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N/Nプロジェクト 序章

〔序章〕

 西暦20×1年
 数年来の審議を経て、「国民適正化法案」が国会を通過した。
 この法律は、人口減少の流れの中でいかに国力を維持・向上させるかという問題を解決するために、いわゆる「少数精鋭」でも経済・社会・文化・教育等々の水準を維持し、かつ発展させることを目的として成立したものだった。
 具体的には、義務教育を終了した時点で、国民全員に適性検査を義務づけ、能力・適性から精神面・体力面等に至るまで、およそ30項目に渡る結果により、将来進むべき進路を決定してしまうものだった。
最初に国会に提出された頃には、世論を二分するほどの激論がわき上がったが、いくつかの諸外国で同様の法案が通り実施され、しかもかなり良い方向に進んでいることがわかると、国民世論も次第に賛成意見が多くなっていき、ついには法案通過の運びとなったのである。
 ただ、これから義務教育を終了する子供たちへの実施は良いのだが、問題は成人に対しての実施をどうするかということだった。もちろん成人は対象外とするという選択肢はない。むしろ、学者の間では、成人に対してこそ急いで行わなければならないという意見が多かったくらいである。
 そこで、現在65歳までの成人については一年間という時間をかけ、誕生月順に順次、実施していくこととなった。

そして翌年(20×2年)3月の実施を最後に16歳より65歳までの国民全員の適性検査が終了した。
 翌月より、その検査結果が各個人宛に順次通知された。
 検査表には、30項目に渡るデータと共に最終適性判断として、A・B・C・Dの4段階の結果が記されてあった。
 
 そのランク分けは以下の事柄を示すものである。

A=現在の職業・職域または社会的地位は最適性であり、変更の必要はなし。

B=現在の職業・職域または社会的地位はほぼ適性である。国としては最適性を推奨する  が、現行のままを希望する場合には変更を義務づけるものではない。
  (最適性の職業・職域等への変更を希望する場合には、担当者による個別のカウンセ   リングを通じて、全面的に支援を行う。)

C=現在の職業・職域または社会的地位は不適である。20×3年3月までに、変更する  ことを義務づける。そのため、担当者による個別のカウンセリングが必須。ただし、  能力及び精神面・体力面には全く問題がないので、最適性のある職業・職域・社会的  地位への変更は可能である。(ただし、本人の希望ではなく適性検査の結果に基づく。)

D=現在の職業・職域または社会的地位が不適であるばかりでなく、検査結果の一部また  は全てに基づいて、最適性への変更は不可能である。『適性教育機関』での、一定期  間の再教育が必須。その達成度により、比較的適性度が高いと判断しうる職業・職域  ・社会的地位に就くことが義務となる。

 以上が「表向き」公表されているランク分けの詳細だった。

ところが、この結果分けには公表されていないもう一つのランクが存在したのである。
 そのランクに入った場合には、通知書類の結果欄は空白で、その代わりに、担当者による個別面談(必須)の実施予定日時が記されてあった。さらにその面談を特別な理由なく欠席した場合の罰則規定まで付されてあった。

 担当機関の職員は、それを内々に 「Nランク」と呼んでいた。
 Nは、NOTHINGのNで結果欄に「何も書かれていない」ことから、誰からともなくそう呼ぶようになったのだが、本当の意味は、このままの状態では社会的な貢献は「何もない」つまり、社会的にはNOTHINGだという意味も兼ねるようになっていった。
 では、その「Nランク」に属する人とはどういう人だろうか。
 それは、適性検査の結果、ランクDとされた上に、他のいくつかの検査結果を通じて「性別」について、客観的に不適合と判断された人たちだった。
 間違ってはならないが、いわゆる「性同一性障害」として認識されている人たちのことではない。
 この頃の日本は「性同一性障害」に対する社会的偏見は殆どなくなっていた。従って、自ら、そうであることを公表するのは全くと言っていいほど問題にはならない。現に彼らの多くは、この適性検査前にすでに社会的に認められており、適性検査の結果には全く影響を与えなかった。
 では、「Nランク 」における性別の不適合とはどういうものか。
 それは、簡単に言えば、潜在的な性別の不適合者という言い方が正しい。つまり自らはまったく認識していないにも関わらす、客観的な分析結果によって、精神的または肉体的に、あるいはその両面で性別不適合であることが判明した人たちである。
 この「Nランク」該当者には女性も含まれてはいたが、その男女比は圧倒的に男性の方が高かった。それを環境ホルモンの影響によると分析した学者もいたが、真偽のほどは確かめられてはいない。
 いずれにせよ、ここでは一部の例外を除き、圧倒的に比率の大きかった「Nランク」男性該当者に話を絞って説明を続けたいと思う。
 
 国は密かにこの「Nランク」男性の扱いに対する議論を続けた。
 当初は、十分な精神的治療により男性としての性別に適合させるべきだという穏当な意見が主流を占めていたが、ある著名な精神医学者の意見が、その後の議論の流れを変えてしまった。
 彼の持論によると、「データの分析結果を見ると、Nランクの男性については、どんなに精神的治療を施しても、完全に男性としての性別に適合させることは不可能である。つまり、潜在的には不適合状態が残ってしまう。」というものだった。
 この参考意見以降、議論の流れは過激な方向に向かい始め、ついには、「国として不要の人物なのだから、密かに抹殺すべし。」などという暴論めいたものまで出始めたのである。
 
 そんな中、一人の女性高級官僚が、ポツリと、『特殊倶楽部』のことを口にしたのである。
「もし彼らが、本当の女性なら『特殊倶楽部』で、『ニンフ』として働かせることもできるのに・・・。今、『ニンフ』集めには苦労してるので・・・。」
 この彼女の冗談とも本音とも取れる言葉に対し、議論の場に、ある種の緊張感と共感の雰囲気が広がった。
 
 ここで彼女の意見の詳細を説明しなければならないが、その前に当時の労働環境における闇の部分について、若干の説明を加えておく必要があるだろう。
 人口減少が進んでいく中、肉体的に過酷で危険な労働に振り分けられる労働力が不足していた日本では、その面を外国人労働者に依存するようになっていった。だが、それも長くは続かない。なぜなら経済的に弱体化していく日本に、外国人出稼ぎ労働者は魅力を感じなくなっていったからである。
 そこで次に考えついたのが、刑務所に収容されている受刑者の登用という苦肉の案だった。
 十分な保安上の安全を確保しながら、当初は比較的軽い刑の受刑者のみで運用されたが、人手不足がすぐに露呈し、対象者の幅を拡げていくようになる。そして最終的には全受刑者が対象となるまでに至ったのである。当然ながら殺人犯や強盗犯、さらには凶悪な性犯罪者まで含まれるようになっていった。また、中には出所の望みのない終身受刑者(当時の日本は死刑制度が廃止され、極刑として『終身刑』が導入されていた)もいたのである。 そうなると気の立った者同士の小競り合いが暴動に繋がるという危険性も無視できず、所管部署はその対策を講じるようになった。
 何とか彼らの高ぶった精神状態を治め、かつ労働意欲を維持させる方法はないものかとの論議の中、最終的に到達したのが『特殊倶楽部』の設置だった。わかりやすく言えば、彼らの高ぶった欲望を解放するという目的のためだけに作られた慰安施設である。
 そこでは、制限はあるものののアルコールやたばこも許され、簡単な娯楽施設も揃い、ストリップショーや個室マッサージといった風俗系のサービス施設まで備わっていた。だが、彼ら受刑者の労働意欲を最も高めたのは、定期的に発表される『優秀勤務賞』受賞者のみに与えられる『特別室』使用の権利だった。
 『特別室』内では、指名した『ニンフ』(英語のnymph: 元は「美しい妖精」から「美少女」の意味もあるが、今ではnymphomania:「色情狂・淫乱女」などの略語としても使われる)と呼ばれる女性と一夜を共にすることができた。そしてその中での性的サービスには制限がなく、過激なSMプレイやレイププレイ、さらにスカトロプレイといった変態的なプレイまで全てを満たすことができた。許されていないのは、『ニンフ』の生命を危険にさらすプレイぐらいだった。
 
 『特殊倶楽部』の設置だけでも、十分な成果があった上に、この『特別室』の導入による労働意欲の向上はめざましいものがあった。そのため、所管部署からの指示により、全国に十数カ所ある『特殊倶楽部』に『特別室』の設置が必須となった。
 しかし、そのためには魅力的で、あらゆる性的な要求にも応えられる有能な「ニンフ」が相当数必要となり、担当者はその募集を急ぐこととなった。
 当初は、全国の風俗嬢の中から、魅力的で評判がよく、技術的にも優れた女性に極めて高額な報酬を提示することで、一応必要数の「ニンフ」は確保することができた。だが、翌月には、約半数の「ニンフ」が退職を申し出、さらにその翌月には、当初の一割の人数しか残らないという有様だった。
 それは何より仕事内容の過酷さが原因だった。性欲の限界に達した受刑者たちの『特別室』内で行う行為により、命を落としかけたり、精神的な病に冒される「ニンフ」まで現れたのである。そしてその噂は全国の風俗業界に瞬く間に広がり、その後の募集の妨げとなった。
 風俗嬢からの募集が不可能となった担当官が次に白羽の矢を立てたのは、なんと同じ受刑者だった。比較的刑期の長い女性受刑者の中で容姿が端麗で、しかも風俗嬢等の経験があり、精神的にも強い人物を密かに人選した担当官は、刑期の半減と『特殊倶楽部』内でのかなり自由な生活を保障することを条件に個別に説得にあたった。刑期の長い受刑者を選んだのは、たとえ半減したとしてもかなりの期間の刑期が残っているため、安定した人材(ニンフ)確保に繋がると考えたからだった。
 この苦肉の策により、再びニンフの確保は成功した・・・かのように見えた。だが、結果は前回と同じだった。しかも、今回は仕事の過酷さが原因で自殺者をも生み出すことになってしまったのである。受刑者ゆえ、半ば強制的に就かされた仕事から逃れるには死を選ばざるを得なかったのである。
 悪い評判の広まる速度は驚くほど速い。約1か月後には、全国の女性刑務所に収容中の受刑者の間で、この出来事を知らない者はいなかった。
 
 再び担当者の肩に「ニンフ」確保の難題が重くのしかかってきたのである。
 そしてその所管部署の責任者の一人が前述の女性高級官僚だったのである。
「Nランク」男性の扱いと「ニンフ」女性の確保という一見無関係と思われる二つの問題が、彼女の一言で完全にシンクロしていった。
 もちろん議論参加者の間には、そんなことが許されるのかと自問した者もいたに違いない。しかし両難問を一気に解決できる代案を持ち合わせている者は誰一人いなかった。

 こうして、
「『Nランク』男性を強制的に性転換し『ニンフ』とする」
 という前代未聞の信じがたい決定が満場一致でなされたのであった。

 基本路線が決定すると、翌日からは各専門家にも諮問し、具体的な方法が決められていった。
 そして約2ヶ月の期間を費やし、実施計画マニュアル案が作成され、さらに数回の会議における若干の修正を経て、ついに「N/Nプロジェクト実施マニュアル」(N/Nとは、「Nランク」と「Nymph」のそれぞれの頭文字)が完成し、プロジェクトに関わる所管職員達に極秘裏に配布されたのであった。
 
  その年の暑い夏が終わり、やっとかすかな秋風が吹き始めた頃のこと、○○県の小高い山の裾野に建設された真新しい施設に、5台の大型バスが順次到着した。
 乗客は全国から集められた約150名「Nランク」男性たちだった。年齢も職業も身体的特徴も何も一致するもののない彼らが、ただ適性検査における「性別不適合」という共通点だけで、この人里離れた施設に集められたのである。
 世間では適性検査の結果による配置転換が順次進んでいて、慌ただしく騒々しい雰囲気だったが、この施設の周辺はそんな喧噪とはかけ離れた静けさを保っていた。
 この世間と隔絶された地で、実質的な「N/Nプロジェクト」は始まったのである。
 だが、もちろん150名の男たちの誰一人として、そんなプロジェクトの存在を認識している者はいない。本人にもまたそれぞれの家族にも、検査結果に重大な疑義があったので再検査を行うということしか告げられてはいない。
 彼らはこの日から、短い人で8ヶ月、長い人で13ヶ月もの間、この施設内からの外出はもちろん、外部との直接の連絡手段も絶たれることとなったのである。



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コメント

§

質問します
受刑者のなかにNランクがいる場合はどうなるのですか

§ Re: タイトルなし

コメントありがとうございます。
> 質問します
> 受刑者のなかにNランクがいる場合はどうなるのですか
ごめんなさい。そういう内容は想定していませんでした。

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プロフィール

サテンドール

Author:サテンドール
=============================================
女性化小説なら国内・海外を問わず大好きです。

特に屈辱系・羞恥系・強制系・寝取られ系・立場逆転系・年齢退行系・SISSY系などなど・・・。

happy よりは、unhappy ending が好み。
(ちょっと、性格がゆがんでるのかも^^)

私事ですが、以前某サイトに 
「高野奈緒美」のペンネームで
『ある性転者の告白』という拙い小説を掲載させて頂いておりました。事情があって途中で掲載を止めましたが、その完結編も当ブログでご紹介できればと思っています。

それとランキングにも参加させていただきますので、
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