FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

私立明倫学園高校 第7章-4

 美穂の詩織に対する思いきった叱責によって、いったんは収まりかけていたその場の雰囲気であったが、今度は明彦の些細なミスによって、もう一度険悪な方向へと向かってしまうのだった。
明彦は、騒動の間サイドテーブルに載せておいたトレイを持ち上げると、テーブルの上に飲食物を並べていった。真ん中にピザの皿を、ジンジャエールを良介と太一の前に、そしてオレンジジュースを詩織と美穂の前に置き、一礼して下がった。
 その瞬間、美穂が小さく、「あらっ」と言い、言葉を繋ぎかけたが、すぐに首を左右に振り、「ううん、何でもない・・」とだけ言って、オレンジジュースを手にした。
 美穂はミスオーダーを指摘しようとして、咄嗟に口を閉ざしたのである。もし口に出せば、詩織にまた「ウェイトレス」攻撃のきっかけを与えることになってしまう。自分さえ黙って見逃しておけば何事もなく済むのである。美穂の大人の女性としての判断だった。

 だが、めざとい詩織は見逃さなかった。
「あら?美穂、アイスティーに替えたんじゃなかったっけ?」
 詩織の指摘に敏感に反応したのは美穂よりも明彦の方だった。
 美穂が確かにそう言ったことを思い出し、テーブルに近づいた。すぐに交換することを申し出るためだった。
 だが、美穂はそんな明彦を目で制し、何事もなかったかのように言った。
「ううん、替えてないわ。オレンジジュースで合っているわ。」
「ええ?そうだったかしら? さっきアイスティーに替えてって言ったじゃない。ねえ、太一?」
 詩織は隣に座る村中太一の方を見た。
 太一と良介は先ほどから授業で学んだ「帝王学」について語り合っていて、ここまでの騒動にもあまり関心を示していなかった。もちろん、美穂のオーダーのことも大して記憶には残っていない。
「ああ?そうだっけ?」
 太一はそれだけ答えると、もう一度良介との会話に没頭していった。
 そのことが詩織の気持ちをかえって刺激してしまった。
(このままだと、私が間違えたことになるじゃない。)という思いだった。
「絶対にそう言ったわ。私覚えているもの。」
「いいんだって。それに私本当はオレンジジュース飲みたかったのよ。言い換えて失敗したって思ったんだから。」
「ほら、やっぱり替えるように言ってたんじゃない。何で嘘ついてまでこの子たち庇おうとするのよ。」
「庇おうとなんてしていないわよ。たいしたことじゃないから、いいって言ってるだけよ。」

 明彦はさすがにいたたまれなくなり、美穂の元に近づいた。
「申し訳ありません、すぐに交換してまいりますので。」
 明彦はそう言うと、美穂の前のオレンジジュースに手を伸ばした。
「ちょっと待って。交換すればいいってもんじゃないわ。」
 詩織の声だった。
 明彦はドキッとして手を止めた。
「もう、あなたたち何なの? 人に水はかけるわ。オーダーすれば間違えるわ。頭の中男の人のアレでいっぱいなんでしょ? だから、ミスしたりオーダー間違えたりするのよ。ただでさえ、頭悪いんだから仕事の時くらい、男のこと忘れなさいよ!って言っても、根っからの淫乱女には無理かしら? アハハ・・・」
「詩織!またそんなこと言い出すの? 今日のあなた変よ。どうして彼女たちの人格を否定するようなこと言うの? もう、これ以上言ったら、あなたとの友情もこれきりよ。」
 美穂はそう言うと、隣のテーブルの方に視線を向けた。
 自分の声が大きかったのか、隣の学生達と担当ウエイトレスがこちらの方を心配そうに見ていた。
「とにかく、彼女たちと私たちは対等の人間よ。もっと相手を尊重しなさい。普段の詩織だったらそんなこと言わなくてもわかっていることじゃない。」
 美穂は声のトーンを落として言った。


 実は美穂の指摘しているように、普段の詩織ならこのような罵詈雑言を口にすることはなかったかもしれない。もちろん、性格は勝ち気だし冷たいところもある。それに女性が男性に媚びを売るような生き方を嫌っているプライドの高い一面もある。
 だが、今日彼女を苛立たせている原因は他にあった。
 
 パーティ後に男子生徒を対象に密かなイベントがあることは、すでに周知の事実である。
 そのことは女子生徒達も噂で知っていることであり、中には不潔だと感じ、堂々と抗議した生徒もいる。たが、「伝統だから」の一言で片づけられ、中止させる力にはなり得なかった。
 こうして今年も「イベント」は執り行われることとなったが、男子のみに知らされ、女子には決して知らされていない情報があった。
 それは男子たちと夜を共にする「コンパニオン」の件である。 
 おそらく、どこかの「プロの女性」が相手をするのだろう、というのが彼女たちの予想の主流だった。
 だが、男女別学とは言え、一部の成績優秀者同士の交際だけは認めている以上、情報の流失を完全に食い止めることは不可能である。
 特に村中太一のような比較的口の軽い人物がその中にいると、情報の秘匿は簡単に破られてしまう。

「俺たちの相手はパーティ会場で『ウェイトレス』をしてる子たちなんだ。ビデオとか資料とかを見て、もうすでに指名してあるんだ。ちなみに俺が指名したのは『裕香』って子。かなり可愛い子でさ、ゲットするの大変だったんだ。」
 太一が詩織にそのように自慢げに話したのは、今日の卒業式前のことだった。
 詩織は正直誰が太一のパートナーなのかは大して問題ではなかった。そもそも、恋人の太一が別の女性に触れることがたまらなく不潔に思っているので、相手が誰かは問題ではなかったのである。ただ、太一自身が一人の女性を指名し、その女性が同じパーティ会場にいると思うと、パーティ開始前から詩織の気持ちは動揺していたのである。
 さらに悪いことに、会食が始まってしばらくの後、太一が詩織に耳打ちしたのである。
「ほら、そこにいる子、その子が俺の指名した『裕香』だよ。うん、ビデオで見るより可愛いな~ ヘヘヘ」
 太一はそう言って、自分たちの担当ウエイトレスの一人、裕香を密かに指さした。
 詩織は動揺する心を抑えながら、裕香を見つめた。太一の言うように確かに可愛い。小柄で細くてスタイルも良さそうだ。詩織の心には当然のように嫉妬が芽生えたが、太一は、「たかが『商売女』との一夜の遊びだ、ヤキモチなんか焼くなよな。」と言った。
 だから表面上は何でもないように振る舞い、冷静さを保った。それが、知的で洗練された大人の女性だと言い聞かせながら。
 だが、プライドの高い詩織のことである。内面に燃えたぎっている嫉妬の炎はそう簡単に収まることはなかったのである。  
 そんな中での裕香のミスだったのだ。詩織の気持ちが一気に爆発したのはある意味やむを得ないことと言えなくもない。もちろん、裕香にしてみればとんだとばっちりということなのだが。


 少しの沈黙の後で詩織が含意のありそうな口調で美穂に問いかけた。
「美穂、この子たち、対等な人間って言ったわね? ねえ、この子たちどういう子だか知ってる?」
「どういうって? ウェイトレスさんでしょ? 私たちのお世話をしてくれる・・・」
「うん、今はね。でもこの後・・・・」
「この後?」
「ねえ、美穂、この後男子達に『イベント』があるの知ってるわよね?」
「『イベント』?・・・ああ、うん、知ってるわ。」
 もちろん、美穂にも「イベント」の情報は入っている。良介からもそれらしき話は聞いている。美穂自身、決していい気分ではないが、卒業記念に男子が大人の「男性」の仲間入りを果たすイベントだとすれば、致し方ないという気持ちもある。もちろんそこに恋愛関係があったら許せないが、良介の言うように、プロ女性とのたった一夜の遊びだと思えば、なんとか自分を納得させることもできると思っている。  

「その男子たちの相手って誰だと思う?」
「うん?誰って、プロの女性だって聞いたけど?」
「フフフ・・まあ、プロはプロなんでしょうけどね。」
 詩織はそう言うと、隣の太一に何やら声をかけた。
 相変わらず良介との会話に熱中していた太一は煩わしそうな顔をしながら、ポケットからピンク色の封筒を取り出し、詩織に手渡した。
「これはね、今夜男子の相手をすることになっている女性からの熱い熱いメッセージらしいわよ。」
 詩織はそう言いながら、太一から受け取ったピンクの封筒を美穂に手渡した。
 表には「裕香」の文字が印字されてある。

「これ、開けていいの?」
 美穂の問いかけに、詩織は大きく頷いて返した。
 美穂は封筒の中から同じくピンク色の便せんを取り出すと、文面に目を通した。
 中身はタイプで印字された例のPR用の手紙である。男の指名を促すような扇情的な言い回しに溢れた文章で、読んでいる美穂が恥ずかしくなるような内容だった。
 もちろん、当人の手になるものではないのだが、何も知らない美穂から見れば、表に印字された「裕香」のものだとしか思えなかった。
 
「ね?すごい文章でしょ? こんなイヤらしい文章を書く人が今夜の太一の相手ってわけ。で、その人の名前がその『裕香』ってこと。」
 美穂にはまだ詩織の真意が計りかねていた。
 詩織はそんな美穂の表情を見て、フッと微笑むと、テーブルから少し離れた所で待機していた裕樹に合図を送った。

「はい、ただいま・・・」
 裕樹はそう返事をすると、詩織のそばに歩み寄り「何か、ご用でしょうか?」と丁寧な口調で尋ねた。
「ねえ、あなたの名前聞いてなかったわね。何て言うの?」
 裕樹は一瞬躊躇った。
(なぜ名前など聞く必要があるのだろう。個人的な会話を交わすわけでもないのに。)と裕樹は思った。だが、先ほどの一件がある。ここはおとなしく従っておいた方がいいだろう。
「は、はい・・・ゆ、裕香・・・と申します。」
「ふ~ん、裕香さんね。じゃあ、このお手紙はあなたのものよね?」
 詩織はピンクの封筒を裕樹の前にかざした。 
 裕樹は一瞬ドキリとした。もちろん封筒の存在もその中味の内容も知っている。ただ、封筒は最終的に自分を指名した「客」が持っていると聞かされていた。夜、個室を訪れる「客」が間違いなく自分の指名客かどうかを確認する材料として。  

「は、はい・・・そうだと・・・思います。」
「これは、彼から預かったものよ。つまりあなたを指名したのは彼ってこと。」
 詩織はそう言うと、太一を指さした。
 太一もその動きに気づき、ニコリと微笑むと、裕樹に向かって、「じゃ、後でよろしくね。楽しみにしてるよ。」と冗談交じりに敬礼のポーズをつけて言った。
 裕樹は動揺した。こんな形で「指名客」を知ることになろうとは思ってもみなかったからである。
 詩織はそんな裕樹の動揺ぶりが面白かったのか、辛辣な言葉を投げかけた。
「お手紙によると、裕香さんって、おクチでするのが上手なんですってね?それにゴックンもだ~い好きって書いてあるわ。さすがにプロの方は違うわね、いろいろ『お勉強』なさっていて、フフフ・・・」
 詩織は、真っ赤になった裕樹に、もう戻っていいわ、とだけ言って手で追い払うようなジェスチャーをした。 
   
「美穂も、わかったでしょ?この子たちがどういうことをしているのかってこと。これでも私たちと対等な人間って言える?」
 美穂は詩織の問いかけを耳にしながら、「明菜」の方を見ていた。
 あの可愛くて素直な子が本当にそんなことをしているのだろうか。
 美穂には信じられない思いだった。だが、その「明菜」に何やらひそひそと語りかけている「裕香」にしたって、とても身体を売って生活をしているような女の子には見えないではないか。その「裕香」が認めている以上、「明菜」もきっとそうなのだろう。恐らくよくよくの事情があっての事なのだろうと美穂は思った。

 待機場所に戻った裕樹は、明彦に耳打ちした。
「私の指名客わかったわ。あの、村中太一っていう人よ。」
「ええ?どうしてわかったの?」
「私の手紙持ってた。彼女が・・・。」
「そうなんだ・・・でも、よかったじゃない、彼女はいやな人だけど、あの村中って人優しそうで・・・。」
 それは根拠のない慰めだった。だがショックを受けている裕樹に他にどんな言葉を投げかけることができるだろう。明彦にできる精一杯の優しさだった。

 実はこの時、明彦と美穂はまるで以心伝心でもあるかのように、ある共通の疑念を抱き始めていた。
 それは、裕樹が指名客である村中太一のテーブルを担当しているということである。
 もちろん確率的にないわけではないが、それにしても偶然すぎるのではないか。もしかしたら、担当ウェイトレスは、指名客のテーブルに意図的に配置されているのではないか。
 だとしたら、明彦を指名した客は・・・良介ということになるではないか。

 偶然にも明彦と美穂の視線がぶつかった。 
 美穂はすぐに視線を外し、隣の良介に何やら語りかけている。
 今度は明彦と良介の視線がぶつかる。
 良介は一瞬口許が緩み、視線を美穂に戻す。そして軽く頷くと、ポケットからピンクの封筒を取り出し、それを美穂に渡す。

 明彦の心臓は高鳴った。この位置からは封筒の名前は読みとれない。
 だが、それを読みとる必要はなかった。そこに書かれている名前が誰のものなのかは、美穂の様子からはっきりした。
 美穂は封筒から便箋を取り出し、その文面を目で追った。そして、顔に嫌悪の色を浮かべると、ゆっくりと封筒に戻し、悲しそうな目をして明彦を見た。
 明彦の「心の目」は封筒に書かれている「明菜」の二文字をはっきり捉えていた。

 全身の力が抜けた。最悪のシナリオが現実の形になって現れたのである。
 こともあろうに、自分を指名した「客」は良介だったのだ。
 この後、自分は親友の良介の逞しい腕に組み敷かれ、弄ばれ、犯される。
 中学時代に、密かに一冊のグラビア写真集を見ながら、どちらが先に童貞を卒業するのだろうかなどと冗談を言い合っていた良介は今夜その童貞を捨てる。自分を相手に「男」になるのである。そして自分は童貞を捨てることのないまま、良介にとっての「初めての女」になるのだ。
 
 明彦の涙の堰がついに決壊した。もうどうなってもいいと思った。
 明彦は駆けだした。12センチピンヒールにバランスを崩しながらも懸命に足を進めた。
 そして誰の許可を得ることなく会場を後にすると、廊下奥の女子トイレに駆け込み、一番奥の個室の鍵を閉めた。こみ上げてくる嗚咽が無人の女子トイレに響き渡った。

 (続く)

スポンサーサイト
[PR]

[PR]

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

サテンドール

Author:サテンドール
=============================================
女性化小説なら国内・海外を問わず大好きです。

特に屈辱系・羞恥系・強制系・寝取られ系・立場逆転系・年齢退行系・SISSY系などなど・・・。

happy よりは、unhappy ending が好み。
(ちょっと、性格がゆがんでるのかも^^)

私事ですが、以前某サイトに 
「高野奈緒美」のペンネームで
『ある性転者の告白』という拙い小説を掲載させて頂いておりました。事情があって途中で掲載を止めましたが、その完結編も当ブログでご紹介できればと思っています。

それとランキングにも参加させていただきますので、
ポチッとクリックいただければ幸いです。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
アクセスカウンター
オンラインカウンター
現在の閲覧者数:
フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。