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『再会』 その1


「はい、面接は以上です。結果は・・・合格よ、フフフ。 もうすぐにでも会社に来てちょうだい。いつからでもオーケーだからね。」
 上野慶子の言葉に、心配そうに俯いていた少女の顔が綻んだ。
「あ、ありがとうございます。私・・・がんばりますので、どうかよろしくお願いします。」
 少女は消え入りそうな小さな声で謝意を伝えた。
 二人の「面接」のやり取りを少し離れたところかから見ていた望月有希江が微笑みながら声を掛けた。
「よかったわね、沙也香ちゃん。やっと仕事が決まって。おばさんも安心したわ。」
 有希江の声に沙也香は小さく頷きながら笑顔で応えた。

****************************************
 
 上野慶子が、元会社の同僚であった望月有希江から突然電話を受けたのは、3日前のことだった。
 姪の就職をお願いしたいので、面接を兼ねて、自宅に来て欲しいというのである。ついでに、久しぶりにおしゃべりでもしましょうよ、という提案も付け加えての電話だった。
 慶子は今から5年前、ちょうど30歳の時に、それまで勤めていた会社の部下数名を引き連れて広告会社を立ち上げた。
 有希江は慶子と同じ会社の同期でデスクも隣にしていたが、この慶子の独立には参加してはいない。と言うのも、慶子が新会社を設立する2年前に寿退社をし、家庭に収まっていたからである。
 相手は、当時の上司、坂下智則であった。有希江や慶子よりも5歳年上で、当時の役職は部長だった。やり手で、将来重役のポストも約束されていたエリートでもあり、しかも年齢よりかなり若く見える、いわゆるイケメンでもあった。そのことが、当時他に多くの男性からアプローチを受けていた有希江の心を射止めた理由でもあった。
 しかし、同僚から羨望を込めた祝福を受けながらの結婚生活だったが、残念ながら長続きはしなかった。
 有希江の放縦な生き方と智則の生真面目な生き方にずれが生じていったのである。
 元々有希江には家庭に収まる意志はなかった。智則の説得に渋々同意し、一旦は専業主婦に収まりはしたが、持って生まれた社交性と放縦性が日に日に表面化し、外出も頻繁になっていった。外出はやがて、外泊になり、数日家を空けることも増えるようになると、いくら有希江の魅力に負けて結婚したとは言え、智則の怒りも爆発し、ついに別居ということになったのである。
 だが、この別居により有希江の行動が改まったわけではなかった。いやむしろ放縦性に拍車がかかったと言ってもいい。まだ離婚しているわけでもないのに、異性の友人も多くでき、身体の関係を持つことも珍しくはなくなった。もともと夫の智則はどちらか言うと性的には淡泊で、その点も有希江の心が離れていく一因でもあったのである。
 夫以外の男性との激しいセックスが、有希江の淫乱性をより引き出す結果になったとも言える。
 
 一方、夫の智則は自らが言い出した別居ではあったが、すぐに後悔の念に襲われるようになった。
 夜一人になって決まって思い出すのは、有希江の色気のある美貌とセクシーな肢体であり、その思いは日に日に強くなっていった。
 ある夜、智則は家に戻るよう説得するために有希江の元を訪ねたが、話をする機会すら与えられなかった。
 その後も約ひと月間、ほとんど毎日説得を繰り返したが、ストーカー呼ばわりの罵詈雑言を浴びたのを最後に智則の気力も折れた。
 彼が有希江との離婚を決意し、離婚届を提出したのはそれから約一ヶ月後のことだった。
 
離婚後の智則はそれまでと全く正反対の方向に人生のベクトルが向かってしまったようだった。
 慶子が元同僚から聞いた話によると、離婚後の智則はかつてのエリートの面影もなくなり、元気も気力もすっかり失せ、去年ついに会社を辞したらしいということだった。
 現在、慶子の起こした会社で働いている社員は、元々、そのほとんどが智則の部下であったので、彼の離婚後の変貌ぶりを信じられない思いで受け止めていた。
 一方、離婚後の有希江はまさに「水を得た魚」だった。以前からの伝で婦人雑誌のモデルをしたり、好きなファッションデザインを手伝ったり、化粧品のプロデュースをしたりと、忙しい毎日を送るようになった。さらに恋愛も充実し、今は特定の彼氏との深い交際が進行中であった。

 そんな仕事もプライベートも充実している有希江と、会社社長として忙しい日々を送っている慶子の元同僚同士が顔を合わせたのは3年ぶりのことだった。
 姪の就職の依頼という別の目的があったにせよ、気のあった同僚との3年ぶりの「再会」は二人の会話を弾ませるのに十分だった。 

****************************************

「ねえ、有希江、あの娘にはちゃんと話してあるの?うちの会社でやってもらう仕事の内容とか・・・」
 慶子は、有希江と二人きりになると、声を低めて言った。
「フフフ・・・大丈夫よ、ちゃんと話してあるわよ。今の子だもの、そんなのちゃんと割り切ってるわ。」
 有希江は、普通の声で言った。別室にいる沙也香に聞こえることを気にする様子はなかった。
 
 形ばかりの面接が終わると、沙也香は、「用があったらまた呼ぶから奥の部屋で待っていなさい。好きなDVDでも見ながら。」という有希江の言葉に従って、小さく頷くと、「はい、おばさま。」と可愛らしい笑みを浮かべてリビングを後にした。最後に会釈と共に「どうぞ、ごゆっくり。」という挨拶を残して。 


「そう?ならいいんだけど。この前もね、受付として採用した子が制服見て、『これは話が違います』とか言い出して、もう大騒ぎだったのよ。確かに会社の制服としては過激かもしれないけど。 私もちょっと頭に来て、『あなたの能力でこれだけのお給料もらえるなら、このくらいのことして当たり前じゃない?』って言い返してやったわ。そしたら、『じゃ、辞めます。』だって。もうあきれちゃったわ。」
「フフフ・・・でも、あの制服はちょっと過激すぎるんじゃない?レースクィーンじゃあるまいし、胸元もしっかり開いて、しかもタイトの超マイクロミニで、ちょっとでも動いたら下着が見えちゃいそうじゃない?」
「まあね。でもこれも男性クライアント獲得のためだから仕方ないのよ。だから頭なんてよくなくていいから、可愛くて従順で、スタイルも良くて、男の視線を楽しんじゃえるような娘がいないかな~って思ってたところなのよ。」
「フフフ・・・その話は聞いていたわ。だから、姪を紹介したのよ。あの娘、頭は悪いけど、素直で可愛くて、それにスタイルだって良かったでしょ?だから慶子の要望にはピッタリよ。」
「うん、それは認めるわ。胸とかもDくらいあるでしょ?脚も細くて綺麗だったし、あれなら派手な制服も着こなせるわ、きっと。」
「でしょ?それに本当はこっちが感謝してるのよ。実はあの娘、本当に頭悪くてね、普通の就職なんて考えられなかったのよ。ホント感謝してるわ。」
「いいのよ、そんなこと。だいたいうちの受付に頭なんていらないわ。何でも『はい、はい』って言って従ってくれるおバカな娘のほうがずっと助かるわ。」
「よかった。じゃ、ホントにこれからよろしくお願いね。気に入らないことがあったらどんどん叱ってやってね。言わないとわからない娘だから。」
「うん、わかったわ。そうさせてもらう。」


「ねえ、ところで、電話で話した彼とはうまくいってるの?」
 慶子はテーブルに置かれた紅茶を一口啜ると、微かに笑みを浮かべながら聞いた。
「ん?あ、うん。うまくいってるわ。もうつき合ってかなりになるけど、まだ飽きないもの。フフフ・・」
「もう、有希江っていつもそうなのね? 飽きたら、また男変えるつもり?結婚とか考えてないの?」
「アハハ、それはそうよ。飽きたら男なんて変えなくちゃ。でも結婚を考えないわけでもないわよ。もしかしたら、今の彼と明日にも電撃婚約なんてことにもなるかもしれないわ。」
「もう、ホント、気まぐれなんだから・・・。でもそれが有希江の良いところでもあるけどね。有希江って離婚してからますますいい女になっていく感じよね。なんか、うらやましいわ。」
「何言ってるのよ?慶子だって、どんどん恋愛すればいいじゃない。男なんてとっかえひっかえでいいんだから。第一、慶子、独身でしょ?だったらもっと自由に恋愛しちゃいなさいよ。」
「う~ん、そうなんだけどね、仕事も忙しいし、なかなかそうもいかないのよ。それに有希江みたいに切り替え早くないし・・・。」
「ふ~ん、そうか~、でももっと気楽に生きる方が充実してくると思うけどな~」

「あ、そうそう、『切り替え早い』って言えばさぁ、有希江の元旦那さん、坂下部長が去年会社辞めたの知ってる?有希江との離婚後、ずいぶん落ち込んじゃって、それこそ切り替えができなくて、仕事もミスが目立つようになって、上司からも見放されるようになったみたい。信じられる?あのエリート部長がよ。あ、ごめん、有希江の元旦那だったわよね。」
「フフフ・・・いいわよ、そんな事、気にしなくて。 うん、知ってるわよ。会社辞めたことも、全部。」
「やっぱり、有希江でもちょっとは罪の意識感じたりしちゃう?」
「ううん 全然。 フフフ・・・」
「ホント、冷たいわね~、有希江ってもしかして、ドS?」
「アハハ・・どっちかって言ったらね、ドSかもね。男苛めるの好きだし。でも、離婚なんてよくあることだもの。仕方ないじゃない。いちいち気にしてても始まらないわ。」
「まあ、それはそうだけどね・・・。」


 有希江は小さめのクッキーを口に入れ、ティーカップに口を付けると、一口紅茶を啜った。そして、わずかな間を置いてから、思わせぶりに口を開いた。
「それにね・・・」
「うん?それに、何?」
「うん、実は、元旦那とはその後連絡をとっていたというか、何というか・・・」
「え?どういうこと? 坂下部長と離婚後も連絡をとっていたってこと?へえ、それは意外ね。有希江がそんなことする人だとは思わなかったわ。もっときっぱりとクールなんだとばかり思ってたのに。」
「ううん、違うのよ。普通に連絡を取っていたわけじゃないの。私はあんな男、もう連絡なんて取る気もなかったわ。でも彼の方から取ってきたのよ。私のブログにね。しかも『リリー』なんてハンドルネームで女性のふりしてね。」
「へ~、何でそんなことしたのかしら?」
「私に未練があって何とかやり直したいと思ったんでしょ、きっと。だから何かきっかけを作るためにブログにコメント寄せたのよ。で、普通に自分の名前でメールしたり、コメントしたりしても無視されると思って、ハンドルネームまで使って。」
「なるほどね~、でも何で、『リリー』なんだろうね。それに何で女性のふりしなくちゃいけないの?」
「アハハ・・それがあいつの単純なところなのよ。私が花の『ラベンダー』をハンドルネームにしているから、同じ花の『リリー』がいいと思ったんでしょ、きっと。それと女性のふりをしたのは、男性だと警戒されて無視されると思ったんでしょ、たぶん。」
「フフフ・・なるほどね。確かに単純だわ。でも、それが彼からのものだってどうして判ったの?」
「ううん、最初は判らなかったわ。当たり障りのないコメントのやり取りだったからね。そのうち、ブログのコメントのやり取りだけでは物足りなくなったんだろうね、ツーショットチャットに誘ってくるようになったのよ。まあ私も暇だったこともあって、誘いに乗ったわけ。で、何回かチャットしていると、何となく変だなぁって思ってきたのよ。例えば、顔文字の使い方とか、語尾の言い回しとか、それに何より、趣味が彼と同じだったりね。」
「でもそれだけでは判らないでしょ?」
「うん、判らないわ。だからちょっとカマをかけてみたの。ファッションとかメイクとかブランドとかの話題をね。知ってると思うけど、彼ってそういうことは全く無頓着だったでしょ?だから何て答えるかな~てね。そうしたら案の定、全く答えられないの。たまに無理して知ったかぶりでブランド名言い出すから、つっこんで聞くと、また止まっちゃうの。もう、これは女ではないことは確かよね。」
「うん、だとしても女性になりすましてメールしたりチャットしたりする男は結構いるでしょ?」
「うん、それは私も知ってるわ。だからね、今度は彼かどうか確かめようと、決め手の話題を振ってみたわけ。 私ね、結婚していた頃、彼と映画の話題になって、記憶違いで嘘を教えちゃったことがあるのよ。出演者と原作者の名前ね。で、何気なく、その映画の話題を振ってみたら、その嘘の情報のまま答えるんだもの。これは確実でしょ。」
「うんうん、で、どうしたの? 怒って切ってやった?」
「いいえ」
「うん?どうして切らなかったの?騙されてたのが判ったのに?」
「うん。切らずに続けたわ。騙されているのも判ったままで。」
「ええ?どういうことよ?もしかして、有希江、彼に未練があったとか?」
「アハハ・・・そんなわけないでしょ? 私がチャットを続けたのはちょっとした悪戯を思いついたからよ。」
「悪戯?どんな?」
「フフフ・・・それはね・・・ねえ、ちょっと話が長くなりそうだから、ピザでも取らない?今日はゆっくりできるでしょ?久しぶりの再会なんだから、おしゃべりして盛り上がろうよ。」
「フフフ・・いいわね。何かおもしろそうな話だし・・盛り上がりましょうか。ワインでも飲んで。」


 〔続く〕


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プロフィール

サテンドール

Author:サテンドール
=============================================
女性化小説なら国内・海外を問わず大好きです。

特に屈辱系・羞恥系・強制系・寝取られ系・立場逆転系・年齢退行系・SISSY系などなど・・・。

happy よりは、unhappy ending が好み。
(ちょっと、性格がゆがんでるのかも^^)

私事ですが、以前某サイトに 
「高野奈緒美」のペンネームで
『ある性転者の告白』という拙い小説を掲載させて頂いておりました。事情があって途中で掲載を止めましたが、その完結編も当ブログでご紹介できればと思っています。

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