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『再会』 その9 (最終回)

 およそ一ヶ月後のある日・・・・・

社長室には、森島香織と朝倉真穂の2人のOLが慶子に呼び出されていた。
 新人受付嬢の教育係である彼女たちの指導が行き過ぎではないかという、ある男性社員からの報告があったからだ。

「では、この報告にあることは事実なのね?」
 慶子は2人の顔を交互に見ながら問いかけた。
「はい。事実です。」
 森島香織がきっぱりとした口調で答えた。(何か問題でもあるのでしょうか)とでも言いたげな自信に溢れた態度だった。
 
 24歳の若さではあるが、高校卒業後、慶子の勤めていた会社に一般職として入社し、社会経験はそれなりに長い。その後、慶子が独立した際に進んで参加を希望した子でもあった。ただ正直に言うと、慶子自身は香織の参加にはあまり気が進まなかった。なぜなら香織は仕事も遅く、決して有能なOLとは言えなかったからだ。だが、長年一般職として勤務していたこともあり、いわゆる雑務には長けていた。慶子の独立に進んで参加を希望してきた社員のほとんどが大卒のエリートサラリーマンとキャリア志向の強いOLだったことで、いわゆる「下働き」をする人物がどうしても必要だったのだ。つまりある意味、妥協の産物として香織の採用が決まったのであった。
 だが、「下働き」は、いくら小規模の会社とは言え一人というわけにはいかない。少なくとももう一人は欲しかった。そこで、白羽の矢が立ったのは香織と同期で、同じく高校卒業後一般職として採用された朝倉真穂だった。
 実際のところ、慶子の本当に欲しかった人材は真穂の方だった。仕事の覚えも早いし、てきぱきとこなすし、さらに性格もいい。常に明るい笑顔を浮かべ、「慶子先輩、慶子先輩」と人なつっこい可愛らしさもあった。
 だが、皮肉なもので、慶子の独立に対して真穂は参加の意思を示さなかった。「超」の付くほどの安定志向である真穂にとって、新たな環境に身を置く決断はできなかったのだ。
ただ、もし親友である香織が参加するなら自分も参加しても良いという返答をよこした。慶子にとってはそのことも香織採用を決断する要因となったのである。
 比較的長身のスラリとした体型で勝ち気な香織と、ぽっちゃり気味の小柄でおっとりした真穂という、まるでデコボココンビのようなコントラストのある二人が親友になったのには大きな理由があった。もちろん、同じ高卒で同期入社、同じ一般職採用と共通点も多かったが、もっと大きな要素として「同病相憐れむ」的な要素が大きかったのである。実は二人もまた鬼上司、坂下智則部長の哀れな犠牲者であったのだ。男性社員ほどではなかったにせよ、周囲からは常に「やりすぎ」との陰口が囁かれるくらいだったし、彼女たちへの同情の声の方が大きかったくらいである。そんな彼女たちにとってお互いを慰め、同情し合う関係がその後唯一無二の親友同士としての関係に変わっていったことは当然の結果だと言える。
 
 今、この二人のOLが一人の新人受付嬢の教育係を務めているのだ。
 もちろん、「沙也香」というその新人受付嬢が、実は「坂下智則」その人であることなど二人には知るよしもないが。
 
 ただ、この元部下二人が元上司を指導教育する立場になっていることには、皮肉な運命や巡り合わせの妙などいう要素はなかった。そこには人為的な意図があるだけである。
 沙也香の「おば」である有希江が慶子にたってのお願いということで頼み込んだことなのだ。
 いずれにしても新人を指導する教育係は不可欠だったので、慶子はその願いを叶えることにしただけのことであり、他意はなかった。
 だが、有希江には明確な「他意」があったのだ。それはまさに真性S女にしか思いつかないような残酷な「他意」だった。
 有希江は、この二人のOLが坂下部長のしごきを恨んでいたことを知っていた。その二人がもし沙也香の本性を知ったらどういう言動をとるだろう、その時の沙也香の感情は果たしてどんなものだろう、そしてその時の表情は・・・・などということを考えると、燃え上がるSごころが抑えきれなくなってくるのだった。
 
  
「でも、社長、沙也香さんの指導については私たちにお任せ頂いたものと思っていましたが・・・。」
 香織の瞳には自信の光が宿っていた。
「ええ、確かに任せたわ。でも、これはさすがにやりすぎではないかしら?この報告書には、ミニスカートの裾をまくり上げてショーツ丸出しの格好で、オフィスを歩かせ、しかもブラウスのボタンを外させて、そこに『露出狂女 沙也香』とボディペイントがされてあり・・・とあるわ。これが確かならやはりやりすぎでしょ?」
「でも、社長、沙也香さんは男性が近くにいるとしょっちゅう転んだり、物を落として、それを拾ったりするんです。それもあの受付用のマイクロミニの制服ですから、いつもショーツ丸見えで・・・。だから、恥ずかしい思いをさせれば気をつけると思って、罰としてやったことです。間違っているでしょうか。」
「ああ、そ、そう・・・で、では・・・こちらの報告はどう? こちらにはこう書いてあるわ。男性クライアントが受付の前で待っていると、キャンディーを持って近づいて、
誘惑するような声と表情で『当社では、キャンディーサービスがございます。待ち時間にお一ついかがでしょう。ただ、お客様からのお返しもいただくことになっております。私にもお客様お持ちの太くてかた~いスティックキャンディいただけますか?あちらの個室で』などと語りかける・・・・と書いてあるわ。これは、どうなの?」
 慶子の問いかけに、初めて真穂が口を開いた。
「あ、あの・・・それは、私がやらせました。沙也香さんはいつも受付に男性クライアント様がおいでになると、決まって脚を開いて下着を見せながら、ロリポップキャンディーを舐めたり、ペンの先を口に銜えたりするんです。それも舌をペロペロ出しながら。下品だからやめなさいって何度も注意したんですけど、『口が寂しくてついやってしまうんです。癖なので許して許してください』って言ってやめようとしないんです。だから、もっと恥ずかしい思いをさせればやめると思って・・・。これもやりすぎですか?社長?」

 慶子は深く大きなため息をついた。
(ホント、あきれちゃうわ。)慶子は心の中でそう思った。
 目の前の香織と真穂に対してではない。
 もちろん、彼らの指導はやりすぎである。もしも、彼らが別の女性社員にこのような指導をしたとすれば、「それは絶対にやりすぎよ。すぐにやめなさい」と、慶子は叱責したにちがいない。
 だが、今回は彼女たちを責めるわけにはいかなかった。
 なぜなら、これは沙也香自身が意図的に招いた結果だと言えるからである。
 
 
 今からほぼ一ヶ月前の初めての出勤日、レースクィーンと見紛うばかりの超マイクロミニドレスの受付用制服に着替えた沙也香は羞恥に頬をひきつらせながらも、慶子に挨拶をするため社長室を訪ねた。 
 二人きりになって、慶子は沙也香の、いや坂下智則としての本心を聞こうと真剣な口調で話を切り出した。
「坂下部長・・・あなたの本心をお聞かせください。これはあなたの望んでいる姿なのですか?」
 意外にも慶子から「坂下部長」と呼びかけられ、一瞬ハッとした表情を浮かべたが、すぐに元の顔に戻って静かに重い口を開いた。
「いや・・・実は・・・自分でもよく、わからないんだ。これが・・・望んでいたことなのか・・・どうか。」
 できるだけ、昔の声を取り戻そうとしながら、小刻みに言葉を継いだ。
 だが、悲しいかな長期間に渡り、女性言葉と高いトーンでの会話しか許されていなかった智則の話しぶりは不自然を通り越して滑稽ですらあった。
 慶子は思わず笑い出しそうになるのを必死にこらえた。
「私も部長の指導の厳しさに恨んだこともあります。でも、そのおかげでここまでやってこれたということも事実なので、感謝している部分もあるんです。ですから、部長、もし私に力になれることがあるのならおっしゃってください。まだ、今なら、引き返すことができるはずです。このままエスカレートしたら必ずいつか・・完全に・・・」
 慶子は智則の股間に目をやった。
 智則にはその視線の奥に隠された意味が分かっている。
(いつか・・完全に・・「性転換手術」を受けさせられることになる)という意味なのだろう。
「ああ、確かにそうかもしれない・・・でも・・・」
「でも?」
「うん、それでも・・・・いいような気もしているんだ。」
「え?いいって・・・完全に女性になってもということですか?」
「ああ、それがもしかしたら自分にとって最も幸せなことのようにも思えるんだ。」
 慶子には智則の顔に微かな笑みが浮かんでいるのが見えた。

 慶子はわずかの間の後、思い切って口を開いた。
「で、では・・・せめて、キャリア女性としての道を歩んだらどうなんです?部長のキャリアなら十分それも可能なのではないですか?」
「いえ・・もう、それはできないわ。」
「うん?どうして?」
 智則の言葉は女性言葉に戻り、声のトーンも高くなっていた。
 それによって不自然さと滑稽さは消え、慶子の受け答えも元部長に対する口調ではなくなっていた。
「だって、私の身体はもう有希江おばさまのものだもの。有希江おばさまに命じられることが私の幸せなの・・・。」
「有希江はあなたにキャリア女性として生きることは許さないと?」
「ええ、おばさまはおバカでドジで、どんな命令にも従順な可愛い女の子が好きだって。」
「それにしたって、あんな辱めを受けても平気なの?しかも宮田君の相手までさせられて。」
「おじさまの相手は・・・確かに辛いけど・・・でも、その後には『ご褒美』がもらえるし・・・」
 慶子は智則の言う、『ご褒美』のシーンを思い出していた。
 あんな屈辱的な出来事をこの男は『ご褒美』と称してありがたがっているのだとわかると、慶子の心に微かに残っていた霧のような部分が晴れていくような思いがした。
「よくわかったわ。あなたが心の底からMであるということ、いえ、有希江という女性によってMにされてしまったと言った方がいいかもしれないけど。それがあなたの本心から出ているということは確かなようね。いいわ。私もこれからはあなたが坂下部長だったという記憶は捨てる。あなたを沙也香という何もできない、新人受付嬢だと思ってあつかうわよ。いいわね。」
 智則は無言のまま小さく頷いた。
 これでよかったのだろうか、もしかして引き返すなら今なのではないかという思いも微かに残っていたのである。
 だがそんな心の迷いを次の慶子の声が吹き飛ばした。
「何、黙ってるのっ? 沙也香はただの新人受付嬢でしょ? 目上の人が言うことに返事もしないとはどういうこと? しっかりと目を見てお返事なさいっ!」
「は、はい・・・申し訳ありません。 沙也香は・・・社長に新人受付嬢としてあつかっていただけてうれしいです。こ、これからも・・・厳しく指導してください。お願いします。」
「まあ、いいでしょう。自分のこと『沙也香』なんて名前で言うのは社会人としては失格よ。だけど、沙也香はそうしていなさい。そのほうがお望み通りおバカでドジな女の子に見えるからね。フフフ・・ ところで、沙也香、あなた、今日おばさまやおじさまから何か言われて来たの?」
「は、はい・・・お仕事がんばってと言われました。」
「ふ~ん、それだけ?」
「い、いえ・・・あの・・・皆さんに可愛がってもらえるように何でも言うことをよく聞きなさいと言われました。」
「後は?」
「あの・・・いっぱい・・・いっぱい・・・恥ずかしい思いを・・・してきなさいと。」
「フフッ、また言われたのね? で、どんな風にしろって?」
「あの・・・できるだけ・・・おバカでドジで・・・エッチな・・・女の子として振る舞いなさいと言われました。」
「ハハハ・・・わかったわ。また、帰ってからエッチで恥ずかしい告白させられるのね?沙也香の好きな『ご褒美』をもらうために。そうなのね?」
「は、はい・・・」
「わかったわ。でもあんまりやりすぎないでよ。仮にもここは私の会社なんですからね。フフフ・・」

「あと・・・社長様に一つだけ、お願いしたいことがあります。これは沙也香の心からのお願いです。おばさまもおじさまも知りません。社長様にだけお願いしたいことです。」
 沙也香の目に真剣な思いが浮かんでいた。演技ではなく本心からの言葉を口にするつもりなんだと慶子は感じた。
「うん?なに?言ってごらんなさい。私に叶えられることかしら?」
「はい・・社長様にしか叶えられないことです。」
「あら、ずいぶん信頼されたものね、いいわ、言ってみて。」
「あの・・・こちらの会社は皆さん、元々沙也香の部下だった人たちです。」
「ええ、そうね。ほとんどそうだわ。『沙也香の部下』っていうのは変な感じだけどね。フフっ・・・」
「それに、沙也香の教育係として森島香織さんと朝倉真穂さんが受け持ってくださると先ほど聞きました。」
「ええ、おばさまからのたっての要望でね。」
「ああ、やはり・・・」
 沙也香の目に悲しみの色が浮かんだ。

「あの・・皆さんに、沙也香の正体を言わないで欲しいんです。もし沙也香の正体がわかったら、きっと皆さん、沙也香のこと・・・あの・・・いじめると思うし・・あの・・・」「ああ、黙ってて欲しいということね?特に森島さんと朝倉さんは、昔思い切りしごいた部下だから、知られたらどんな苛めにあうかわからないものね?」
「は、はい・・・」
「ふ~ん、でも沙也香は本当はMで、苛められたいんじゃないの?だったらみんなに言って苛められた方がうれしいんじゃない?」
「そ、そんな・・・お願いです。黙ってください。他のことは何でもします。だから、沙也香の正体だけは・・・黙っててください。」
「フフフ・・・そんな慌てなくても大丈夫よ、冗談だから。いいわ、約束する。他の人には黙っててあげる。私は有希江ほどサディストじゃないから、そこまでのことするつもりはないわよ。アハハ・・・」
 沙也香は心からの安堵の笑みを満面に湛え、社長室を後にした。
 それから約一ヶ月、沙也香と慶子の間の「女同士」の約束は未だ破られてはいない。  
 
 慶子は、いまだに社長室に呼び出されたことに納得のいかない表情を浮かべている森島香織と朝倉真穂に視線を向けた。
 屈辱的な行為を自ら招いたのが、沙也香である以上、これ以上二人を責めるのはおかしな話である。それにもし今回、やりすぎを自重させても根本的な解決にはならない。なぜなら、沙也香の恥ずかしい振る舞いが収まることはないからだ。それをしなければ沙也香にとって「ご褒美」を得られる手段はないのだから。

「いいわ、話はよくわかった。あなたたちはこれまで通り、沙也香さんの指導教育を受け持ってもらいます。それにあなたたちのおかげで沙也香さんの男性クライアント受けはとてもいいみたいだしね。」
 慶子の言葉に香織と真穂は顔を見合わせて、ニコっと微笑みあった。
「それはそうよねぇ~?」
 香織は意味ありげな表情を真穂に向けた。
「うん、ねぇ~ ククク・・・」
 真穂は含み笑いをしながら相づちを打った。
「んん?なに?何か秘密があるの?」
「社長、沙也香さんのテクってすごいんですって。もう最近では沙也香さんの『キャンディーサービス』目当てに、アポイントよりずっと前にいらっしゃる男性クライアントさんで待合室が一杯になることもあるんですよ。ククク・・・」
「そうそう、一昨日なんか、午前中だけで7人もいらっしゃったんです。で、ランチタイムになって沙也香さん誘ったら、あまり食欲がないって言うんですよ。で、ダイエットでもしてるの?って聞いたら、何て言ったと思います?フフフ・・・」
 真穂の問いかけに、慶子は小さく首を振った。
「午前中、おいしいミルク飲み過ぎでお腹一杯なのって言いながら舌をペロって出すんだもん、もうびっくり。社長、あの娘みたいな娘を言うんですよね『先天性色情狂』って?ククク・・・」
「ええ、きっとそうね。『かわいそうな』娘なのね、たぶん。」
 
 慶子は二人を退室させると、応接用のソファに腰を下ろし目を瞑った。
 脳裏に沙也香の様々な姿が浮かんでは消えていく。
 先ほど二人に言った「かわいそうな」は、きっと慶子の真意とは違って取られたに違いない。
 二人にとって、沙也香は頭の弱い、色情狂の「かわいそうな」女の子であり、慶子にとっては、本来は男であるにも関わらず、無理矢理そのような姿を演じなければ、喜びを味あうこともできない「かわいそうな」女の子であった。

 その時、携帯電話が鳴った。表示を見ると、「YUKIE」だった。
 一頻りの挨拶を終えると、話題は沙也香のことに移った。
 有希江からしてみれば、それが目的で掛けた電話なのだから当然のことである。
「ねえ、慶子、運命の『再会』はまだ?」
「うん?何よ。運命の『再会』って?」
「もう~決まってるじゃない。社員のみんなと坂下部長との『再会』よ。」
「え?なに?どういうことよ。」
「もう~慶子、本当に鈍いわね。沙也香の正体をみんなにバラしちゃうことに決まってるじゃない。」
「何言ってるの? そんなことするつもりはないわよ。」
「ええ?どうして?知らせれば面白いことになるじゃない?フフフ・・・」
「うん?面白いことって、何よ?」
「だって、みんなもう沙也香が淫乱で、露出狂で、Mっ娘だってこと知ってるんでしょ?」
「うん、まあね・・・でもそれ、有希江が無理矢理させてることじゃない?」
「アハハ・・そんなことはどうでもいいの。で、そのMっ娘、沙也香ちゃんが、実は昔自分たちをいじめ抜いた坂下部長だって知ったら、それも自分の意志でそんな女の子になったって知ったら、みんなどうすると思う?」
「・・・・・」
「特に、今教育係をしている森島香織と朝倉真穂が知ったらどうなるかしら? ああん、ダメ、私話しているだけで感じてきちゃうわぁ・・・フフフ」
「もう~いい加減にしないと、本当に地獄に堕ちるわよ。有希江。」
「特にさ、小柄な朝倉真穂が腰にディルドウを付けて、沙也香のアナルを犯している姿とか想像すると、なんか濡れてきちゃうのよ・・・ 一番可愛くて素直だった子に、鬼上司が犯されて、しかもアンアン悶えるのよ。見物だと思わない?ああ、そうだわ。もしそうなったら、私、真穂にディルドウ送るわ。今より、1サイズ・・・ううん、2サイズくらい大きいやつ。さすがにそれだと苦しむだろうな~。もしかしたら、出血して泣き叫ぶかもしれないわ。何かゾクゾクするわ。ねえ、慶子、早くみんなに知らせちゃおうよ。」
 有希江は一方的に自分の思いを伝えると、電話を切った。最後に、「『再会』の日程が決まったら連絡して。ビデオカメラ用意して行くから」と付け足して。

 電話を切って、慶子はもう一度目を瞑った。
 再び沙也香の姿が脳裏に浮かんできた。だが、今度浮かんできたのは、これまで目にした沙也香の姿ではなかった。有希江の話した沙也香と朝倉真穂の空想のアナルセックスシーンだった。
 有希江が沙也香を犯すシーンは目の当たりにした。それももちろん衝撃的な光景だったのだが、大柄な有希江が小柄な沙也香を犯していると見れば、自然な姿と言えなくもない。だが、小柄な沙也香が自分よりも更に小柄な女の子に力づくで犯される姿はどうだろう。しかも有希江によると、これまでに経験したことのない巨大ディルドウを用意すると言う。沙也香はきっと泣き叫ぶだろう。そしてかつていじめ抜いた女の子に涙ながらに懇願するに違いない。
 空想の中の沙也香が震える唇で言う。
「真穂様・・お願い、痛くしないで・・・・優しくして・・・」

 慶子は高鳴る鼓動を鎮めようと深呼吸をした。だが鎮まる気配はない。むしろ鎮めようとするほど、呼吸が荒くなっていく。
 慶子は今日、おろし立ての高級シルク製のタンガを履いてきたことを後悔した。
 触れてみるまでなく、ヴァギナから大量の愛液が溢れ出しているのがわかる。
 慶子の右手はいつの間にか欲望に促されるまま、スカートの中に延びていた。
 社長室には慶子の抑えた喘ぎ声が響いた。


 慶子がソファからゆっくりと立ち上がり、乱れたブラウスとスカートを直したのは、それからおよそ30分後のことだった。
 呼吸はやっと落ちついてきた。これほどの短時間の内に2度もアクメを迎えたのは初めてのことだった。
 慶子はふぅ~っと大きくため息をつくと、内線電話の受話器を取り、ボタンを押した。
 
「ああ、久保寺専務? 明日の朝、始業前にミーティングをするので、みんな必ず出席するように伝えておいて。うん?ううん、その件じゃなくて・・・。新人受付嬢の沙也香さんの件でみんなに知らせておきたいことがあるから。」

 慶子は受話器を置くと、携帯電話の着信履歴から最も直近のナンバーをプッシュした。 液晶には「YUKIE」という文字が浮かんだ。
 呼び出し音が耳に響いている間、慶子は独り言を呟いた。
「ごめんね、沙也香、約束守れなくなっちゃった。どうやら私も有希江と同じ『趣味』があるみたい。」

 5回の呼び出し音の後、有希江の声がした。
 慶子は挨拶もせず、いきなり話を始めた。
「ねえ、有希江、さっき言ってた新しいディルドウって、すぐ手に入るの?」

              【終わり】

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コメント

§

すばらしい小説でした。元夫が“自分の意思”で女性化する・・・。真綿で首を絞めるような追い込まれ具合に興奮しきりでした。この後の彼の人生を妄想するのも楽しいですね。これからも応援し続けます。このサイトにめぐり合えた幸運に感謝します。
  1ファンより。

§ Re: タイトルなし

>NTR夫 様

返事遅くなってすみません。コメントどうもありがとうございました。
しばらくは更新も滞りがちになってしまいますが、今後も懲りずにおつき合いください。

> すばらしい小説でした。元夫が“自分の意思”で女性化する・・・。真綿で首を絞めるような追い込まれ具合に興奮しきりでした。この後の彼の人生を妄想するのも楽しいですね。これからも応援し続けます。このサイトにめぐり合えた幸運に感謝します。
>   1ファンより。

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プロフィール

サテンドール

Author:サテンドール
=============================================
女性化小説なら国内・海外を問わず大好きです。

特に屈辱系・羞恥系・強制系・寝取られ系・立場逆転系・年齢退行系・SISSY系などなど・・・。

happy よりは、unhappy ending が好み。
(ちょっと、性格がゆがんでるのかも^^)

私事ですが、以前某サイトに 
「高野奈緒美」のペンネームで
『ある性転者の告白』という拙い小説を掲載させて頂いておりました。事情があって途中で掲載を止めましたが、その完結編も当ブログでご紹介できればと思っています。

それとランキングにも参加させていただきますので、
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