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N/Nプロジェクト 第4章

〔第4章〕
 
「というわけで、昨日を持って人事異動は全て終了いたしました。国の所管部署にも報告を済ませておりますので、社長もご安心いただいて結構です。」
 コンフェクショナリー・ミナセ本社ビルの社長室では、弘美が人事部長からの人事報告を受けていた。
 「国民適正化法」に基づく人的な異動は、このミナセ以外の企業でも着々と進んでいた。
 中には、社員の70パーセント以上の異動が余儀なくされた企業もあり、この年末に向かって世間では慌ただしさが増している。
 幸い、ミナセでは40パーセントほどの異動ですんだのだが、それでも完全に終了するまでに、およそ2ヶ月半を費やしたことになる。それはちょうど水瀬弘美が社長代理に就任してからの期間とほぼ同じということになる。

「そうですか。ご苦労様でした。それにしても、こんなに多くの人が入れ替わると、社内の雰囲気もずいぶん変わってしまったわね。」
 弘美はこの2ヶ月半で新たに入社した社員のリストを眺めながら言った。
「ええ、そうですね。人事部でも新たに外部から招いた社員の方が多いくらいですから、少々混乱しております。」
「本当ね。いくら適性を判断していると言ってもこれではかえって事業効率が悪くなってしまって、経済的にも損失なんじゃないかしら。」
「いえ、そういうことはないと思います。長期的に見れば、適性度の高い社員で業務を行った方が絶対に効率は上がるはずですから。」
 人事部長は、少し不満げな表情を浮かべる弘美を窘めるように言った。  
「ええ、それならいいけど。」
 弘美の視線は、社員リストから新役員リストに移った。弘美も含め役員の全員が「Aランク」という表記がされていた。

 実は、役員が必ずしも「Aランク」であるという必要はない。
「適性検査」での「Aランク」というのは、あくまで現行の職業・職責・社会的地位が最適性であることを表しているのであって、必ずしも個人の能力や資質が高いことを示すものではなかった。ところが、結果として「Aランク」と認定された人物を見てみると、社会的地位の高い場合が多かった。そうなると世間的には「Aランク」イコール「高い能力と資質」と見るようになり、同時に「Cランク」イコール「無能で資質も低い」と見るような風潮に変わってきたのだった。人間の差別意識というものはどうしようもないもので、「Cランク」でさえ、そのように見られるくらいだから、再教育が必要とされる「Dランク」に対しては推して知るべしであった。逆に「Aランク」というだけで、まるで特権階級にでもいるかのように自分を過信するものまで出てきた。
 そんな風潮に対し、当初は国の所轄部署も注意を促す発言をしていたが、世間の認識にあまり大きな変化はなかった。
 そうなると世間のイメージを大切にする各企業の中には、入社条件に「Aランク」を加える所も出てきた。
 ミナセは入社条件に「Aランク」を付しているわけではないが、少なくとも役員は「Aランク」でなければという役員会議での決定を受け、その形に落ちついたのである。
 
 弘美は小さくため息をついた。
 新役員のメンバーに、心から信頼の置ける人物がほとんどいなかったからである。 
 もちろん、中には旧知の人物もいる。だが、約半数の役員が外部招聘者であることもあって、まだどんな人物なのかもはっきりしない。弘美の心には幾ばくかの不安が沸いていた。
 ただ、その新役員のメンバーの中に弘美がたった一人だけ、絶大の信頼を寄せることのできる人物がいた。
 それは、弘美の強い推薦によって実現した人事だった。もちろん、その人物とは、山村誠也である。
 弘美が社長代理に就任してからの2ヶ月半という期間、彼女を最も励まし、支えてくれていたのは誠也だった。役員就任はその報奨的な人事という側面もあったが、それ以上にもっと身近で自分を支えてもらいたいという弘美の個人的な思いによるものだった。
 もちろんそれは恋愛感情などではない。少なくとも自分ではそう思っている。だがそうだからと言って、幼なじみの気安さとばかりも言えない。
 弘美はそんな複雑な感情に多少の戸惑いを感じながらも、公の場では決してそれを見せることはなかった。


「社長、次に第2工場の工場長の人事に関してなんですが、これはぜひ社長にもご意見をいただきたくて・・・」
「ちょ、ちょっと待って。私は社長じゃないわ 気をつけてっ」
 弘美は人事部長の言葉を反射的に遮って言った。
「あ、失礼しました。」
 人事部長はとっさに謝ったが、その表情にはいくぶん不快感も滲んでいた。
 弘美にはその意味するところがすぐにわかった。
 
 半月ほど前からだろうか、社内で弘美を「社長」と呼ぶ者が増えてきた。それは実際の社長である水瀬慶太を知らない外部招聘の人材が増えてきたことも原因の一つだが、それ以上に「Dランク」蔑視の風潮が社内を横溢してきたことが大きかった。
 約1年の再教育期間を終え、慶太は社長として復帰するという話は聞いている。だが、「Dランク」の人間に企業経営などできるはずがない。だから、会社の繁栄のためにも、弘美がそのまま社長として存続するように、「弘美 社長」を既成事実化してしまおうという無意識の判断が働いていたのだ。それは彼らなりの会社を思う気持ちの表れであることは確かだが、弘美には正式に社長に就任する意志はない。自分はあくまで、夫の留守を守るための「代理」であって、その器でもない。もちろん、元々上昇指向のある弘美にキャリア欲がないわけではない。ただそれはせいぜい関連事業の責任者としてのポジションくらいしか念頭にはなかったのである。
 
「しかし・・・それにしても慶太社長は本当に復帰できるのでしょうか?」
 人事部長の顔に微かな冷笑が浮かぶ。
「それは・・・どういう意味?」
「いえ、世間の噂ですが、『Dランク』者が再教育後に前職に復帰できる可能性はないって聞きましたけど。」
「そ、そんなはずはないわ。私は常田という担当者から直接聞いているから確実よ。」
「そうですか。それなら、問題はありませんけど。」
 人事部長の顔には明らかな不満の色が浮かんでいた。 

 この二人のやり取りには決定的な誤りがある。
 それは、水瀬慶太が「Dランク」ではなく「Nランク」だといういうことである。
 従って、今慶太が受けているのは「再教育」などではなく「ニンフ」へと変わるための「処置」に過ぎない。
 もちろん、そのことを知る者は、少なくともミナセ社内には誰もいなかった。

****************************************

「それにしても・・・・」
 弘美は人事部長の退室後、デスクに置かれている卓上のカレンダーを見つめながら、一人呟いた。
「それにしても、どうして一年もかかるのかしら? それも連絡さえできないなんて・・。まさか人事部長の言うように復帰できないなんてこともあるの?」
 弘美の心に言いようもない寂しさと不安が募る。
 2ヶ月半もの間、重責に押しつぶされそうになりながらも、必死でがんばってきたのは、愛する夫、水瀬慶太の復帰を待つためである。もしもその復帰が叶わなのなら、一体何を支えにがんばったらいいんだろう。
 弘美の目にはうっすらと涙が滲んでいた。
 職場では決して涙は流すまいと決めて、このひと月ほどは耐えてきたのに、とうとう大粒の涙が弘美の両頬を流れ落ちていった。
 弘美は自分の人差し指が、内線番号「203」と押すのを止めることができなかった。
 内線番号「203」。それは山村誠也のものだった。


 誠也は社長室のドアをノックする前、ことさらに明るい笑顔を作った。
 弘美の電話越しの声が、いつもとは違って涙混じりだったからだ。
「どうぞ・・・」
 誠也のノックに応える弘美の声が聞こえる。やはりわずかながら涙声だった。
 誠也は静かにドアを開け足を踏み入れた。いつもなら正面のデスクにいるはずの弘美の姿が見えない。
「こっち・・こっちに来て。」
 弘美の声だ。誠也は声のする方向に目をやった。
 社長室に続く、専用の応接間のドアが開いている。
 誠也はその中に入ろうとして、ハッとする。
 いつもは邪魔にならないように束ねているロングヘヤーを解いて、こちらを涙ながらに見つめている弘美の姿があった。
「しゃ・・・社長代理・・・」
 誠也は弘美の予想もしなかった姿にたじろいだ。
「誠也くん、前に甘えたくなったら甘えてもいいって言ってくれたよね?」
 誠也は黙って頷いた。
「でも・・・社長代理と役員じゃ、そんなことできないもの。 だから、こうして髪の毛下ろしちゃった。こうすれば幼なじみの弘美と誠也くんでしょ?」
 弘美は泣き顔に微かな笑みを乗せて言った。  
「ねえ、誠也くん、私・・・寂しくて不安で・・どうしようもなくて・・・」
 弘美はそこまで言うと、誠也の胸に飛び込んだ。
 女としては身長の高い弘美だったが、誠也のガッチリとしたスポーツマンとしての肉体がそれをしっかりと受け止めた。
「ひ、弘美ちゃん・・・」
 弘美の背中に回した筋肉質の腕に力が入る。
(な、何て力強いの? 何でこんなに安心するの?)
 弘美は心の中で囁いた。
 今まで、自分より身長の低い慶太との抱擁では感じたことのないしっかりとした力強さと、どっしりとした安定感に我を忘れそうになった。

 誠也は恍惚とした表情を浮かべる弘美を目の前にして、男の本能が抑えきれなくなっていく。
 誠也は弘美のワインレッドに染められた唇に自らの唇を重ねた。
 その瞬間、弘美は目を開け、身体を離した。
「ご、ごめんなさい・・・誠也くん、そういうつもりじゃないの。私は夫を愛してるし、裏切ることなんてできない・・・ただ寂しくて・・それで・・・」
 弘美の大きな瞳から、また大粒の涙があふれ出した。
「ぼ、僕の方こそ・・・ごめん。 つい・・・弘美ちゃんが・・・」
(綺麗だから)という言葉を誠也は心の中にしまい込んだ。
 それはかえって弘美の心を惑わすことになるような気がしたからだ。
「そうだよね。寂しいのは当たり前だよ。だって2ヶ月半も連絡すらできないんだからね。いいよ、これからだって寂しくなったり心配になったりしたら、いつでも呼んでいいからね。その時は幼なじみの弘美ちゃんと誠也でいようね」
 誠也は精一杯の笑顔で弘美を見つめた。
 弘美は小さく頷くと、もう一度誠也の男らしい厚い胸に飛び込んだのだった。 
 
****************************************

 その夜、弘美は熟睡できぬまま朝を迎えた。
 少しうとうとしかけると、すぐに熱い思いが胸にこみ上げてくるのだった。
 それは寂しさと心細さから逃れるために男を求める女の性(さが)から発した感情だったに違いない。
 男に抱きしめてほしい、髪の毛を優しく撫でてほしい、そして身体をゆっくりと愛撫してほしい・・・そんな感情が弘美の胸に広がっていった。
 弘美は眠れないまま、そっと目を瞑った。
 脳裏に一人の男が浮かぶ。しかしそれは夫の慶太ではなかった。自分より小柄で、細身の慶太とは、全く正反対な大柄でガッチリした体躯と逞しい筋肉を持った男、山村誠也だった。
「馬鹿ね、何を考えてるの 私ったら? 誠也くんは幼友達でしょ。慶太はれっきとした夫なのよ。」
 弘美の心に理性の声が響く。
 しかしそんな理性とはどこか全く別のところで動いている感情があった。
 弘美は誠也の面影を振り払おうと頭を何度も左右に振った。解いた美しい長い髪が頬を盛んにくすぐった。
 弘美は、慶太の姿を思い出そうとした。しかしその姿はすぐに消え、脳裏を誠也の姿に独占されていく。しかも再び現れた誠也は上半身を露わにし、下半身には身体にフィットする競泳用の水着一枚の姿だ。
 弘美は一瞬ハッとする。脳裏の誠也は想像上の姿ではなかったのだ。それは記憶の中の誠也。学生の頃、仲間達と共に行ったプールで見た誠也の姿だった。
弘美はその時、誠也の水着姿を目にして、あることに気づいたことを思い出し、ますます顔を赤らめた。
 それは何気なく目にしてしまった誠也の水着の前部分の膨らみに対してだった。
 誠也のそれが、仲間の男の子たちの誰よりも大きく盛り上がっているのを弘美は目にしたのだった。もちろん恥ずかしさのあまりすぐに目をそらしたが、その映像ははっきりと記憶されていたのだ。
 その姿が今、十数年の時間を隔てて再び弘美の脳裏に甦ってきた。弘美は夫の慶太の身体を思い出そうとした。比較しようとしたのではない。誠也の姿を消し去ろうと思ったからだ。だが、それは弘美に全く別の思いをもたらすことになったのだった。
 
 家での慶太はどんな時でも、弘美に男性自身を見せたことはない。一緒に入浴したこともないし、夜の営みの際にも前戯の間中下着をつけたままだった。
 弘美にはそれが慶太の、いわゆる「男性のサイズ」に対するコンプレックスのためだということは薄々気づいていたので、あえて何かを言うことはしなかった。
また、弘美自身もその「サイズ」のことで性生活に不満を感じることなどなかったのだ。
 
 しかし、今こうして女としての本能的な欲求を男に対して抱いた瞬間、慶太のみすぼらしく貧弱な男性自身は弘美の求める対象ではなくなっていたのである。
 太く逞しく、男らしい男根に貫かれたい・・・そんな本能的な思いが弘美の心を占有してしまったのである。
 
 その日、弘美はひと月ぶりに、自らを慰めた。
 ただ、ひと月前の自慰とは異なること・・・それは脳裏に浮かぶイメージが、慶太の貧弱な身体で営まれる大人しい性行為から、誠也の逞しい身体で強引に奪われるそれに変わっていたことだった。
 
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サテンドール

Author:サテンドール
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女性化小説なら国内・海外を問わず大好きです。

特に屈辱系・羞恥系・強制系・寝取られ系・立場逆転系・年齢退行系・SISSY系などなど・・・。

happy よりは、unhappy ending が好み。
(ちょっと、性格がゆがんでるのかも^^)

私事ですが、以前某サイトに 
「高野奈緒美」のペンネームで
『ある性転者の告白』という拙い小説を掲載させて頂いておりました。事情があって途中で掲載を止めましたが、その完結編も当ブログでご紹介できればと思っています。

それとランキングにも参加させていただきますので、
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