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N/Nプロジェクト 第5章

〔第5章〕 

 雪の少ない、比較的温暖な地に立地されているとは言え、1月の真冬の風はさすがに冷たい。まして、施設の広大な敷地は特に目立った遮蔽物もない吹き曝しの状態だから、戸外の寒さは格別だった。
 年明け最初の進捗確認のため、施設にやって来た常田厳は、駐車場から施設入口までのわずかな通路が寒風の吹き曝しになっていることを施設職員相手に愚痴っていた。
「このくらいの長さなら、すぐに壁とか屋根とか付けられそうなものなのになぁ。え?そうは思わない?」
「いえ、私たちでは決められませんから。そういうことは。」
 常田に馴れ馴れしく話しかけられた若い男性職員は、面倒くさそうな表情を浮かべながら答えた。
「い、いや、まあ、そうだけど」
 常田は男性職員のあからさまな嫌悪の様子に少々口ごもって答えた。 
「 どうしてもって言うなら、常田さんの力でお願いしますよ。へへへ」
 男性職員は嘲笑的な笑みを浮かべて言った。
(こいつ、もしかしたら俺が「Bランク」だってこと知って、馬鹿にしてるのか?)
 常田は内心思った。
 このところの世間に蔓延する「『Aランク』でなければ人に非ず」というような風潮には辟易していた。
 もちろん、男性職員は常田が「Bランク」であることなど知るはずもないが、常田の心にはある種の被害妄想的意識が形成されていたのである。

 施設建物内に一歩足を踏み入れると、そこは戸外の冷気とは隔絶された別天地のような暖かさだった。いや、暖かさだけではない。湿度管理や優しいBGM、アロマといった環境面での配慮がいたる所に施されている。これはすべて収容者たち、つまり「Nランク」男性たちに少しでも快適な環境で過ごさせたいという配慮からなされたことだったが、そこにはしっかりとした意図が隠されていた。
 家族や友人と離れた寂しさを少しでも和らげ、プロジェクトの進行を滞りなく進めるには、せめて環境面での不満を解消する必要があったのだ。
 
 常田が瑞穂のカウンセリングルームのドアを開けた時、そこでは瑞穂と後藤が何やら打ち合わせをしている最中だった。
 二人は常田の入室に軽く会釈で応答しながらも、会話を続けた。
「ええ、だからブロック3への移動はいつでもできるように手配しておいて。たぶんもう間もなくだから。」
「はい、わかりました。3から4への移動者もかなり増えていますから、空きについては問題ないでしょう。まあ、一応確認しておきますけど。」
「うん、そうしておいて。万が一、移動が今日明日ってことになっても大丈夫なようにね。」「はい、そのつもりです。」
 
 打ち合わせが終わり、瑞穂と後藤はほぼ同時に常田に「こんにちは」と声をかけた。
「あ、どうも、お久しぶりです。向山先生。後藤くん」
 常田も軽く会釈をした。
「ええそうですね。電話では話してますけど、いらしたのは・・いつ以来でしたっけ?」
 後藤が屈託のない笑顔を見せながら言った。
「ええと、あれは水瀬慶太のサブリミナル映像の説明を受けた日ですから・・・もうかれこれ二ヶ月になりますかね?」
 常田は質問者の後藤ではなく、瑞穂に向かって確認するように尋ねた。
「ええ、そうですね。だいたい二ヶ月位ですね。」
 瑞穂はデスクに置いてあるダイアリーに目をやりながら答えた。
「何せ、年末の事務仕事が立て込んでて、なかなかこちらに来る時間が取れなかったんですよ。これも宮仕えの辛いところですね。アハハハ・・・ ところで、今は一体何の話をされてたんでしょう? ブロックなんとかとか?」
「ああ、常田さんはまだご存じではなかったですね?ブロック分けについては。」
「はい、よかったら説明してもらえませんかね?」
「はい。簡単に言いますと、施設内の各個室をゾーン毎にブロック分けして、そこにプロジェクトの進捗状況に応じて、「Nランク」者個々を随時移動させるということです」
「うん?と言うことは進み具合に応じて、部屋を変わるってことですか?」
「ええ、そういうことになります。」
「それはまた面倒な。」
 常田は口元に笑みを浮かべながら言った。
「いいえ、ワンステップ進む毎に環境が変化するというのは、彼らにとって、自分は変わったということを認識させるには非常に大切なことなんです。」
「ふぅん、なるほどそういうことなんですね。」
 常田は時折、人を小ばかにした物言いをする時がある。特に自分の専門外の話を年下の人間がするときなどはその傾向が顕著になるのだった。
「で、それは何段階に分かれてるんですか?」
「ブロック1からブロック5までの5段階です。」
「ほほう・・・具体的にはどういう形で変わっていくのですか?」
 瑞穂はソファから立ち上がると、自身のデスクに置かれているファイルをガラステーブルに広げて見せた。

 そこにはブロック毎の詳細説明と共に各部屋の全景画像が掲載されていた。 
 ブロック1と書かれた部屋は常田にも見覚えがあった。なぜなら以前の施設訪問の際に、慶太が収容されていた部屋と寸分違わないものだったからだ。いわゆる「こざっぱり」という形容が最も似合う部屋である。ベージュがかった白の壁、質素なベッド、部屋には何の飾りもない。そして説明には「初期段階~ユニセックス段階」と書かれてあった。
 ブロック2の部屋は淡いピンクの壁に囲まれており、より暖かみのあるベッドと花や絵画といった飾り付け、そして部屋の隅には小さなドレッサーも設えてある。印象的にはどこかの少女、おそらく女子中学生か女子高生の部屋という感じである。そして説明には「女性化第一段階」と書かれている。
 ブロック3の部屋は淡いパステルカラーの壁で、ベッドが少し大人びたものに変わっている。また、ドレッサーも少し落ちついた色合いで、全体としては女子大生からOLの部屋という印象を受ける。そして説明には「女性化第二段階」とある。
 ブロック4は、大人の女性を意識したコンセプトになってるのが明確だった。部屋も広くなっていて、ベッド、ドレッサー以外にもソファやテーブルといった調度品も揃っていて、そのデザインも大人の雰囲気を漂わせている。そして説明には「女性化最終段階」と書かれてある。
 こうして見ていくと、まるで一人の女性の成長過程を擬似的に体験させることが目的なのではないかという気がしてくる。

 だが、常田はここまで眺めてから、怪訝そうな表情で瑞穂に視線を送った。
「4段階・・・と言いましたっけ?」
 常田はファイルのページをひっくり返しながら言った。
「フフフ・・・いいえ、5段階です。」
 瑞穂はいたずらっぽく微笑みながら、常田に視線を送る。
「しかし、ここには4段階までしか・・・しかも4段階は『女性化最終段階』とありますが?」
「常田さん? 忘れてもらっては困りますね。 彼らの本当の最終段階は何ですか?フフフ」
「『ニンフ化』・・・・ですよね?もちろん忘れてはなんかいませんよ。」
 常田は思わせぶりな瑞穂の物言いに少々いらいらしながら答えた。
 瑞穂は別冊の薄いファイルを開くと、微笑みながら常田の前にそっと広げて見せた。
 その瞬間、常田の表情に驚きの色が浮かんだ。
 彼には、ブロック5と書かれたその部屋にも見覚えがあったのだ。ただこの施設内で見たわけではない。以前視察で回った「特殊倶楽部」内で目にしたのである。その中の「特別室」こそ、この写真と完全に合致するものだったのだ。
「こ、これは・・・例の『特別室』の写真・・ですよね?」
「いいえ、実際には違います。『特別室』と全く同じ作りになっていますが、場所は『特殊倶楽部』内ではなく、この施設内に存在しています。つまり、ここで彼らは『ニンフ』としてのあらゆるレッスンとシミュレーションをこなしてから、各『特殊倶楽部』に送られることになるんです。『即戦力』として・・・」
 瑞穂は『即戦力』という単語に特にアクセントを置いて意味ありげに微笑んだ。
「なるほど、そういうことですか。それならすぐに現場で使い物になるってことですね。」
「いや、男たちのおもちゃにされるんだから、使い物じゃなくて『使われ物』ですよね。ハハハ・・・」
 それまで黙って二人のやり取りを聞いていた後藤が口を挟んだ。
 常田は後藤の下卑た笑い声を聞きながら、改めて目の前の写真に目を向けた。
 ベッド・ドレッサー・ソファ・テーブルなど一通りの調度品が揃っているので、女性の部屋と言えなくもない。だが、よく見るとそれぞれの色合いが濃厚で極めて扇情的な雰囲気がするのだ。しかも、続き部屋になっているクローゼットがかなり広く作られている。 常田は、『特別室』視察時に目にしたクローゼット内を思い出してみた。
 赤・黒・紫・ピンクといった色とりどりの扇情的なランジェリー類、メイド服とかセーラー服などのプレイを目的としたようなコスチューム類、ピンヒールやブーツといった様々な種類の靴類、さらにアダルトグッズと呼ばれる奇妙な器具類などが所狭しと並んでいたのだった。
 男に媚びを売るためだけに化粧をし、男の欲情を煽るためだけにランジェリーやコスチュームに身を包み、男が選ぶ器具に逆らうこともしないで従順に身を任せる・・・そんな「ニンフ」という女性の生き方が見えるようで、常田は思わず、切なさに襲われたことを覚えている。
 しかも、この施設から送られる「ニンフ」は女性でははい。無理矢理女性になることをし向けられた「男」たちなのだ。男でありながら、女として、それも「ニンフ」という最底辺の女として、他の男の力に屈し、その卑しい性欲のはけ口として生きることを余儀なくされる「Nランク」男性の運命を思うと、常田の背筋に冷たい悪寒が走るのだった。

「そう言えば、先ほど慶太のブロック3への移動が近いとかって言ってませんでしたか?」 常田は、ブロック分けの話に集中していて、肝心な慶太のことを忘れかけていた。
「ええ、たぶん、一両日中に移動の許可を出すつもりです」
「と言うことは、これに書いてあるのを見ると、『女性化第一段階』が間もなく終了するってことですか?」
 常田はファイルに目を落としながら質問した。  
 瑞穂は無言のまま、大きく頷いて見せた。
「私が2ヶ月前に見たときは男でも女でもない少年って感じでしたが、女性化ってことはかなりそういう感じになってるってことですか?」
 瑞穂はにっこりと微笑みながら、今度も無言で頷いた。そしてスクッと立ち上がるとテレビリモコンらしき器具を取り出し、左奥に設置されている小ぶりのモニター画面に向かってスイッチを押した。
「こちらをご覧ください。」
 瑞穂は意味ありげな笑みを浮かべながら常田に言った。
 
 モニター画面は一瞬白く明滅した後、一つの文字列を浮かび上がらせた。
 『水瀬慶太 ブロック2 記録』
 
「これは、何でしょうか?」
 常田は画面の変化を追いながら、小さな声で尋ねた。
 やがて文字列が消え、動画映像に変わる。
 そこには、先ほどファイルで見た「ブロック2」の部屋が動画で流れている。
 恐らく、カメラは天井辺りに設置されているのか、部屋全体を俯瞰した角度で収めている。淡いピンクの壁に囲まれた25平方メートル程の部屋であることが見て取れた。
 次にカメラは調度品の一つ一つにズームインしていく。
 壁の色とマッチした淡いピンク色のカバーで覆われたベッド、窓際のスペースに置かれたポインセチアのフラワーポット、壁に掛かったミニチュアダックスフンドの写真、そして部屋の片隅に置かれた白いドレッサーと大きめのワードローブ・・・
 動画で見ているとますます女子高生の部屋に見える、と常田は思った。
 
 一瞬、動画が消えると次に現れたのは、ドレッサーに所狭しと並べられた口紅やアイシャドウといったコスメ類と、その脇の引き出しに一杯に収められた化粧水や乳液といった基礎化粧品類の画像だった。恐らく、よほど特殊なメイクアップをするのでなければ、改めて他に用意する必要のない程の充実ぶりである。
 さらに画像が切り替わる。今度は大き目のワードローブの中が紹介される。
 上段にはブラウス、スカート、パンツ、ワンピースといった様々な種類の衣服がぎっしり並んで収められている。その華やかなカラーバリエーションとデザインの豊富さはまるでカタログ雑誌の広告を見ているかのようである。
 下段の引き出しの中には、ブラ、ショーツ、キャミソール、ストッキング、ナイトウェアなどと言ったランジェリー類とインナー類が立錐の隙間もないくらいに収められている。
 ワードローブに並べて配置されているシューズラックには、スニーカー、ローファー、ミュール、パンプスなどといった靴が溢れんばかりに置かれている。
 これらの置かれた品々を見渡してみると、半数は女子高生という年齢にふさわしく、半数はセクシーな大人の女性向けという印象を受ける。
 もしも何も知らない第三者がここまでの映像を見れば、この部屋の住人を、少し危険でセクシーな香りのする大人の世界に強いあこがれを抱く女子高生だと想像するだろう。
 
 再び、画像が消え、文字列が現れる。
『ブロック2 第1日目』
 部屋全体を俯瞰する映像に変わる。カメラが入口付近にズームインする。
 微かなドアの開閉音と共に、すこし怯えながら入室する慶太を、カメラはしっかりと捉えている。
「これからお見せする映像は、ブロック2における水瀬慶太の記録映像です。変化の過程がダイジェスト的に収められてあります。カメラは室内での慶太の行動を24時間捉えています。もちろん彼はそんなことは知りませんから、行動はすべて彼の心を正確に反映したものと言えます。オリジナルの映像は約2か月という長期間を収めた膨大なものですが、これは期間中に彼の言動が大きく変化したポイントだけに絞って編集したものです。」
 瑞穂の説明中も映像は流れていた。常田は説明に頷きながらも、目は映像を追っていた。

 慶太は部屋中を不安そうな面持ちで眺めている。淡いピンクの壁、明らかに女の子の部屋を意識したような調度品に少し面食らっているようだ。
「うん、これは私の知ってる水瀬慶太と同じですね。」
 常田が視線を上げて瑞穂を見た。
「ええ、これは常田さんがいらしてから数日後のことですから。つまり慶太が自ら、女装したいと言い出した直後のものです。」
 その後、顔を赤らめながら、ドレッサーとワードローブの内部を見つめる慶太の姿を捉えて、映像が途切れた。

『ブロック2 第2日目』
 映像は、ベッドの上で、顔面蒼白になり震えている慶太の姿を映し出す。
 あの「慶花」が夢に出なかったことによる体調の異変である。
 慶太は唇を噛みしめ、小さく頷くとベッドを出て、ワードローブに向かう。
 逡巡しながらも、そこから慶太が選んだものは純白のスタンダードショーツと、同じく白のTシャツ、そして淡いグリーンのパステルカラーのハーフパンツだった。昨日までとは異なりすべてがレディスではあるが、せめてユニセックスに近いものをという意識がそれを選択させたのだろう。
 慶太はそれらを身に着けると、ドレッサーの鏡の前に座る。
 目の前に並ぶコスメ類の中から、ブラックのリキッドアイライナーを取ると、いきなり瞼の際にラインを入れる。その後、アイシャドウ、チーク、そして最後に真っ赤な口紅を引くと、ワードローブ脇の姿見に全身を映し出した。
 慶太の表情に安堵感が広がっているのがわかる。それは震えも止まり、蒼白だった顔に赤みが戻ってきたことでも明らかだった。

「ひどいもんですなぁ。この顔は・・・ハハハ」
 映像を見ていた常田が思わず声を上げた。
 確かに下地もファンデーションもないまま、ただ手当たり次第に塗るだけのメイクである。それはただの「バケモノ」と言った方がいいくらいの出来映えだった。
「ええ、確かにひどいですね、これでは・・・。 でも、彼はこれでも十分心の安堵感を得られたようです。」 
「先生の言う女性化というのはこういうことですか?」
 例によって常田の小ばかにした物言いが始まった。
「まあ、この先を黙ってご覧ください。 
 瑞穂は右の口角を上げて微笑んだ。

『ブロック2 第11日目』
 ドレッサーの鏡の前に座る慶太が映し出される。
 その瞬間、常田はどことなく違和感を感じた。
「彼、ちょっと変わってますよね? どこがって言われるとわかりませんけど。」
 常田の疑問に答えるために、瑞穂は再生を一時停止すると、デスクの上に置いてあった黒革のダイヤリーのページを繰った。
「5日目のカウンセリングの際、水瀬慶太は、女装を始めたことで身体的な変調は少しずつ消えてきたが、鏡で自分の女装姿を見るとあまりに夢の中の自分とかけ離れていて、これでは新たな不安感と喪失感に襲われるような気がして怖い。どうしたらいいだろうかと尋ねてきました。」
「で、どういうアドバイスをしたんですか?」
 常田は一時停止状態になっているモニターに目をやりながら言った。
「いいえ、何も。自分で考えなさいと言いました。欲しいものがあれば何でも用意するけど、何を必要とするかはあなた自身で決めなさいと言いました。」
「ああ、なるほど・・・『自由意志』を持たせるためですね?」
「ええ。 でも、私は次に彼が要求するものの予想はできていました。何しろそれまでのカウンセリングとサブリミナル映像によって「美」=「善」、「醜」=「悪」という概念が無意識の内に植え付けられているのですから、「美」に関するものを要求してくるのは当然のことです。」
「で、何を欲しがりましたか?彼は?」
「メイクアップのハウツー本とファッション雑誌などです。」
「ああ、それでわかりました。まず服装が違ってるんだ。女らしいおしゃれな服に変わってるんだ。んん?でも顔も少し変わっているような気がするけど・・・ これってまだ化粧してないですよね?」
 常田は静止画像に目を凝らしながら尋ねた。
「ええ、ノーメイクですよ まだ・・・。」
 瑞穂は常田の方に顔を向けながら、左手の中指で自分の眉をなぞって見せた。
「んん?あ、ああ、そうか。眉毛だ・・・眉毛がすっきりきれいになってるんだ。」
「ハハハ・・・正解です。眉カットをしています。」
「これ、慶太自身がしたんですか?」
「いいえ、いくらメイクアップのハウツー本を見ても眉カットは簡単にはできません。これは施設内の美容スタッフに依頼したものです。もちろん彼の自由意志によってですよ。ああ、それと今では自分一人で眉カットくらいできるようになってますので、ご心配なく」「ふぅん、なるほど、すごいものですねぇ。」
 常田の口癖が出たところで、瑞穂は再び再生ボタンを押した。
 静止していた慶太が再び動き出す。

 白地に英文字が前面にプリントされたTシャツとペパーミントグリーンのジャガードショートパンツというのが、この日の慶太の服装だった。
 最初、常田が服装の変化に気づかなかったのは、慶太が座っていたからである。 遠目から、座っている慶太のショートパンツを見ると、ちょっと短めに作ったメンズのショートパンツに見えなくもない。だが、近づいてよく目を凝らしてみると、ウエスト部分にはメンズでは見られない共布を使用した極細ベルトが通り、小さなハートのワンポイントも刺繍されていて、レディスであることを主張している。

 つまり、たった10日間で「なるべくメンズに近い地味なデザインの服」から「明らかにレディスではあるけど、フェミニン過ぎない服」へと慶太の嗜好は変化していたのである。 
 その証拠に、画面には見えないが、この時慶太がショートパンツの下に身につけているのは同じペパーミントグリーンのビキニショーツだった。それはどこから見てもレディスのランジェリーとしか見えない小ささで、もしも慶太がいわゆる「巨根」の持ち主だったら、とても全体を隠しきることなどできなかっただろう。幸か不幸か、慶太にはその心配は不要だったが。 

 慶太は必要なコスメ類を驚くほど手際よく並べていく。
 約10日前のおどおどとした態度とは別人である。
 化粧水、下地クリームの基礎化粧品も忘れてはいない。さらにファンデーションもすでに自分の肌色に合わせたお気に入りが決まっているのか、何の躊躇いもない。
 カットされ整った眉をブロウペンシルが際だたせる。
 次にリキッドアイライナーを手にし、ここで初めて躊躇し、元に戻す。そしてペンシルタイプのアイライナーに持ちかえる。カジュアルなファッションにリキッドタイプはきつすぎるという知識もすでに慶太には身に付いているのだった。
 ビューラーで睫を軽くカールさせると、ダークブラウン系のマスカラを巧みに塗っていく。上側の睫だけでなく下側の睫にもマスカラのコームを縦にして器用に塗っていく。

 常田は目を丸くしながら首を何度も横に振ると、ため息混じりの声で言った。
「たった10日でこんなになるものなんだなぁ・・・」
「ええ、これには私も少し驚いているんです。ただ、慶太には『美』に対する脅迫観念のようなものが芽生えているようで、『美』に関する知識は異常なほどのどん欲さで吸収しようとします。これはやはりサブリミナル療法による洗脳が産んだ副産物なのでしょう。
いずれにしても、この頃から現在に至るまで慶太の心には、女性としての『美』の追求こそが生きる目的になっているという印象です。」
「かつては、頭の中はビジネスばかりだった会社経営者が、今は、化粧と美容とファッションだけですかぁ 何か哀れなものですなぁ。」
「いいえ、慶太の頭の中は今はそれだけですけど、もう少ししたらもっと大事な事に支配されるようになるんですよ。その時が本当の『哀れ』ってことじゃないですか?フフフ」
 常田は瑞穂の言葉の意味がすぐに理解できたが、あえて言葉を返すことはしなかった。 彼の脳裏にも、「特殊倶楽部」の「特別室」で、男達を喜ばすためのメイクを巧みな技術で施している慶太の姿が浮かび、そこに残酷な運命を感じたからだった。 

 その後、映像はアイシャドウ・チーク・口紅と流れるような動きで進んでいく。 
 そして完璧なメイクを終えると、慶太はゆっくり立ち上がる。
 この時、始めてショートパンツのデザインが明確になる。
 丈が40センチほどの短さで、しかもシルエットがAラインにデザインされている。
 慶太は、この一見するとミニスカートのようにも見えるショートパンツを自分の意志で選んだのだ。彼の心が女性化に向けて少しずつ変化していることは明白だった。

 ただ、メイクも服装も相当なレベルに達してはいるが、誰が見ても女性というまでには到達していない。その最たるものがヘアスタイルである。耳が半分隠れる長さにはなっているが、女性としてのヘアスタイルにしているわけではない。いくらメイクと服をそれらしくしても、この髪型では台無しである。
 慶太もそのことは気になっていたのだろう。
 もう一度ドレッサーの前に座った慶太の手にはセミロングのウィッグがあった。

 次の瞬間、姿見の前でウィッグをつけた慶太の姿が映像に現れる。
 常田は思わずうなり声をあげた。
「ううん・・これは・・・女に見えなくもないな。」
 瑞穂と後藤は時々目配せをしながら、画面に釘付けになっている常田の様子を黙って見つめていた。


『ブロック2 第25日目』

 ドレッサーの前でフルメイクを終えた慶太の姿をカメラが捉える。
 以前よりさらに洗練されたメイクに仕上がっている印象を受ける。
 ウィッグが、軽くウェーブのかかったミディアムヘアに変わっている。
 ゆっくり立ち上がり、姿見の前に立つ慶太。
 
 トップスは、ベージュのスカラップカラーのレースブラウス
 ボトムスは、ライトブルーのジャガードフレアスカート
 それが、この日の慶太のセレクトだった。
鏡に映る慶太の姿は完璧に仕上がって見える。
だが、次の瞬間慶太は顔を赤らめ、膝上15センチほどのスカートの裾を気にするそぶりを見せる。


「この日が水瀬慶太のスカート初日です。」
 映像を食い入るように見つめる常田に瑞穂が声をかけた。
「ずいぶん決まり悪そうにしてますね?私には完璧に見えますけどね。」
「それが、『女ごころ』っていうものですよ。常田さん。フフフ・・・」
 瑞穂は「女ごころ」という単語を強調して言った。
「恥ずかしいというなら、この前のショートパンツの方がよほど短いし、恥ずかしいんじゃないですかね?」
「長さではないんですよ。ショートパンツと違って、スカートは『女性性』の象徴ですから。それがはっきりと意識できてるんです。つまりスカートを履くことで後戻りのできない道に踏み込んでしまったという気持ちになったのかもしれません。いずれにしても、自らスカートを選択したことで、慶太の女性化の過程が一段ステップアップしたことは確かです。」
「では、この後は順調に女性化が進んでいくわけですね?」
「いえ、そう簡単なものではありません。」

 瑞穂は映像を一時停止すると、手にしたダイヤリーに視線を落とした。
「この翌日でした。慶太が意外な要求をしてきました。男物の下着・ワイシャツ・ネクタイ・スーツ・革靴などです。」
「ええ?それは一体?」
 常田が驚きの声を上げた。
「恐らく、スカートを履くことで、かえって心に葛藤が生まれてしまったのではないかと思われます。簡単に言えば、引き返すならこの時点しかないという思いでしょうか。」
「も、もちろん、拒否したんでしょ?先生?」
 瑞穂は小さく首を横に振った。
「ええ?なぜです? なぜ拒否しなかったのですかっ?」
 常田の声が興奮で一段高くなった。

 彼の脳裏に慶太に対するプロジェクトの失敗、そして結果としての引責、左遷、降格と次から次へと悪いシナリオが浮かんできたのである。
「『自由意志の尊重』というのが最優先ですから。」
 瑞穂は冷静に言葉を返した。
「そ、それはそうですが・・・これでは計画は失敗に・・・」
 瑞穂は常田の蒼白になった顔を見て、内心笑い出しそうな気分だった。
「フフフ・・・大丈夫ですよ、常田さん、心配しなくても。 すべては想定内ですから。」
 瑞穂はリモコンの再生ボタンを押した。
「とにかくこの後を見てください。」


『ブロック2 第32日目』

 スーツ・ネクタイ姿の慶太が映し出される。
 数日間剃っていないのか、髭が少し伸びている。
 ただ、わずかにバサついているとは言え、整えられた眉と、耳を覆う長髪がスーツ姿に若干の違和感を与えている。

「水瀬慶太の『男装』7日目の映像です。」
 瑞穂は心配そうに映像を見ている常田に冷静な口調で告げた。
 彼女は無意識の内に『男装』という言葉を使った。『男装』とは言うまでもなく、女性が男性の姿を装うことである。つまりその後の慶太を知る瑞穂にとっては、彼はもはや男性ではなく女性として認識されているということだ。
 だが、常田にはそんな瑞穂の微妙な言葉のニュアンスに注意を払えるゆとりはない。不満そうな表情でモニターを見つめているだけだった。

 瑞穂は再生を一時停止し、説明を始めた。
「これ以前の数日間はメイクをすることもなく、レディスの服を着ることなく、ただスーツ姿で一日を過ごしています。もちろん、カウンセリングにもスーツ姿でやって来ました。」
 常田の顔にありありとした不満の色が滲む。
(だったら、その時お得意の「洗脳」で慶太の心を変えたらいいじゃないか?)とでも言いたげな表情だった。
 
「そして、部屋ではなるべく女性的な意識から遠ざかろうと考えたのか、戦争ものや冒険ものなどのDVDを観て過ごしていました。ただ、ご存じの通り、彼の意識下には「男性性」イコール「悪」というイメージが植え付けられていますから、例の身体的苦痛がすぐに襲ってきたようです。」
「と、ということはまた『女性化』の道に戻ったとうことですか?」
 常田の顔に一瞬、明るさが見えた。だが、それも次の瑞穂の言葉ですぐに元の暗い表情に戻ってしまったのである。
「いいえ、今回は彼の意志は相当強かったようです。苦しみに耐えながらも、自分から女性化の道へ戻ることはしませんでした。その代わり、彼なりにある方法を思いついたみたいです。それは、自分の中の『女性性』を振り払うために『男性性』を高める行動をとるということです。そしてその最も端的な行動として、彼が選んだのはセックスでした。弱い女性を強引に奪う行為に『男性性』を見い出したのでしょう。おかしな話ですが、彼は真剣にそう考えたようです。ただ残念ながら、この施設内で女性とのセックスは不可能です。常田さん?もしあなたが慶太の立場だったらどうします?」
「うーん、まあ外出許可を取ってどこかの風俗店にでも行くか、施設内の女性職員の誰かと親しくなるか・・・でしょうかね。」
「そのどちらもダメだったら?」
 瑞穂の心理テストのような話しぶりに少し苛ついた常田は吐き捨てるように言った。
「む、無理矢理、誰かをレイプするか、ここを逃げ出すか・・・でしょうっ」
「フフフ・・・まあ、そうでしょうね。元々『男性性』の強い方ならそういう方法を選ぶでしょうね。でも慶太はそうではありません。彼が選んだ方法はDVDでオナニーをすることだったのです。フフフ・・・なんかちょっと哀れな感じですよね。でも、元々『男性性』の弱い慶太なら、それでも精一杯の選択だったのかもしれません。それで、この日付の前日に、彼はアダルトDVDの要求をしました。」
「ほう、どういうものを?」
「細くて華奢な女性を、強く逞しい男性が強引に奪うような激しいもの、というのが彼の要求でした。」
「ふぅん、その男に感情移入すれば男性性を高めることができると思ったわけだ?」
 常田の表情にかすかな笑みがこぼれる。不満よりも好奇心の方が上回ってきたようだった。
「ええ、そうなんでしょうね。それで用意したDVDが・・・」
 瑞穂はそこまで言って立ち上がると、デスクの引き出しから一枚のDVDを取り出して、常田に手渡した。

『THE RAPE』  
 シンプルなケースに英単語だけが記されていた。
「何て書いてあるですか、これは?」
 英語に疎い常田は瑞穂の返事を待った。
「『RAPE』つまり、『強姦』です。」
「あ、レイプ・・・ですね。で、どんな内容なんです?」
 瑞穂は常田の心が好奇心だけに満たされているのがわかった。
「短いものですから、ご覧になります?」
「ええ、ぜひとも。」
 瑞穂の口元に笑みを湛えながらの誘いに、常田も同様の笑顔で答えた。


 ガラステーブル上のノートPCのスクリーンに『THE RAPE』の文字が浮かぶ。 すぐに画面が切り替わり、小柄な白人の美少女が人影もまばらな郊外を一人歩いている姿が映し出される。アメリカのハイスクール生らしい制服と、ブックバンドでまとめられたテキスト類から判断して、学校からの帰り道を想定しているらしい。ただ制服は一般的なスタイルのものではない。白のブラウスと赤黒チャック柄のスカートという体裁は取っているが、ブラウスの丈は短くウエスト周りを露出しているし、スカートの丈は歩くたびに白いショーツが見え隠れするくらいの短さだ。ただそんなリアリティのない制服にも関わらず、少女のいたいけな表情と、ほっそりとした華奢なスタイルが女子学生らしいリアリティを持たせている。 
 カメラは美少女の後ろ姿を追う。角を曲がり人影のない路地に入る。少女の履くヒールの音だけが響く。
 と、その瞬間、少女の腕を大きな黒い手がつかむと、そのまま奥へと引きずり込む。
 泣き叫び、手足をばたつかせる少女。
 男の顔がアップになる。
 黒人の中年男だ。左の頬にナイフか何かの傷跡が残っている。
 カメラが男の全身を捉える。2メートル近い大男だ。胸板も厚く、筋肉の固まりといった体型だ。
 男は怯えながらも泣き叫ぶ少女に一発平手打ちを食らわすと、小さな身体をひょいと抱き上げ、そのまま裏の倉庫まで連れていく。
 
 それからはただひたすら陵辱の繰り返しが映し出されていく。
 服を脱いだ男の黒々とした筋肉隆々の身体に比べて、少女の白く華奢な身体が哀れなくらいに対照的だ。
 しかも男のペニスは文字通り「馬並み」と言えるくらいの巨根である。
 これで貫かれたら少女のか細い身体は壊れてしまう。
 そんな想像を観る者に感じさせる。
 
 数回の平手打ちの後にぐったりとなった少女の口に男はペニスとは言えないほどの「大木」をつっこむ。少女は苦しさの中で吐き出そうとするが、男の力の前では無力である。
 やがて、少女の口中に大量のザーメンが注がれる。
 ぐったりする少女。だが黒人男は全く疲れをしらない。
 そのまま少女の身体にのしかかると、小ぶりな乳房を荒々しく弄び、まだ半ば放心状態の少女のヴァギナめがけて、「大木」を貫く。少女の叫び声の中、男は激しく腰を動かし、一気に絶頂まで登り詰める。

 その後、レイプシーンは様々なバリエーションで展開する。
 そしてラストシーンでは、すでに5回目の射精でありながら、信じられない位の大量のザーメンが、涙に濡れる少女の美しい顔にぶちまけられる。
 
 「END」の文字が浮かび上がる。


 DVDを見終えると、常田は一つ大きなため息をついた。
「なぜ、こんなDVDを見せようと思ったんですか?外国製で言葉もわからないものを。」
 瑞穂はニコリと微笑んでから、ゆっくり口を開いた。
「それには、いくつかの理由があります。まず慶太がアダルトDVDを要求した時、私はこれは慶太の精神面の変化を確認するために、またとない機会だと思いました。洗脳と精神操作によって、彼の本能的な性衝動がどういう形に変わっているのかを知ることができるからです。それには、先入観の抱きにくい外国人が出演しているものの方がいいと考えました。ストーリー性のない物を選んだのもそのためです。」
「ふぅん、そんなもんですかねぇ」
 また常田の口癖が出た。
「で、どうだったんですか?これを受け取った慶太は実際にこれを使って、オナニーしたんですか?」
「ええ。でもそれは予想以上の結果になりました。とりあえず、映像の続きを見てください。」
 瑞穂はモニターの一時停止ボタンを解除した。
 スーツ・ネクタイ姿の慶太が再び動き出す。

 慶太は、ケースからDVDを取り出すと、プレイヤーに差し込んだ。
『THE RAPE』のタイトルが浮かび上がり、すぐに映像が始まる。
 慶太はスーツのズボンを脱ぐと、ワイシャツとトランクスだけの姿でベッドの端に座り、DVD映像を見つめている。
 天井のカメラからは、慶太の背中が少し邪魔になるが、何とかその下半身を捉えることができている。
 映像が進み、黒人の大男が出てくるころには、慶太の右手は男物のトランクスの中に伸びていた。
 さらに映像が進む。それに伴って慶太の右手の動きも慌ただしさを増している。
 トランクスも脱ぎ、下半身を露出する。慶太の貧弱なペニスはまだエレクトしていない。

 映像は進み、いよいよ大男が女性を蹂躙するシーンである。
 慶太は未だに萎えているペニスを小刻みに刺激する。
 いやがる少女を力づくで犯すシーンが続く。
 だが、慶太のペニスは全く反応を示そうとしない。
 そして大男の「大木」が何度もアップになり、少女のか細い身体との対比が強調される場面まで進むと、慶太は右手をトランクスから離して首をうなだれた。
 その後、陵辱シーンは続くが、最後まで慶太のペニスに硬度が増すことはなかった。
 

「結局、目的は果たせなかったってことだな。それにしても、あの若さでインポだとはなぁ・・・。 私なんて、さっきDVD見てただけで、かなりムラムラしちゃって・・・何しろあの女の子かなり可愛いし・・・あ、失礼、女性にこんなこと言ってしまって  ハハハ・・・」
 常田の下品な話にも、瑞穂は全く動じる様子は見られない。
「いいえ、気になさらないでください。仕事柄、何でも正直に話されるのは慣れてますから。 ただ、一つ。水瀬慶太はインポではありませんよ。」
「いや、そんなことはないでしょう。男だったらあんな可愛い子が犯されているシーン見て勃たないやつはいないでしょう。 ハハハ」
「フフフ それは常田さんがあの黒人男性に感情移入できる『通常の』男性だからです。」
「彼は通常ではない・・・ということですか?」
「ええ。もしかしたら慶太自身も以前は常田さんと同じように、あの黒人男性に感情移入することができたのかもしれません。『通常の』男性として。でも、それは上辺だけのことで、潜在的には『通常』ではない要素が大部分を占めています。それは「Nランク」男性としての彼のデータがはっきりと示しています。その隠された部分を表面化させたのが、この施設での精神操作だということです。」
 常田は瑞穂の説明に黙って頷いてはいるが、心から納得しているわけではないことが、その表情から見て取れる。

「失礼ですけど、常田さんはセックスはお強い方ですか?」
瑞穂は常田の懐疑的な思いを感じ取り、笑みを浮かべながら質問した。
「ええ、まあ、かなり強いと思いますが・・」
「サイズ的にも恵まれてらっしゃいます?」
 瑞穂のあけすけな質問にさすがの常田も顔を赤らめた。
「まあ、かなり大きい方だと思いますが・・・もちろんあの黒人ほどじゃありませんが。」
 瑞穂は大きく2回頷くと、真顔になって口を開いた。
「いいですか? 水瀬慶太は体格も小さく細い。そして精子の数も少なく、性的にも弱い、ペニスのサイズもごらんの通りです。そのことをこれまでの精神操作によって強く再認識させられているのです。そんな男性があの怪物のような黒人男性を見て、感情移入なんてできますか? 劣等感しか感じないでしょう。もしかしたら、自分には女を犯す能力も資格も権利もない、そんな考えさえ抱くかもしれません。」
「それはそうでしょうね。私もそう思いますよ。だからさっきも言ったけど、インポになってしまったんだと、そういうことでしょ?」
 瑞穂はフッと声を出して笑った。
「実は私も最初はそう思いました。ここでの精神的操作によって、性的に不能になったのだと。ところがそれは全くの誤解でした。慶太はこの後3日間、同じようにスーツ・ネクタイ姿で自慰を試みています。けれど、結果は同じでした。ところが3日目の真夜中にこういう映像が撮れたのです。」
 瑞穂はそう言うと、モニター映像の一時停止を解除した。


『ブロック2 第35日目』

 就寝中の慶太が映し出される。
 暗闇の中なのでほとんどシルエットしか撮れていない。
 突然ごそごそという音と共に部屋のライトが点灯する。
 ベッドに座り込んでいる慶太の姿が映る。何かに当惑している表情だ。
 慶太は右手をパンツの中に伸ばす。そしてすぐに手を引き戻す。
 指先のテラテラとした輝きが、カメラからも認識できる。

「んん?これは・・・・?」
 常田の声にならない声が、出来事の意外性を物語っている。
「はい、いわゆる『夢精』ですね。 慶太は夢精をしています。」
「ああ、やっぱりそうですか。ちょっと意外だったものでわかりませんでした。ああ、なるほど、先生は夢精があったから慶太は不能ではないとおっしゃりたいんですね?」
「ええ、そうです。 ただ・・・・」
「ただ?」
「問題はこの時慶太が一体どういう夢を見てたのかということです。」
「どういう・・・夢?」
「はい、つまり慶太がどういう状況に性的興奮を覚え射精にまで達したのかが、夢によってわかるということです。」
「ほう、で、慶太はどういう夢を見てたのですか?」
「はい、それは翌日のカウンセリングの中ではっきりしました。とても大事なやり取りでしたので、こちらの編集版にそのまま入れてあります。よくごらんになってください。」
 瑞穂はそう言うと、リモコンの早送りのボタンを押した。


『ブロック2 第36日目(カウンセリングルーム5)』

 スーツ姿の慶太と瑞穂がソファに座っている。いつものカウンセリングの位置である。
「どうかしら?あのDVD気に入った?」
「はい・・・まあ。」
 いつもにもまして慶太の声は小さい。
「うん?あんまりはっきりしないわね。いいのよ、カウンセリングなんだから恥ずかしがらなくて。」
「あ、あの・・・オナニーは・・・できませんでした。」
「ああ、そう。気に入らなかった?あのDVD? でも慶太くんの要望通り、か細い女性を屈強な男が襲う内容だったと思うけど。」
「あ、はい・・それはそうなんですけど・・・」
「じゃあ、あれから射精はしてないってこと?」
 慶太は無言のまま俯いている。
「うん?どうしたの?射精はしてないんでしょ?」
「あ、あの・・・実は・・今朝・・・」
「うん?オナニーしたの?」
 小さく首を左右に振る慶太。
「もしかして・・・夢精?」
「は・・・はい。」
「そう。で、どんな夢だった? やっぱり、慶太くんが、か弱い女の子を犯すような夢?」
 首を左右に振る慶太。
「じゃあ、どういう夢?」
 瑞穂の顔が興奮で紅潮している。
「あの・・・また夢の中に『慶花』が出てきて・・・それで、あのDVDの女の子みたいな制服を着て、あの大きな黒人の男に・・・」
「え?犯されたってこと? 慶太くんが女の子の『慶花』になって犯された夢をみたってこと?」
 視線を落としたまま小さく頷く慶太。
 しばらく沈黙が流れる。
 何かを思いついたのか、瑞穂の目が一瞬キラっと光る。
 そして口元に微笑を湛えながら俯く慶太を見つめている。

「ねえ、慶太くん。これは、ちょっと問題かもしれないわ。」
 視線を上げ、瑞穂の方を向く慶太。
「あなたは、今、男性に戻ろうとしているのよね?だからスーツを着たり、アダルトDVDを要求したりしたのよね?」
 黙って頷く慶太
「それなのに正反対の女の子になって、しかも強い男性に犯される夢を見て、射精してしまう。 これは理性だけで男性への回帰を無理強いしようとするために、心の統一が崩れてしまっているんだと思うの。これはとても危険なことよ。早く治さないと取り返しのつかない結果に繋がる可能性があるわ。」 
「ど、どうしたら・・どうしたらいいんですか?」
「うーん、本当の慶太くんの心の統一を取り戻すために、まず男性へ回帰しようとするバカな行為はすぐにやめて、以前の慶太くんの生活に戻ること。」
 瑞穂の断定的な物言いに、黙って頷く慶太。
「その上で、一定の期間、人格の統一を図ること。」
「人格の・・・統一?」
「今、慶太くんの心の中には、男としての『慶太』という人格と、女としての『慶花』という人格が存在しているの。それが心の統一を崩している一番の原因よ。だから、これから一定期間ずつどちらか一方の人格だけを意識して過ごすこと。その時にもう一方の人格が現れなければ、そちらの人格が本当の慶太くんということになるでしょ? わかる?」
「は、はい・・・何となく。」
「フフフ・・・いいわ。何となくでもわかってくれれば。それでこの数日は男の『慶太』として過ごしてきたわけでしょ?」
 小さく頷く慶太
「でも夢の中に『慶花』が現れて邪魔をした。それも性的な部分でね。だから、今度は意識的に『慶花』として5日間過ごすの。それで、もし『慶太』が現れて邪魔をしたら、まだどちらの人格が本当の慶太くんかは判断がつかないけど、逆に『慶太』に全く邪魔をされずに過ごせたら、それは・・・」
「『慶花』が本当の・・・僕ってこと・・・ですか?」
「ええ。そういうことになるわね。」
「そうなったら・・・せ、性転換手術とか・・・しないといけないんですか?」
「アハハ・・・それは別問題よ。手術なんてしないで女装だけで過ごしたっていいじゃない? だからそういう結果が出ても、今までとあまり変わるわけじゃないわ。むしろ心の統一が得られてすっきりするはずよ。でしょ?」
「そ、そうでしょうか?」
「そうよ。先生を信じなさい。」
「は、はい・・・」
 不安からか慶太の声が微かに震えている。

 ここで一旦映像が切り変わる。
そして一瞬の後、再びカウンセリングルーム。
 瑞穂の膝の上にノートが置かれ、右手にはワインレッドのボールペンが握られている。
「じゃ、慶太くん、正確に答えてね。慶太くんの夢の中に出てきた『慶花』像をきちんと再現しないと意味がないんだから。隠したり嘘をついたりしないでね。いい?」
「は、はい・・・」
「まずは、お洋服からね・・・どんな服だった?夢の中の『慶花』ちゃんは?」
「あ、あの・・・制服でした。DVDの女の子と同じような色の・・・でもあんなに短くなくて・・・このくらい・・・」
 慶太は自分の太股のちょうど中央くらいの位置を示した。
「あ、そう。白のブラウスとチェック柄のミニスカートね。」
 瑞穂はニヤニヤしながらノートに書き留める。
「髪型は?」
「ロングのツインテール・・・でした。」
「あら、可愛いのね。お化粧は?あ、それは慶太くんに任せるわ。メイクするのは慶太くんだからね。フフフ・・・」
 瑞穂のいかにも楽しそうな笑い声が続く。
「あとこっちで準備しておくことは・・・と、あ、そうそう『慶花』ちゃんは、高校生よね?どんな高校生? ええと・・・性格とか、癖とか。」
「あの・・・大人しくて、引っ込み思案で、恥ずかしがり屋で、泣き虫で・・・」
「フフフ・・・今時そんな女の子なんてなかなかいないわね。 ねえ、これって慶太くんの潜在的な願望なんじゃないかしら。そういう女の子になりたいっていう願望。」
「そ、それは・・・絶対に・・・違います」 
「フフフ・・そうかしら? まあでもいいわ。そのうちわかるから。」
 瑞穂が何やら意味深長な言い方をする。
「じゃ、これで準備するわね。それからもう一度確認だけど、5日間は本当に自分を『慶花』だと思って、他のことは何も考えちゃだめよ。そうしないと本当の自分を確かめることにはならないからね。」
 瑞穂の強い口調に、慶太は小さく2回頷いた。


 瑞穂は再び、一時停止ボタンを押した。 
「慶太は、そんな夢を見ていたのか・・・」
 常田は呟くように言った。
「ええ、私も最初は驚きましたが、彼のこの時の心理状況を考えれば、こういう夢を見ることは十分あり得る事だと思います。」
「ところで、先生、映像の中で慶太にお話になっていることは全て本当のことですか?」
「フフフ・・まあ、真偽半々といったところでしょうか。ただ全体としてはうまく誘導できたなと思ってますけど」
「なるほど。それで、この後慶太は『慶花』として5日間を過ごしたのですか?」
「ええ。準備には少し時間がかかりましたが、しっかりと『慶花』を演じきりました。」
「そ、その・・・映像はないんですか?」
「フフ・・ご覧になりたいですか?」
 瑞穂は、常田の言葉に『慶花』への好奇心を感じとり、ほくそ笑んだ。
「ええ、まあ。」
「では、お見せしましょう。これは『慶花』になって5日目、つまり最終日ですが、ここでまた大きな出来事がありました。よく見てください。」
 瑞穂はそう言うとリモコンの一時停止を解除した。


『ブロック2 第45日目』
  
「こ、これは・・・すごい・・・」
 常田は思わず驚嘆の声をあげた。
 文字が消え、画面に現れたのが想像を遙かに超えた美少女だったからだ。
 
 白いシルクのブラウスに赤黒のチェック柄のミニスカート。
 それはアメリカのカトリックスクールの制服を思わせる。
 あのアダルトDVDの少女役の女性が着ていた物と色合いは同じだが、丈の長さが全く違う。ブラウスはスカートの中にきちんと収まる長さだし、スカートもミニ丈とは言え、十分に実用に供することのできる長さである。そのバランスがとても上品で、今日のメイクとマッチしている。
 そのメイクは透明感のある仕上がりで、淡いマロンブラウン系のシャドウとローズピンクの口紅が、少し背伸びした女子高生という印象を醸し出している。しかも制服であることを意識しているのか、睫毛はビューラーで軽くカールした後、上睫毛だけに透明のマスカラを施し、睫毛の長さのみを強調するというテクニックまで使っている。これが数ヶ月前まで企業経営者であった35歳の男性にできる技なのだろうか。
 それに童顔だとは言え、ロングのツインテールというおよそ少女にしか似合わないようなヘアスタイルに、全く違和感なくフィットしているのだ。
 常田が慶太の美少女ぶりに驚嘆の声を上げたのも無理からぬことだった。

「可愛いでしょ? 常田さん フフフ」
 瑞穂が常田の顔をのぞき込むようにして言った。
「う、うん・・・確かに。」
 常田は映像から目を離そうとしない。
「それに、部屋の造りが高校生位の感じだから、よりフィットしてますよね。」
 瑞穂はうれしくて仕方ないらしい。顔のほころびが消えないのだ。

 カメラは慶太の部屋の中での行動を捉えている。
 少し肌寒いのか、薄手のカーディガンを羽織るとベッドの端に腰を下ろし、ファッション雑誌に目を落とす。脚を斜めに流すような大人の女性らしい姿勢ではなく、ただ内股に脚を閉じている姿がかえって初々しくさえ感じさせる。

「こういう座り方とかはどうやって覚えたんでしょうか?」
 常田は不思議そうに言った。
「いえ、特別なことではないでしょう。男性でも瞬間的に内股で座ることもあるでしょう。それを見て女性的だとは誰も思いませんが、今の慶太の場合、外見上女性にしか見えませんからそんな小さな動きさえ、女性的という印象を与えるんだと思います。」
「なるほど、特別に仕草とかを身につけているわけではないんですね。」
「ええ、それはもっと先のブロックで身につけることになりますから。」   
 
 映像は一瞬切り替わり、時間が経過したこと示している。
窓の暗さから、どうやら夜になっているらしい。
ベッドに入って読書している慶太の姿が映し出される。
 服はパジャマに替わっている。もちろんレディスのパジャマだ。
 薄いイエロー地に大きめのフラワープリントが施された少女らしいデザインだ。
 ロングのツインテールのウィッグはそのままである。恐らくこの5日間は外すことが許されていないのだろう。
 ノーメイクに戻ると、さすがに少女の面影は消えている。
 ただ童顔な上に眉が整えられているので、35歳の男性にはとても見えない。せいぜい20歳台前半の「男の子」というイメージだ。そしてそのイメージは、華奢な体つきと合わせた見た時、さらに年齢にして5歳は若返らせ、性別も「ユニセックスの少年」へと変わっていく。

 この後、映像は暗くなり、微かな光の中で慶太の就寝中の姿が捉えられる。
 寝息の深さから判断して、就寝してからかなりの時間が経過していることがわかる。
「んん、んー」
 突然、沈黙を破る、微かな声がモニターから流れてくる。
 そして、次の瞬間、微かなうめき声は明瞭な声となって常田の耳に届いた。
「い、いや・・・やめてぇ・・・」
 それは紛れもなく慶太の声である。
 
 常田は思わず、瑞穂の方に視線を向けた。
 だが、瑞穂は全く動じる様子を見せない。それどころか、笑みを浮かべながら小さく頷いて見せた。

「お、お願いやめて・・・だ、だめぇ・・・」
 慶太の声はよりはっきりした叫び声に変わる。
 そしてベッドのきしむ音と衣擦れの音に混じって、暗闇越しにベッドが動いているのがわかる。
 
 やがて、その音が静まると、突然映像に光が差す。
 部屋のライトが点灯したのだ。
 ベッドに、上半身だけ起こした慶太の姿がはっきりと映し出されている。
 右手をパジャマのズボンの中にゆっくりと差し込んでいく。
 慶太の深いため息が聞こえる。
 と、同時にカメラが捉えていたのは、慶太の右の指先に光る粘着性の液体だった。

 常田は、自分の目に映った光景に間違いがないかを確かめるために、視線を瑞穂に送った。
「ええ。夢精です。」
 瑞穂はそれだけ言うと、再び一時停止のボタンを押した。
「これが、先生の言う大きな出来事ですか?」
「ええ、そうです。とても大きな出来事です。慶太にとっても、私たちにとっても。」
「しかし・・・夢精は前にもあったでしょう? なぜそんなに重大な事と言えるんですか?」
「常田さん、今、慶太はどういう夢を見ていたと思いますか?」
 瑞穂は常田に事の重大性を気づかせるために、あえて質問で返した。
「それは、恐らくあの寝言から言って、誰かに犯される夢でも見たんでしょう。」
「ええ、そうですね。あの悲鳴は、夢の中で『慶花』があの大男に犯されて発したものでしょう。だとしたら、これは大きな出来事と言えないですか?」
 瑞穂は常田の反応の鈍さに少々いらいらした表情を浮かべた。
「うーん、よくわかりませんねぇ。前回も今回も同じように、犯される夢を・・・あ、ああ、そうかっ!」
 常田は大きな声を上げた。
「フフフ・・・お分かりになったようですね。」
「はい。何か慶太の姿があまりに違和感がなくなっていたので、女として夢を見ているのが、つい当たり前のように感じていたんでしょうかね。ハハハ」
 常田は相好を崩して言った。

「お分かりのように、前回は男の『慶太』として過ごしていながら女の『慶花』として夢を見たわけですが、今回は女の『慶花』として過ごしている中で、やはり『慶花』として同じ夢を見た。つまり今回は人格の統一性があるということです。そしてそのことは、彼の本来の姿が・・・・」
「女の『慶花』である・・・ということですね?」 
 常田は瑞穂の言葉を遮って話を継いだ。
「ええ。カウンセリングで私が話したことで、少なくとも彼はそう思ったはずです。」 
「では、この後、いよいよ慶太自身が納得した形での『女性化』が進んだというわけですね?うーん、ホッとしました。アハハハ」
 常田の満足げな笑いは途切れることはなかった。慶太のプロジェクトが順調に進行することで自らの引責の可能性がなくなった事への安堵感がその源となっているのは明白だった。

「残念ながら、そう決まったわけではありませんよ。」
 瑞穂は常田の笑いが一旦途切れるのを待ってから冷静に言った。
 常田の表情から笑顔が消えた。
「ど、どういうことでしょうか?」
「慶太が自ら、女性化への道に踏み出す決心をするかどうかは、今日これからの彼との話で決まるということです。」
 常田は無言で瑞穂の顔を見つめている。次に、彼女の口から発せられる言葉が、少なくとも自分にとって良い話であって欲しいと願いつつ。

「実は、彼はこの夢精の事実を、私との面談した際に隠しています。それは逆に『慶花』としての夢だったことの証でもあるわけです。なぜなら、彼はいまだに女性化に踏み切ることを恐れていますから、もし『慶太』としての夢だったなら、私に迷わず伝えるはずです。ただ、彼が自らそれを認め、自分の本当の心は『慶花』であり、だから女性化への道を進むと言わない限り、次の段階に入ることはできません。」
「ということは、やはり慶太の女性化はうまくいってないということですか?」
 常田の声に再び落胆の色が滲む。
「いえ、私はこの事実を逆に利用したいと思っています。慶太は今、私に重大な事実を隠していることで相当な重圧を感じているはずです。その証拠に、この日以後のカウンセリングではほとんど私の目を見て話すことができなくなっています。ですから、その点を利用して、ここはある程度強引に彼の心の中を引き出してみたいと思っているんです。」
「そ、それは『強制』ということではないのですか?」
「いえ、最終的には彼の判断に委ねます。ですから『強制』というよりは『誘導』と言えるかもしれません。」
 瑞穂はそう言うと、心配そうな表情を浮かべている常田に手書きのメモを渡した。
 そこには約2時間後に予定されている慶太とのカウンセリングに関しての大まかな内容が書かれてあった。  
 
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プロフィール

サテンドール

Author:サテンドール
=============================================
女性化小説なら国内・海外を問わず大好きです。

特に屈辱系・羞恥系・強制系・寝取られ系・立場逆転系・年齢退行系・SISSY系などなど・・・。

happy よりは、unhappy ending が好み。
(ちょっと、性格がゆがんでるのかも^^)

私事ですが、以前某サイトに 
「高野奈緒美」のペンネームで
『ある性転者の告白』という拙い小説を掲載させて頂いておりました。事情があって途中で掲載を止めましたが、その完結編も当ブログでご紹介できればと思っています。

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