FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

私立明倫学園高校 第6章-1

 卒業式5日前の夜、「特別指導」生学生寮の各個室では、甲高い叫び声、怒りに震える声、嗚咽混じりの声、絶望に打ちひしがれる声に満ちあふれていた。もしも彼らの学生寮が学校敷地の外れに位置していなければ、それらの声が合わさって他の学生寮まで響いていたに違いない。
 
 その日の朝、授業前までは彼らの表情には笑顔もあったし、友人同士で輪になって談笑している者もいた。
 もちろん、身体も心も劇的に変化してしまった自分が、卒業後どのように社会に適応していけるのか、また家族はどのように迎えてくれるのだろうか、友人たちはどのように自分を扱うのだろうか、などという不安を抱いているのだから、心からの笑顔というわけではない。
 しかし卒業すれば、この不自由な寮生活とは決別できる。厳しい罰則や恥辱的な指導とも無縁になる。そう思うと、自然と顔がほころんでくる者もいた。
 また、「恭純女子学園特別指導生」などという妙な身分にせよ、高校卒業の資格だけは得られるのである。決して無駄なだけの3年間ではなかったのだと自分に言い聞かせ、無理に微笑んで見せる者もいた。
 中には、不安や悲しみは一旦忘れて、卒業式後の「特別指導」クラス生だけで催されることになっているパーティを心待ちにし、その話題で盛り上がっている者もいた。  
 このように笑顔の中身はそれぞれだったが、表面上は悲しみに浮かべている者はいなかったのである。

 ところが、その日の授業で、彼らには信じられない冷酷な事実が告げられたのである。
「お前たちの中には、変な誤解をしている者もいるようなので、卒業式間近のいい機会なので、はっきりさせておきたいのだが・・・」
 担任教師は、開口一番大事な話があると前置きした上で、もったいぶった口調で話を始めた。何やら意味ありげなその顔つきを見て教室中に緊張感が走った。
「まず、第一に5日後に行われる明倫学園高校卒業式は、お前達を対象としているものではない。」
 教室中に、一瞬ホッとした空気が流れた。もっと重大な話だろうと思っていたからである。残念だが、自分たちが明倫学園高校生としての卒業資格がないことは、すでに理解している。だから、卒業式も、式後のパーティも自分たちだけで別に行われることになっているのだと彼らは考えていた。
「お前達だけの特別な卒業式が用意されているというまことしやかな噂も流れているみたいだが、それもデタラメだ。そもそも現段階では、お前達にはいかなる高校であっても卒業資格はない。たとえ、恭純女子学園特別指導生としてもだ。」
 教室中に不安が走った。我が耳を疑い呆然としている者もいた。
 明彦は隣の裕樹と無言で顔を見合わせた。不安な思いにお互いの心が揺れているのがわかった。
「なぜなら、高校卒業に必要な単位は書類上では満たしているが、恭純女子学園で実施される卒業試験に合格していないからだ。もちろんそれに合格すれば卒業の資格は今すぐにでも与えられるのだが・・・、どうだ?お前達受けてみるか?」
 他に選択肢はない。高校卒業資格さえ取れないまま家族のもとに帰ることなどできない。 ただでさえ、家族からすれば「自ら進んで」女になった「変態息子」なのである。資格なしで帰ることはそのまま「勘当」を意味する者もいた。 
 教室中の全員が不安な面持ちではあったが、ゆっくりと全員の手が挙がっていった。

 3時間後、教室中をすすり泣きが満たしていた。中には机の上で泣き崩れ、艶やかなロングヘヤを震わせている者、友人の豊かな胸にフルメイクの顔を埋めて泣きじゃくる者、マスカラが流れ落ちているのもかまわずに、ただ外を眺めて涙する者もいた。
 誰一人として、卒業試験の出来に満足している者はいなかった。いや、全員が一問も解けていないのだから、満足かどうかのレベルにも達していない。
 それは明彦も同様だった。英語も数学も国語も、答案用紙に記入したのは、氏名欄の「やまもとあきな」と左手で書いた丸文字だけだった。
 例えば、英語の1問目は、「My name is (     ) 空欄を埋めよ。」であった。 
 明彦は自分の名前をローマ字で「Akina」と綴ることはできる。ただし、「i」の点はピンクのハートマークではあったが。
 だが、空欄を埋めることはできない。
 「My name is」の部分が読めないし、わからないのだ。それに「空欄」という漢字が読めない。
 2問目、3問目・・・文字であることすら認識できなくなり、
 4問目、5問目・・・目の前が涙でかすんできて、
 6問目、7問目・・・答案用紙に顔を埋めて、声を殺して泣いた。


「結果は発表するまでもないと思うが、全員不合格だ。と言うより、採点の必要もなかった。答案用紙の氏名欄以外になんらかの文字が書かれた答案用紙は一枚もなかったからな。ハハハ・・。」
 採点を終えて、教室に戻ってきた担任教師は、絶望感と無力感に打ちひしがれている生徒たちに遠慮ない嘲笑を浴びせた。
「だから、お前たちには卒業資格はないということが決定したわけだ。まあ、5日後、高校中退のおバカ娘として寮を追い出されたお前たちには大変な人生が待っているだろうが、せいぜいがんばってくれ。世の中にはお前たちみたいな特別な『女の子』に金を払いたがる男はたくさんいるから心配するな。ただ、コンドームは忘れるなよ。病気が怖いからな。変態客にも気を付けろよ。殺されるかもしれないからな。それと、暴力団にも気を付けろ。シャブ漬けにされて、どこかに売り飛ばされるぞ。それから、街で客に声掛ける時は気を付けろ。私服警官かもしれないからな。それと・・・・俺には安くしておいてくれよな。なにしろこれでもお前たちの恩師なんだからな、アハハハ・・・」
 担任教師は大きな笑い声を残して教卓の前を離れた。
 彼の冗談とも本気ともとれる言葉を、明彦は背筋を寒くしながら聞いていた。
 派手な濃いめのメイクをし、露出度の高い服を着て街角に立ち、行き交う男に媚びた笑みを浮かべながら声を掛ける「明菜」の姿が脳裏に浮かぶ。露わになった手足は病的なほど細く、所々に青あざがある。暴力団員風の男が見るからに病的な変態男を連れてやってくる。激しく首を振って拒否する「明菜」に容赦ない平手打ちが襲う。
 薄汚れたホテルの一室で変態客に危うく殺されそうになるところを暴力団員に救われるが、すぐに覚醒剤漬けにされ、さんざん吸い尽くされた上に、どこかの見知らぬ国に売られていく。そしてその地の売春宿でのコンドームなしのセックスにより病気になり、誰に看取られることもなく死んでいく・・・・
 そんなとんでもない妄想が明彦の脳裏をぐるぐると巡り、抑えようもない恐怖心に全身が震え出した。大きくつぶらな瞳からは大粒の涙が流れ落ちている。

「せ、せんせい・・・ま、待ってくださいっ!」
 明彦の斜め後方から、甲高い叫びにも似た声が響いた。佐山佳介だった。
 日頃は滅多に発言をしようとしない消極的な佳介の意外な行動に、担任教師はドアに向かう足を止めた。
「ん?何だ? 質問でもあるのか? 佳奈?」
 佳介は一瞬俯いて躊躇いを見せたが、すぐに意を決したように口を開いた。
「あ、あの・・・他に・・他に・・方法はないんですか?私たちが・・卒業できる方法は・・・? お願いです・・・このままだと私、本当に・・・」
「うむ、確かに佳奈の家は特に厳しいからな。卒業もできない変態息子を継母がどう扱うか、それを考えたら不安だろうな。うむ、これは誰かから質問があった時だけ答えてやろうと思ったのだが、たった一つだけ残された道がある。これはすでに学園長も了解済みなのだが、お前たちに追試のチャンスを与える。卒業試験の追試だ。」
 わずかな希望の光が見えかけた生徒たちの目が再び曇った。
 先ほどのテストで自分の学力がどの程度なのか思い知らされたばかりである。その追試に合格する可能性などあるはずがない。
「フフフ・・そんなにがっかりするな。追試はお前たちの得意分野の試験だ。もちろん簡単ではないが、これまでの『学習成果』を十分に発揮すれば、必ず合格するはずだ。どうだ?受けてみるか?」
 今回も全員の手が挙がった。ただ、先ほどの場合と異なり、何か予め用意されていたかのような計画性と担任教師の「学習成果」を強調する口調に怪しげな空気を感じ取っていたのか、勢いよく挙手した者はいなかった。
「そうか、安心した。私もお前たちが路頭に迷う姿は見たくないしな。それに教え子を金で買うのも気が引けるしなぁ、ハハハ。 では、追試の説明をするから、よく聞くように。
まず、5日後の明倫学園高校卒業式後のパーティにはお前たちも参加してもらう。ただし、卒業生としてではなく・・・彼らを接客するウェイトレスとしてだ。もちろん、卒業生達にはお前たちが元同級生だったなどということは言わない。単に雇われコンパニオンだと伝えるので、その点は安心しろ。まあ、すでにお前たちはウェイトレスのまねごとは指導されているはずだ。その指導を思い出して、しっかりと演じきることだ。」
 明彦は一瞬我が耳を疑った。こんな残酷な仕打ちがあるだろうかと思った。
 3年前、同じ入学式の場にいた生徒同士が、一方は晴れがましい卒業生として、一方は本来の性別をも偽って、甲斐甲斐しく給仕するウェイトレスとして再会しなければならないのだ。しかも、明彦にとっては、親友、兵藤良介と恋人、村瀬美穂との再会でもあるのだから尚更である。
 だが、冷静に考えてみると、その位のことで卒業資格が得られ、担任教師が話したような悲惨な運命を回避できるのなら、耐えられないことではないようにも思える。
 もちろん、良介も美穂も自分のことを認識できないならという前提だ。それがあれば、問題は自分の中の屈辱感だけである。屈辱感も恥辱感もこれまで数え切れないほど味わっているではないか。今回だってきっと耐えきれるはずだ、と明彦は自分を納得させた。
 どうやらこの思いは、明彦だけのものではなかったようだ。教室全体に「その位なら何とか耐えられる」という微かな安堵感が充満していた。中には明らかにホッとした笑みを浮かべる者さえいたくらいである。

 だが、担任教師の次の言葉はそんな明彦の思いにさらなる冷水を浴びせるかのような内容だった。
「ハハハ・・・無論そんな簡単なことだけで追試が終わるわけではない。第一それでは一生懸命学習してきたお前達の成果を発揮することもできないではないか。お前達も拍子抜けだろう?ハハハ・・・」
 生徒達は、担任教師の皮肉めいた言葉に虫酸が走る思いだったが、次に続く言葉を黙って待つしか術はなかった。
「パーティの後、お前達はそれぞれ指示された個室で待機することになる。もちろん服装も化粧も指示されるからそれに従うこと。しばらくすると男性の来客者があるので、その男性客を部屋に招き入れ、心を込めた接客を行うこと。詳細な接客内容は客の希望によって異なるので、後で個々に指示するが、いずれにせよ、お前達がこれまで『学習』してきた範囲のことである。心配するには及ばない。そして一晩客と過ごした後、客の方からクレームがなければ、お前達は晴れて追試合格となり、卒業資格を得られるというわけだ。以上だが、何か質問のある者はいるか?」
 明彦は呆然と担任教師の顔を眺めるしかなかった。現実の話として受け止められないのである。
「個室?」「男性客?」「接客?」「一晩客と過ごす?」一体誰の話をしているのだろう。
 彼には教室の後方に、目に見えない別の人間達がいて、担任教師はその人たちに話しかけているのではないかという錯覚さえ覚えるのだった。
 中村由和が教室に流れる張りつめた緊張感を破って、右手を挙げた。
「うん?なんだ? 由佳、質問か?」
「あの・・・客というのは・・・だれなんですか?」
「うん?そうか、まだ言っていなかったな? 客というのはな・・・卒業するDクラス生のことだ。」
 明彦は聞き間違いだと思った。もう一度言い直して欲しいと思いながら、教師の口許を見つめた。
「お前達には、コンパニオンとしてDクラス生の卒業を祝って心を込めた接客をしてもらう。なあに、彼らの要望と指示に従って演じていれば、嫌われることはない。なぜなら、彼らはすでにお前達の紹介資料とDVD映像を見て、気に入って指名しているくらいだからな。ただ、これだけは強く言っておくが、彼らはお前達を本物の女の子だと思って指名している。だから正体がバレることはもちろんだが、万が一にも本当の性別を疑われるようなことがないように気を付けろ。もしそのようなことがあれば、クレームが入り、追試は確実に不合格になるからな。いいなっ。」
 担任教師の表情は厳しいものに変わっていた。念を押す語気もいつにない強さだった。
 だが、明彦は半ば上の空だった。接客する相手がDクラス生だということが聞き間違いでないことが判り、呆然としていたからである。
「それにしても、なかなか見られない劇的なシーンではないか。同じ詰め襟を着て入学式に臨んだ者同士が、3年後には、一方は自信に満ちあふれた男性客として好みのコンパニオンを指名する立場になり、一方はそんな男性客に気に入られるために媚びを売り、精一杯の奉仕をするコンパニオンとして、指名される立場になる。これほどドマラチックなことはないだろう。」
 明彦の視界はほとんど消えていた。大粒の涙が流れても流れても止まらないのである。
 取り返しのつかない運命の悪戯を呪った。
 もし、入学時に、身長があと2センチ高かったら、体重があと2キロ重かったら、そして入学試験の時に万全の体調で臨んでいたら、いや、いっそのこと明倫学園高校に不合格であったら、こんな屈辱を受けることはなかったのだ。そう思うと、抑えきれない嗚咽がこみ上げてくるのだった。
 だが、今となっては例え屈辱だろうと、恥辱だろうと、その運命に身を任せるしかない。
だからせめて、親友の兵藤良介が間違って自分を指名していないこと、そして接客の内容が教師の言うように「学習」した範囲に収まってくれること、そのことを祈るより他に術はなかった。

 授業終了後、生徒達は担任教師から紹介資料とDVDが手渡された。
 自分たちを指名する材料としてDクラス生に送られた物のコピーであるとのことだった。
「彼らは、これを参考にしてお前達を指名してきているんだ。だから、彼らがどんな内容の接客を望んでいるのかを知っておくためにも、しっかり目を通しておくように。それとDVDはお前たちのビデオ撮影を編集した物だが、こちらもしっかりと観ておくように。」
 担任教師は、一人ずつの名前が記された封筒を手渡しながら、強い口調で言った。
 あの数パターンにも及ぶビデオ撮影映像が、実はこのような形で使われるということを初めて知って、明彦はショックだったが、すでにその数倍ものショックを受けた後のことだったので、もうどうでもいいことのようにも思われた。
 明彦は「明菜」と書かれた封筒を無表情で受け取ると、無言のまま教室を後にした。

  (続く)

スポンサーサイト
[PR]

コメント

§

いよいよ屈辱で恥辱にまみれた宴がはじまるのですね。
ドキドキします。

明菜も左手でペンを握らないと字が書けないまでにオバカになって、
すっかりbimboでairheadなのにまだどこかに「こんなはずじゃない」という考えが残ってるのがステキですね。

§ Re: タイトルなし


>とーりすがーり 様

コメントどうもありがとうございます。

> いよいよ屈辱で恥辱にまみれた宴がはじまるのですね。
> ドキドキします。

ご期待に答えられればいいのですが。
物語はこれから佳境に入っていきます。
もうしばらくおつき合いください。

> 明菜も左手でペンを握らないと字が書けないまでにオバカになって、
> すっかりbimboでairheadなのにまだどこかに「こんなはずじゃない」という考えが残ってるのがステキですね。
 airheaded bimbo は私の描きたい題材の一つです。日本で表現するのがなかなか難しくて苦労しますが、
 おたのしみ頂ければ幸いです。

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

サテンドール

Author:サテンドール
=============================================
女性化小説なら国内・海外を問わず大好きです。

特に屈辱系・羞恥系・強制系・寝取られ系・立場逆転系・年齢退行系・SISSY系などなど・・・。

happy よりは、unhappy ending が好み。
(ちょっと、性格がゆがんでるのかも^^)

私事ですが、以前某サイトに 
「高野奈緒美」のペンネームで
『ある性転者の告白』という拙い小説を掲載させて頂いておりました。事情があって途中で掲載を止めましたが、その完結編も当ブログでご紹介できればと思っています。

それとランキングにも参加させていただきますので、
ポチッとクリックいただければ幸いです。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
アクセスカウンター
オンラインカウンター
現在の閲覧者数:
フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。