。仕方がないので、教えておいてやるが、『エストロゲン』とは、女性ホルモンのことだ。お前たちはこれまで高濃度の女性ホルモンをずっと摂取してきたということだ。お前たちの身体が女性化したのはそのためだ。」
 教師の言葉に誰一人反論しようとする者はいなかった。
 それは、反論したときに北田晃一と同じ罰則を受けるのを恐れたからだけではない。
 教師の言っていることが全く信じられなかいものだったからだ。いったい何を言っているのか、まるで別世界のことのように思えたのだ。
 自分が男であるわけはない。だって、自分は間違いなく女なんだから。
 それが生徒達の本心だった。
「ハハハ・・・みんな信じられないような顔をしているな。それは仕方がないことだ。なぜならお前たちは皆催眠状態にいるのだから。よろしい。これからその催眠状態を解くことにする。」
 教師は教卓に二人のカウンセラーを手招きした。

 その後、約2時間をかけて、Sクラス生たちの催眠状態は徐々に解かれていった。
 なぜ、それほどまでの長時間が必要だったのか。
 それは、ただ単に生徒たちの意識を男子生徒として入学した時点に戻すというだけではなかったからだ。
 一部の催眠状態は保持したまま、大部分を元に戻すという極めて繊細なものだったのである。
 その保持した部分とは、これまでの洗脳教育で植え付けた、強者に対する卑屈なまで従順さと従属性だった。
 この点さえ保持しておけば、体内を支配し始めた高濃度のエストロゲンとの相乗効果により、今後の計画が進めやすいと考えたからである。
 だが、そうまでして、せっかくの催眠状態を解くことにどんな意味があるのだろうか。
 そこには学園側の極めて冷酷な奸計があったのである。

 学園側には彼らSクラス生を女子Fクラスへ編入させる考えなど最初から持っていなかった。
 学園側は彼らを明倫学園生としてではなく、特別クラス生として残り一年の「特殊指導」を行うこととを計画していた。
 それには保護者からも世間からも明倫学園生としての彼らの存在を消す必要がある。
 もし、仮に彼らが「性同一性障害」であることを理由に女子生徒として正当な権利を主張するようなことがあれば、一部の理解ある保護者はその意見に賛同し、世間をも巻き込んだ論争に発展する恐れもある。
 学園としてはどうしてもそれを避ける必要があった。
 それには彼らを、保護者にとって正当な権利を主張するには及ばない「疎ましい」存在、つまり昔風に言うなら「勘当」するにふさわしい「息子」にすることである。
「自分の息子は、男でありながら女装趣味があり、しかも女子になりたくて、進んで女性ホルモンまで摂取することをカウンセラーに相談し、実行した。そんな「変態息子」を何とか学校の力で教育し直して欲しい。」という思いを保護者に抱かせることが必要だった。
 それが学園側が、わざわざ彼らの催眠状態を解いた理由だった。

 その夜、Sクラス寮ではすべての部屋から咽び泣きが響いていた。
 催眠状態が解かれ、改めて変わり果てた自分の姿を目の前にした絶望の悲しみによる涙だった。
 明彦も例外ではなかった。
 せめて少しでも男としての自分に戻りたい。
 そんな思いからメイクを落とし、男性用の下着を着て鏡の前に立った。
 異様な光景だった。
 スッピンの美少女が男物のトランクスとTシャツを身につけ、鏡の前に立っている。
 Tシャツの胸の部分にはあるはずのない豊かな柔らかい膨らみが、これでもかと主張している。
 袖から伸びる、白くか細い腕はあまりにも儚い。
 ずっと意識していなかったことだが、トランクスを履いてみると股間の盛り上がりがほとんど認められない。いつからこれほどまでにペニスが矮小化していたのか、明彦にはまったく思い出すことができなかった。
明彦の目には拭っても拭いきれないほどの涙が溢れてきた。
 それは、取り返しが付かない段階まで変わり果てた自分の姿に対する絶望感と共に、明日から始まる「特殊指導」への不安感とが重なり合った感情によるものだった。

 (第3章へ続く)

私立明倫学園高校 第2章-1

 2年Sクラスの学生寮の一室で、山本明彦は授業前の準備を整えている。
 今日は2年生最後の出席日である。
 授業後は、進級についての大事な話が各担任から個別に行われるということだ。 
 Sクラス生は3年になるとクラスの移動があるらしいということは事前に聞いている。 ただ、明彦はそのことについては何も心配してはいない。
 自分を含めてSクラス生全員が女子Fクラスへ編入されると思っているからだ。

「だって、私たちはみんな女の子なんだから。Fクラスへ編入されるのは当たり前でしょ?」
 クラス移動の話があったとき、明彦の左隣に座る小柄で細身の美少女が微笑みながら言った。
 セーラー服の胸のネームプレートには「宮永裕樹」と書いてある。
 明倫学園Sクラスの中で明彦が最も親しくしている友人である。
「そ、そうよね。間違いないわよね。」
 裕樹の声に反応して誰かが答えると、その思いが化粧品とコロンの甘い香りに満たされたSクラスの教室に充満していった。
 同じセーラー服を身につけた少女達の顔に一斉に楽観的な明るさが戻った。

****************************************
 
 2年前、Sクラスの授業が始まった頃、つまりまだ自分たちが男であると思いこんでいた頃の教室の雰囲気とは全く違う。
 明彦は時々、自分が詰め襟の学生服を着ていた頃のことを思い出し、顔を赤らめることがある。
 自分は性同一性障害で、心は普通の男子とは違うと気づいたのは1年生前期の終わり頃だった。それを気づかせてくれたのは、「精神教育」の授業のおかげだった。
 
 最初の頃は、意味の分からない妙な音が断続的に流れる中で行われるその授業に違和感を感じていたが、2か月後位になると、その音が心地良くなりほとんどの場合には深い眠りに落ちてしまって、いつ授業が終わったかわからないこともあった。
 ただ、その眠りから覚めたときの気持ちよさ、充実感は例えようもないほどだった。
 先生はそれを「本当の自分を発見しつつある証拠だ」と説明してくれた。

 さらにひと月くらいが経過し、「精神教育」の授業を心待ちにするようになった頃、明彦の心にはっきりとした変化が現れる。
 それまで、小学生低学年の内容ということで、いい加減な気持ちで出席していた授業も真剣に取り組むようになっていったのである。しかも驚いたことに自らの知能まで順応してしまったのか、低レベルであるはずの授業内容が難しく感じるようにさえなってきたのである。
 少しでも早くDクラスへの移動を望んでいた明彦にとっては、衝撃的な事実であり、本当ならショックを受けて思い悩むべきことだったが、どういうわけかそんな感情はわいてこなかった。むしろ、本当の自分の学力はこれくらいであり、今までは無理していただけだという、妙な開放感さえ感じ始めていたのである。
 また、女性の服装や化粧品などの知識をも扱う「教養の時間」についても、それまでの違和感が消え、むしろ興味さえ沸いてきたのである。そしてその興味が次の段階として、「自分も着てみたい、お化粧をしてみたい」という好奇心へと繋がっていったのは自然なことだった。
 
 ある日の「教養の時間」終了後、明彦は思い切って先生に頼んでみた。
 復習をしたいので、服と化粧品の一部を部屋に持ち帰っていいかと。
 拒否されるのを覚悟していた明彦だったが、担当の先生は笑顔で了解してくれた。しかも、参考までにとメイクのハウツー本まで持たせてくれた。
 先生たちは、生徒達の女性的なものに対する興味には、どういうわけかとても積極的に支持してくれ、反対に男性的な事物に対しては異常なほどの厳しさで拒否する傾向があった。
 いずれにせよ、数枚の洋服と化粧品を部屋に持ち帰った明彦は、ぎこちない手つきでシンプルなワンピースを着て、ハウツー本を参考に簡単なメイクをして鏡の前に立った。
 その時の全身を電流が駆け抜けるような感覚は、それまでに経験したことがないほど激しいものだった。
 それからというもの、授業後部屋に戻ってくると、メイクをし、女装で過ごすことが日課になり、いわゆるメイクテクニックも徐々に磨かれていった。

 そんなある日、Sクラスの教室にある衝撃的なできごとが起こった。
 一人の生徒が、うっすらとメイクをし、セーラー服姿で教室に入ってきたのである。
 その生徒は、前山恵一という顔立ちの整った小柄な生徒だった。
 教壇の脇に立つ恵一を、クラス全員が驚きの表情で見つめているのを知った担任教師は、ゆっくりと説明を始めた。
「みんなも驚いていることと思いますが、ここに立っているのは間違いなく、前山恵一くんです。皆さんは『性同一性障害』という言葉を知っているでしょうか?簡単に言えば、外見上、そして戸籍上の性別と内面の性別が一致していない状態を言いますが、前山くんはその『性同一性障害』であることが判明しました。本校はこの問題については非常に寛容であり、十分なサポート体制を持っています。前山くんは今後、女子生徒として過ごすことになりますが、様々な手続きが完了するまではこのSクラスに所属します。ですから皆さんも十分理解した上で協力してください。それから補足ですが、この前山くんと同様の悩みを抱えている人がいれば、隠さず相談に来てください。学園は十分なサポート体制を取って支援しますので。」
 明彦は教師の言葉にハッとした。自分に向けられたメッセージのような気がしたのである。
 復習という名目で女性服や化粧品を部屋に持ち帰り、密かに自ら身につけていることが知られしまっているのだろうか。
 明彦は担任教師の視線を避け、思わず下を向いた。
 ただ、彼の視線は明彦に向けられたものではなく、クラス全体に向けられたものだった。
 その瞳の奥には何かしら意味ありげな光が宿っているのを感じ取ったのは明彦だけではなかったであろう。
  
 前山恵一の一件以来、同様のカミングアウトが連日のように続いていった。
 そして20日目、最後に残された崎田健行でSクラス全員のカミングアウトは終わった。
 その日以降、Sクラスの教室からは詰め襟の男子服は消え、クラシックなセーラー服に
占められるようになった。
 同時に化粧品とコロンの甘い香りに包まれ、所々に花やパステルカラーの絵画が飾られた「女子校」の教室へと変貌を遂げたのだった。

「Sクラス生はみんな『性同一性障害』の生徒だったんだ。そのことをいろいろなデータで知った学校側がSクラスを作り、自分たちを分離し、様々な指導を通じてカミングアウトできる環境を作ってくれたんだ。」 
 カミングアウトの順番では6番目だった明彦は、その後も続く新たな「女子高生」の出現を見つめながら、そう考えるようになった。

 この頃になると、「教養の授業」から男性としての教養部分はすべて排除され、女性としての教養・知識・実践へと特化していった。
 と同時に、一日三回与えられる食事に、「スペシャルドリンク」なる飲み物が加えられるようになった。
 その中身は「高濃度エストロゲン」という貴重な「栄養素」であるという説明を担任教師からは受けたが、小学生低学年並みの知識量になっていた彼らSクラス生には「エストロゲン」なる物質がどのようなものなのか知る術もなかったし、不思議なことに知ろうとする意欲を持つ者もいなかった。

「スペシャルドリンク」が本当に豊かな栄養素だと明彦自身気づいたのは、一年生後期の中頃のことだった。
 激しい運動から遠ざかり、すっかり筋力も落ち、細身の身体がより一層目立ってきていた明彦の身体に少しずつ肉が付き始めてきたのだ。でもそれは固い筋肉というようなものではなく、柔らかな贅肉のようなものだった。しかもそれが集中するのが胸の周りとお尻周りから太股にかけてだった。
 最初は気のせいだと思い、なるべく考えないようにしていたが、胸の贅肉は小さな隆起となり、乳首も少し大きくなってきたように見える。
 肌の肌理が細かくなり色もいくぶん白くなったような気もするし、髪の毛も伸びが早くなり、艶とコシが増したように思う。
 とにかく身体の様々なところに微妙な変化が現れてきたのだ。

 明彦は友人の宮永裕樹に思い切って相談してみた。
 驚いたことに、裕樹の身体にも同じような変化があるという。
 二人は放課後、一緒に担任の元に相談に行った。
 担任の教師は、そのようなことは「性同一性障害」の人にはよくあることで、一時的なものだから気にすることはない、と言ったが、明彦も裕樹も心配は消えなかった。
 自分が「性同一性障害」であることはわかっている。でも、それだからと言ってこのような身体的変化が起こるものなのだろうか。何か他の病気ではないのだろうか。 
 明彦はその不安な気持ちを素直に担任にぶつけた。
 担任は、そこまで不安な気持ちになるのは恐らく精神的なものが原因であろうと言って、Sクラス専属のカウンセラーのところを尋ねるように言った。

 カウンセラーによる「治療」は適切だった。
 「治療」と言っても、どういうわけか記憶に残っているのは最初の数分だけで、後はすっかり眠りに落ちた状態だった。でも眠りから覚めると、それまで心配の原因だった身体的変化のことは全く気にならなくなっていた。
 カウンセラーは、そんな明彦の気持ちを察したのか、食事の際の「スペシャルドリンク」を2本に増やすことと、しばらくの間は一日おきにカウンセリングルームを訪れることを薦めてくれた。
 カウンセラーのその言葉はあくまでアドバイスという形を取っていたが、どういうわけか明彦には強制力のある命令に聞こえ、疑問があっても逆らうことのできない絶対的な力を持っている言葉に感じたのである。
 明彦は翌日から、アドバイスを忠実に実行した。

 それから数週間、明彦の心は安定していた。
 心配の種だった身体の変化が止まったわけではない。むしろ、変化は顕著になっていたとさえ言える。
 体の線が細く華奢になっていくのに反して、胸の周りの柔らかな膨らみが徐々に丘状を形作るようになり、お尻周りから太股にかけての線にふくよかな肉付きが加わってきた。
 だが、そんな身体の変化への不安も不思議なことに、一日おきのカウンセリング後にはすっかり消え、心地良い幸福感に置き換わっているのだった。

 ある日、明彦は親友の宮永裕樹に、数日間気になっていることを相談した。
 実は、数日前から胸の膨らみが顕著になり始め、同時に乳首の突出がブラウス越しにも目立つようになってきていた。そしてそのツンとして部分がブラウスの繊維に擦られ、チクチクとした疼きをもたらし始めていたのだった。
 明彦は、セーラー服を着ることには何とか抵抗なく過ごせるようになってはいたが、女性もののランジェリーを身につけるつもりはなかった。それは、他のSクラス生も同様だと明彦は思っていたのだ。
 ところが、明彦から胸のことで相談を受けた裕樹は、まるで何でもないことのように微笑みながら答えた。
「そんなこと、ブラをすればすぐに解決するよ。ほら、僕みたいに・・・」
 裕樹はそう言うと、ブラウスを捲り上げてみせた。
 明彦の目には、自分と同じくらいの膨らみを持つ裕樹の胸をレモンイエローのブラジャーが覆っているのが映った。
「い、いつから・・・いつからそんなの着けてるの?」
 明彦は、裕樹の胸に視線を注ぎながら言った。
「う~ん、いつだっけなぁ・・・もう着けてるのが当たり前だから忘れちゃったよ。」
 裕樹の返事は明るかった。

 裕樹からは、ブラだけではなくお揃いのショーツも履いているという話を聞いた。
 明彦は他のSクラス生はどうなのかと思い、翌日何人かの生徒に聞いてみたところ、驚くべきことに、ほとんどの生徒が女性もののランジェリーを身につけているということがわかった。
 放課後、明彦はカウンセラーの元を訪ねた。
 自分も女性もののランジェリーを身につけなければいけないのか。でもそれには抵抗がある。確かに「性同一性障害」であるかもしれないが、自分には男性としての意識は残っている。だから、下着まで女性ものを身につけるのは、完全な女性化を認めてしまうことになりそうで怖いと。
 カウンセラーは明彦からの相談を受け、「では、特別なカウンセリングをしましょう」とだけ言って、一枚のCDを取り出すと、プレーヤーにセットした。
 明彦は言われるままヘッドフォンを耳にし目を瞑った。
 聞き慣れない音が響く中で、明彦は眠りに落ちた。
 
 眠りから覚めた明彦には、表面上は何の変化も感じられなかった。
「だだの気休めだったのかな」
 明彦はそう呟いた。  
 だが、変化は翌朝現れた。
 シャワーの後でいつものように男物の下着を着ようとした時、激しい動悸と悪寒、さらには激しい頭痛が襲ってきたのだった。
 明彦は咄嗟に親友の裕樹を呼び出した。
 裕樹は自分の持っている女性ものの下着を手渡し、試しに着てみるように言った。
 明彦は藁にもすがる思いで、着ている男物の下着を脱ぎ捨てると、裕樹から渡されたパステルカラーのブラジャーとショーツのセットを身につけた。
 初めて着けるブラのホックに戸惑っていると、裕樹が慣れた手つきで手伝ってくれた。
 その途端、原因不明の動悸と悪寒が嘘のようになくなり、頭痛も少しずつ和らいでいった。

「実は、僕もそういうことがあったんだよ。カウンセラーの先生に女性ものの下着を着るべきかどうか迷っていると言ったら、特別なカウンセリングをしてくれたんだ。カウンセリングの後はとてもいい気持ちだったんだけど、男物の下着、ううん、下着だけじゃなくて、他の持ち物も男物を見ると気分がすごく悪くなるようになったんだ。だから今僕の部屋には男物は一つも残っていないよ。最初は何か変だなとは思ったけど、今では女の子のものに囲まれていることの方が自然だって思うようになってるんだ。その方がとても楽しいしね。」
 裕樹は、気分の落ちついた明彦に向かって、明るい笑顔が言った。
 明彦は半信半疑ながらも、明彦のアドバイスに従ってみようと思った。
 女性用の下着を身につけることで体調が回復したこともあるが、それ以上に膨らみかけた胸や丸みを帯びた下半身には、その方がより自然なフィット感をもたらしてくれることがわかったからである。
 
 明彦はすでに女性下着に精通していた裕樹と相談しながら、少しずつその種類を充実させていき、3週間後には同年代の女子高生のコレクションと遜色ないまでになっていた。
 ただ、せっかく揃えたものだったが、すぐに新しい問題が出てきた。
 日を追う毎にブラのサイズが合わなくなってきたのである。
 揃え始めた頃のAカップが今ではBカップでもわずかに窮屈な感じがする。しかもそれに伴って、乳首の突起も目立つようになり、乳輪の大きさも増してきていた。
 いや、変化はそれだけではない。下半身に目を移してみると、胸の変化ほどではないが、お尻周りから太股にかけての肉付きが一層増している。
 肥ったということはないはずだ。徹底したカロリー計算をされた食事により体重はむしろ減っていた。ウエスト周りだって入学時に比べて5センチも細くなっている。しかも、スポーツを全くしてないために筋力の落ちた腕や足は頼りないくらいにか細くなっている。
 さすがに不安になった明彦は、再びカウンセリングルームのドアを叩いた。
 
 カウンセラーは「一時的なことだから気にしなくてもいい」と言ったが、今回ばかりは明彦の不安は消えなかった。
 明彦はかねてから抱いていた不安をぶつけてみた。
「食事の時に飲んでいるスペシャルドリンクのせいではないですか?こんなふうになってきたのはあれを飲み始めてからだと思うんですけど・・・。」
 カウンセラーの顔から一瞬笑みが消えたが、それもすぐに元に戻った。ただ今度の笑みはどことなく取ってつけたような笑みだったが。
「君がそんなことを疑っているのは精神的に不安定だからです。このままでは重大な精神病に冒される可能性があるので、今日は特別の心理療法を行います。」
 カウンセラーはそう言うと、明彦に錠剤と水を差しだした。
 明彦は、それを言われるままに口にした。
「重大な精神病」などという予期していなかった言葉に恐怖さえ感じていたので、拒否することはできなかったのだ。
 その後、どのような「心理療法」が行われたのか、明彦には全く記憶がない。
 ただ、「心理療法」が終了し、深い眠りから覚めた時にはこれまで味わったことのない幸福感と恍惚感とが支配していたのは確かだった。

 明彦の心から、身体の変化による不安は払拭されていた。
 いや、払拭されたと言うより、不安は幸福感に置き換わっていたのである。
 朝、自らの身体を鏡に映した時に、心に自然と沸いてくるのは、日毎の身体の変化を待ち望む思いだった。
 ふくよかな胸の膨らみ、綺麗な肌、柔らかな体の線、ふっくらと脂ののったお尻周り、それらを自分の理想の姿として思い描くようになっていったのだった。
 明彦自身もなぜそんな思いを抱くのかわからなかった。だが、そう思うことが自分にとって自然であり、当たり前のことに思えるようになっていたのである。


 身体の変化を待望するようになると、それまで違和感を覚えていた授業内容の一部をも素直に受け入れられるようになっていった。
 その授業内容とは「教養の時間」で扱われる、女性としての立ち居振る舞い、話し方、身だしなみ、マナーといった知識についてである。
 いくら「性同一性障害」とは言え、自分は女性ではない。だからそんな授業はおかしいという思いが明彦にはあった。
 しかし、今の自分の身体に起こっている変化は女性のそれではないか。しかも自分は内心それを望んでいる。ということは、女性としての知識を身につけるのも当然ではないか。
「僕の本当の心は、女の子だったんだ。」
 明彦は、いつからともなく、そう心で呟くようになっていた。
  
 もちろんこのような変化は明彦にだけ起こったことではなかった。
 個人差があり、全員が同時にということではなかったが、2年生の前期終了時点では、Sクラス生の誰一人として、自分を男子学生と認識している者はいなくなっていた。
 皆の言葉から男言葉が消え、「教養の時間」で身につけられた優しい女性言葉に変わっていた。
 乱暴で粗野な動作は消え、柔らかで繊細な身のこなしに変わった。
 休憩時間の話題も、音楽や映画、ドラマや芸能ゴシップ、そして何よりファッションとメイクに独占されるようになっていった。
 さらに、身体の変化、とりわけ胸の膨らみの目立つ生徒に対する他の生徒たちの視線には独特なものがあった。
 男子が女子生徒の胸の膨らみを見る好奇の視線とは違う、そこには明らかな嫉妬の色が浮かんでいたのである。

 (続く)

私立明倫学園高校 第1章-2

 3人の友達グループはそれぞれの学生寮に落ち着き、明倫学園での新しい生活を始めることとなった。
「夢と希望を胸に、明るい未来に向かって・・・・」と言いたいところだが、そんな思いはすぐに潰えることとなる。
 とりわけ、Sクラスに振り分けられた明彦にとっては、失望などというありきたりな言葉では表現しきれないほどの残酷な運命が待ちかまえていたのである。

 その残酷な運命がどのようなものだったのかを説明するためには、明倫学園の秘められた「教育方針」を明らかにするのが最も手っ取り早い方法だろう。
 明倫学園にはクラス毎に異なる指導指針が存在した。
 ごく一般的な進学校としてのカリキュラムに則って指導が行われる「女子Fクラス」については説明の必要はないだろうが、男子DクラスとSクラスの指導は世間一般のカリキュラムとは全く一線を画した独特のものだった。
 さらに言えば、そのDクラスとSクラスの指導内容の違いは、それが本当に同一の学校の同一学年の物かと思えるほどに違いがあった。いや、「違い」などと言うあやふやな言葉を使うべきではないかもしれない。このクラスの振り分けによって後の人生までもが劇的に変わることになってしまうのだから。


【Dクラスの場合】

「将来、あらゆる分野でのリーダーとなりうる人材を育成するのが本校の最大の使命であり、そのために学業はもとより、精神面、肉体面でも徹底的に鍛え上げる。指導は当然厳しく可能な限りのあらゆる手段を用いるが、一人の脱落者も出さないことを約束する。」
 これは、Dクラス生対象のガイダンス時に、学園長が述べた言葉の引用である。
 この言葉を聞いた良介を含むDクラス生は一様に厳しい表情になったが、「一人の脱落者も出さない」ということは、見方を変えれば将来が保証されるようなものであり、意欲を持って入学してきた彼らにとっては、頼もしい言葉だとも言えた。

 学園長のやや抽象的な表現が具体性を持って生徒たちに理解されるまでには、それほどの時間はかからなかった。
 良介を含むDクラス生にとって最初に印象的だったことは、その授業進度の速さと内容の濃密さだった。
 カリキュラムを見ると、高校2年前期終了時に高校全課程を修了し、それ以降は徹底した進学指導を行うとされているが、特筆すべきは高等学校課程以外に法学・経済学・経営学・社会学・政治学・物理学・高等数学・工学・心理学などいった専門分野の中からも規定の単位を履修しなければならないことである。

 さらに必修として、およそ高校の授業には似つかわしくない『帝王学』なる科目があった。文字通りリーダーとなるべき人物が身につけるべき素養や見識を学ぶことが目的とされていたが、実はここでの『帝王学』はそれだけに止まらなかった。
そこには、「自分たちは選ばれた人間であり、あらゆる分野でのリーダーにふさわしい人材である。それ故、愚かな一般庶民を導くのは自分たちの大切な役割であり、そのためには精神的にも肉体的にも優越でなければならない。支配欲や優越性は自分たちにだけ認められた特権であり、差別は否定されるべきものではない。」という考え方まで含まれていた。
 そしてその考え方が身に付くまで徹底した指導が繰り返し行われ、ある意味、洗脳教育とさえ言えるものだった。

 肉体的な優越性を作り上げる手段として、生徒個々のデータに基づき、寮での徹底した栄養管理と科学的なウェイトトレーニングが課せられた。またその効果が出にくい者に対しては筋肉増強剤や成長促進剤などといった薬物まで使用されたのである。

 こうしてDクラスでの3年間を過ごした生徒たちは、高身長で筋肉質の体躯といった外面と優秀な頭脳と精神性といった内面に、典型的な「男らしさ」を持って卒業することとなるのである。
 
 
【Sクラスの場合】

「残念ながら、君たちはDクラスにが入ることはできませんでした。体格面・学力面・精神面など様々なチェックポイントがあり、その内のいくつかの項目に『不適』の判断がなされた結果です。ただ、このSクラスの授業は君たちに最適なものですから心配はいりません。」
 これは、Sクラスのガイダンスの際に学園長が言った言葉である。
「心配はいらない」と言われても、Sクラスの生徒たちにとっては単なる気休めにしか聞こえてこない。
 一人の勇気ある生徒が、ガイダンス終了時に質問に立った。
「このクラスは固定なんでしょうか?『不適』と指摘された部分が改善されればDクラスへの移動は可能なんでしょうか?」
 学園長は穏やかな笑みを浮かべると、質問者と同様に不安げな表情を浮かべているSクラス生全員を眺め、ゆっくり口を開いた。
「もちろん、移動は可能です。後ほど、それぞれに『不適』の理由が書かれた資料を配りますので、確認してください。これから約2か月毎にチャックを行い、その際に『不適』部分が無くなっていればDクラスへ移動してもらいます。」
 全員の顔に安堵の色が広がった。
「それは卒業までの間、ずっとチャンスはあるんですか?」
 明彦の斜め前の小柄な生徒が質問に立った。
「いえ、残念ながら、そこまでチャンスはありません。移動希望者は2年前期終了までのチャンスを生かしてください。それ以降の移動は認められませんので。」
「も、もし・・・・それまでに移動できなければ、どうなるんですか?」
「それは、いろいろなケースがあります。まあ、今は少しでも早く移動できるようがんばってください。」
 学園長の意味ありげな物言いに、Sクラス生全員の表情が曇ったが、
「まさか、移動できないからって退学ってことにはならないよなぁ。」
 と、一人の生徒が呟くように言うと、周囲の生徒もそれに同調するように頷きあった。
 少しでも前向きに考えたいという深層心理が全体を支配していたのだった。


 ガイダンス終了後、明彦は自室に戻ると、配布された資料に目を通した。
 身体的要素の中で、身長、体重、筋肉量の3項目に「若干不足」の指摘があるのと、入学試験結果においてDクラス基準に総合点で3点不足していると書かれてあった。 
 明彦はDクラスに入った良介のことを思い出した。
 実は明彦と良介は体格面ではほとんど差がない。身長にして1.5センチ、体重にして1キロほど、良介が上回っているに過ぎない。
 また、学力に関しては各模擬試験の結果を見てみれば、むしろ明彦の方が良介を上回っている。ただ、明倫学園入学試験時に明彦が体調不良だったことと、良介の得意分野が多く出題されたことにより良介が上回ったに過ぎなかった。
 明彦にとってはこのわずかな差がクラス分けのボーダーラインになったのかと思うと、たまらなく残念な思いだったが、同時に、その程度の差ならすぐに追いつくことができるはずだという確信を持つこともできた。
「とにかく身体を鍛えながら、勉強もがんばって良介たちに追いつかなくちゃ。」
 明彦はそう心に決めた。

 だが、そんな明彦たちSクラス生の意欲はすぐに萎えることになってしまう。
 週当たり36時間の授業時間の中で、数学・国語・英語・体育がそれぞれ2時間ずつ、計8時間が彼らの受けるべき学校教科のすべてだった。
 残りの時間は「趣味の時間」8時間、「教養の時間」8時間、そして「精神教育」12時間で占められていた。
 数学・国語・英語に関しては授業時間の少なさもさることながら、その内容も驚くほどの低レベルであり、例えば数学は名称こそ「数学」ではあるが、内容は小学校低学年の「算数」レベルだった。また、国語も同様で小学校3年程度の漢字の読み書きや平仮名主体の教科書を使用した。しかもその進度は信じられないほど遅い。
 教師の説明では、Sクラス生の中にはそのレベルの復習が必要な生徒もおり、「おちこぼれ」を一人も作らないというポリシーのもとで決めた指導方針である、ということだった。
 体育では球技や陸上競技、格闘技などの激しいものは一切扱わず、エアロビクスやダンスなどのエクササイズ系のものばかりを扱った。

 だが、問題は「趣味の時間」「教養の時間」「精神教育」の内容である。
「趣味の時間」とは、その名の通りそれぞれの趣味のために費やせる時間である。
 それだけ聞くと、他の学校の生徒にとってはうらやましいような授業だが、実際にはそうとばかりも言えない。
 まず、生徒達は個々に自分の趣味を申請し、許可をもらわなければならい。
 そして一つの趣味が許可されれば、それ以外の趣味に時間を費やすことは許されない。つまり寮生活でほとんど自由時間を持つことのできない彼らにとって、明倫学園寮で生活している間に許されるたった一つの趣味ということになるのである。
 明彦の場合、最初に申請したのはサッカーだった。良介と共に中学校の部活で熱中していたからだが、それは残念ながらその場で却下された。理由は他に人数が確保できないということだった。
 そこで、次に申請したのがバスケットボールだったが、これも却下され、最終的には小学生時代に一時期習っていた絵画を申請し、ようやく許可が下りた。
 後で明らかになることだが、スポーツ系の趣味を申請した他のSクラス生で許可が下りた例はなかった。いわゆる文化系の趣味しか認められなかったのである。
 いずれにせよ、これにより明彦の「趣味の時間」は絵画のための時間になった。もちろん好きなことではあるので苦痛ではなかったが、他の趣味を持てないという不自由さには妙な圧迫感を感じることとなる。

「教養の時間」は、社会生活を営む上で必要な一般教養を高校時代に身につけさせるのを目的とする授業であるとの説明だった。
 確かに始まってすぐの授業では社会全般のルールとかマナーとかエチケットといったものが指導の主体だったが、時間の経過と共にその方向性が若干変化していった。
 最初は身だしなみを身につけるとして始まった服装に関する授業は、どういうわけか、より広い知識を得るためと称して女性服や女性用の下着、さらには化粧品類の名称にまで及んでいった。
 また、姿勢を整えるためとして始まった授業では、バレエの要素を取り入れたり、ダンスの動きの習得が義務づけられていった。
 さらにマナーやエチケットの授業では、男性としてのものだけでなく、これも広い知識を身につけるということで、女性としての立ち居振る舞いも実践させることもあった。
 いわゆる「家庭科」としての要素も取り入れられ、その範囲は一般的な家事全般にも及
ぶ内容だった。

 そしてもう一つ「精神教育」の授業があるのだが、ある意味ではこの授業こそSクラス指導の根幹をなすものだ言える。
 もちろんその内容にも触れなければならないが、その前に、賢明な読者の方々なら、ここまで説明してきた授業内容を通じ、学園側が彼らSクラス生をどのように扱おうとしているのか、およそ見当がつくであろう。
 学園には当初からSクラス生をDクラスへ移動させる意志など持っていなかったのである。 
 小学校低学年並の授業とスポーツから遠ざけることによる体力の低下は、Dクラスとの格段の差を生み出し、その差はやがて埋めようもない程に広がっていく。
 その結果、Sクラス生のDクラスへの移動は事実上不可能となるのである。
 もちろん、この事実は表には公表されていない。学生達も気づいてはいない。
 そもそも学園の方針として、他クラス生との接触、連絡は原則的に禁じられているのだ。
 メールによる伝言のやり取りは一部認められてはいるが、それも担当講師の検閲の上、不適切なものは削除、変更等を行わなければならないという徹底ぶりだった。
 結果として、Dクラスの良介とSクラスの明彦、そしてFクラスの美穂が次にメール以外で言葉を交わすことになるのは、卒業式の日ということになる。

 それにしても、学園はなぜSクラス生達を「落ちこぼれ」とするような方針をとっているのだろうか。
 学園も創設当時は全生徒を一斉に引き上げていく方針を採っていた。だが、それではなかなか成果を得ることができなくなり、次に考えたのが学力・適性別のクラス編成だった。それが、現在の男子2クラス制の原型であるが、名称は単に上位クラスである「A」と下位クラスである「B」というものだった。徹底した進学指導を行うAクラスに対し、Bクラスでも類似の授業を行い、基準をクリアした者をAに移動させるという方針だった。
 この方法は一定の成果を生み、地域の評判も徐々に高まっていった。
 だが、この方法もある程度の段階に来ると、それ以上の成果を上げることが困難になっていった。しかもBクラスから生徒を引き上げるという目的があるため、有能な講師がより多く必要となるという経営面での問題も浮き彫りになっていった。

 その頃、新たに就任したのが、現在の学園長である。
 彼は、就任するや、それまでの方針を劇的に変更した。
 国内トップ大学への男子進学率を限りなく100パーセントに近づける。それにより全国的な名声を高め、さらに優秀な学生を集めることにつなげる。
 それが、彼の打ち出した新方針だった。
彼は、進学率を高めるためには、優秀な生徒だけを選りすぐり、少数精鋭の指導を行うのが最も効率的であると考え、当初は入学者の絞り込みを行おうとしたが、それでは学校経営が成り立たないも確かである。
 理想と現実の狭間で、彼が考え出した方針が現在のDクラス・Sクラス制だった。
 Dクラスでは、それまでの進学指導だけでなく、将来のリーダーとなるべき人材に育てるよう徹底した指導を行う。その一方でSクラス生は、「落ちこぼれ」になるように仕向けていく。
 そうすることで、入学者数の確保による経営的な安定と、少数精鋭の生徒による成果の向上を得ることができると考えたのだ。

 だが、そこには大きな問題があった。
 当然のことながらSクラス生も明倫学園男子部の生徒である。
 例えDクラス生での指導が思い通りに進んでも、Sクラス生をそのままにしておいては「進学率」という点で大きなマイナスになる。
 では、やはり下位クラスであるSクラス生を以前のように上位クラスに引き上げるための指導を行うのか。
 いや、学園長にはそんな考えは微塵も浮かばなかった。
 彼が考えたのは、もっと劇的かつ残酷な方法だった。
 進学率を上げるためには、分子つまり進学者数を増やすか、分母つまり男子生徒数を減らすかのいずれかの方法しかない。
 普通の教育者なら間違いなく前者を選択するはずだが、彼が選んだのは後者だった。
 
「明倫学園男子部として卒業させるのはDクラス生のみとし、Sクラス生にはその資格を与えない。」
 学園長が臨時会議の席上で、こう述べたのは5年前のことだった。
「では、Sクラス生は途中で退学させるということですか?」
 一人の幹部職員が怪訝そうな顔で質問に立った。
「いや、彼らも卒業させる。ただし・・・・姉妹校の生徒としてだが。」
 職員達の顔に驚愕の色が浮かんだ。  
「そ、それは・・・つまり学籍を詐称するということですか? それは大問題ではないですか?」
 職員の質問に学園長は小さく微笑むと、自信ありげな表情で言った。
「いや、詐称ではない。正式に転籍の手続きを行うので全く問題はありません。」
 会議室には何とも言えない雰囲気に満たされた。
 出席する職員たちの誰一人として現実の問題として捉えることができなかったからである。
「し、しかし・・・我々の姉妹校と言えば、恭純女子学園しか・・・・」
 一人の職員が沈黙を破って声を上げた。
 彼の周りの職員たちも一様に頷くと、学園長に視線を向けた。 
「フフッ・・おっしゃる通りです。我々の姉妹校は恭順女子学園しかありません・・・・つまり彼らには3年進級の時点で、女子としての学籍を与えるのです。もちろん、あくまで学籍上のことで指導はこの学生寮内で行いますし、指導内容も恭順女子学園生としての正式なものではなく『特別な内容』を扱います。」
 学園長はここまで言うと、密かに笑みを浮かべながら職員全体を見回した。
 「特別な内容」という言葉をいかにも意味ありげに強調しながら。
「もちろんそれには周到な計画が必要ですが、幸い我が明倫学園は寮制度であるし、私たちの指導には口を挟まないという旨の保護者からの誓約書も取ってありますので、計画は進めやすいと考えています。そこで考えたのが、お手元に配布した計画書です。そこには、一応2年生終了時までの計画が記されていますのでしっかり目を通していただきたい。3年生時の『特別な内容』に関してはまた後日詳細を説明させてもらいますので。」
 
 会議に出席している職員達全員が配布済みの「計画書」に目を落とした。
 マル秘と朱書された「計画書」は数枚の紙片からなる簡単な体裁だったが、その内容はにわかには信じがたいもので、読み進める職員の顔には疑念と不信が交錯した複雑な色が浮かんでいった。
 その内容を要約すると、以下の通りである。
  
「学力面」で、Dクラス生との格差を決定的にするため、小学校低学年内容の復習のみに特化した授業を行う。これによりDクラスへの移動を実質的に不可能にする。
「肉体面」では、筋力増加を目的とするような激しい運動は行わず、専ら体型維持を目的とした内容に限定する。「趣味の時間」でもスポーツ系の申請はすべて却下し、文化系の申請のみ認める。
 寮の食事以外は一切禁じる。食事は厳しいカロリー制限とともに、筋肉、骨格の成長を抑制する薬物を混入させる。また、1年後期を目安にエストロゲン(女性ホルモン)の混入も開始する。
「教養の時間」を通じ、少しずつ女性としての知識、立ち居振る舞いを植え付け、2年前期の時点では女性としての教養以外は扱わない。
 以上の過程を通じ、2年後期の時点では、服装、化粧といった外見面だけでなく、話し方、振る舞い、考え方、感情といった内面も、通常の女子学生としての生き方ができるよう、徹底的に指導する。
  
 以上が「計画書」の概略であるが、ここに一つ大きな問題がある。
 それは言うまでもなくSクラス生の意志である。
 いくら寮の中でのこととは言え、また保護者からの誓約書を取っているからとは言え、彼らが不自然さに気づき、反抗的な態度に出れば収拾がつかなくなるのは必至である。

 そこで、必要となったのが先ほど説明を保留した「精神教育」の授業である。
 週当たり12時間という時間を割いて行う授業とはいったいどんなものであろうか。
 それは一言で言えば、「洗脳」のための授業である。
催眠療法・サブリミナル療法・カウンセリングといった、あらゆる精神操作手段を駆使して、生徒個々が、自らの男性としてのアイデンティティに違和感を覚え、自分は「性同一性障害」であるという認識を抱かせ、女性として生きることこそ幸福であるという意識まで導いていく。
 その結果、普通なら不自然さを抱くような授業内容にも、何ら違和感を抱くことなく受け入れる精神状態になっていくというのが、学園側が考えたシナリオだった。

 これらの計画だけでも十分に衝撃的な内容であるのだが、Sクラス生を待ち受けているのはそれだけではない。
 それは言うまでもなく、学園長の言葉にあった「特別な内容」という指導のことであるが、その詳細について説明するためには、やはり具体的に実例を挙げた方がいいだろう。
 もちろん適任者は、この話の主人公でもある山本明彦をおいて他にはいない。

 (第2章に続く)

私立明倫学園高校 第1章-1

 私立明倫学園高校はとてもユニークな学校である。
男女別学の全寮制という点はそれほど珍しいわけでもないが、その指導内容・カリキュラム・学生生活などほとんどすべてが非公開であった。
 さらに入学の際には生徒の保護者から、学園の指導方針には全面的に従い、異論は挟まない。また、学園で起こるあらゆる事柄について学園側の責任を問わない旨の誓約書まで提出させるという徹底ぶりである。
 だが、それでも近年受験者が右肩上がりに増加しているのには、大きな理由があった。
 男子卒業生のほぼ全員が国内一と呼ばれる大学へストレートで合格するという、信じられない結果がそれだった。数字にして98パーセント。これは正に奇跡と言っていい数字である。
 驚くのはそれだけではない。彼らのほとんどが大学卒業後わずかの期間で、社会の様々な分野で頭角を現し、若くしてリーダーになる者も珍しくはなかった。
 さらに彼らの優秀さは頭脳だけに止まらず、体格もかなり大きく、運動面でも優れた数字を残しているのだった。
つまり彼らは、頭でっかちのひ弱なイメージではなく、男らしくリーダーシップのある行動的で優秀な青年のそれだった。

 だが、この驚異的な実績には表には出せない「カラクリ」があったのだが、そのことを知っているのは学校関係者以外にはごく一部の人間に限られていた。
そういうわけで、その「カラクリ」を知らずに、息子を入学させたいと考える保護者の数は年を追う毎に、飛躍的に増加していったのである。
 一方、女子の進学実績は県下で1・2というレベルではあったが、全国レベルで見た場合にそれほど誇るべきものとは言えなかった。だが、それでも進学希望者が増え続けているのは、「将来の有望な花婿候補」を青田買いしておきたいという、よこしまな考え方によると解説している向きもあるが、その真偽のほどは定かではない。


 20××年、明倫学園高校の入学式に3名の親友グループが揃って出席していた。
 男子用の伝統的な詰め襟学生服を身に着けた兵藤良介、山本明彦と、女子用の上品なブレザーの制服を身に纏った村瀬美穂の3名である。
 彼らは小・中とも同じ学校で、3名の内誰か2名は必ず同じクラスになるという運命的な絆を持っていた。そしてその絆はこの高校入学の段階でも切れることがなかったのである。
 そんな彼らの強い絆も、たった一度だけ切れかけたことがある。
 それは、明彦と美穂との関係が友情以上の男女の感情に進展しているのを良介が知ったときのことだった。
 密かに美穂に対する恋心を抱いていた良介は、単なる失恋の痛み以上に、二人に裏切られた思いに襲われたのだった。
 だがそれでも、今日この日の入学式に揃って出席し、お互いに笑い合いながら記念写真に収まる関係に戻ったのは、3人の間だけでしか分かり合えない深い絆の成せる業だったのである。
 もちろん良介の心の奥底には明彦との男同士の友情と共に、捨てきれない美穂への恋心があったのだが・・・。


「何だぁ・・・俺たち別のクラスかぁ・・・」
 クラス分け発表の掲示板の前で、良介が落胆した口調で言った。
「ああ、本当だ。これで僕たち初めて3人バラバラのクラスになったんだね。」
 掲示板を見ながら明彦も言った。
「うん、私はしょうがないけど、二人はまた一緒になれたらよかったのにね。」
 美穂も残念そうに言った。

 明倫学園は少数精鋭の全寮制であったが、クラスは3つに分かれていた。
 女子クラスである「F組」と男子クラスである「D組」「S組」の3つである。
 女子である美穂は自動的にFへ編入されたが、何とか同じクラスにと願っていた良介と明彦も、今回はそれぞれDとSと別々のクラスに編入された。
 女子クラスの「F」は「Female」を表しているのはわかるが、なぜ男子は「M]、つまり「Male]を使わずに「D」と「S」なのか・・・・
 クラス分けの掲示板を見ながら、不思議な思いを抱いていたのは明彦だけではなかっただろう。
 
 明倫学園でのクラス分けが、中学校までの単なる「組分け」以上の意味を持っていることに3人が気づいたのは、それから数時間後のことだった。
 入学式終了後、生徒達は学校職員の案内に従って、それぞれの学生寮へと向かった。
 
 職員の説明では、明倫学園の学生寮は学年別・クラス別に細かく分かれていて、それぞれが独立した小さな建物になっているということだった。つまり同じ学生寮の中では、同学年・同クラスの生徒としか顔を合わすことがないということだ。 
 その理由を父兄の一部から問われた職員の一人は、それが学園の方針だと答えただけで、
補足の説明は加えなかった。ただ、それが学園の驚異的な実績を支える要素の一つだと聞いた父兄はそれ以上の質問を控えた。

 良介・明彦・美穂の3人は他の生徒に混じり、談笑しながら職員の後を追った。
やがて真新しい明るい色の壁に覆われた、いかにも女子学生寮といった造りの建物の前に出た。
「では、Fクラス・・つまり女子生徒は、こちらになります。入口に担当職員がおりますのでその指示に従ってください。」
 案内した職員の大きな声に、美穂が笑顔で頷いた。
「じゃ、二人ともまた後でね。」
 明彦と良介に向かって明るい笑顔で手を振ると、美穂は他の女子生徒と共に寮の入口に向かった。
「明彦くん、後で電話かメールするからね。」
 美穂は最後にそう言い残すと、建物の中へと消えていった。
「オーケー、後でね。」
 明彦は美穂の背中に向けて答えると、良介と共に他の生徒たちの後を追った。

「相変わらず、仲のよろしいことで。」
 良介は歩きながら、明彦に向けて笑顔を向けた。
 言葉そのものは皮肉めいたニュアンスもあったが、その表情からは何ら悪意を感じなかった。 
「うん、まあね。」
 明彦はそれだけ答えると、良介の気持ちを慮ったのか話題を換えた。
「それにしても、この学校の敷地、かなり広いよね。それぞれの寮があんなに離れてるじゃないか。」
 良介は明彦の指さす方向に視線を送った。
 広大な敷地に、学生寮らしい建物がポツンポツンと点在している。
 そういえば、振り返ってみると美穂の入った学生寮もかなり小さく見えた。
「本当にそうだなぁ。少し郊外にあるって言ってもこれだけ広い学校はあまりないよな。だからスポーツも強いんだよな、きっと。」
 スポーツ好きの良介は期待に胸を膨らませているのか、大きな明るい笑顔で答えた。

「では、こちらがDクラスの学生寮になります。Dクラスの諸君はそのまま入口で職員の指示を受けてください。」
 落ちついた雰囲気の外観にかなり重厚な造りの建物の前で引率の係員が足を止めた。
 先ほどの女子生徒の寮とは違って少し大人っぽい造りである。
「へえ、ここかぁ・・・」
 良介は一言だけ呟くと、他のDクラス生に混じって入口へと向かった。
「じゃ、あとで連絡するから。」
 明彦は良介に声をかけると、すでに歩き始めている他のSクラス生の後を追った。

「ずいぶん、遠いんだなぁ・・」
 明彦は自分たちの学生寮に向かいながら思わず呟いた。
 Sクラスの学生寮は、広大な敷地の外れにポツンと建っていた。
 外観はいかにも古ぼけていて、安っぽい印象だ。
 少なくとも同じ男子を対象としたDクラスの重厚な造りとは大きな差があった。
 Sクラス生たちは、何となく差別されているような気がして落胆のため息をついた者も多かったが、それをあからさまに口にする者はいなかった。

  (続く)
 

お気に入り作家さんのご紹介 (続き)

今回もSascha Davison さんの作品の紹介です。

最後は
Out of the Way
という作品です。

この作品、サーシャさんの作品の中でも、サテン的お勧め度ベストワンの作品です。
というか、サテンが読んだ全作品の中でも間違いなくベスト5に入るのではと思います。
まあ、人それぞれに萌えポイントは違いますので、お読み頂いてそれほどでもなかったよ。という声もあるかもしれませんが、それは、まあ個人差があるということでご容赦いただくとして、まずは読んで損のない作品であることは確かです。
全部で5パートからできていて、ちょっと長めの話ですが、中だるみもほとんどなく萌え度をキープしながら、ラストの見せ場に向かって展開していきます。パート5は特に出色の出来で、サテン的にはラストの妻の独り言には、萌え度マックスです。

ではでは、早速あらすじを。
主な登場人物は、主人公のロバート(女性名 ロベルタ)、妻のサラ、S女性のジョディ、そしてジョディの夫マーク・ノートンの4人です。

Cross-dresserであり、M気質もあるロバートは、妻のサラを説得してS女性を演じてもらうという、いわゆるプレイを家庭で楽しんでいます。しかし、ロバートはいつしか、家庭だけで楽しむのは飽き足らなくなり、サラを誘って、フェティッシュクラブに行きます。サラは決して乗り気ではないのですが、ロバートに説得されて嫌々足を運ぶことになります。
メイド服に首輪といういでたちのロバートをサラはリースをひきながらクラブに現れます。そこは、主にS女性とM男性が集うクラブで、美しいサラとこれまたかなりの美しく変身したロバート(ロベルタ)は目立つ存在でした。ただ、ロバートは他の人を彼らのプレイに引き込むつもりはなく、あくまで第三者の目の前に自分たちの姿をさらしたいという思いだけで、クラブを訪れていたのです。もちろん、それは妻のサラも同じ思いでした。元々サラには真のS女性としての興味などなかったからです。
ところが、彼らの元に一人のS女性、ジョディが現れます。ジョディは二人の姿に興味を引かれたのか、S女性とSissyとの関係のあり方などを、サラに話して聞かせます。そして、その話にサラが少しずつ興味を持ちだしたのに気づいて、ジョディはある提案をします。
自分にロベルタの調教をさせて欲しいと。調教終了後は、サラにとって完璧なsissy maid として送り返すからと。
ロベルタは必死になって、拒否しようとします。サラも最初は拒否し申し出はまとまりませんでした。
ところが、少しして、サラの元に若い男(M奴隷志望)が近づき、自分を奴隷にして欲しいと言い出します。サラは、ジョディの話に少し興味を持っていたこともあり、その場(夫のロバートの前で)で若い男とプレイまがいの行為を行います。いつしか、ジョディはその若い男とのセックスを望む気持ちがわいてきます。というのも、ロバートの女装趣味がエスカレートするにつれ、普通の夫婦生活がなくなってきていたからです。
サラは若い男を家に連れ帰ることを決め、夫のロバートをジョディに預けることにします。
そして、サラは、嫌がるロバートをジョディに託し、若い男とともにクラブを後にします。

その後、ジョディの家に連れて行かれた、ロバート(ロベルタ)にSissy Maidとしての調教が始まります。
(家に着くまでに駐車場のシーンとか、途中の道路でのシーンとかかなり屈辱的なシーンがあります。これも相当に萌えです。5パート中のパート2の部分です。)
ジョディの調教におそれを感じた、ロバートは何とか逃げ出すことはできないかと考え、ジョディの目が届かないタイミングを見計らって、電話をかけます。ただ、ボールギャグ(口架)をされているので、言葉を話すことは出来ないのですが。
妻のサラと電話がつながりますが、サラは若い男とのプレイを楽しんでいる最中で、ロバートの言葉に耳を傾ける気があまりありません。ロバートは言葉にならない声を発しながら、何とか妻に助けを求めて言葉を発しようとしますが、うまくいきません。
やがて、ロバートとサラの電話に別の男性が加わります。(実は、この辺がよくわからないのですが、たぶん「混線」ということなのでしょう。)その声は、ジョディの夫であるマーク・ノートンでした。マークは仕事を終え、帰宅途中で携帯をかけたのでした。最初、三人はそれぞれの電話口で、混乱しますが、やがて会話の中で(特に、マークとサラの会話で)、事情がわかります。そして事情がわかった頃、マークは家に着き、キッチンにいるメイド服を着たロベルタを発見します。
サラとマークは電話で、ロベルタをどのように扱うべきか話をします。ロベルタは当然、妻のサラが自分を助けてくれると思っていましたが、すっかり隠れたS心に目覚めたサラはマークに、ロベルタをスパンキングして欲しいと言い出します。しかも、受話器を置いて、自分に聞こえるように。さらには、Sissyである夫は本当に男性とのフェラを望んでいるとの嘘までつきます。
マークは、電話口でロベルタに強制的に状況を説明させます。電話を勝手に使い、罰としてスパンキングとblow job(「フェラチオ」のことですね^^)をすることになるという内容を。
その言葉にサラは、興奮して完全にのめり込んでいくのです。

その日以来、サラは夫のロバートの調教を受けている姿を想像する日々を過ごします。若い男は相変わらず家に同居(飼っていると言った方が適切でしょう)しています。
そんなある日、サラの元に一通の手紙とともにビデオテープが送られてきました。差出人はジョディでした。
サラは、一人書斎に入り、ビデオのスイッチを押し、流れる映像を見つめます。
その映像は夫のロバート(ロベルタ)とマッチョ系の男性とのカラミを撮影したものでした。
(パート5のほとんどはこのシーンの描写です。相当な臨場感で、恥辱的なシーンの連続です。是非原文でどうぞ。)
サラは、画像の魅了され、自らを慰める手の動きを止めることができません。
実は、サラにはこの画像を見始めたときには、若干の良心の呵責があったのです。夫のロバートをこんなつらい目にあわせたことに。
ところが、映像のラストで思わぬ事実が目に入ってきます。
涙を流しながら、必死に命じられるまま演技をしていたように思っていた夫の行為でしたが、実は夫も喜んでいたのではないかということがわかるのです。
それを知ったサラからは良心の呵責は消えました。
そして、ラストの独り言につながっていきます。

"Robert... Roberta." She shook her head again, her smile growing all
the time, "My love, you know you always used to complain that our sex
life wasn't original enough? Well don't worry honey. Don't worry.
Because now... now I am getting SO many ideas...."

「ロバート・・・いえ、ロベルタ。」彼女(サラ)は、もう一度首を振った。彼女笑顔はどんどん大きくなっていった。「あなた、私たちの性生活には全然おもしろみがないって、文句ばっかり言ってたわね。でも、もうそんなこと気にしないで。ええ、気にしなくていいのよ。 だって、今、私の頭にはとってもたくさんの面白いことが浮かんでいるんだもの・・・・」

(拙訳ご了承ください)


以上、かなり長いあらすじになってしまいましたが、サテン的にはかなりお勧めの作品なのでちょっと力が入ってしまいました。(汗)

できれば、あらすじを頼りに全文読まれることをお勧めします。
細かい描写に萌え場面がありますので。

では、今日はこの辺で。









お気に入り作家さんのご紹介 (前回の続き)

前回に引き続き Sascha Davison さんの作品をご紹介します。

ちなみに、サーシャさん作品はこちらです。
(yasu 様、情報のご提供ありがとうございました)

前回は、

①Stupid

③Maid Management
の2作品を紹介させてもらいましたので、

今回は、
②Out of the Way
④Contract negotiations
をご紹介させていただきます。
(長くなったら、一つだけにさせてもらって、残りは次回にするかもしれません)

では、早速
④Contract negotiationsから。
主な登場人物は、主人公の男性「マイケル」(後の女性名「タマラ」)、その妻ナタリー、マイケルの会社の社長であるカール、以上三名です。
題名のContract negotiationsは、「契約交渉」というくらいの意味でしょうか。
ここでの契約とは、マイケルの雇用契約(昇進の)ことです。
会社での昇進を希望しているマイケルは、妻のナタリーの協力の下、社長のカールを家に招き、飲食の接待をし、その際になんとか昇進の話を進めようと計画します。
予定通り会食は進み、それなりの好感触を得るのですが、途中から、雲行きが怪しくなります。
男女の社会での役割、会社での責任ある仕事などの話題に進むにつれ、カールとナタリーの間が徐々に緊密になっていきます。しかも、カールは大学時代にある特別な出来事を経験しているのですが、その話題に進むと、雲行きの怪しさは決定的になります。その出来事とは、カールのルームメイトの一人がcross-dresserであり、しかもメイド服を着ていろいろな仕事をするのが好きな人物だったという事でした。カールはその彼(彼女)との体験をマイケルとナタリーの前で告白します。(メイドのように扱ったこととか、罰則としてスパンキングをした話とか)
ナタリーはその話にのめり込んでいきます。実は、夫のマイケルにも妻公認の女装趣味があったからです。
ナタリーは酒が進むにつれ、意識がもうろうとなりながらも、カールの話にマイケルを投影し始めます。
そして、ついに、カールにマイケルの女装趣味を知らせてしまいます。(実際には、マイケル自身に告白させるのですが、この場面は相当に萌えです^^)
カールは、いやがるマイケルに、昇進話をえさに、女装姿を見せるよう命じます。マイケルは、ナタリーのアドバイスもあって、タマラとして二人の前に姿を見せます。
カールは、うつくしいタマラに変身したマイケルに、昔の思い出を重ね合わせ、性的興奮を覚えます。
やがて、場面は寝室に。
そこでは、タマラへの恥辱的な行為が繰り広げられるのですが、主にカールの指示で妻のナタリーが直接手を下すよう導いていきます。
(ノーマル女性が徐々にS女性に変わり、夫を責めることに快感を覚えていく過程も相当に萌え度が高いです。)
この後、酒に酔って、意識がもうろうとしてきたナタリーはタマラをベッドの縛ったまま、カールと寝室を後にします。
数分後、タマラの耳に入って来たのは、別室から聞こえるナタリーのくぐもった声でした。
それは、ナタリーとカールが激しく愛し合う声だったのです。タマラはもがき苦しみますが、拘束されているのでどうすることもできません。タマラの脳裏には、ナタリーのセクシーな姿とカールとのセックスシーンが浮かびます。それは信じがたい光景でしたが、意外にもタマラはそれに性的興奮を覚えてしまいます。そして、貞操帯に拘束されているにもかかわらず、射精してしまいます。
数分後、ナタリーが泣きながら寝室に戻ってきます。いくら酔っていたからとはいえ、夫以外の男性と結ばれたことに罪の意識を覚えたのです。ナタリーは心からタマラに謝ります。でも、タマラはそれどころではありません。妻を寝取られたにもかかわらず、そのことに興奮して射精までしている姿を見られたくはなかったからです。
タマラは何とか、その場をごまかそうとしますが、ついにナタリーの知るところとなってしまいます。
ナタリーは夫の異常な性癖を知り、怒りがわき起こり、部屋を出て行きます。そして、別室にいるカールの元へ行き・・・・・・

この後、まだ一ひねり、話の展開があるのですが、さすがにネタバレになりますのでやめておきます。
肝心な契約交渉は成立したのでしょうか?
それはラストでわかります。

全体として結構長めの話なので、読むのが大変かもしれませんが、サテンの拙いあらすじで、全体の8割くらいは終わってます。
もちろん全体を読んでもらった方がいいと思いますが、あらすじを前提に残りの2割を読んで頂いても十分楽しめるかと^^
そのくらい、サーシャさんのお話は面白いですよ^^

う~ん、やはりかなり長くなってしまいました。
ということで、残りの
②Out of the Way
は、次回にさせてもらいます。
 
これは、傑作ぞろいのサーシャさんの作品の中でもサテン一押し作品です。
少しあらすじも詳しくお話するつもりですので、ご期待を^^



お気に入り作家さんのご紹介

久しぶりに、海外小説お気に入り作家さんをご紹介します。
ご紹介するに当たり、もう一度読み直してみましたが、やっぱりいいな~と再認識しました。

Sascha Davison さんという方で、作品はすべてfictinmaniaのこちらにあります。
(何か、Fictionmania、ちょっと前にメンテナンスをしたのか、直接リンクがやりにくくなったみたいです。お手数ですが、この検索から著者名に入ってみてください。)

ご紹介する作品は4つ
①Stupid
②Out of the Way
③Maid Management
④Contract negotiations
です。

サーシャさんの作品の特徴は、主人公の男性はいずれも女装趣味(cross-dress)の趣味のある男性で、その主人公を妻や恋人さらに、別の男性の手により、cross-dressを超えた、女性化の道に引き込まれていくという点にあります。ノンケの男性が女性化していくという話ではないので、その点では好みのわかれる所かもしれませんが、寝取られ要素も入り込み、しかもそれぞれの展開が斬新でサテン的にはかなりの萌え度です。
特に②のOut of the Way は、描写といい、展開といい、最初から最後まで萌えがキープし続けられる数少ない作品です。
どの作品もちょっと長めかもしれませんが、読み始めると途中で投げ出せなくなるくらいの作品です。
2006年以降書かれていませんので、たぶん復活はなさそうですが、是非とも復活して欲しい作家さんの一人です。
では、ちょっとあらすじですが、

①Stupid

主な登場人物は 主人公の男性とルームシェアしている女性二人と男性一人、主人公の今カノ、そして悪徳(?)弁護士の5人です。男性は以前からルームシェアしている女性の内の一人(実は元カノでもあるのですが)の服を着て女装するのが趣味だったのですが、そのことが、彼女たちに発覚します。で、そのことを今カノや、他の知り合いに知らせるぞということをネタに脅し、自分たちのいいなりにさせます。とまあ、ここまではよくある話の展開なんですが、この部屋、実は彼女たちの名義で借りていて、元々は4人で借り始めた物なのですが、一人が抜けて一人ずつの家賃負担がきつくなっている折りに、この彼の女装趣味が発覚してしまったわけです。そこで彼女たちはいいなりになった彼を使って、何とか家賃負担を軽くしようとしてとんでもない案を考えつきます。(この辺が、斬新なんですよね~~^^)それは、Sissy付きの部屋として新たに借り手を見つけることでした。そこにある弁護士が登場して・・・・・・というようなお話です。
このお話の中で、サテン的に最も萌えポイントは、今カノとの再会シーンとその彼女が寝取られるシーン、そして、ラストのシーンです。ネタバレになりますので、詳しくはいいませんが萌え度間違いなくAです。

②Out of the Way は、ちょっと後にして

③Maid Management を先に。

登場人物は主人公の男性、その妻、そして謎の男性(かなりヤバげな男、教育係的な役割)
主人公はcross-dressの趣味だけでなく、メイドとして、ユニフォームを着たり、その仕事をしたりするのが好きです。で、それを妻も受け入れています。ただ、男性はあくまでメイドとしての本格的に仕事などする気はなく、自分の性的な趣味のために「ふり」をしているに過ぎません。だから、それ以上の状況に発展することなど望んではいないのですが(こういう状況はサーシャさんの小説の設定として多く見受けられます)、妻は内心別のことを考えています。それは、ある別の男性を教育係に雇い、夫を調教させ、真のメイドとしてしまおうというものです。教育係の男性に厳しい調教を受けながらも、主人公の彼は、妻が最後には助けてくれると信じているのですが、それもむなしく裏切られる形で終わります。
途中のエロチックな場面もさることながら、妻の助けを求めて、メイド服のまま妻の書斎に行くシーンは間違いなくサテン的萌え度Aです。
これもネタバレしない程度に言っておくと、教育係のあまりにひどい扱いを妻に告げ口する男性に、妻は「それは何とかしなくてはいけない」と言ってくれます。男はこれでとんでもない仕打ちも終わると思ってホッとするんですが、妻の言葉は男の真意とは違っていました。「何とかしなければいけない」は、教育係の男に対する気持ちだったのです。夫を真のメイドとするために「なんとかしなくていけない」だったのです。そしてその後は・・・・という話です。


サーシャさんの作品に共通しているのは、主人公の女性化を進めるのは女性の場合も男性の場合もあるのですが、性的行為の対象は男性になっています。そういう意味では、強制女性化+強制同性愛っていうジャンルかもしれません。女性主人公はそんな彼の変わり方に興奮して自ら慰めるという展開が多いようです。

描写と展開の巧みさ。それがサーシャさんの特徴でもあります。
ただ、日本人として読む場合にちょっとやっかいな点もあります。それは、基本動詞の多用です。
たとえば、have,get,take,give などの動詞で表されるセリフが多いんです。
実は英語を読む上で、やっかいなのはこういう基本動詞なんですよね~。
難しい動詞は辞書を見れば一発なんですけど、こういう動詞はどの意味で使ってるのか、わからないことがある。その結果、もしかしたらかなりの萌え表現になっているのかもしれませんが、読みとれなかったりします。
う~ん、英語力のなさをつくづく痛感してしまうな~。
まあ、その点を除いても十分読む価値のある作家さんであることは確かなんですけど。

だいぶ長くなってしまいました。
というわけで、残り2作品については、後日に譲ります。
とりあえず、ご興味がありましたら、上に挙げた2作品だけでも読んでみてください。
サテン的萌え度が一致している方にはどストライクだと思いますので。

では今日はこの辺で。

プロフィール

サテンドール

Author:サテンドール
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女性化小説なら国内・海外を問わず大好きです。

特に屈辱系・羞恥系・強制系・寝取られ系・立場逆転系・年齢退行系・SISSY系などなど・・・。

happy よりは、unhappy ending が好み。
(ちょっと、性格がゆがんでるのかも^^)

私事ですが、以前某サイトに 
「高野奈緒美」のペンネームで
『ある性転者の告白』という拙い小説を掲載させて頂いておりました。事情があって途中で掲載を止めましたが、その完結編も当ブログでご紹介できればと思っています。

それとランキングにも参加させていただきますので、
ポチッとクリックいただければ幸いです。

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