FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

私立明倫学園高校 第7章-1

 パーティ会場の入口にはメイド風のコスチュームを身を纏った10名のウェイトレスが、客の来場を待っていた。
 また、会場内の約20の円形テーブルと飲食物の置かれたコーナーとの間を同じ制服を着た15名のウェイトレスが忙しそうに行き来していた。
 明彦は入口から数えて5人目、ちょうど列の中程の位置で、視線を下に落とし、手をスカートの前で軽く握りながら立っていた。
 明彦の心には未だに大きな不安が残っている。
 この段階になっても知らされていない「指名客」への不安である。確率的に言ってもよもや良介ということはないと思うが、確定するまではどうしても不安は消えないのだ。
 
 彼らが今身につけている制服は、一昨日手渡されたもので、ピンクのチェック柄を主体にしたメイド風コスチュームで同柄のカチューシャと白のガーターベルトにフィッシュネットストッキング、そして同じく白の12センチピンヒールパンプスというコーディネイトだった。
 メイクはフルメイク、ただしきつすぎないようにとの指示だった。そんな抽象的な指示に対しても適切に対応できるテクニックを、彼らはすでに身につけていた。
 コスチュームのスカート部分はフレアミニになっていて、丈はかなり短い。常にガーターベルトが覗いている状態で、前屈みになる際には白のサテンショーツが覗かないよう神経を使う。いや、神経を使うのはスカートの裾だけではない。大きく開いた胸元にはプッシュアップブラで強調された深い谷間がはっきり見えている。前屈みになる時にはこちらへの意識も必要だった。
 明彦は試着の時、ブラの端から不自然に盛り上がる柔肉を、真希に目ざとく指摘された。
無理してDカップのままでいたことが知られてしまったのである。
 真希は強制的にEカップに交換させると、からかい気味に言った。
「やっぱり、『特別指導』のマスターの早い子は成長も早いのね。エッチが得意な子はオッパイも大きいってことかな?フフフ・・・あ、そうそう、指名してくれたお客様にはちゃんと謝っておかなくちゃだめよ。『バストサイズ嘘ついてごめんなさい。明菜はエッチだから、すぐオッパイが大きくなっちゃうんですぅ』ってね。フフフ・・・」
 明彦は真希の言葉に小さく頷くと、ただ顔を赤らめ俯くしかなかった。 

卒業式会場から連絡が入った。
 式が終了したので、間もなく卒業生達が会場に到着するとのことだった。
 明彦は緊張で喉がからからだった。もうすでに良介と美穂は再会を済ませているだろう。
 二人はすぐにうち解けあえただろうか、それともぎこちないままなのだろうか。
 現在、良介と美穂が恋人関係にあることをいまだに知らされていない明彦にとってそう考えることは無理からぬことだった。

 パーティ会場のドアの近くで足音と談笑が聞こえてきた。
 いよいよ、3年ぶりに良介、美穂との再会の時である。本当なら、皆で名のりあって抱き合い、再会を喜び合うはずなのだが、それは決して許されない。きっと二人を遠目から見て、心の中で「卒業おめでとう」と言うしかないのだろう。
 そう思うと明彦の心は暗く切なくなり、涙が零れそうになる。
 だが、そんなことすら明彦には許されない。
「お客様の前では常にスマイルよ。それも可愛いだけのスマイルじゃダメ。セクシーに唇をいつも半開きにして、時々舌をのぞかせる。いいわね D・S・Lを意識するのよ。」
 バーティ会場に入る前、真希が「ウェイトレス」達を前に言った言葉が脳裏に浮かんだ。
 明彦は気持ちを吹っ切るために、目を閉じ軽く深呼吸をすると、口角の上がり具合を意識してスマイルを作った。頬にかすかなぎこちなさが残ってるのに気づき、指先で軽くマッサージをすると、強ばりは消えていった。最後に唇を少し開き、それをキープし、真希の言う「理想的な」スマイルが完成した。
 
 最初の来場者は3人組の男子生徒だった。詰め襟の学生服を着ているから「男子生徒」と認識できるが、もしこのままスーツでも着ていようものならりっぱな社会人に見えるだろう。彼らはそれほどまでに大人びていて、自信に溢れた風貌をしていた。それだけでない。185センチほどなのだろうか、体つきも大きく、肩幅も広く、胸板も厚そうである。典型的なマッチョ体型だということが学生服越しにも見てとれた。
 しかもそれは3人だけのことではなかった。その後に続く男子学生のほとんどが同様の風貌と体つきをしていたのである。
 3年前の入学式後、Dクラス学生寮の中に消えていく彼らを見た時、確かに背の高い大柄な生徒が多いとは思った。だがここまでの力強さと男らしさを持ち合わせた者は一人もいなかった。それに中には明彦と大して差のない良介のような者も数名いたはずである。 この3年間で彼らに一体何があったのだろう。自分たちSクラス生に施された「指導」の特異性を考えれば、Dクラス生たちに単なる普通の「指導」が行われたとは思えない。おそらく何らかの特殊な指導方針の下で、彼らをこれほどまでに心身共に「優越性」のある男達へと変えていったに違いない。

 明彦は、露出度の高い制服のために、むき出しになった自らの手足に目をやった。
 クラスメートから羨望と垂涎の的である美しく形のいい手足も、今この瞬間は、「弱さ」の象徴にしか映らない。
 もしも、目前を通過する際に全身をなめ回すような視線を投げかけていく彼らの誰かが、良からぬ考えを起こし自分を襲ってきたら、果たしてどんな抵抗ができるのだろう。細くか細い両腕は、男の太く逞しい片腕でいとも簡単に抑えつけられてしまうだろう。そして、白く細い両足は、日焼けした筋肉質の太股でガッチリと挟み込まれ身動き一つできないに違いない。
 その時に明彦に残された唯一の抵抗は、「お願い。命だけは助けて。あなたの望むことは何でもするから、お願い、命だけは・・」と涙を流して哀願することだけだろう。
 そんな場面が頭の中を占有すると、明彦は目の前を行き過ぎる彼らの目を直視することができなくなっていた。
 しかしそれでも無意識の内に「セクシースマイル」をキープしているのは、精神操作によって植え付けられた強者に対する卑屈なまでの「従属性」の現れであったに違いない。

 やがて来場者の流れが一旦収まると、次にブレザー姿の女子学生の一団が入ってきた。
 男子学生はすべて来場済みということなのだろうか?
 明彦はすでに各テーブルに着席している男子生徒達を見回した。
 ざっと数えると25名ほどである。やはり男子生徒は全員来場済みだったのだ。
 それは明彦が親友である良介を見落としてしまったことを意味した。
 良介が自分を見落とすのは当然だが、自分が良介を見落とすなんて、と明彦は思った。
 もう一度、ゆっくりと各テーブルの男子学生を目で追った。少し距離が離れているのでよくわからないが、どの生徒も当てはまっていないように見える。だがそれは同時にすべての生徒が良介である可能性を残したことでもあった。

 女子生徒たちはほとんどが何人かの集団を作りながら入場してきた。
 彼女たちの自分たちに向けられる視線は、先ほどまでの男子学生達のものとは明らかに違っていた。
 そこには羨望・嫉妬・軽蔑・侮辱など、あらゆる感情が複雑に入り交じっていた。
 ただ時折聞こえてくる彼女たちの言葉には肯定的なものは皆無だった。
「ねえ、見てよ。あの制服。信じられる? ショーツとか見えちゃいそうじゃない。しかも胸元だってあんなに開けちゃって。恥ずかしくないのかしら。」
「ホントね、でも、恥ずかしいってことないんじゃない? だって、あんなにニコニコしながら立ってるもの。」
「ニコニコなんて感じじゃないわよ。男に媚びちゃって、本当にサイテー。ああいう女がいるから、私たちみたいなきちんとした女まで同類に見られるのよ。ホント、どっか消えて欲しいわ。ああいう子。」
「本当よね。学校もいくら主役が男子生徒だからって、こんな『商売女』みたいな下品な人たちまで用意するなんて、何考えてるのかしらね。」
 明彦の視界は涙で曇っていた。「商売女」という言葉が心に重くのしかかっていた。
 そしてそれに反論することが許されないだけでなく、涙を見せずにセクシースマイルをキープし続けなければならないと思うと、それがかえって新たな涙を誘うのだった。

明彦はこぼれ落ちそうになる涙をごまかすため、一瞬視線を下に落とした。
 とその時、目の前を通り過ぎようとする一人の女子学生の足許に純白のハンカチが落ちるのが目に入った。
 明彦は咄嗟の条件反射のように身をかがめると、そのハンカチを拾い上げ、落とし主である目の前の女子学生に差し出した。
 170センチほどの長身と大人びた美しさ、そしてスラリとしたスタイルはシンプルなブレザー姿を通しても十分伝わってきた。
「ありがとう。」
 明彦のような甲高い少女じみた声とは違って、落ちついていて知的で、それでいて優しさのある声だった。
 薄めの唇とほとんどノーメイクの素顔、そして額の形が知的なイメージをさらに倍加させている。
「い、いえ・・どういたしまして。」
 明彦は自分の声が恥ずかしかった。
 強制的に作られたものとは言え、甲高い声は自分の小学生並みの知的水準を表しているようで、逃げ出したいほどの羞恥心に襲われた。
 明彦のおどおどした態度がおかしかったのか、少女はニコリと微笑んだ。

 その瞬間明彦の心に電流が走った。
 右頬だけにできる片えくぼ、そして小さくのぞく八重歯、そして口許の小さな黒子。
 それらすべてに明彦は見覚えがあった。
 3年前、明倫学園高校の入学式当日までは毎日のように目にしていた村瀬美穂の顔にある特徴だった。
 明彦は少女の顔を凝視した。いくつかのパーツに面影が残っているような気がするが、決定的とは言えない。それに、当時157センチと小柄だった自分よりさらに2センチ低かった美穂が、170センチの長身となり、当時のままの身長である自分をはるかに見下ろしてくる姿を見るとやはり別人のような気もする。
 しかし、彼女の手に握られたハンカチに施された「MIHO」の文字の刺繍がその迷いをすべて払拭した。
 その知的美少女は、恋人である村瀬美穂その人だったのだ。
明彦の胸は高鳴った。

「『美穂!』・・・さん・・・と・・・おっっしゃるの・・・ですね?」
 明彦は、思わず美穂の名を叫んだ後、すぐにごまかしながら言葉を継いだ。
 美穂は一瞬怪訝そうな顔をしたが、自らの手に握られているハンカチの刺繍に気づいて、安心したように微笑むと優しげな声で言った。
「ええ。美穂って言います。あなたは?」
「は、はい・・・あき・・・・あき・・・な・・・明菜です。」
「フフっ・・可愛らしい名前ね。今日はいろいろお世話になるかもしれませんけど、よろしくね。」
 美穂は右手を差し出し、握手を求めてきた。
 美穂の言動には、先ほどの女子学生達のような、人を蔑んだような態度も見えないし、侮辱的な言葉を投げかけるそぶりもなかった。
 辛い思いを味わっていた明彦はそんな美穂の優しさに触れて、心揺さぶられる思いだった。
 明彦は差し出された指先に右手を添えると、無意識の内に膝を曲げお辞儀の姿勢を取っていた。
メイドが主人や客に対して行うその姿勢を、明彦はこれまでの指導で徹底的にたたき込まれていて、咄嗟にそれが出てしまったのである。
「クスッ・・ずいぶん丁寧な挨拶をするのね。でも、ちょっといい気分。フフフ・・・じゃ、またね。」
 美穂はそう言うと、明彦の前を離れ、テーブルへと向かった。
「あ、美穂・・・様・・」
 明彦は咄嗟に美穂の後ろ姿に声を掛けた。客や主人を「様」付けで呼ぶのも、すでに身に付いた習性である。
「うん?なに?」
 美穂は振り返り、明彦を見つめた。
「あ、あの・・・ご卒業、おめでとうございます。」
「あ、ええ、どうもありがとう。フフフ・・」

 もちろん、明彦が本当に言いたかったのは美穂への祝福の言葉などではなかった。
(僕は明彦だ。君の恋人の明彦だ。会いたかったよ。)
 明彦は去りゆく美穂の背中に向かって、心の中で一回だけ叫んだ。
 何度も繰り返せばきっと涙が止まらなくなり、アイメイクが流れ落ちてしまうかもしれないと思ったからだった。

 明彦の前を離れ、会場中央に向かった美穂は前列右から5番目の円卓テーブルの一席に腰を下ろした。そのテーブルにはすでに二人の男子生徒と一人の女子生徒が座っていた。
 美穂を含めた4名の男女はどうやら知り合いらしく、美穂が席に着くとすぐ、会話を交わし始めた。もちろん明彦の位置からはまったく聞こえないが、全員が笑いあっているのは遠目からもよくわかった。
 やがて、美穂は席をわずかにずらし、左隣の男子生徒の方に近づけた。それに呼応するように、その男子生徒も席を右側に少し移動した。
 すると、残りの二人の生徒同士も美穂たちと同様の動きをし、テーブルは二組のカップルシートに分かれてしまった印象である。
 美穂とペアになった男子は、長身揃いの男子学生達の中でも、恐らく一番目か二番目の大きさで、しかも骨格もしっかりしていた。また体格面だけではなく、容貌も自信が表面に現れ出ているような男らしさがあり、明るく知的な笑顔も印象的だった。明彦の目の前を通り過ぎていった25名の男子学生の中も特に印象に残っていた一人である。
 美穂は、そんな彼の肩に時折頭を凭せ掛けたり、耳打ちをしたりしている。そして彼の方もそれに笑顔で答えている。
 ここまで目にすれば、明彦の目にもこの二人が交際中であることは明らかだった。
 明彦の心には動揺が広がった。高鳴る鼓動は自分の耳を通じても聞こえてきた。
 だが、明彦には美穂を恨む気持ちは起きなかった。いや、全く起きなかったと言えば嘘になる。ただ先ほど、美穂の優しさとその人間性に触れて、明彦は恨みを持つまいと自分に言い聞かせたのである。第一、今の自分に何ができるのだろう。名乗り出ることすら許されない自分にできることなど何もない。もし美穂のことを今でも愛しているのなら、彼女の幸せこそ第一に考えるべきなのではないか。それに今美穂に微笑みかけている男子生徒は明彦の目から見ても、好青年に見える。長身の美穂が隣に並んでも、きっとバランスのとれた似合いのナイスカップルになるに違いない。
 明彦はそう考えようと務めた。明彦は殊更大きくセクシースマイルを作った。そうでもしなければ、すぐにでも涙が堰を切って流れ落ちそうに思えたからだ。

 (続く)

スポンサーサイト
[PR]

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

サテンドール

Author:サテンドール
=============================================
女性化小説なら国内・海外を問わず大好きです。

特に屈辱系・羞恥系・強制系・寝取られ系・立場逆転系・年齢退行系・SISSY系などなど・・・。

happy よりは、unhappy ending が好み。
(ちょっと、性格がゆがんでるのかも^^)

私事ですが、以前某サイトに 
「高野奈緒美」のペンネームで
『ある性転者の告白』という拙い小説を掲載させて頂いておりました。事情があって途中で掲載を止めましたが、その完結編も当ブログでご紹介できればと思っています。

それとランキングにも参加させていただきますので、
ポチッとクリックいただければ幸いです。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
アクセスカウンター
オンラインカウンター
現在の閲覧者数:
フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。