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私立明倫学園高校 第7章-3

 パーティ前のセレモニーも終わりに近づき、「ウェイトレス」達は、会食の準備に入った。食事と飲み物を各テーブルに運ぶのである。
 各テーブルには2人ずつの担当ウェイトレスがつくことになっており、飲食物を運ぶ時以外はテーブル脇に待機し、注文や指示が来るのを待たなければならなかった。

 ここでまた運命の悪戯が起こった。
 明彦が指示された担当テーブルナンバーは「5」。それは良介と美穂たちが座るテーブルだった。
 よりによってなぜ自分が・・・? 明彦は躊躇った。美穂のそばに行きたい気持ちはある。だがそれ以上に良介のそばには行きたくない思いの方が強かった。
 逡巡して脚が前に進まない様子の明彦を見た純奈が「私が替わるわ。」と言って、パーティ担当の職員に申し出た。だが職員はどういうわけか、「それはできないことになっている。」と言って、純奈の申し出を拒絶した。
 明彦にはもう選択の余地はなかった。心を落ち着けるために一つ大きく深呼吸をすると、交代を申し出てくれた純奈に「ありがとう」と一言言って、テーブル5に向かった。
 幸いなことに、同じテーブル5の担当になったのは親友の富永裕樹だった。
 裕樹も同じテーブル担当が明彦だと知って、安堵の笑みを漏らした。

「あら、あなたが担当してくれるの?よかった 知ってる人で。私こういう所で食事するのって落ち着かなくて・・・」
 明彦が自分たちの担当ウェイトレスであることを知った美穂はニコっと微笑んで声を掛けた。
「は、はい・・・どうぞよろしくお願いします。」
 明彦はできるだけはっきりと返事をしたつもりだったが、声の震えは抑えきれなかった。
「え?美穂、この子、知ってるの?」
 向かい側の椅子に座る小西詩織が声を掛けてきた。
「ええ、さっき、ちょっとね。とっても親切な人よ。それにとっても可愛いし。」
 美穂はテーブルにいる他の生徒たちに明彦を推薦するかのような紹介をした。
「ふ~ん、この子がねぇ・・・」
 詩織は気の乗らない返事をした。どこか人を蔑んだような視線が気になった。
言葉遣いにしても、美穂が「人」と自分を称しているにも関わらず、詩織は「子」と称していることが、すでに相手を見下している気持ちの表れのように思えた。

 食事と言っても、フレンチのフルコースのような堅苦しいものではない。決まった飲食物を一通り並べ終えれば、次の指示があるまでテーブル脇で待機しているよりほかにすることはない。
 明彦は、裕樹と並んで、テーブル脇のスペースに待機した。視線を下に落とし、手をスカートの前に重ねる、メイドとしての基本姿勢はもう板に付いたものだった。
 だが、明彦にはどうしても確認したいことがあった。親友である良介のすっかり変わった姿である。
 それには視線を上げなくてはならない。飲食物を並べる時には、どうしてもその勇気が出なかった。距離があまりに近いと思ったからである。だが、この距離からならその勇気も沸いてくる。
 明彦は視線を少しずつ上げた。黒い男子学生服のズボン、上半身、胸、首、そして横顔が少しずつ現れていった。
 明彦は息を呑んだ。その圧倒的な存在感に恐ろしさすら感じた。確かにその学生が兵藤良介であるということを知った今、容貌の各パーツに昔の面影らしきものがないではなかった。だが、そんなものはすべて消し去ってしまうほど、別人物になっていた。
 明彦の視線に気づいたのか、良介がこちらを振り返った。反射的にその視線を避け、目の前のフロアに目を落とした。

「ねえ、君・・・ちょっと。」
 聞き覚えのある声だった。いくぶん低くはなっているが、それは明らかに良介の声だった。呼びかけの言葉がもし、「君」でなくて「明彦」であったなら、明彦は咄嗟に返事をしたに違いない。「うん?何?良介」と。 

「はい、ただいま・・・」
 それが、明彦の実際に口にした返事である。メイド服を着ている以上、客や主人への当然の応対として教え込まれている言葉だった。
「明菜、スマイル!」
 テーブルの方に行きかけた明彦に裕樹が囁いた。
 咄嗟のことに表情が強ばっていたことに気づかされ、明彦はスマイルを作り直した。
 ただ、美穂と良介の前で「セクシースマイル」を作ることはさすがにできなかった。

「ええと、ジンジャーエール二つとオレンジジュース二つ、それとこれ下げてくれる?」
 良介はそう言うと、テーブル中央に積まれた2枚の皿を指さした。
「は、はい・・・かしこまりました。ただいまお持ちいたします。」
 明彦は中央の大きめの皿に手を伸ばした。小柄な明彦にとって大きな円卓の中央までは結構な距離だった。12センチピンヒールの踵をさらに浮かし、精一杯の前傾姿勢を取り、思い切り手を伸ばし、やっと指先が触れた。
 そんな様子に気づいたのか、美穂がそっと皿を動かし、明彦の方に近づけた。
「ありがとうございます。助かります。」
 明彦はそう言うと、美穂に視線を向けた。美穂は小さく頷くと、微笑みながら言った。「いいえ、どういたしまして。」
 
 その時だった。美穂の暖かい視線とは全く違う種類の視線を感じた。
 それはEカップのバストが作る谷間とマイクロミニのヒップラインの2カ所に注がれていた。
 胸に向けられた視線の主は良介であり、ヒップに向けられた視線の主は小西詩織と村中太一だった。
 無理な前傾姿勢によって、胸元の谷間がより強調され、マイクロミニの裾からは白のサテンショーツが露わになっていたのである。
 良介と太一の瞳の奥には若い男性の情欲の光が宿っていた。それほ文字通りギラギラと燃えるような光だった。
 一方、詩織のそれは全く異なる種類の視線だった。一言で言えば「侮蔑」の視線だった。

 姿勢を戻した明彦は、身体を固くした。これまでも男達の情欲を込めた視線は何度も受けてきているし、自分が彼らの性の対象として見られているのも知っているつもりだ。しかし、今自分に向けられた視線の主は、親友である良介なのだ。もしかしたら良介の頭には豊満な胸を露わにした「明菜」の姿が思い描かれているのかもしれない。いや、もしかしたら、襲いかかって陵辱している姿をも想像しているかもしれない。そう思うと、明彦は改めて自らの無力を悟り、露出度の高いユニホームが殊更心細いものに感じるのだった。

 明彦は皿を手にすると、飲食物の置かれているスペースに向かって歩き出した。
「あ、ちょっと、明菜さん、私オレンジジュースやめて、アイスティーにするわ。それとピザを一枚お願いできる?」
 声の主は美穂だった。暖かく明るい声だった。
「はい、かしこまりました。」
 明彦は振り返ると、できるだけの笑顔で答えた。
「え?明菜・・・?」
 良介が呟くように言った。
「うん、彼女、明菜さんっていうのよ。ね?」
 美穂が明彦に同意を求めるように言った。
「は、はい・・・明菜と申します。」
「へ~そうかぁ・・・」
 明彦の言葉に良介は呟くように言い、どこか含意のありそうな笑みを浮かべた。
 明彦はその笑みが少し気にはなったが、その場に止まっていることはできない。
 小さくお辞儀をしてから、再び歩き出した。

 テーブル5から飲食物スペースまでの距離はさほどではない。
 だが、そのわずかな距離が明彦にとってはとても長く感じられた。
 一つには慣れたとは言えトレイに飲食物を乗せながら、12センチピンヒールで歩行しなければならないことである。バランスを崩せば飲食物の落下か、最悪の場合には転倒して派手なパンチラシーンを演出しかねない。自ずと歩幅は小刻みになり、実際の距離以上に時間がかかる。
 そしてもう一つには、精神的な要素がある。
 テーブル5から飲食物スペースまでの間には5つのテーブル配置されていた。
 1つが成績優秀者のテーブルで男女各2名ずつが座っている。残りの4つは女子同士のテーブルが2つ、男子同士のテーブルが2つ。それぞれに4名ずつが座っていた。
 この5つのテーブル前を通過しなければ目的地に到着することはできない。他に多くのウェイトレスが行き来している場合には何とかなるのだが、注文のタイミングによっては、単独で往復することになる場合がある。この時の注目度は並大抵ではない。ある意味「晒し者」と言ってもいい。

 明彦は今まさにその「晒し者」の状態にあった。
 男子学生からの下品な冷やかしの言葉や女子学生からの侮蔑の言葉のシャワーを全身に浴びながらも、顔にはスマイルを湛えていなければならないのだ。特に会場隅のブースにいる高岡真希と宮田里佳の監視の目が届く範囲では尚更だ。
 そんな場所で、「スタイルいいねぇ。ちょっとパンチラしてみてよぉ。」とか、「オッパイでかいね。パイズリしてくれない?」といったひやかしの言葉を無視するわけにはいかないのだ。
 泣き出したくなるほどの羞恥心を押し殺して、顔には精一杯のセクシースマイルを作り、声のする方向を振り向く。そして、少し前屈みになってお尻を突き出して見せたり、胸の谷間を強調しながら、舌を出して唇をゆっくりとなめ回す。もちろん立ち去る時のウィンクも欠かせない。
「うわっ、たまんねぇ~、なあ、俺ちょっとトイレでヌイてきていい?」などという下品な言葉を耳にしながら、明彦はブースの方に視線を送る。真希のOKポーズが見え、やっと胸をなでおろす。

(どうしてこうも違ってしまったのだろう?)と明彦は思う。
 良介や美穂は、勉学に努め身体を鍛え、心身共に大人に成長して卒業を迎えた。しかも成績優秀者という名誉まで授かって。
 それなのに、今自分が卒業の資格を得るためにしていることは何だろう?
 思わせぶりな仕草で男達の劣情を刺激して、あえて「淫乱女」と受け取られるようなポーズを取り、それがまた別の男の欲望を刺激する。
 明彦の脳裏に、来場時に一人の女子学生が言った「商売女」の言葉が甦ってきた。
 もちろん自分は「商売女」などではない。でも今の自分の振る舞いを見たら、女子学生の言葉を否定する人はいないだろう。明彦の心には言いようのない無力感が広がっていた。

 そんな沈んだ思いが原因だったのだろう。明彦はある一つのミスを犯してしまう。
 飲食物スペースからテーブルに戻る時、明彦の持つトレイには、ジンジャーエールのグラスが2つ、ピザの乗った皿が一枚、そしてオレンジジュースのグラスが2つ、乗っていた。美穂が最後にオレンジジュースをアイスティーに代えて注文したことを忘れてしまっていたのだ。 
 それは、取るに足らない小さなミスである。取り替えれば済むような小さなミスである。
 だが、そんな小さなミスも他の要因が重なった時には思わぬ大きな事態を引き起こすことになってしまうものなのだ。

 相変わらずのひやかしの言葉を浴びながら、テーブル5に戻ろうとする明彦の目に、何やら異様な光景が飛び込んできた。
 同じテーブルを担当する宮永裕樹が、テーブル脇で首をうなだれて立っている。
 近くには座ったままの小西詩織の横顔が見える。遠目ではあるが、何やら怒っている様子が見て取れる。詩織の横には村中太一のにやついた笑顔が見え、その向かいの席に座る良介も同様に笑顔を浮かべている。ただ一人美穂だけが真顔で、詩織に向かって何か語りかけているように見える。
 明彦は思わず足を速めた。何があったかはわからないが、うなだれる裕樹の姿を見て、のんびりとしている場合ではないと思ったのだ。

「だから、謝って済む問題じゃないって言ってるでしょ?何度言ったらわかるのよっ!」
 近づく明彦の耳に最初に飛び込んできたのは詩織の怒声だった。
「で、では・・・どうしたら・・・どうしたら許して頂けるのですか?」
 うなだれたまま、震える声で裕樹は言った。
「だから、責任者を呼んでって言ってるでしょ?本当に頭悪いんだからっ」
「お、お願いします、それだけは・・・お許しください。」
 裕樹はそう言うと、そばに駆け寄ったきた明彦に気づき、近づくとその胸に泣き崩れた。
 明彦は裕樹の露出した肩を撫でながら慰めるように声を掛けた。
「大丈夫よ、先生に知らせるなんてことにはならないから、安心して・・・。でも、いったい何があったって言うの?」
 明彦の言葉に詩織がすぐに反応した。
「へ~あなた達、責任者のこと、『先生』って呼んでるの?何か変ね。ま、そんなことどうでもいいけど。それよりあなた、勝手なこと言わないでくれる? 責任者を呼ぶかどうかは客である私が決めることでしょ?」
「で、でも・・・先生を呼ぶことだけはお許しください。お願いします。」
 明彦は事情も掴めぬまま懇願した。
 先生、つまり真希か里佳を呼ぶことは、そのまま裕樹の「追試不合格」決定につながることを知っていたからである。

 その後泣きじゃくる裕樹から何とか事情を聞くことができた。
 その間も、詩織の容赦のない叱責と怒声が飛んでいたが、時折、美穂が、「もう、これだけ謝ってるんだから許してあげなさいよ。悪気があったわけじゃないのよ。」という言葉を詩織にかけてくれるのが、せめてもの救いだった。

「事件」はいたって単純なことだった。
 テーブルを片づけようとしていた裕樹が誤って飲みかけの水の入ったグラスを倒し、それが運悪く、詩織のスカートの上に流れ落ち、幅20センチほどの染みを作った。ただそれだけのことである。
 ただ、裕樹の話によると、誤ってグラスを倒したのは、トイレに行くためにテーブル5の前を通りかかったある男子学生が、前傾姿勢になってテーブルの片づけをしている裕樹のむき出しになった白いサテンショーツに触ってきたことに驚いたためだと言う。
 これまで3年間親友同士としてつき合ってきた明彦からすれば、裕樹の言葉に嘘がないことは確実だった。第一、男子学生達が自分たちに投げかけてくる情欲の目を見れば、それが出任せでないことは火を見るより明らかだった。

 ただ、そのことを言い訳にしたことが詩織の怒りに火を点ける結果になってしまったようだ。 
 詩織は裕樹に向かって遠慮ない辛辣な言葉を投げた。
「そんな、いかにも触ってくださいって言ってるようなイヤらしい服を着ていて、いざ触られたらびっくりしてミスするなんてどうかしているわ。どうせ、男のイヤらしい視線を受けるのがうれしくて好きでやってるんでしょ?触られるのだって大好きなくせに。思わせぶりな笑顔振りまいて、男に媚び売って、そんな女が触られたことを言い訳にして許してもらおうとするなんて虫がよすぎるわよ。」
 明彦は、詩織の言葉を聞いてただ涙を流しながら俯いている裕樹に代わって、何か言葉を返そうと思ったが、できなかった。
 もちろん、好きでやってるのではないと言い返したい気持ちはある。しかし、それを言ってどうなるのだろう。事情を知らない詩織にとって自分たちは、男が好きで、男に媚びを売ることでしか生きられない最低な女としか映らないだろう。たとえ反論したところで信じてもらえるわけもない。第一、騒ぎを大きくして困るのは裕樹や明彦の方だった。
「本当に申し訳ありませんでした。私からも謝りますので、どうかお許しください。」
 明彦は、裕樹に代わって、そう言うのが精一杯であった。

 だが、その言葉に詩織は冷淡な笑みを浮かべると、さらに残酷な言葉を投げかけたのだった。
「フフっ・・いいわ、そんなに許して欲しいなら許してあげる。ただ条件があるわ。そこに二人跪いて土下座なさい。そして自分たちが卑しくて汚らしい女だということを認めなさい。それができたら許してあげるわ。」
 明彦は目の前が涙で曇っていくのがわかった。怒りなのか、悲しみなのか、身体中が小刻みに震えている。
 明彦は、裕樹と目を合わせると、小さく頷き、膝をゆっくりと折っていった。

 と、その時だった。聞き覚えのある声がした。
「明菜さん!そんなことすることないわ。立ちなさい。」
 美穂の声だった。
 明彦は折りかけた膝を戻すと、美穂の方を見た。
だが美穂は明彦とは視線を合わさずに、目の前の詩織に向けた。
「詩織も、もういい加減にしなさいよ、あなた悪いわよ。少しぐらい水をこぼされたからって何だって言うの。そんなものすぐ乾くじゃない。ミスは誰にだってあるでしょ?彼女たちだって、心から謝ってるじゃない。それを人格否定みたいなことまで言って。反省するのは詩織、あなたの方よ。」
 明彦の目から涙が零れた。胸に熱さがこみ上げてきた。
 美穂が自分たちの側に立ってくれたこともさることながら、正しいと思ったことをきちんと主張する姿に、自分にはない凛々しさと知性と力強さとを感じ取ったからである。
 明彦は自分の心の中で、美穂に対する明確な「尊敬」の念が形になっていくのがわかった。それはあの「姉」に対する「妹」の敬慕の念と同じ底流を持つものだった。

 (続く)

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サテンドール

Author:サテンドール
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女性化小説なら国内・海外を問わず大好きです。

特に屈辱系・羞恥系・強制系・寝取られ系・立場逆転系・年齢退行系・SISSY系などなど・・・。

happy よりは、unhappy ending が好み。
(ちょっと、性格がゆがんでるのかも^^)

私事ですが、以前某サイトに 
「高野奈緒美」のペンネームで
『ある性転者の告白』という拙い小説を掲載させて頂いておりました。事情があって途中で掲載を止めましたが、その完結編も当ブログでご紹介できればと思っています。

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