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私立明倫学園高校 第7章-2

 卒業生全員がテーブルに着席したのを確認し、司会者役の学校職員が一段高くなった臨時のステージにマイクを持って上がった。
「では、これより卒業パーティを始めますが、その前に今年度の成績優秀者の表彰をさせていただきたいと思います。先ほどの卒業式ですでに氏名は発表いたしましたが、ここでは個人個人に記念品を贈呈し、皆さんと一緒に称えたいと存じます。では学園長、よろしくお願いいたします。」
 司会者はそう言うと、ステージ中央の場所を空けた。ステージ脇で待機していた、礼服姿の学園長がその空間を埋めた。
「では、レディファーストということで、Fクラスの成績優秀者から表彰に入らせていただきます。まず一人目、佐藤瑞恵さん。」
 佐藤瑞恵と呼ばれた女子生徒が全員の拍手の中、ステージに上り、学園長から記念品の贈呈を受けた。
 卒業式での重々しいセレモニーとは違い、パーティの冒頭というやや砕けた雰囲気でのイベントに、受賞者も会場の雰囲気も和やかだった。中には調子に乗って指笛を鳴らしたために注意を受けて、会場の笑いを誘った者もいた。
 二人目、三人目と受賞セレモニーは進み、四人目の女子生徒の氏名が呼ばれた。
 小西詩織というその名は、美穂と同じテーブルに座るもう一人の女子のものだった。
 ステージ横の明彦の角度から見ると、美穂同様に知的ではあるが、やや冷たく生意気そうな印象を受ける。記念品の授与にしても形式的にお辞儀をしているだけで、それほどの喜びを感じてはいない様子だった。ただ、美穂たち、同テーブルの者達とは相当親しいのかテーブルに戻るときには、満面の笑みを浮かべていた。

「では、最後の成績優秀者です・・・・村瀬美穂さん。」
「え?」
 明彦は、微かに声を漏らした。
(美穂が、成績優秀者・・・)
明彦にとってそれは意外な情報だった。もちろん明倫学園高校に入学できたのだから、美穂の中学時代の成績はかなり上位であったことは確かだが、決してトップクラスというわけではなかった。恐らく入学当時は中の中といった程度の成績だったのではないだろうか。
 明倫学園高校の成績優秀者に選ばれるには国内最難関大学への合格が必須条件であることは有名な話である。ということは、美穂もその合格を果たした一人ということになる。
 明彦にはそのことがにわかには信じがたかったのである。
 ただ、この3年間で美穂が外見も内面もすっかり美しい大人の女性へと変貌していることは、もうすでに目の当たりにしたことである。学力がそれに伴って飛躍的に伸びたとしても不思議なことではない。信じがたいと思ったのはその成長過程を見ることのできなかった自分自身の思いこみに過ぎないのだと、明彦は思い直した。
 もちろん悲しさもあるし寂しさもある。高校卒業の資格すら取れるかどうかわからない自分に比べ、優秀な女性として成長していく美穂は遙か遠く手の届かない存在、言い換えれば住む世界の違う人になってしまったことを思い知らされたような気もするのだ。
 明彦に今できることはそんな美穂に対して心からの祝福を送ることだけだった。
 明彦は生徒達の拍手に合わせ、無意識に手を叩いていた。隣に立っている水野純一、いや純奈に軽く肘打ちされるまで、自分が拍手していることにさえ気づかなかった。

「では、引き続き、男子成績優秀者の表彰に移らせていただきます。まず一人目、秋山耕太くん。」
 司会者の声に、はっと我に返った明彦は、再びステージ上に視線を戻した。
 秋山耕太と呼ばれた生徒が、美穂達の座るテーブルの斜め後方の座席から立ち上がると、ゆっくりとステージに向かった。他の男子生徒同様、背の高いガッチリ体型で知的な容貌をしていた。
 一人目の秋山耕太が学園長から記念品を授与され、拍手の中ステージを下りると、二人目の氏名が呼ばれ、その後、3人目、4人目と行事は進行していった。
 7人目に呼ばれた村中太一は美穂のいるテーブルで小西詩織とペアになっている生徒だった。 
 明彦はここであることに気づいた。
 各テーブルの中で男女がペアを作って座っているのは成績優秀者同士の組み合わせだけなのだ。他の生徒は同性同士で同じテーブルを囲んでいる。もしかしたら学内での男女交際は成績優秀者のみに与えられた特権なのではないだろうか。だとすると、美穂とペアになっている男子生徒も成績優秀者の一人ということになり、まだ呼ばれていない3名の中にいることになる。明彦はその人物の名を聞き漏らすまいと耳を傾けながら待った。それは自分の恋人(いや、もはや元恋人と言うべきなのか)を託す人物の名を記憶に留めておかなければならないという思いと共に、先ほどから感じている言いようのない胸騒ぎのためでもあった。
 明彦は、この時点になっても、まだ親友の兵藤良介の存在を確認できていない。Dクラス生と言っても、25名の少人数である。しかもすでに名前の呼ばれた7名の中にはいない。
 もしかして残り3名の中に良介の名が? いや、彼が成績優秀者になっていることはないだろう。では、男子生徒同士のテーブルのどこかに? いや、待って。美穂だって、成績優秀者になっているのだ、良介が3年の間に成績優秀者になっている可能性だってある。
もしそうだとしたら、美穂の隣に座る生徒がそうなのか? いや、そんなはずはない。良介が親友である自分の意志も聞かないまま美穂との交際をするはずがないではないか。第一、自分と大して体格に差のなかった良介が、あの逞しく男らしいマッチョに変わっているわけがないではないか。いや、でも・・・・
 
 明彦の頭には疑問と否定の連鎖が続いていた。それはまるで、バーティ会場の壁に掛かる飾り付けのためのリボンの輪のようであった。
 だが、その連鎖も司会者の一言で断ち切られることとなった。すべての疑問が氷解したのである。

「では、男子最後の成績優秀者です・・・・兵藤良介君、ステージにどうぞ。」
 司会者の言葉に応えて一人の男子学生が立ち上がった。前列右から5番目のテーブルに着席していた一人である。同席者の小西詩織と村中太一から祝福の拍手を受けながら起立した彼の横には、ひときわ大きな笑顔と拍手を投げかけている美穂の姿があった。
 
 明彦は全身の力が抜けた。その瞬間自分の身体を支えるすべての骨という骨が溶けてしまったかのような感覚だった。かろうじてフロアに崩れ落ちることが避けられたのは、隣に立っていた「同僚」の純奈が異変に気づき、咄嗟に彼の身体を支えてくれたからである。
「どうしたの?明菜、何かあったの?」
 純奈の問いかけに明彦は小さく首を振って答えた。
「ううん、何でもない・・・ありがとう、純奈」
「そ、そう・・・ならいいけど、でも明菜、顔色よくないわよ。もしかして風邪とか?だったら先生に言って・・・」
「ううん、大丈夫・・・心配かけてごめんね。」
 明彦は心配そうな表情で見つめる純奈に作り笑顔で答えた。
 膝に意識的に力を入れて姿勢を整えた。震えはまだ続いているが、何とか崩れ落ちずに立つことはできた。

 思い描いていた中で、最悪のシナリオである。
 今、ステージに立ち、学園長から記念品を受け取っている男子生徒、高身長マッチョぞろいの男子生徒の中にあってもとりわけ目立つその生徒こそ、親友の兵藤良介だったのだ。
 それにしてもなんという変わりようだろう。3年間という年月は人をここまで変えることができるのだろうか。
 当時、自分と大して変わらなかった身長が今では190センチ近くにまで達している。どちらかと言えば、細身であった体格は厚い胸板と広い肩幅と太い首を持つマッチョ体型に変わっている。全身が鋼のような筋肉に覆われているだろうことは制服越しにもわかる。
 さらに、健康的に日焼けした顔に浮かぶ、自信と誇りに満ち溢れた男らしい笑顔からは、以前の少しはにかみがちで内気だった性格は微塵も感じられない。
 そして、成績優秀者という客観的事実、それはつまり美穂同様、国内最難関大学合格者という事実を物語っているのだが、男子の場合はそれだけではない。25名中22名は同大学の合格者なのだ。その中で成績優秀者の10名に選ばれるということは、他の要素、つまり学園の理想である「若くしてあらゆる分野におけるトップリーダーとなる人材」として認められたことになる。言い換えれば「権力者」としての人生が約束されたと言っても過言ではないのだ。
 
 だが、良介が手に入れたものは他にもあった。いや、それこそが今明彦の気持ちを最も動揺させている事柄だと言ってもいい。
 彼は、村瀬美穂という恋人を手に入れた。親友の手から奪って自分のものにした。
 そのことはもちろん動揺の最も大きな要因ではあるが、同時に小さな疑問もわいてくる。
 なぜ良介はあえて親友の恋人である美穂を自分の交際相手として選んだのだろう。
 そして、二人はなぜ一言の連絡もなしに交際を始めたのだろう。
 たとえその答えがわかったところで、二人が交際しているという事実は消えるわけではない。だから知る必要もないのかもしれないが、もしかしたらそれを知ることで二人の交際を認める気持ちになれるかもしれないという気もするのだ。

 明彦がそんな気になったのは、仲間の祝福を受けながらテーブルに戻った良介を立ち上がって迎える美穂の心からの笑顔を見たからだ。それは何の遠慮も躊躇いもない満面の笑みだった。そんな幸福そうな笑みを明彦はかつて一度も見たことはない。
 それに二人が並んで立っている姿を見ると、まるで画に描いたような理想的なカップルに見える。高身長同士、エリート同士の美男・美女のカップルはまるで映画スター同士のそれにすら見えてくる。

 明彦は、涙でかすむ目の奥で、美穂の隣に立つ自分の姿を想像してみた。
 そこには、およそ男女の恋人同士とはかけ離れた、女性同士のペアの姿が浮かんでくる。
 長身で大人びた美穂と小柄でやや童顔の「明菜」の二人は友人同士にすら見えない。
 姉妹・・・それも優秀で何もかも完璧な姉と、何をやってもドジでおバカな妹というイメージしか浮かんでこない。
 イメージはさらに色づけされていく。
 二人の姉妹には何の共通点もない。能力も趣味も関心事も特技も。そもそも妹の「明菜」には特技などと言えるものはない。
 いや、あった。・・・・・・姉の「美穂」には絶対に真似のできない特技があった。
 それは、どんな男の股間も熱くしてしまうメイクと表情、そしてその部分を硬化させる言葉や仕草、さらに熱く固くなったその部分を鎮め、解放させるテクニックである。
 
 明彦の心に浮かぶ静止画イメージは、やがて動画となって動き出す。
「明菜」が例えどんなにドジでのろまでも、優しい笑顔で見守っている「美穂」。
「明菜」が何度も学校のテストで零点をとってきても、「また、こんどがんばればいいのよ。」と頭を撫でながら言葉をかけてくれる「美穂」。
 でも・・・・
「明菜」が男と見れば色目を使い、学校でも「ヤリマン」とあだ名されるようになると、「美穂」の表情は曇る。
「美穂」は「明菜」を両膝の上に俯せにさせ、お尻を露出させると、そこに手のひらを打ち下ろす。
「あなたのためよ。」と「美穂」は涙を流しながら打擲する。
「ごめんなさい、お姉様、明菜は悪い子でした。もう、二度としませんから、許して、お姉様・・・」と泣き叫ぶ「明菜」。
 やがて胸の中で泣きじゃくる「明菜」を「美穂」はそっと抱きしめ、頭を優しく撫でる。
泣き疲れた「明菜」はそのまま「美穂」の胸で眠りに落ちる。「明菜」の寝顔は安心感と幸福感に満たされていた。・・・・・・・・・・・・・

 明彦はハッとした。なぜそんな映像が浮かんできたのかわからない。
 だが、安心感と幸福感は映像の中の「明菜」の寝顔だけに宿ったものではなかった。  
 その映像をイメージしている明彦自身の中にも、はっきりと宿った感覚だった。
 
 恥ずかしかった。情けなかった。
 それは「強者」への従属を「安心・幸福」と認識してしまうことに対してではない。
 同じ歳のかつての恋人をその「強者」の一人として認めている自分に対してだった。
 だが理性ではそれを否定しようと思っても、自分の心には嘘は付けなかった。
 明彦の心には「強者」である「姉、美穂」に従属する「妹、明菜」になれたらどんなに幸せだろうかという思いが芽生えていた。
 明彦の目にはもはや「恋人、美穂」の姿はなくなっていた。
 
 (続く)

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サテンドール

Author:サテンドール
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女性化小説なら国内・海外を問わず大好きです。

特に屈辱系・羞恥系・強制系・寝取られ系・立場逆転系・年齢退行系・SISSY系などなど・・・。

happy よりは、unhappy ending が好み。
(ちょっと、性格がゆがんでるのかも^^)

私事ですが、以前某サイトに 
「高野奈緒美」のペンネームで
『ある性転者の告白』という拙い小説を掲載させて頂いておりました。事情があって途中で掲載を止めましたが、その完結編も当ブログでご紹介できればと思っています。

それとランキングにも参加させていただきますので、
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