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ある性転者の告白 第22章-4

 とその時、私の肩に誰かの手の触れる感触がしました。
 ハッとして後ろを振り返ると、そこには涼子と村井が立っていたのです。
 涼子は、泣きじゃくる私を冷たい視線で見下ろすと、フッと笑みを浮かべて言ったのです。
「どう?恋人を寝取られる女の気分って?私にも経験があるから、よくわかるけど・・・ね。フフフフ」
 私は、この涼子の言葉で、今までの田中とのことが全て仕組まれたことだと気づいたのです。涼子は、自分の夫に自分と同じ惨めな思いをさせるために、田中と結花を結びつけ、私に恋人を寝取られる女の屈辱感を味あわせるという復習を企てたのでした。
 それは、余りにも冷酷で、残忍で、常人にはとうてい思いつかない企てでした。「あ・・・あんまりです・・・ひどい・・・ひどすぎます・・・。こ、こんなことって・・・。」
 私は涼子の目を睨みつけるようにして言いました。
「何言ってるの?身から出たさびじゃない。フフフ・・・。」
 私は震える身体を両腕で抱きかかえました。その時、かすかな手の感触が下腹部に触れ、忘れかけていた子供の存在を思い出したのです。
「で・・・でも・・・お腹には・・この奈緒美のお腹には・・・赤ちゃんが・・いるの。 赤ちゃんには父親が必要でしょ?」
 私は涼子の最後の温情にすがろうとしました。涼子だって女です。子供に対する思いはあるはずだという思いが私にはあったのです。しかし、返ってきた言葉はあまりに冷淡で残酷なものだったのです。
「そんなの、堕しちゃえばいいじゃない。それとも、産んでママになる?今、流行りのシングルマザーにでもなる?フフフフ。 でも、堕すんなら、早いほうがいいわよ。もたもたしてると堕せなくなっちゃうからね・・・。さあ、わかったら、部屋から出て行きなさいよ。恋人同士のHをじゃましちゃいけないわ。それとも、寝取られる瞬間をここで、見てるつもり? フフフフ」
 そんな涼子の言葉を待っていたかのように、ベッドの中の田中と結花は再び抱き合うと、そのまま倒れかかるようにベッドに潜り込んだのです。
 私は思わず身体を起こすと、そのままワァッと泣き声を上げながら、部屋を飛び出しました。
 
 その夜私は屈辱感と後悔と不安とが入り交じった感情の中で、涙が枯れるほど泣き続け、とうとう一睡もできませんでした。
 明け方になり、窓からうっすらと光りが差し込んできた頃、ようやくわずかながら冷静さを取り戻した私は、フッと自分のお腹の子供のことに気持ちが向きました。
(そうだ、もたもたしてはいられないんだわ。もたもたしてたら堕ろせなくなっちゃう。)
 私には妊娠という過酷な現実が再び襲ってきたのです。田中を失った私にはお腹の子供を堕ろすのは、当然だという思いしかありませんでした。
 私は堕胎手術を行うのは妊娠の初期段階までであり、それを過ぎると堕胎は不可能になることを知っていました。
(そう、子供を堕ろして、それからチャンスを見て、ここを逃げ出すのよ。そうしなければ、この後、どんなことになるか・・・)
 私は泣きはらした瞼のまま、ベッドから起きると、堕胎手術を受けることを告げるために部屋を出ようとしました。
 とその瞬間、再び激しい悪阻に襲われたのでした。それは苦しみではありましたが、同時に私の体の中に確固たる生命が存在することを知らせてくれるものでもありました。たとえ憎むべき相手の子供であっても、それは生命そのものなのです。
 私は脚を止め、その場にしゃがみ込んでしまいました。そして、そっと右手を腹部に当てながら、自分がお腹の子供を守らなければならないという母性のような意識が芽生えてきたのでした。
 私はこうして堕胎手術を受けることを止め、一人で出産することを決心したのです。
 翌日そのことを涼子に告げた時、なぜか吹っ切れたような強い気持ちになっていて、
「そう、じゃ、シングルマザーになるのね。でも、子供を育てるなんてできるの?男のあなたに。」
 と言う涼子の冷たく、皮肉混じりの言葉にも、
「ええ、がんばるから・・・赤ちゃんのためにも・・。」
 と、強い決心をにじませた言葉を返したのです。  

 それからの私は全ての思考の中心を、おなかの中で育っている子供だけに向けるようになっていきました。
 リビングでは、彼らの視線を無視するかのように、おなかの中の子供に話しかけたり、育児雑誌を読んだり、カタログでベビー用品を選んだりと、母親の姿そのものだったと言えるでしょう。
 田中への憎しみはほとんど消えていきました。いえ、消えたと言うよりは消し去るように努めたと言ってもいいかもしれません。それほどまでに、おなかの中の子供への愛情だけが強くなっていったのです。
 そんな私の様子を眺めていた涼子は、
「うん、まさに、女は弱し、されど母は、強し・・・ね。」
 などと、からかいの言葉を投げかけたりしました。
 しかし私はそんな言葉にも、
「ええ、そうよ。母は強し・・・よ。だって、奈緒美、ママになるんだもの。ね、赤ちゃん」
 と言いながら、お腹をさすってみせたのです。
 その頃の私の心には、自分はどうなってもお腹の子供だけは守りたいという母性のみに心を支配されていたように思います。そしてそこのことが、女としての最上の喜びと感じていたのです。
 
 しかし、私が幸福そうな姿を見せれば見せるほど、涼子と結花の復讐心の炎が再び顔をもたげ、しかもそれが村井たちの邪悪な思いと相まって、あの残酷な、いえ、残酷などというありふれた言葉では言い表せない、まさに悪魔の所業とも言える行動へと彼らを駆り立てていったのです。

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プロフィール

サテンドール

Author:サテンドール
=============================================
女性化小説なら国内・海外を問わず大好きです。

特に屈辱系・羞恥系・強制系・寝取られ系・立場逆転系・年齢退行系・SISSY系などなど・・・。

happy よりは、unhappy ending が好み。
(ちょっと、性格がゆがんでるのかも^^)

私事ですが、以前某サイトに 
「高野奈緒美」のペンネームで
『ある性転者の告白』という拙い小説を掲載させて頂いておりました。事情があって途中で掲載を止めましたが、その完結編も当ブログでご紹介できればと思っています。

それとランキングにも参加させていただきますので、
ポチッとクリックいただければ幸いです。

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