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『再会』 その5

 二人の会話にしばらくの沈黙が流れた時をまるで待っていたかのように、ドアホンが鳴った。
「あ、彼だわ。今日はちょっと早く来るって言ってたから。ちょうどいいわ、慶子、彼に会って行ってよ。」
「え?うん、それは別にいいけど・・・。」
 慶子はコンパクトを取り出し、顔を映してみた
「大丈夫よ。そんなに赤くなってないから。それに気を使う相手でもないわ。」
「ん?どういうこと?」

 やがて、長身で体格のいい男性のシルエットが玄関先に浮かぶ。
 ドカドカという力強い足音がリビングに近づきドアが開いた。
「え?もしかして宮田くん?」
 慶子の素っ頓狂な声がリビングに響いた。
 ドアのそばに立ってこちらに微笑みかけているのは、元同僚で同期だった宮田雅明である。
「フフフ・・驚いた?私の今彼で~す。」
 有希江が悪戯っぽい笑顔で言った。
「へ~、驚いたわぁ。こういうことになってたんだぁ。」
「ハハハ・・そういうことです。俺も、まさかこんなことになるなんて予想もしてなかったんだけどね。まあ、運命の悪戯って言うか何て言うか。」
 
 雅明の言葉には含みがあった。
 雅明と有希江と慶子との3人は同期の中でも、配属された部署が同じで特に親しい間柄にあった。だが、それはあくまで友情の範囲であって、恋愛感情にまで発展することはなかった。と言うのも、入社当時、雅明には3歳年下でまだ大学に通う女子大生と熱愛中だったし、有希江も慶子もそれなりにボーイフレンドには苦労しているわけではなかったからだ。
 ところが、ある日雅明の恋愛関係に破局が訪れる。
 原因は雅明の仕事だった。多忙で残業も多かったため、女子大生の彼女は寂しさのため他の恋愛を求めてしまったのである。世間ではよくある話だが、純粋な雅明は思い悩み、思い切って直属の上司である坂下智則に相談した。だが、智則は恋愛に対するアドバイスをするでもなく、同情するでもなく、逆に雅明の勤務態度を叱責したのである。その叱責は確かに正しいものではあったのだが、恋愛に傷ついている若者の心には、傷口に塩を塗られるような痛みだったに違いない。
 雅明は何とか彼女の気持ちを取り戻そうと、彼女の誕生日に高級レストランを予約し、プレゼントを用意して、一世一代の勝負に気持ちを沸き立たせながら、就業終了時間である6時を待った。
 ところが、彼を待っていたのは、臨時の残業命令だった。
 今日だけはどうしても残業はできないと智則には伝えてあったにも関わらずである。
 もちろん、入社1年目の彼には残業命令を拒否する力などない。
 当然の結果として、彼の恋愛は終焉を告げた。
 確かに恨むのはお門違いなのかもしれない。だが、それでも若い雅明には怒りのぶつけ場所が欲しかった。雅明は密かに智則を恨み続けたのである。
 
 その後彼は何人かの女友達と恋愛関係になることもあったが、決して長続きはしなかった。どうしても失った彼女のことが忘れられなかったのである。
 ところが、そんな彼にも、身近に心を癒してくれる女性がいたのである。それまで親しすぎて気づかなかったが、望月有希江その人だった。
「いや、彼女はやめておけ。相当遊んでるみたいだし、わがままだし、苦労するぞ。」
 彼から恋愛相談を受けた友人は決まってそう言った。
 だが彼には、入社以来ずっと近くの席にいて、本当の有希江はそういう人間ではないような気がしていた。確かに放縦で、社交的で、美しい容貌も相まって、派手には見える。しかしその実、内面はしっかりとしていて優しさもあると雅明には思えたのである。
 
 残念ながら、この評価は「あばたもえくぼ」のようなものであった。
 有希江の内面は雅明の手に負えるような生やさしいものではない。
 放縦性と社交性に加えて淫乱性をも内面に秘めた、いわゆる悪女であって、若い雅明にかなう相手ではなかったのである。
 つまり、周囲の冷静な目の方が評価としては正しかったのだが、ひとたび有希江の魅力に嵌ってしまうと、それらの評価を肯定する勇気は失せていった。
 有希江の方はというと、そんな真剣な恋愛感情などは欠片もなく、言い寄ってくる男の中の一人として弄んでいたに過ぎない。
 
 そんな有希江が、ある日婚約を発表する。
 相手は自分ではなく、よりにもよって、あの坂下智則だと言う。
 雅明にとっては二重のショックだったのである。
 雅明の恨みは有希江ではなく、智則に向かった。
 入社1年目のあの恨みがまた再燃してしまったのである。
 だが、そんな恨みも決して表には出せない。内に秘めてじっと耐えるしかなかったのだ。サラリーマンとは因果な商売だと、雅明は酒で憂さを晴らしながら、時折呟くのだった。
 そんな経緯をすべて知っている慶子にとって、有希江の新しい恋人として雅明が今、目の前にいることが驚きだったのである。 


 3人の元同僚の前には、その日3本目のワインが置かれている。
 すでに2人で2本のワインを開けている有希江と慶子は、もっぱらサラダとオードブルに手を伸ばしている。ワインは雅明がほぼ独占しているようなものだった。
 3人は数年ぶりの「再会」を乾杯で祝すと、すぐに同僚時代の思い出話に花を咲かせた。

「あの頃もよく3人で飲みに行ったよなぁ。2人の方が酒が強くて参ったけどな。」
 雅明がワイングラスを傾けながら言った。
「何言ってるのよ。私じゃないわ。有希江が強かったの。私はすぐ赤くなる乙女だったわ。」
「よく言うわよ。私、赤くなってからが強いのなんて言って、それからボトル一本空けちゃった人が。アハハ・・」
「アハハ・・まあ、どっちもどっちだってことだ。ところで、慶子、会社うまくいってるの?」
「あ、うん、まあね、何とかやってるわ。一緒について来てくれた子たちもがんばってくれてるしね。」
「ああ、あの時な。こっちは結構優秀な人材抜かれてかなり困ったんだぞ。アハハ」
「それはまた失礼しました。でも引き抜いたわけじゃないのよ。みんな一緒にやりたいって言ってくれた人たちばっかりよ。」
「やっぱり、それは慶子の人柄よね。入社してすぐに人気者になっていたものね。慶子の周りにはいつも笑顔が絶えなかったしね。」
「アハハ・・それはどうも。でも、人気があるのは同性ばかりなんだよねぇ。もう~、男ってどうして見る目ないの~?」
「え?慶子って今フリーなの? いいやつ紹介しようか?」
「う~ん、今は間に合ってます。仕事がもう少し軌道に乗ってきたらね。お願いするわ。」
「もう~、そんなこと言ってたら、おばあちゃんになっちゃうじゃない。いいわよ、雅明、適当なの見つけて、慶子に押しつけちゃいましょう。」
「ひどいわね、有希江。適当なのってどういうことよ?」
 3人の笑い声がリビングに響いた。久しぶりの再会を心から喜んでいる屈託のない笑いだった。

 だが、談笑は慶子の一言をきっかけにぎこちない方向へ向かいだした。
「それにしても、あの頃飲み会行くと、宮田くんたち男子社員って、愚痴ばっかり言ってたわよね。女子社員はいつもその聞き役だったわ。」
「うんうん、そうだったわ。特に、慶子は聞き上手だったから余計でしょ?」
「うん、もう、母親じゃないよってつっこみたくなったわよ、本当に。フフフ・・」
「うん、まあ、とにかくきつかったからな。男子社員は特にな。」
「特にあの頃の坂下部長のしごきはすごかったよね。男子社員は陰で泣いてたもの。」
 慶子の言葉に、雅明と有希江が一瞬顔を見合わせた。

「ねえ、坂下部長の口癖って、私が退社した後も続いてたの?」
「ああ、あれね、ずっと続いてたよ。『恥をかけるだけかけ。恥は人を大きくする。恥を喜べ。そして恥辱を自分の宝とせよ。』だろ。」
「アハハ・・うん、そう。でも言葉はいいかもしれないけど、やり方がすごかったわよね。」
 慶子の言葉に雅明は黙って頷いた。

 智則は当時部下を厳しく叱る時、『恥をかけるだけかけ。恥は人を大きくする。恥を喜べ。そして恥辱を自分の宝とせよ。』を3回暗唱させ、土下座の姿勢でその日にあった「恥」を大声で告白させた。また時には「恥」を倍加させるために、女子社員のいる前でパンツ姿にさせ、やはり「恥」の告白をさせたりもした。
 雅明自身、その洗礼を受けたのは一度や二度ではない。ただでさえ恨みを抱いている智則に挑みかかろうとしながらも必死に感情を抑えたことも、一度や二度ではなかった。
 恐らく、これで業績が上がらず、また智則自身の評価も低ければ、すぐに問題視される事柄だったかもしれない。だが業績面も、智則の評価自体も顕著だったので問題として表面化することはなかったのである。
 
 慶子は話題が坂下智則に及んで、ハッとした。
 そう言えば、先ほどまで有希江との会話で取り上げていた「リリー」こそ智則その人なのだ。
 自分が部下の時代に、厳しい表情で叱りつけてきた坂下部長と、先ほど最後に見せられたランジェリー姿の美しい「リリー」が同一人物であるという認識を持ち続けることは難しかった。
 慶子は有希江の顔をのぞき込んだ。
(ねえ、どこまで話していいの? 宮田君は、どこまで知ってるの?)という問いかけの視線だった。
 有希江はその視線の意図を察してかどうか、黙って小さく頷くだけだった。
 慶子にはその頷きが肯定なのか否定なのかの判断がつかなかった。だから智則の話題にこれ以上深入りはしないよう口を紡いだ。

 リビングにわずかの間沈黙が流れたが、それを破ったのは有希江だった。
「あら?そう言えば、沙也香、出てこないわね。大好きな雅明おじさまが来てるのに。気づいてないのかしら。それとも疲れて寝ちゃったのかしら。」
 有希江はそう言うと、ゆっくりと立ち上がり廊下隅の部屋に向かった。

 慶子の位置からは、部屋のドアを叩いた後、中に入っていく有希江の姿が目に入った。見間違えなのか、光の加減なのか、有希江の顔に微かな険しさが浮かんでいる気がした。
 しばらくして部屋を出てきた有希江の後を追うように、沙也香が着いてきていた。
 有希江の影に隠れて服装はよく見えないが、どうやらどこかの高校のセーラー服のように見える。
 リビングの照明が当たる。
 やはり沙也香が身に纏っているのはクラシックスタイルのシンプルなセーラー服だった。だがよく見ると、シンプルなのは色合いや生地のデザインだけで、カットの仕方は独特だった。まず真っ先に気がついたのはスカート丈の極端な短さだ。シンプルなプリーツスカートなだけに余計に異様さが目立つ。前屈みになどならなくとも、今慶子の座っている低いソファからの視線だけで、ピンクのショーツの一部が覗いて見える。
 夏服セーラーのブラウスは伸びをしなくても、形のいい臍を露出するくらい短い。そして意図的に生地を薄く作っているのか、ピンクブラのフロントにある小さなリボンまで透けて見えている。
 視線を上げてみると、クラシックスタイルのデザインに合わせたのだろうか、髪を三つ編みに編み込んで、メイクもナチュラルで質素であった。

「沙也香ったら、今日は慶子社長さんがいらしてるので、お勉強の時間はなしにして欲しいなんて駄々こねるものだから、ちょっと今叱ってたところなのよ。」
 有希江の言葉を聞いて、改めて沙也香の俯く表情を見てみると、瞼が腫れているのがわかる。恐らく先ほどまで泣いていた跡なのだろう。
 怪訝そうな表情を浮かべる慶子に気づいて、有希江はさらに言葉を続けた。
「沙也香はね、雅明おじさまが大好きなのよ。特にお勉強を教えてもらって、良くできた時にご褒美をもらうのが特に好きなの。ね、沙也香ちゃん?」
 有希江の問いかけにも、沙也香は黙って俯きながら立っているだけだった。
「あら?どうしたの?沙也香はお返事もできない悪い子だったかしら?」
 言葉付きこそ優しげだが、有希江の口調には無言の強制力があった。
「あ、ご、ごめんなさい・・・で、でも・・今日は お願い、許して・・・ください。」
「まあ、そんなこと言って。おじさまお気に入りのセーラー服を着て、お勉強の時間待ってたくせに。」
「そ、それは・・・あの・・・社長様が・・・あの・・・」
「うん?慶子がいなくなってからのことだと思ったわけ?」
「は、はい・・。」

 2人のやり取りを見て、咄嗟に慶子が口を挟んだ。
「ああ、ごめんなさい。何か大事なお勉強があるなら、邪魔しないわ。だいぶ長居してしまったし、そろそろお暇するわね。」
 慶子はそう言って、腰を上げようとした。
「待って。まだ、座ってて。慶子には沙也香のお勉強ぶり見てもらいたいの。だって、今度から沙也香の雇用主になるんだもの。ねえ、雅明?」
 それまで、微笑みながら、無言でその場のやり取りを見ていた雅明は大きく一つ頷いてみせた。
「ああ、しっかりと見てもらった方がいい。沙也香がどういう子なのかってことを知ってもらうためにもな。」

 なかなか動こうとしない沙也香に有希江の叱責が飛んだ。
「沙也香! いい加減になさい。いつまでも駄々こねてないで、早くおじさまとお勉強をするの。ちゃんとできたらご褒美いただくんでしょ? ほら、いつものようにっ!」
 有希江の声にビクッと反応した沙也香はそのまま雅明の座るソファの元に近づき、震える声で言った。
「ま、雅明・・おじさま・・今日も、沙也香に・・お勉強教えてください。それで、もしいい子にお勉強できたら・・・いつものように ご褒美・・ください。」
 沙也香の言葉に雅明は相好を崩し、自分の右の太股の辺りを手のひらで二つ叩いた。

 〔続く〕

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サテンドール

Author:サテンドール
=============================================
女性化小説なら国内・海外を問わず大好きです。

特に屈辱系・羞恥系・強制系・寝取られ系・立場逆転系・年齢退行系・SISSY系などなど・・・。

happy よりは、unhappy ending が好み。
(ちょっと、性格がゆがんでるのかも^^)

私事ですが、以前某サイトに 
「高野奈緒美」のペンネームで
『ある性転者の告白』という拙い小説を掲載させて頂いておりました。事情があって途中で掲載を止めましたが、その完結編も当ブログでご紹介できればと思っています。

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