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私立明倫学園高校 第9章-3

 やがて部屋のドアをノックする音がした。
 静かなゆっくりとしたノックだった。
「はい、どうぞ。 開いてるよ。」
 良介が言った。ドアの向こうに美穂が立っていることを前提にした返事である。
 ドアがゆっくり開いた。入ってきたのは学生服のブレザー姿の美穂であった。
「今、いいかしら? おじゃま・・・じゃなかった?」
 美穂は部屋の照明がピンク系なのと、全体の雰囲気も何となく淫猥な感じがして、一瞬入室を躊躇った。
「お姉様、いらっしゃい。」
 明彦は出来るだけ明るく挨拶をした。この後、騙さなければならないのだが、せめて挨拶くらいは自分の気持ちに正直になりたかった。
「ええ。」
 美穂の返事は冷めていた。明彦の方に視線すら送っては来なかった。
(何?この子、私がここに来たこと驚かないの? ああ、そうか、私がまだ手紙を読んでいないと思っているんだから、当たり前ね。)
 美穂は心の中で考えを纏めていた。

「何だよ? 明菜のことで話があるって?」
 良介が立ったままの美穂に向かって言った。
「ええ、実はね・・・」
 美穂は言いかけてやめた。この部屋に来るまでは、いやノックをするまでは、開口一番、明菜に罵声を浴びせるつもりだった。
 だが、部屋の中を見た時に最初に感じた独特の空気感、つまりこの部屋で恐らく今まで繰り広げられていたであろう良介と明菜の痴態を想像すると何となく気圧されるような気がするのだ。    
 
「じゃあ、そっちの話は後で聞くとして・・・。明菜、お前の方から話をしなよ。美穂に何か言いたいことがあるって言ってただろう?」
 良介が明彦に話を振った。
 明彦は小さくため息をつくと、意を決したように口を開いた。少しでも早く始めて、少しでも早く終えたい、その一心だった。
「あのね、お姉様、実は言いにくいんだけど・・・明菜とお兄ちゃま・・・あ、ごめんなさい、良介さんね・・・おつきあいすることにしたの。良介さんも同じ考えよ。ね、お兄ちゃま・・・じゃなくて、良介さん?」
 美穂には、「明菜」に呼びかけられて、うれしそうな笑みを浮かべながら頷く良介が見えた。  
「ど、どういうこと?」
 美穂は一言だけ発すると、「明菜」の顔を睨み付けた。
 明彦は、良介の方を見た。(もう、いいでしょ?もうネタばらししましょう)と目で訴えた。だが、良介はその視線を無視し、美穂の様子を眺めていた。
 明彦にはお芝居を続けるしかなかった。
「だから、お兄ちゃまは明菜の方がいいんですって。お姉様と違って、胸も大きいし、可愛いし、それに・・・エッチだって上手だからって。」
 明彦は打ち合わせ通りのセリフを言った。
「わ、私とは・・・別れたいってこと?」
 美穂の手と唇は小さく震えていた。明らかに怒っているのがわかった。
「うん、そういうことね。お兄ちゃまも・・・ああん、もういいわね、言い慣れてるから、お兄ちゃまで。お兄ちゃまも別れたいって。だから、あきらめて、お姉様。」
 
 美穂の顔が一気に紅潮した。
(やはり、明彦は明菜になって人間が変わってしまったんだわ。手紙も全部本当のことなのね。許せないわ。私や良介を騙そうとするなんて。絶対に許せない。) 
 美穂の感情が爆発した。
「いい加減にしてよ!」
 日頃の冷静で理知的で大人っぽい美穂は、その瞬間消えた。
 明彦は初めて目にする美穂の姿に声を失った。その反応は良介も同じだった。
「もう、騙されないわよ。何が、『お姉様』よ。何が『お兄ちゃま』よ。甘えたふりして近づいてきて、あなたの正体はわかってるのよっ! あなたは手紙を5日後に渡すつもりだったみたいだけど、残念だったわね、ほら、ここにあるわ。全部読んだし、CDも見た。悪いことはできないものね。」
 美穂はそう言うと、手にしていた封筒をかざして見せた。
「て、手紙? CD? 何のこと? お姉様、それって何のことなの?」
 明彦の声は震えていた。全く身に覚えのないことだった。
「しおらしい声出しちゃって。さっきまでの人をバカにしたような言い方はどこに行ったの? 」
「あ、あれは・・・お兄ちゃまがやれって・・・・」
 明彦は思わず、言い慣れた言葉を使ってしまった。それが美穂の心をかえって刺激した。
「ハハハ、『お兄ちゃま』なんて言って恥ずかしくないの?仮にもあなたの親友でしょ?まあ、元カノの私を『お姉様』なんて呼べるくらいだから、平気なのかしら?明彦くん?」
 明彦は美穂の言葉に凍り付いた。今、確かに「明彦」と呼ばれた。昔の中学生時代のように。
 明彦は思わず、良介に視線を送った。彼もまた呆然とした表情で視線を返してきた。
 二人の間にはもう美穂を騙す「ゲーム」はとっくに終了していた。

「い、今、何て言った?明彦って言ったのか?」
 良介は真剣な表情で美穂を見た。
「そうよ。ほら、この手紙読んでみて。」
 美穂はそう言うと、手にした手紙を良介に手渡した。

 良介は顔面蒼白になりながら、手紙を読み進めた。表情がどんどん険しくなっていった。 明彦はそばによって手紙をのぞき込もうとしたが、思いとどまった。手紙の中身がどうであれ、自分の本性が明かされていることは確かなのだ。誰が書いたのかとか、どのように書かれているかはもはや大した問題ではない。
 美穂と良介が自分を「山本明彦」だと知ってしまったことが問題なのだ。

「し、信じられない・・・本当に・・・明彦なのか?」
 良介は明彦を真剣に見つめながら言った。その目には先ほどまでの好色の光は消えていた。
 明彦は小さく頷いた。
「じゃ、じゃあ、この手紙に書いてあることは・・・全部本当なのか?」
 明彦は一瞬答えを躊躇った。手紙の中身を知っているわけではないからだ。
「本当に決まってるでしょ?でなかったら、親友の良介を相手にこんな恥ずかしいことできる?」
 躊躇っている明彦に代わって、美穂が横から言葉を挟んだ。
「そ、それは・・・そうだけど・・・それにしてもこの明菜が明彦だなんて・・・」
 良介は美穂から「恥ずかしいこと」と指摘され、少し慌て気味に言った。
 確かに美穂に指摘されるまでもなく、自分が親友の明彦相手に行った行為は恥ずべきことである。いくら美少女「明菜」に変わっていようとその事実は消せない。自分は親友を性の対象として扱い、弄び、犯したのである。その罪悪感は一生消えないかもしれない。 そう考えると、自らの欲望のために親友を騙し、恋人を裏切った、目の前の『明菜』を許せない存在に思えてくる。
 美穂の言うように、明彦は明菜に変わったことで人格まで変わってしまったのだ。美少女の仮面の奥に汚れた邪淫な心を宿してしまったのだろう、と良介は思った。

「良介もこのCD見てみる? これを見たら、明彦から明菜に変化していく過程がとてもよくわかるわ。」
 美穂は徐々に憎しみの表情に変わっていく良介に話しかけた。
 良介は小さく頷いた。別にそんなものを見てみたいとも思わない。ただPCのないこの部屋で見ることはできないので、見るためにはこの部屋を後にしなければならない。
 良介は一刻も早くこの部屋から出たかった。これ以上いると、親友の「明彦」を力一杯殴りつけてしまうかもしれない。いや、「明彦」なら殴っていた。目の前にいるのはか細く華奢な「明菜」である。もしも今の自分の腕力で思い切り殴ろうものなら命の危険さえあるのではないか。そんな思いが良介を支配していた。

 美穂と良介は部屋を出た。
 美穂の腕は良介のそれに絡んでいた。勝ち誇ったような笑みがその顔に浮かんでいた。
 部屋を出る時、良介はベッドの上ですすり泣いている明彦に向かって声をかけた。
「すまないけど、お前の気持ちに答えることはできないよ。俺はゲイではないからな。」
 
 顔を上げた明彦の目にはテーブルの上に置きっぱなしになった「手紙」が映った。
 最後に読んだ良介がそのまま置き忘れてしまったのだろう。
 明彦はそれを取り上げると、涙でかすむ目でタイプ文字を追った。
 そしてすべてを読み終えた時、すすり泣きは嗚咽へと変わっていた。
 長い間培った親友との友情、恋人との愛情、そして新たに築くことのできた「姉妹」として敬慕、それらがすべて音を立てて崩れていくのを、明彦ははっきりと感じ取っていた。
  

****************************************

 学園長室のテレビモニターはベッドで泣き崩れる「明菜」を映し出していた。
「いかがでしたか? 学園長?」
 幹部職員の片桐が学園長の様子をうかがいながら聞いた。自分の描いたシナリオが高評価であることを期待しながらの質問だった。
「うん、まあまあだな。確かに『明菜』と良介の絡みはなかなかだったが、できれば美穂にも加わってもらいたかったなあ。例えばディルドウか何かで『明菜』のアナルを犯すとか。元恋人同士の逆転プレイとしてな。アハハハ・・・」
「先生、ちょっとAVの見過ぎだわ。いくらなんでもあの優等生の美穂が、そんなことするはずないじゃないですか。フフフ・・・」
 学園長の下卑た言葉に、真希が口を挟んだ。

「しかし、明菜の表情は何度見てもそそるなぁ。この子とも間もなくお別れだと思うと寂しくなるよ。」
「でも、先生、今回の映像もDVDにしてストックなさるんじゃないんですか?フフフ」
「ああ、まあそれはそうだが。やはり実物には適わんよ。」
「では、卒業する前に、一度明菜を呼び出して、楽しまれてはどうです?」
 片桐が二人の会話に割って入った。
「バカを言ってはいけないよ、君。いくら私でも生徒に手を出すわけにはいかんじゃないか。もしどこかに漏れたら大問題だろうが。」
 学園長は真顔で言った。だが、内心は片桐の提案に乗りたい気持ちで一杯だった。
 自らの熱く誇張したペニスが明菜のふっくらとした唇に包まれたり、豊かな胸の膨らみに挟み込まれたり、しまりのいいアナルに飲み込まれている場面を妄想すると知らず知らずのうちにズボンの前が膨らんでいるのだった。


****************************************

 5日後、明倫学園高校は3年生退寮の日を迎えた。
 Dクラス生25名、Fクラス生27名は順次正門から出て、帰路についた。
 彼らの顔には新たな未来へ向けての希望の光が満ちあふれていた。
 その中には、もちろん兵藤良介も村瀬美穂の顔もあった。
 
 一方、同様に退寮の日を迎えた元Sクラス生は、ひっそりと裏門を出て帰宅の途についた。
 彼らの顔には笑顔はなかった。美しく施されたメイクも思い思いのフェミニンな服装も彼らの不安を取り去ってはいなかった。
 だが、それでも「追試合格」により卒業資格を取ることのできた彼らには戻るべき家があった。そのことに微かな希望を見いだし、無理に微笑みを浮かべる者もいた。
 元Sクラス生25名中20名はこうして明倫学園を後にした。

 しかし、この輪の中に加われない5名の生徒がいた。
「追試不合格」となった者たちで、その中に明彦の名もあった。
 彼らはいまだに寮内に留め置かれているが、内2名は入院中のため寮を出ている。
 入院の理由は怪我の治療である。いずれもパーティ後のイベントの夜、「客」から受けた暴力的行為によるものだ。
 一人はジュース瓶を無理矢理アナルに押し込まれたこと、もう一人はベルトで全身をむち打たれたことによる傷害だった。
 いずれも「客」に原因があるにも関わらず、「追試不合格」とされた。途中で逃げ出したことで、「客」の要望を満たしきれなかったことが理由だった。
 病室のベッドでそのことを知らされた彼らの絶望感はどんなに深かったろう。
 そのことを想像すると、同じ「追試不合格」であったにせよ、身体に障害を受けなかった分自分はまだ幸せだと、明彦は無理に思いこもうとしていた。
 
 明彦の不合格理由は単純だった。客からクレームが付いた、ただその一点だけだった。
 明彦にはもちろん想像がついている。怒りの収まらない良介と美穂、とりわけ美穂の激しい感情が「クレーム」という形になって表されたのだろう。
 その「クレーム」が、明彦の「追試不合格」に繋がり、引いては親からの「勘当宣告」に至ったことを、彼らが予め知っていたのかどうかはわからない。
 ただ、明彦にとっては、少なくとも2週間後には、「学業不振により高校を中退した女子高生」というレッテルをつけて、寮を出なければならないという厳然たる事実があるだけだ。
 たとえ、行く当てがなくとも、入寮時と同じようにボストンバック一つを持って、今度は出て行かなければならない。
 ボストンバックの中身は3年前とはすっかり変わっているだろう。
 トランクスや下着類は色とりどりのランジェリー類に、ノートPCはメイクアップキットとアクセサリーケースに、お気に入りのミステリー小説は読みかけのラブロマンスコミックに、そしてサッカーユニホームはお気に入りのピンクのミニワンピに・・・。

 そのボストンバック以外は何もない。
 このまま資格も能力もないまま放り出されれば、何を頼りに生きていけばいいんだろう。 3日前、明彦はそんな不安な思いを高岡真希にぶつけた。
 真希は、そんなこと心配することないわ、と笑って答えると、明彦のクリッとした瞳を見つめながら諭すように説明した。
「いい?明菜。あなたは気づいていないかもしれないけど、あなたが外を歩けば男の人はみんな注目するわ。フルメイクでマイクロミニでも履いて、ピンヒールで歩いてみなさい。
そうそう、それにロリポップキャンディでも舐めながら立っててごらんなさい。食べるものも泊まるところもそれにお小遣いだって、全部手に入るわ。多少はイヤなことも、危ないこともあるかもしれないけど、そのくらいは覚悟しなくちゃね。それに危ないなって思ったら、そのクリクリした瞳に涙を溜めて『許して』ってお願いすれば、きっと何とかなるわよ。ああ、でもやり過ぎちゃダメよ。かえって興奮するような変態もいるからね。」
 
 明彦は真希の言葉を聞きながら、心の底から祈った。
「誰か助けて! 強い人なら誰でもいいの。お願い、明菜のこと守って。」
 この時、明彦の意識下に植え付けられている「強者」への従属性が、形を変えて結実した瞬間だったのかもしれない。

 (第10章に続く)

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プロフィール

サテンドール

Author:サテンドール
=============================================
女性化小説なら国内・海外を問わず大好きです。

特に屈辱系・羞恥系・強制系・寝取られ系・立場逆転系・年齢退行系・SISSY系などなど・・・。

happy よりは、unhappy ending が好み。
(ちょっと、性格がゆがんでるのかも^^)

私事ですが、以前某サイトに 
「高野奈緒美」のペンネームで
『ある性転者の告白』という拙い小説を掲載させて頂いておりました。事情があって途中で掲載を止めましたが、その完結編も当ブログでご紹介できればと思っています。

それとランキングにも参加させていただきますので、
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