FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

N/Nプロジェクト 第12章

〔第12章〕

「第3労働者収容所」内の集会場には、約50名の受刑者と監督官7名が集まっていた。受刑者たちは収容所の所長からのある発表を、今や遅しと待ちわびていた。

 およそ1か月前、同じこの集会場で所長からある報告があった。
 それは、要約すれば次のようなものだった。
《約ひと月後、所内「特殊倶楽部」に新たにニンフがやって来る。これまでのニンフと違い、正式な性別は男であるが、容姿、言動、仕草、振る舞い、意識、精神状態、いずれをとっても本物の女性以上に女性らしい。身体の方はほぼ女性だが、小指の先程に矮小化したペニスが残っている。外見はどこかの深窓の令嬢のようだが、セックステクニックはこれまの女性ニンフたちと比べてもトップクラスである。ただ、アナルセックスだけは、ディルドウを使った訓練だけで、実践の経験がない。つまりバージンであるということだ。
 そこで、「彼女」のロストバージンの相手を務められる恩恵を一名の者に付与したい。その者への恩恵はそれだけではなく、「彼女」の恋人として、今後無期限に「特別室」でのプレイが可能になる。これは芝居や演技ではなく、「彼女」も本気で恋人と接するようになるはずである。なぜなら、「彼女」にはロストバージンの相手を恋人として心から崇拝するよう心理操作がなされているからだ。
 ついてはその一名の人選であるが、これからひと月間の働きぶりを見て決めることとする。ぜひこの恩恵を目指して、より一層労働に励んでもらいたい。》

 この所長の言葉を聞いて多くの受刑者は目を輝かして、意欲満々の笑みを浮かべてはいたが、中にはさほど気乗りのしない表情を受かべる者もいた。
 その表情からは(いくら外見を取り繕ったって、所詮男ではないか、そんなやつのためにがんばれるかよ)という声が聞こえてきそうだった。だが、そんな彼らも新ニンフのプロフィール写真を見ると様子が一変した。
 顔のアップ写真と上品なワンピースを身に纏った全身写真を見ると、本当にこんな清楚で上品な令嬢がニンフとしてやって来るのだろうか、いやその前にこの美女が本当に男なのかという根本的な疑問を抱かずにはいられない。それほど「彼女」の美しさは際立っている。
 さらに全身ヌード写真の衝撃はすさまじいものがあった。小柄で小顔、そして華奢な手足で着やせして見えた身体は、服を脱ぐと豊満で形のいいEカップのバストとキュッっと括れたウエストと脂の乗った丸みのあるヒップが完璧なプロポーションを作っている。しかも写真撮影がよほど恥ずかしかったのか、うっすらと頬に赤みが差している。その姿は飢えた男達の陵辱欲を刺激するのに十分だった。
 だがその場にいる全員の目と耳を釘付けにしたのは、「彼女」からのPRビデオだった。
それが大型テレビモニターに映し出されると、彼らは息を呑んで見つめた。

『みなさん、初めまして。私、慶花と申します。近く皆様の元へ参りますので、その節はどうぞよろしくお願いいたします。私、今、先生達の力をお借りしていろいろなことをお勉強させていただいています。皆様の元へ参る時にはきっと皆様にご満足いただけるようになっていると思います。その節はぜひ一度ご指名くださいね。では、その日を楽しみに・・・ごきげんよう。』
 受刑者達はこの時初めて「彼女」の名を慶花だと知った。
 上品な口調と癖のないイントネーション、そして高すぎず低すぎず、心地良い響きを持った声。それらが姿勢の良さと時折見せる優美な仕草と相まって、慶花のイメージを完璧な「深窓の令嬢」に重ねていた。
 男達の中には、もはや慶花の本当の性を気にする者はいなかった。
 今まで自分たちが遊んできたニンフたちの中で慶花ほど女らしい女はいただろうか。
 慶花ほど、恥じらいの似合う、上品な女はいただろうか。
 慶花ほど「高嶺の花」と思わせる女はいただろうか。
 そしてその美しい花びらを散らし、陵辱し、汚したいと思わせる女はいただろうか。
 彼らの心に浮かんだ答えは「NO」だった。

 PRビデオが終わると、彼らの中には監督官に許可を取って途中トイレに立つ者が数名いた。そんなことは、これまでの集会中にはなかったことだ。
 慶花の姿に性欲の高ぶりが抑えられなくなり、トイレで自らを鎮めるための行動であったのは明らかだった。
 
 集会が終わった時、約50人の男たちの思いはひとつだった。
「慶花のロストバージンの相手は自分だ。」という思いである。そしてその思いは確かに全体の作業効率のアップという形で現れた。その意味では当局の目論見は正しかったと言える。

 こうして50人の男達は慶花の「オンリーワン」になるべく、約ひと月間の「競争」を繰り広げたわけだが、もちろんそんな出来事があったことなど慶花には知るよしもなかった。
 だが、「第3労働者収容所」内には、慶花の知らないもっと大切な重要事項が存在していたのである。
 何と50人の男達の中に、「山村直也」がいたのである。
 山村誠也の弟で、かつて社員時代に会社の重要なレシピをライバル企業に横流ししようとしたことが露見し、社長の「慶太」から解雇され、その後荒んだ生活から犯罪に手を染め逮捕されるに至った、あの山村直也である。
 彼がいまだに「慶太」を逆恨みしていることを思えば、慶花にとってはもっとも会いたくない人物だと言えるだろう。
 幸い、現在の慶花を見て「慶太」の面影を見いだすことはできない。現に写真やPRビデオを目にした直也にとって、慶花は何としても陵辱したい魅力的な「女」であるに過ぎなかった。慶花の本当の性が男であるという情報が付け加えられても、その思いに変わりはなかった。まして慶花が本当は「慶太」ではないかなどという疑いは意識の片隅にもなかった。

 だが、運命の神は時として残酷な仕打ちをするものだ。
 50人の男達の期待感に溢れた表情を前に、収容所長が淡々として口調で述べた名前が、何と「山村直也」だったのだ。
 この瞬間、慶花の運命の歯車がまた大きく動き出すこととなったのである。

****************************************

「第3特殊倶楽部」は「第3労働者収容所」の敷地の外れに建っていた。
 外観は一時代前の旧貴族の「屋敷」を連想させるような建物で、遠くに見える「労働者収容所」の味気ない建物とは不釣り合いな印象だ。
 玄関前には「特殊倶楽部」を連想させるような目印は皆無で、車でこの場所まで連れてこられ、一人降ろされた慶花は、場所が間違っているのではないかとさえ思った。
 だが、そこが間違いでないことは、車の音を聞きつけて一人の女性が出迎えのために玄関先に現れたことから明らかだった。
 40代前半から半ばにかけてと思しき、やや小太りのその女性は自らを沙樹と名乗り、握手を求めた。
 慶花はその求めに応じ右手を出すと、緊張に震える声で「慶花と申します。」と名乗った。
「ええ、聞いてるわ。私はこの特殊倶楽部の責任者で、通称マダムと呼ばれてるの。あなたもそう呼んでもらってかまわないわ。わからないことは何でも聞いてちょうだいね。」
 沙樹は優しい笑顔でそう言うと、慶花の背中を軽く押し建物の中へと導いた。
 
 慶花は思わず立ち止まった。建物内部は外観の屋敷然とした雰囲気とは異なり、一見して大人の社交場の様相を呈していた。
 玄関を入って右奥にはバーカウンターがあり、その近くには小さなステージとそれを取り囲むようにテーブルと椅子が配置されている。左側に目を転じると、プレートに「娯楽室」と書かれた大きめの部屋があり、遠目からでも、ビリヤードテーブルやダーツ、それにカードテーブルなどが見える。その娯楽室の横には小さなブース状の小部屋が5つほど並んでいて、プレートに「鑑賞室」と記されてあった。
「ああ、あれはビデオとかDVDを鑑賞する部屋よ。『特別室』はもちろん、『一般室』の利用もできない男だって、『溜まってる』ものは出したくなるでしょ? フフフ・・・」
 慶花が「鑑賞室」に怪訝そうな視線を送っているのに気付いた沙樹は、自ら説明した。

 慶花はこの時初めて、「特殊倶楽部」の基本的システムを沙樹から知らされた。
 50名の労働者は25名ずつの2班に分けられ、それぞれ「特殊倶楽部」の利用が月の偶数日と奇数日に指定されていた。25名の中で3名の「優秀勤務賞」受賞者のみ、「特別室」でのプレイが許される。残りの22名にも「一般室」でのプレイは許されるが、ひと月の間に重大なミスがあった場合、また勤務態度に問題があった場合には「一般室」でのプレイも許可されない。沙樹の言う「鑑賞室」の利用はそういった者達のことを指していた。
 補足的に付け加えると、「特別室」でのプレイ内容は原則的に無制限で、時間も夜から朝までと長い。一方「一般室」でのそれはいわゆる「個室マッサージ」レベルで「本番」は禁止、時間も一人60分と制限されている。
「特殊倶楽部」内には、「特別室」が3部屋、「一般室」が5部屋設置されている。これらはプレイのみに使用されるわけではなく、ニンフの生活スペースも兼ねていた。従って倶楽部には部屋持ちのニンフが8名、部屋を与えられないニンフが2名の計10名が在籍していた。今でこそ彼女たち全員を「ニンフ」と称するようになったが、元来、ニンフとは「特別室」を受け持つ、容姿・テクニック・人間性とも優れた娼婦のみに与えられる名称であり、その他の娼婦は「コンパニオン」と呼んでいた。そういう意味では特別室担当の慶花はれっきとした「ニンフ」だと言える。 

 慶花の「特別室」は2階の最も奥にあった。
 重厚な木目のドアには金属製のプレートが貼り付けられてあり、そこに金文字で『NYMPH KEIKA』と綴られてあった。ヒップ脇のタトゥーと同じ書体である。
 沙樹に案内されるまま室内に足を踏み入れた慶花の目には見慣れた光景が飛び込んできた。雰囲気といい、広さといい、並んでいる調度品といい、昨日までいた施設のブロック5にあった部屋と何から何まで同じだった。慶花は一瞬、施設に戻ってきたのではと錯覚したくらいである。 
 
「ここがこれからのあなたのお部屋よ。寝起きはもちろん生活のすべてをここですることになるの。食事は定期的に運ばれるので心配しなくて大丈夫。それから、不審者の進入を防ぐためにドアにはロックが掛かっていて中からは開けられないようになっているから覚えておいて。あと、生活感を出さないようにしなさいね。ここは客を迎える場所でもあるんだから。あなたはニンフだということを忘れてはいけないわよ。いつでも客を迎えることができるように気を配ること、いいわね?」
 沙樹は、不安げな表情で部屋中を見回している慶花に諭すような口調で言った。
「あの・・・マ、マダム・・・お聞きしてもいいですか?」
 慶花は「マダム」という慣れない言葉に一瞬戸惑いながら言った。
「うん?何?」
「あの・・・外出したい時、例えばちょっとお散歩したいときとかはどうしたらいいのですか? ドアのロックはどうやって外したら・・・・」
「外出・・・?」
 沙樹が真顔になって聞き返した。笑顔が一瞬消えた。
 慶花は小さく頷いて返した。
「あなた、何を言ってるの? ニンフに外出なんて認められていないわ。」
「ええ? 認められないって、どういうことですか?」
「どういうことって、言葉の通りよ。ニンフは逃亡防止のために外出は認められないの。それにこれはニンフ自身を守るためでもあるのよ。敷地内には飢えた男達がいるのよ。そんなところに、あなたみたいな可愛くて、か細い女の子がフラフラ出て行ったらどうなると思うの?」
「で、では・・・一生、この部屋から外に出られないってことですか?」
「いいえ、そんなことはないわ。建物から外には出られないけど、部屋からは出ることもあるわよ。」
「え?いつですか?いつ部屋から出られのですか?」
「ニンフは3日に一回、医師とカウンセラーから身体と心の状態をチェックしてもらうために、1階の医務室に行くことになってるの。そうそう、あなたの場合にはその時にN1新薬の投与もされるって聞いているわ。」
「え、そ、それだけ・・?その時以外は、ずっとこの部屋の中・・・ですか?」
「ええ、そうよ。あ、そうだわ。あなたを担当するカウンセラーの先生から伝言があるの。」
 沙樹はそう言うと、ジャケットのポケットから一枚の紙片を取り出した。
「えっとね・・・『慶花へ そちらでもまたあなたを担当することになったわ。ニンフとなったあなたを会えるのを楽しみにしています。 瑞穂 』ですって。どうやら、知り合いのようね?」
「ええ、ここに来る前の施設でも、お世話になったカウンセラーの先生です。そうですか、瑞穂先生が・・・。」
 慶花の顔が一瞬明るくなった。
 先行きの不安を感じている中で、旧知の名を聞いていくぶん安心感が芽生えたのと、瑞穂との間で交わした言葉、つまり「法律が変われば普通の生活ができる」との言葉を思い出したことで微かな希望がわいたのである。

「さあ、わかったら、明日の準備をなさい。明日は『ニンフ慶花』の初日よ。話によると慶花の最初の客になるために50人の男が一か月間競い合ったそうよ。そんなこと聞くと女冥利に尽きるわよね。せいぜいサービスしてあげないとバチが当たるわよ。フフフ」 
 沙樹はそう言うと、慶花を残して部屋を後にした。最後に「明日の朝、チェックのためにもう一度来るからね。」という言葉を残して。

 慶花は部屋の中を見て回った。
 第一印象では施設内のブロック5の部屋と全く同じであると感じたが、細かく見てみると微妙な違いはいくつかあった。 
まず、クローゼット内の衣類の数と種類が圧倒的に多かった。いわゆるプレイ用のコスチュームも充実していて、客の様々な要望に応えようとの意図が感じられる。いや、コスチュームだけではない。クローゼット脇のツールボックスには、ありとあらゆるアダルトグッズが収められていて、中には使用法の見当すらつかない物もあった。
 慶花はその中でも、かろうじて使用法のわかるグッズを手に取った。ディルドウである。 だが、それは昨日まで訓練で使われた物より色も形もリアルで、サイズ的にも遙かに大きかった。
 ディルドウを持つ慶花の手は震えた。もしもこんなものでアナルを貫かれたらと思うと逃げ出したいくらいの恐怖感が襲ってくるのだった。
 同時に自分が、そんなおぞましい性具の扱いにも慣れていかなくてはならない、そんな人間になってしまったのだ、と改めて実感したのだった。


 翌朝、沙樹が部屋を訪れたとき、慶花はすでに目を覚ましていた。
 いや、厳密に言えば、不安と緊張のあまりほとんど眠ることができなかったのだ。
「おはよう、夕べはよく眠れた?」
 沙樹は入室するなり、ベッドの中の慶花に明るく声をかけた。
「い、いえ・・・あまり・・・」
「そう、やっぱり初日は緊張するわよね。まあ、少しずつ慣れていけばいいわ。」
 沙樹はそう言いながらベッド脇の椅子に腰を下ろし、言葉を継いだ。
「ところで、今朝はもうやるべきことは終わったの?」
 慶花には沙樹の言いたいことがすぐにわかった。ブロック5以降、毎朝起床後、最初にしなくてはいけないこと、エネマシリンジを使ったアナルの洗浄である。
「い、いえ・・・まだ・・・」
「そう、じゃ、すぐにしてきなさい。今日は特に念入りにね。」
 慶花には沙樹が「念入りに」と言ったことに、多少の違和感を感じたものの問い返しはしなかった。

 30分後、シャワーとアナル洗浄を終えアナルプラグを挿入し直した慶花は、バスローブ姿のまま、沙樹と対面するようにソファに腰を下ろした。
「こうして見ると、あなたが本当は男だなんて信じられないわ。ノーメイクでもこんなに美しい人なんて、女の私から見てもジェラシー感じちゃうわよ。それに・・・・」
 沙樹の視線が純白のバスローブの胸元に向けられた。そこにはEカップの巨乳によって描かれる深い谷間の一部が見えていた。
「それに、スタイルだってかなりいいみたいだし・・・ねえ、ちょっとバスローブ外して見せてご覧なさい。」
「え?こ、ここで・・・ですか?」
「そうよ。ここで、今すぐ。」
「で、でも・・・」
「あら?逆らうの?ニンフはマダムの指示には絶対服従だってこと知らないの?もし従えないなら施設に通報するわよ。それが何を意味するか、あなたもバカじゃないんだから、わかるでしょ?」
 もちろん慶花にはその意味が十分わかっている。通報されればニンフの立場を失い、路頭に迷うことになる。そうなれば例え法律が変わり、普通の生活ができるようになったとしてもすでにこの世にいない可能性の方が高いのである。

「わ、わかりました・・・脱ぎますから・・・・」
 慶花は立ち上がりと、バスローブの胸元を開き、ゆっくりと脱いでいった。
「まあ、大きなオッパイしてるのね。形も綺麗だし、乳首なんてツンと上向いてるし。それにウエストだってそんなにキュッと締まっていて・・・ねえ、一体何カップあるの?」
「あの・・・い、E・・・Eカップです。」
「え?本当?うちに杏里っていうFカップのニンフがいるけど、その子より大きいような気がするわ。・・・ああ、そうか・・・あの子ウエストが太いのね、慶花はウエストが細いからよけい胸が大きく見えるんだわ。フフフ・・・・ねえ、慶花、あなたやっぱり部屋を出られなくて本当に良かったわ。」
「え?ど、どうして・・・ですか?」
「だって、他のニンフがあなた見たら、絶対に苛めるわよ。『男のくせに、わたしたちより綺麗でスタイルがいいなんてどういうこと?』ってね。女の嫉妬は怖いわよ。ハハハ」
 確かに沙樹の言う通りかもしれないと慶花は思った。
 自分を見て他のニンフが嫉妬するかどうかはわからないが、少なくとも自分以外のニンフは正真正銘の女なのだ。無用なトラブルを避けるためにも顔を合わせない方が無難だろう。

「どうしたの? 下も脱ぎなさい。」
 バスローブを腰の辺りで止め、真っ赤になって下を俯いている慶花に、沙樹が急かすように言った。
「は、はい・・・」
 スルスルという微かな音と共に白い布の集まりが下に移動していった。
「ほ、本当に・・・綺麗な身体しているわ・・・ヒップラインの流れるようだし・・・う~ん、ため息出ちゃいそう。」
 沙樹の目には大げさではなく驚嘆の色が浮かんでいた。しかし、慶花の両手が股間から動こうとしないのを見て、
「手をどけなさいっ! 肝心なところが見えないじゃないの!」
 と厳しい口調で言った。
「で、でも・・・」
 それでも慶花は手を離すわけにはいかなかった。矮小化したペニスはもちろんだが、そこに彫り込まれたタトゥーを晒すことになってしまうからだ。
 だが、徐々にS性を匂わせ始めていた沙樹がそれを許すはずはなかった。
 彼女はソファから立ち上がると、慶花の前に歩み出て、股間を覆う両手を強引に引きはがした。
「あっ・・・」
 慶花の口から思わず小さな悲鳴が漏れた。
「まあ、可愛いわぁ・・・」
 慶花の矮小化したペニスを目にして、沙樹が言った。
「パイパンだから、本当の赤ちゃんのオチ○チ○に見えるわ。ううん、うちの甥っ子2歳だけど、これよりは大きいから、赤ちゃんのより小さいかもしれないわね・・・・あら?まあ、嫌だわ・・・本当だったのね。ここにタトゥーを入れてるっていうの。男だったときの名前が書いてあるって聞いたけど・・・どれどれ?」
 沙樹は慶花の小さなペニスを指先でつまみ上げると、目を近づけた。
 慶花の頬は羞恥心で真っ赤だった。
「えっと・・・なになに? 『元一流企業社長 水瀬慶太 ?』 へ~、社長さんだったんだ、以前は。 ふ~ん、水瀬慶太っていうの、本当の名前・・・・ ええ?ちょっと待って、水瀬ってもしかして、『コンフェクショナリー・ミナセ』の?」
 慶花は小さく頷いた。内心はごまかしてでも否定しようと思ったが、調べればすぐに判明することである、嘘をついたことがバレればその方が立場ばまずくなると慶花は判断したのである。
「へ~、そうだったの・・・・私、地元だもの、ミナセの洋菓子って言えば知らない人いないわ。 へ~、あのミナセの社長さんだったの? あれ?そう言えば・・・私ちょっと前に実家に帰ったときにテレビで見たんだけど、ミナセの新社長に女性が就任したって言ってたけど、あれって・・・?」
「つ、妻・・・です。たぶん・・・」
「まあ~、そうだったんだ? へ~、あれ? でも、ちょっと待って。確か独身女社長って紹介されてたと思うけど・・・?」
「あ、あの・・・・り、離婚・・・させられました。」
「え?離婚『させられた』ってどういう意味?」
「あの・・・『Nランク』者には、結婚は・・・認められないからです」
「あ、そうかぁ・・。そのことは聞いたことがあるわ。 じゃあ、会社は今は奥さん、いえ、元奥さんの物なの?」
「は、はい。」
「じゃあ、財産とか資産とかは?」
「妻の・・・ものです。」
「うわ~、悲惨ね~ 『Nランク』になるとそんな悲惨な目にあわなくてはいけないの。あのミナセの社長だった人が、すべてを失って、今やこんな・・・」
 沙樹はそこまで言うと、俯きながら涙ぐんでいる慶花の姿を見つめた。
 確かに事実だけを聞けば同情心も沸いてくる。ただ、男ならもっと抵抗してもよかったではないか、少なくとも他の男の慰み者になるなどという選択をする必要はなかっただろう、そう思うと同情心よりも、もっと苛めてやりたいというSごころまで沸いてくるのだった。

「でも・・・すべてを失ったわけではないわね。だって、例えばこのオッパイ。」
「い、イタッ」
 沙樹は慶花の豊かな胸を鷲づかみにすると、そのまま手に力を入れた。
「フフフ・・・こんな素敵なオッパイを手に入れたんだもの。ちなみにあなたの元奥さんは何カップ?」
 沙樹はさらに手の力を強めた。
「アア、イ、イタッ・・・、シ、Cカップ・・です・・・」
「フフフ・・・ほらご覧なさい、あなたは奥さんを失った変わりに、奥さんよりも大きくて綺麗なオッパイを手に入れたのよ。あなた、奥さんにパイズリなんてしてもらったことある?」
「い、いえ・・ありません。」
「ハハハ・・・ね? 奥さんもできないテクニックをあなたは身に着けてるのよ。すごい財産だわ。それから・・・」
 沙樹は空いた左手を慶花の顔に近づけると、人差し指を立て、慶花の唇に軽く触れた。
「奥さんはフェラ上手だった?」
 沙樹の右手の指先が慶花の敏感な乳首をつねり上げた。
「ツッ・・イ、イタッぃ・・・あ、あまり・・・してもらったことが・・・ありません」
「フフフ・・・そう。あなたは奥さんがあまりしてくれなかったフェラだって上手にできるのよ。これもりっぱな資産だわ。ね、そうでしょ?」
「イ、イタッ・・・は、はい・・・そう・・思います・・・」
「フフフ・・・奥さんは女社長として男達の上でがんばってるんだから、あなたも負けないようにがんばらなくちゃね、ただあなたの場合は男達の「下」でがんばらなくちゃだめだけどね。ハハハハ・・・」
 沙樹は手の力を緩め、慶花から離れると、ゆっくりとソファに腰を下ろした。
 肉体的な痛みと精神的な辱めから解放された慶花の呼吸は乱れ、頬が紅潮していた。
 紅潮という点では沙樹の頬にも赤みが差していた。おそらくM性を漂わせる慶花を苛めることでS心が刺激され、性的興奮を感じていたからだろう。  
  

「あら、大変、もうこんな時間じゃない。何やってるの? もう準備に掛からないと間に合わなくなるわ。」
 沙樹は自分が原因であるにも関わらず、まるで慶花に責任があるかのような口調で言った。
 
 沙樹がこの日慶花のために選んだのは服は、リッチブラックのシックなミニワンピースだった。バスト上部のシフォン素材により微かに透けて見える以外はセクシーさを抑えた上品なデザインだ。シルエットも柔らかいAラインで、見るからに「令嬢」らしさを演出している。
 靴は9センチピンヒールのパンプス。アクセサリー類も高級感のある上品なデザインでコーディネイトされた。
 だが、ランジェリーだけは、そんな上品さとはかけ離れた卑猥で隠微な物だった。
 ブラは黒の小さなハート形のシースルー素材で乳輪や乳首が透けて見える。上部の小さな赤いリボンがかえって卑猥さを強調している。もしブラを乳房の形を整えサポートするものと定義するなら、これはブラとは言えない。Eカップの巨乳にチョコンと乗っかった布きれと言った方が適切だ。
 下は前部分が同じハート形シースルー素材であるのに加えて、後部はまるで細ヒモのようなTバックで、右のヒップ脇のタトゥーを完全に露出している。
 慶花はランジェリーを身に着けた瞬間、あまりの恥ずかしさに鏡の前でうずくまってしまった。
 そんな慶花に沙樹は笑顔で近づくと、フルフルと震えている髪の毛を撫でながら言った。
「フフフ・・・そうやって恥ずかしがっている姿は、本当にお嬢様そのものだわね。でも、客の前では恥ずかしがるのも程々にね。何しろあなたに求められているキャラは『やむを得ず娼婦に身を落とした深窓の令嬢』なんだからね。お上品にしているのも服を着ている時まで。下着姿になったら娼婦だということを忘れないで。」

 慶花は恥ずかしいランジェリー姿を隠そうとするかのように、慌ててワンピースを身に着けると、ドレッサーの前に腰掛けた。
「ライトメイクでしたね?・・・・今は。」
 慶花は鏡越しに沙樹を見て言った。「今は」と付け足すように言ったのは、慶花のせめてもの皮肉だった。内心は、(どうせ後で卑猥で扇情的なヘビーメイクをしなくてはいけないんでしょ?)という思いだった。
「ええ、そうよ。最初はお嬢様風にね。セクシーなヘビーメイクは『お床入り』まで我慢してね。フフフ・・・」
 沙樹は、わざと『お床入り』などという古風な単語を選んだり、いかにも慶花自身がヘビーメイクを望んでいるかのような言い回しをしたりと、すっかり「Mッ娘イジメ」を楽しんでいた。

 沙樹は手際よくメイクを進める慶花を満足そうに見つめながら、鏡越しに語りかけた。
「ねえ、慶花、最初の客のこと、知っておきたい? それとも知らない方がやりやすい?」
 慶花は鏡越しに沙樹と目を合わせ、しばらく考えた後で小さな声で言った。
「で、できるなら・・・・知っておきたい・・・です。」
 実は慶花自身も正解はわからなかった。知っておいた方が少しは安心するかと思っただけである。
「そう。じゃ、知らせておくわ。私も昨日聞かされたばかりなんだけど・・・。まず、名前は『直也』、年は29歳だから・・・あなたより6歳下ってことね。ああ、もっともあなたの場合20代前半にしか見えないから、年は関係ないわね。罪名は暴行と窃盗らしいわ。」
「なおや・・・・」
 慶花は呟くように言った。
「うん?何か気になるの?」
「い、いえ・・・別に・・・・あの、字は・・字はわかりますか?」
「うん? 字? 字は『直線』の『直』に、『なり』よ。」
「直也・・・あの・・・姓は・・・姓はわかりますか?」
「ううん、姓はわからないわ。だってここでは姓は使わないことになっているから。」
「そうですか・・・」
「どうしたの? やっぱり何か気になるの?」
「い、いえ・・本当に・・何でもないんです。」
 慶花は明らかに動揺していた。「直也」という名を聞いて「山村直也」を連想したのである。年齢ははっきりは覚えていない。ただ、兄の「山村誠也」が確か32歳のはずだから、29歳という年齢は恐らくかけ離れた数字ではないような気がする。もちろん直也が犯罪とは無縁の生活を送っている人物であるなら、例え名前が同じでも、同一人物との関連づけはしなかっただろう。だが、慶花の知る限り、残念ながら直也はそういう人物ではない。何より何らかの犯罪により逮捕されたことも知っているのだ。慶花が山村直也を連想したのは、ごく自然なことだったのだ。

「あ、あの・・・他に、何かわかることありませんか?」
「いいえ、これ以上のことはわからないわ。」
「た、例えば・・・外見とか・・・だって、『倶楽部』に来るのが初めてってことではないのでしょう?」
「うん、それはたぶん何度も来てると思うんだけど・・・私には名前まではわからないの。つまり、顔は何度も見てると思うけど、どの人が『直也』かわからないってこと。」
 慶花の表情には明らかな落胆の色が浮かんだが、それが少しずつ不安へと変わっていく様子が、沙樹にもわかった。
「あ、そうだわ・・・静香なら知っているかもしれないわ。何しろ私がここに赴任する前からここで働いてるニンフだからね。ちょっと待ってて、少し聞いてきてあげるから。」
 沙樹はそう言うと、部屋を後にした。

(まさかそんなこと起こるはずがないわ。第一、直也なんて名前どこにでもあるじゃない・・・・・でも、年齢は? 29歳って言ったわ。・・・・・ううん、バカね、この世の中に29歳の男の人何人いると思ってるの?・・・・・・でも・・・・)
 慶花は沙樹が戻ってくるのを待ちながら、不安な思いを巡らせていた。考えれば考えるほど最悪のシナリオに向かっていくような気がして、気分が悪くなっていくのが自分でもわかった。
 
 しばらくして、部屋に戻ってきた沙樹は、慶花のそばに近づくと囁くような小声で言った。
「静香は直也を知っていたわ。私も静香に言われてわかった。『ああ、あの人が直也だったのね。』って。あのね、慶花、実を言うとあまりいい話ではないの。直也って男はね、かなりのSらしいの。精神的にも肉体的にも女を徹底的に苛めないと興奮できないタイプらしいわ。静香も何度も逃げ出そうとしたみたい。体格は筋肉質でマッチョ系、顔はまあ十人並みかな、少し長めの顔で色黒で。ああ、それとね・・・なんか超大きいらしいわよ。」
「大きい・・・?」
 慶花は不安と恐怖に顔をひきつらせながら、怪訝そうな声で言った。
「『馬並み』ですって、あそこが。でね、その『馬並み』でアナルセックスするのが大好きらしいわ。だからきっと慶花の『ロストバージン』のためにひと月もがんばって働いたのよ、きっと。」
「え?『ロストバージン』って・・・どういうことですか?」
「あら?知らなかったの?直也が今夜、あなたのアナルバージンを奪うことができるってことになってるのよ。」
「そ、そんな・・・知らないです・・・そんなことっ!」
「あら、それは気の毒だったわね。でも、まあ、あなたもいずれ経験することになるんだから、早いか遅いかの差だものね。それに、他のニンフと違って、あなたの場合、訓練で相当太いディルドウも経験済みなんでしょ?だったら、直也の『馬並み』にも耐えられるんじゃない?」
「で、でも・・・断ってもいいんですよね? 他の方法で満足いただければ・・・。」
「バカね、そんなこと許されるわけないでしょ? 他のテクニックに相当な自信があるようだけど、今回だけはそうはいかないわ。直也はアナルだけが目的だもの。」
 沙樹の皮肉めいた言葉に、慶花は黙って俯くより他に術がなかった。
 
「あの・・他には・・・他にはその男性のことで、わかっていることはないんですか?」
 慶花は「馬並み」との「ロストバージン」のことで頭が混乱していて、肝心なことを忘れていた。問題はその「直也」が「山村直也」なのかということなのだ。まして「ロストバージン」の相手となるのだからなおさらである。
「他のこと・・・・ああ、そうだわ。静香の話によると、直也って以前どこかの製菓会社に勤めていたみたいよ。何でも、そこの社長に裏切られてクビにされ、それから犯罪の道に入って行ったって。だから今でもその社長のこと、恨んでいるらしいわ。それで、時々とんでもない妄想を語るらしいの。刑期を終えて出所したら、その社長を誘拐して無理矢理性転換させてからアナルを犯しまくるんだって。静香の話だとプレイ中にそういうお芝居をさせられるらしいわ。静香にその性転換した社長の役をやらせてね。まあ、直也っていうのはとんでもない変態ってことね。だから、慶花もそのつもりでいたほうがいいわよ。」
 慶花の顔からは血の気が引いていた。沙樹の話を客観的に聞けば、どうやら最悪のシナリオに向かいつつあることは明らかだった。つまり「直也」が「山村直也」であるというシナリオだ。
「あ、あの・・・マダム、お願いがあるんですけど・・・」
「うん、何?」
「あの・・・今から、別の方に変わっていただくというわけにはいきませんか?」
 慶花は目に涙を浮かべながら哀願した。
「ハハハ、何言ってるの、あなた。そんなことできるわけないでしょ。ああ、なるほど、私の話で怖くなっちゃったのね。大丈夫よ、いくら変態だって。命まで取ろうというわけじゃないんだし。あなたも静香のように相手に合わせて、うまくその社長の役を演じてあげれば乗り切れるわよ。」
 慶花の背中に冷たい汗が流れた。心の中では「演じるどころか、私がその本人なんだ」と叫び出したい気持ちを必死に抑えていた。

「それに・・・例え、直也が変態だろうと、恋人だと思えれば好きになるでしょ?」
「え?それって・・・どういう意味ですか? そ、そんな人、恋人となんて・・・」
「あら? それも知らされてないの? 全く施設の人たちってどこまでこっちに負担かける気かしら。本当に参っちゃうわね。 あのね、あなたは気付いていないかも知れないけど、あなたには精神操作がされているのよ。」
「精神・・・操作?」
「うん、そう。あなたの最初の男、つまりロストバージンの相手を心から愛し、頼り、崇拝するようにね。」
「そ、そんな・・・嘘です。嘘に決まってます。」
「嘘じゃないわ。まあ口で言っても信じられないかも知れないけど、明日になればすべてわかるはずよ。」
「そんな・・・そんな・・・あんまりですぅ・・・・」
 慶花はその場に崩れ落ちた。頬を涙が止めどなく落ち、嗚咽が部屋にこだました。


****************************************

 その日の夕刻、慶花はカーテンの隙間から倶楽部建物に続く通路の方向を見ていた。
 まもなくやってくる予定の男達を予め確認するためだ。
 もしかしたら「直也」は「山村直也」ではない可能性だってある。いや、別人であって欲しい。その思いが慶花を駆り立てていたのである。
 
 だが、その願いはすぐに潰えた。倶楽部建物に向かって歩いてくる男達の中に、記憶の片隅にある「山村直也」の姿があったのだ。何やら話ながら向かってくる三人組の真ん中の人物に、額が狭く顎のとがった、いくぶん三白眼の特徴がはっきりと見て取れた。
 
 慶花は膝から落ちた。微かな希望は音を立てて崩壊した。全身に震えが広がっていった。 慶花の頭に「逃亡」の二文字がよぎった。でもどうやって・・・?
 窓もドアもロックがされている。中からは開けられないのだ。
 いや、ドアが唯一開く瞬間がある。直也が入室する、その瞬間だ。
 ドアが開いた瞬間、にこやかに挨拶してみよう。きっと気が緩むはずだ。その瞬間に急いでドアに向かう。きっと直也とぶつかるだろうが、自分だって去年まではそれなりの体力はあったんだ。油断している直也の脇をすり抜けることくらいできるだろう・・・

 トン・・トン・・・
 ドアを叩くノック音がした。
 いよいよ作戦実行だ。慶花は大きく深呼吸をすると、鏡に向かって笑顔を作った。精一杯のウェルカムスマイルである。

 ガチャリとロックの開く音がした。
 慶花はドアに歩み寄った。できる限り近づいていなければチャンスはない。
 ドアがゆっくりと開き始めた。黒Tシャツ・コットンパンツの男の姿が徐々に現れてきた。
「いらっしゃいませ、お客様、お待ち申し上げておりました。」
 慶花はできる限り声の震えを抑えながら言い、視線を上げた。
 間違いなく山村直也だった。無言のまま微笑んでいる。
 慶花は一瞬息が止まりそうだった。だが、そんなことにかまっている場合ではない。
 思い切りドアに向かって突進しなくては・・・・・
 慶花は足先に力を入れた。だが、思うように力が入らない。ピンヒールのパンプスが恨めしい。
(今よ!)慶花は心に言い聞かせ、足を前に出した。精一杯のダッシュである。肩が直也の固い腹筋に、そして顔が厚い胸板にぶつかった・・・・しかしそれは一枚の厚い壁のようにビクともしなかった。いや、それどころか、気付くと直也の逞しい腕に抱きしめられている。
「ハハハ・・そんなに俺に会いたかったのか?まあ、ちょっと待て、後でたっぷり可愛がってやるからな。」
 直也はそう言うと、慶花の身体を引き離した。
 直也には慶花の「突進」は反抗の突進ではなかったのだ。それは好きな男の胸に少しでも早く飛び込みたいという愛欲の突進だったのだ。いやもしかしたらか弱い慶花の力など「突進」にすら感じていないかもしれない。慶花は自分の無力を痛感した。
「ご、ごめんなさい・・・一人で寂しかったものですから・・・」
 慶花はそう言って取り繕うより他はなかった。
「ハハハ・・なかなか可愛いこと言うじゃないか。お嬢ちゃん、こっちに来て挨拶してみろ。」
 直也はソファに腰掛けたまま、慶花を手招きした。
 慶花の胸は高鳴った。心臓が飛び出しそうなほど緊張している。直也が自分に気付かないか、まずそれが気になった。

「お客様、本日は慶花をご指名くださいまして、ありがとうございます。なにぶん不慣れなものですから至らないことも多々あると存じますが、ご満足いただけるよう、精一杯尽くさせていただきますので、どうぞよろしくお願い致します。」
 慶花は、さんざん練習させられた客への口上を口にすると、口元に笑みを湛えながら、顔を上げた。
 直也の熱い視線が突き刺さるのを感じた。慶花は思わず視線を逸らした。
「うん、ビデオで見るより、ずっといい女だな。それにそのお高く止まった言葉遣いも俺好みだ。それにしても、お前本当に男なのか? 嘘じゃないだろうな?」
 慶花は直也が自分を「慶太」だと認識していないとわかってホッとしたが、性別への疑問を提起したことに新たな不安が沸いてきた。下手な対応をすると、「証拠を見せろ」と言い出すだろう。そうなると「慶太」のタトゥーを見せることになってしまう。それだけはどうしても避けなくてはいけない。
「いやですわ、お客様。慶花、自分のこと男性だなんて思ったことはございませんわ。生まれてからずっと女ですもの。ただ、ちょっと身体が間違えて生まれてきただけですわ。」
「ハハハ・・なるほど。性同一性障害ってやつだな。じゃあ、今は望み通り女の身体になれて幸せってことだ?」
「ええ、もちろんですわ。これ以上の幸せはございません。」
「本当にお前の声は女そのものだな。それにその話し方も自然だ。ここのマダムが言ってたが、お前はどこかの上流階級の出らしいな?」
 慶花は一瞬答えに窮した。だが、自分がニンフとして求められているキャラクターは分かっているので、答えを躊躇うわけにはいかなかった。
「ええ、世間ではそうおっしゃいますわ。」
「ほう、つまり深窓の令嬢というわけか。確かにそんな雰囲気だな。で、そんなお嬢様がなんだって、ニンフなんかになったんだ?」
「そ、それは・・・あの、父が事業に失敗しまして・・・それで・・・」
「なるほど、世間ではよくある話だ。で、お前はやむを得ず、身体を売っていると言うわけだ?」
「はい、おっしゃる通りですわ。」
「と言うことは、俺みたいな前科者を相手になんてしたくないだろう?」
 慶花はまた答えに苦しんだ。否定すべきか肯定すべきか、それすら分からない。そもそも何故、直也がそんな質問の仕方をしてくるのかが理解できなかった。

 しかし、自分は今、深窓の令嬢なのだ。それならやはり肯定した方がいいのだろう。
「ええ、本当ならあなたのような方と一緒の時間を過ごしたくはございませんわ。」
 直也の目がキラリと光った。
「つまり、俺みたいな人間を軽蔑しているってわけだな?」
「え、ええ・・・軽蔑・・・していますわ。」
 慶花の言葉に、直也は口元を歪めるようにして笑うと、ソファから立ち上がり慶花の方に近づいた。
 慶花は直也の迫力に1,2歩後ずさりをした。顔には恐怖の色が浮かんでいた。
「それじゃ、軽蔑している男を誘うようなスケベな下着なんてまさか着ていないよな?」
 直也は慶花のか細い二の腕を掴むと、自分の方に引き寄せた。
「い、イヤ・・・お願い・・離して・・・」
 慶花の口から思わず声が漏れた。
「質問に答えろ、スケベな下着なんて着てないな?」
 慶花は黙って首を左右に振った。何と答えていいかわからなかったからだ。
 直也は左手で慶花の身体を抱き寄せると、右手でワンピースのファスナーを荒々しく引き下ろした。
「い、イヤ・・・やめて・・・」
 Eカップの巨乳を申しわけ程度に覆うハート形のブラが露わになった。
「ハハハ・・・なんだ、このスケベな下着は? うん?これでも男を誘っていないって言うのか? それにデカイ、おっぱいしやがって。これだって、お前が望んでデカくしたんだろ?男を誘うために。え? 違うか?」
「で、でも・・・これは・・・あの・・・」
 慶花がランジェリーの言いわけをしようとしたその瞬間だった。
 パシーッという音と共に頬に熱い痛みが走った。直也の右手が慶花の左頬に飛んだのだ。「うるさいっ、言い訳をするな! 淫乱女の言い訳など聞きたくない。」
 直也の右手が腰の付近で止まっていたワンピースを一気にずり降ろした。
「イヤッ・・・」
 頬の痛みとワンピースを脱がされた羞恥心とで慶花の瞳には涙が溢れてきた。
「こんなスケベなパンツ履きやがって・・・これで深窓の令嬢とは笑わせるぜ。しかしそれにしてもいいケツしてやがるな。くそっ、お前のケツ見てたら、さっそく一発ヤリたくなってきたぜ。」
 直也はそう言うと、ランジェリー姿の慶花を力づくで隣のベッドルームへと引きずり込んだ。
 直也はダブルベッドに慶花の小柄な身体を投げ捨てるようにすると、そのまま一気にTバックを脱がそうと手をかけた。
「だ、ダメ・・・」
 慶花は、その手を避けようと身体をよじらせた。だが、それはあまりに無力な抵抗だった。
 直也はそんな儚い抵抗を示す慶花にかえって陵辱欲を駆り立てられたのか、先ほどよりも一層強い力で慶花の頬を張った。
 パシーッという乾いた音がベッドルームに響き渡った。
 頬を張られた衝撃と痛みで、慶花の全身から力が抜け、涙が筋となって赤らんだ頬を伝った。
 直也は、抵抗する気力をすっかり失った慶花の腰に手をかけると、Tバックを一気に脱がしていった。
「アッ・・・」
 慶花の口から漏れたのは、ほんの小さな音だけだった。

「ハハハ・・なるほど、お前が元男だったというのはどうやら本当のようだな。ここにチンポらしきものがあるじゃないか。あんまりりっぱなんで見逃すところだったぜ。ハハハ」
 慶花は直也の声にハッとした。平手打ちをされたショックに呆然としていてうっかりしていたのである。今、直也の目は自分の矮小化したペニスを確実に捉えている。と言うことは、あのタトゥーが・・・
「だ、ダメェ・・見ないで・・・」
 慶花の右手がその部分を覆おうとした瞬間だった。その手を直也の力強い大きな左手が制した。
「うん?何だ?お前、こんなところにタトゥーしてるのか?ハハハ・・ それも何か文字みたいだな・・・一体何て書いてあるんだ?」
「お願い、見ないで、見ないでぇ・・・」
 慶花は手で覆おうとする抵抗が無駄であることを知り、涙ながらに哀願した。
 女の涙に弱いという男の心理に訴えかけるしか術がなかったのだ。
 だが、それもS性の強い直也にはかえって刺激にしかならなかったのである。
 直也は口元に下卑た笑みを湛えながら、タトゥーの文字を追った。

「こ、これは・・・どういうことだ?」 
 直也の口元から笑みがすっかり消えた。
「ま、まさか・・・お前・・・」
 直也は泣き崩れる慶花の口元を見つめ、ハッとした。
 慶花の口元の小さなホクロ・・・それはあの「慶太社長」にもあった特徴である。
 直也はベッドから起きあがると、泣き崩れる慶花を残し、部屋を出て行った。

 とうとう自分の素性がわかってしまった。しかもあの直也に・・・。最も知られたくないあの直也に・・・。
 そう思うと、慶花の瞳には新たな涙が止めどなく溢れてくるのだった。

(でも、「ロストバージン」前に見つかったのはよかったかも知れない)と慶花は思った。沙樹の言うように自分に精神操作がなされているなら、あの直也を恋人と思うようになっていたかもしれないのだ。それを避けることができたのは幸運だったと言えるかも知れない。まさか直也だって「慶太」だと知った以上、自分と関係を持とうとは思わないだろう。

 だが、そんな慶花の思いも30分後には消え去ることとなってしまう。
 何と、一旦出て行った直也が沙樹を伴って部屋に戻ってきたのだ。
 まさか直也が戻ってくるなどとは予想もしていなかった慶花は相変わらずの扇情的なランジェリー姿のままベッドに横たわっていた。
 二人は一言のことわりも告げずに、ベッド脇の小さな椅子に腰掛けた。
「慶花、悪いけど、あなたのこと全部話したわ。その方が変なトラブルも起きないだろうしね。」
 沙樹の口調は冷静だった。特殊倶楽部内でトラブルだけは避けなくてはならない、という責任者として思いが伝わってきた。おそらく、直也が相当な剣幕で沙樹に詰め寄ったに違いない。
「ぜ、全部って・・・?」
 慶花は直也のなめ回すような視線を避けるために、Eカップの巨乳を細い腕で覆った。「施設から送られてきた、あなたに関する公式資料よ。」
「公式・・・資料・・・・」
 慶花は呟くようにして言った後で、ハッとした表情に変わった。

 公式資料ということは、自分が「Nランク」者であったことは伏せられているということである。なぜなら「Nランク」自体が秘密裏の存在だからである。もちろん関係者の一人である沙樹は「Nランク」の存在を知っているし、慶花が「Nランク」者であり、それ故、半ば強制的に女性化させられ、今こうしてニンフとなっている事情も知っている。しかしそれを関係者以外に告げることのできない彼女は、直也から詰め寄られたときに「公式資料」を説明材料にするしかなかったのである。

「俺もびっくりしましたよ。まさかあの水瀬社長とここで、こんな形で再会しようとは思いもよらなかったのでね。しかも資料を見て、またびっくりだ。あの水瀬社長がDランクになり、しかも自ら望んで女に生まれ変わることを決めたなんてね。」
「そ、それは・・・」
 慶花は口ごもった。
 公式資料には、Dランクと分類された「慶太」が人生の目標を見失い、新たな人格として生きる決意をし、その結果、自らの意思で「慶花」という女性となることを決めたと記載されているのだろう。恐らく女性化のためのN1新薬の投与も、精神療法も、睾丸摘出手術も、そして「ニンフ」となったこともすべて自由意思により行われたと記されているに違いない。さらには離婚も、財産・資産・会社の妻への譲渡も、「ニンフ慶花」として生きる最終決断のためと称して書き込まれているかもしれない。
 慶花にはそれらすべての「証拠」を言葉で覆すほどの気力はもう残っていなかったのである。

「しかし、俺だったら、例えDランクと言われ、新しい人格を選ぶにしても女に生まれかわろうとは思わないよなぁ。デカいオッパイやケツを揺らしながら歩くなんて考えただけでゾッとするぜ。なあ、マダムもそう思うだろう?」
 直也は無遠慮にもベッドサイドに座り、慶花の身体を眺めながら言った。
 慶花はその舐めるような視線に背筋が凍る思いだった。
「それは、女の私にはわからないけど・・・でも、普通の男なら慶花みたいな生き方は選ばないでしょうね。」
「うん?ってことは水瀬社長は普通の男じゃなかったってことか?」
「フフフ・・それはそうでしょ?だって、ニンフとして生きることを望んでいるのよ。こんな生き方、女の私だって選ばないわ。だって男達のセックス奴隷になるってことよ。大きなオッパイだってお尻だって、みんなそのための道具にするのよ。そんなことを望むなんて、普通の男じゃないでしょ。」
 二人は、まるでその場に慶花がいないかのような口ぶりだった。

「なるほどな。さっきは突然タトゥーを見せられて、驚いて部屋を出ちまったけど、こうして改めて目の前で見ているとニンフはニンフだもんな。本当は水瀬社長だなんて思う必要はないってことだよな?」
「そうよ、目に前にいるのは『慶花』という一人のニンフ。それも今日初めてお客の相手をするバージンニンフなのよ。あなたにバージンを散らしてもらいたくて待っていたの。ね、そうよね、慶花?」
「は、はい・・・・でも・・・・」
 慶花は俯いたまま小さな声で言った。とても肯定的な返事には聞こえなかった。
 直也もそのことを感じ取ったのか、何とも言えない表情で慶花を見つめている。 

 沙樹は直也の心から徐々にわだかまりが消えつつあるのを感じ取っていた。このまま二人がスムーズに「お床入り」に進めば、トラブルは回避できそうだと思った。
 だが、それには一つ大きなハードルがありそうだ。もちろん慶花の気持ちである。慶花が直也とのアナルセックスを望むわけはない。直也が無理矢理レイプしてしまうというシナリオもないではないが、もしそれをして慶花が自殺したり精神障害を起こしたら、さらなるトラブルのもとになりかねない。何とか慶花に納得ずくでのロストバージンを迎えさせなけばならない。

 沙樹は、慶花と二人だけで話があるからと、直也を一旦ベッドルームから出した。
 その後しばらくの時間をかけて説得したが、慶花はアナルセックスだけはどうしても受け入れられないと涙ながらに哀願した。受け入れれば、憎むべき直也を愛すべき恋人と思うようになるというだから、それも当然だった。
 だが、沙樹にはその哀願を聞き届けるわけにはいかない。慶花を騙してでも、ロストバージンに向かわせなくてはいけない。
「わかったわ、慶花。あなたの気持ちはよくわかった。じゃあ、オクチだけで相手するようにしなさい。静香の話だと、直也ってフェラも相当好きみたいだから、上手にやれば満足してくれるわ。あ、そうそう、それに直也って、ああ見えて意外と精力がないらしいわ。一日一回しかダメみたい。だからフェラでヌイてあげれば、アナルセックスの相手をする心配はなくなるわ。」
 もちろん、この沙樹の言葉は嘘である。直也がフェラ好きであるのは本当だが、精力に関しては、静香相手にひと晩に5回も絶頂に達したこともある、いわば絶倫である。
「ほ、本当に・・・それでうまくいくのでしょうか。納得して、いえ、満足してくれるでしょうか。」
 慶花は不安げな顔で沙樹を見つめた。
「大丈夫よ。私の言う通りにしていれば、きっとうまくいくわ。」

 その後、沙樹の慶花に対する「緊急レッスン」が数分間行われた。
 レッスンの内容は確かに説得力があった。沙樹の言う通りに演じ切れれば、直也はきっとフェラチオでの射精を望むだろう。アナルバージンは守れるのだ。
 慶花は沙樹に感謝した。
 
 慶花はドレッサーの前に座った。「お芝居」の開始である。
 沙樹はベッドルームから出て、リビングで待つ直也を呼んだ。
「うん?何が始まるんだ?」
 直也の口から思わず声が漏れた。ベッドルームに入った瞬間、扇情的なランジェリー姿でドレッサーに向かい、メイクを始めている慶花が目に入ったからだ。
「慶花、お客様が尋ねていらっしゃるわ。何をしているのかって。」
 沙樹の問いかけに、慶花は振り向くことはしないで鏡越しに直也の目を見つめた。
 そして、「イヤだわ。メイクに決まってるじゃないの。だってここからは『ニンフ慶花』をお望みなんでしょ?だから慶花がどんなに色っぽくなるかよくご覧になってて。ネ、直也様」と言うと、小さくウインクをし、唇をとがらせて見せた。
 直也は先ほどまでの令嬢ぶりとはうって変わった雰囲気の違いに、一瞬面食らったが、あの「水瀬社長」が自分に媚びを売っていると思うと妙に興奮してくるのだった。

 慶花のメイクテクニックは洗練されていて、淀みがなかった。まるでブラシも綿棒もチップも指先の一部となっているかのように器用に動く。
(うまいもんだなぁ)と直也は率直にそう思った。本当にたかが一年足らずで身に着けたテクニックなのだろうかと疑問がわいてくるほどだ。
 そんな直也の気持ちを察したのか、メイクを進める慶花に沙樹が声をかけた。
「本当にうまいものね。女の私が見てても勉強になるわ。たかが一年でそこまで身に着けるなんて、よほどメイクが好きなのね。ねえ、慶花、あなたはメイクするとき、何を考えているの?」
「いやねぇ、綺麗になることしか考えてないわ。」
「じゃ、何のために綺麗になりたいの?」
「イヤだわ、マダム。男性に愛されたいからに決まってるじゃないの。」
「ふ~ん、でもどの男性でもいいわけじゃないわよね、今は誰のため?」
「イヤだわ、慶花にそれ言わせるの?そこにいらっしゃる直也様のためだわ。」
 慶花はそう言うと、一旦手の動きを止め、すでにターコイズブルーのアイシャドウに縁取られた妖艶な眼差しを、鏡越しに直也に送った。
 直也にはそれが本心でないのはわかっている。姿は変わっていようとあの「慶太」が自分のためにメイクをするなどあり得ないことだ。だが、そんな思いを押し殺してでも懸命に娼婦を演じようとしている「慶太」を見ていると、かえって嗜虐的な思いが沸いてくるのだった。  
  
 慶花のメイクはほぼ完璧に仕上がった。後は口紅を残すだけだ。
 ヘビーなフルメイクは「ニンフ慶花」を見事に演出していた。 
 メイクの途中で揺れるような流し目を鏡越しに感じ取るたびに、直也の頭から「慶太」は消えていった。
「後は口紅だけね。慶花は今日はどの色を選ぶの?」
「う~ん、ボルドーレッドを選ぼうと思うんだけど、どうかしら?」
「まぁ、随分濃い色を選ぶのね、どうして?」
「だって、その方が直也様も喜んで頂けると思うから。」
「どうして、そう思うの?」
「いやねぇ、マダムだったら、そのくらい知っておいてもらいたいわ。男性は赤い唇が自分のペニスを銜えているところを見るのが好きなのよ。ね、直也様。」
 慶花はそう言うと、流れるようなセクシーな視線を直也に送った。大胆なセリフを口にしているものの、指先が微かに震え、頬にうっすらと赤みが差しているのがわかる。きっと羞恥心に耐えながら必死に演じているのだ。それが直也の目からもはっきりとわかる。 直也はすっかり欲情していた。自分をクビにしたあの「水瀬社長」が、今、女として自分に愛されるためだけに化粧をし、自分の性欲を刺激するためだけに卑猥な言葉を吐き、自分により刺激的なフェラチオを演出するためだけに口紅を施しているのだ。
 そう思うと、直也のペニスはもはや一時の猶予も叶わぬほど、熱く硬化していた。
  
「いかがですか?直也様、慶花のメイク気に入ってくださる?」
 完璧なフルメイクを仕上げた慶花が、ベッドサイドの直也の前に立った。
 小首を傾げ、口元に妖艶な笑みを湛え、時折舌を覗かせる。
 ボルドーレッドの口紅がテラテラと妖しく光り、(ねえ、はやくオシャブリさせて)と語りかけているようだ。
 直也は今にも飛びかかりたくなる気持ちを抑え、嗜虐欲をさらに高める演出を試みた。
「ええ、本当に色っぽいですよ、水瀬社長。俺をクビにした時とは大違いですよ。」
 直也は「水瀬社長」と呼びかけ、さらに昔の事実を思い出させることで、慶花により恥辱を味合わせようとしたのである。
 慶花はその言葉に一瞬真顔になったが、すぐに笑顔に戻り、囁くようなセクシーな声で言った。
「イヤだわ、直也様。もう私はニンフなのよ。『ニンフ慶花』、それが今の私の名前なの。」
「アハハ・・・そうだった。ニンフになるためにわざわざ水瀬の姓を捨てたんだったな。そうまでして男のおもちゃになりたかったってことか? え? 水瀬社長?」
「ええ、そうよ。だから、もうそんな意地悪おっしゃらないで。もうそんなこと忘れて、楽しみましょ。早く、慶花にご奉仕させて。慶花のここ、寂しがってるのわかるでしょ?」
 慶花はボルドーレッドの唇に人差し指を当て、舌先でそれを舐めて見せた。娼婦らしい挑発的なそのポーズも決して本心からのものでないことを、指先の震えが物語っている。その様子が直也のS性にさらなる火を付けた。
「そうか、心の中はすっかり慶花になっているってことだな。つまり『水瀬慶太』は完全に別人ってことだ。そうだな?」
「ええ、そうよ。『水瀬慶太』なんて人知らないわ。」
「では、その妻『水瀬弘美』はどうだ? 知っているか?」
「い、いいえ・・・し、しらない、知らないわ。 ね、ねえ、もういいでしょ。お願い、早く楽しみましょ。」
 慶花にはそう答えるしかなかった。「慶太」を知らないのだから「弘美」を知っていては矛盾する、と慶花は思ったのだ。
 慶花は沙樹に助け船を頼もうと視線を送った。だが、すでに沙樹はその場にいなかった。二人がやり取りをしている間に静かにその場を離れたのだろう。ニンフと客の邪魔をしてはいけないという「マダム」なりの配慮だった。

「では、客として『ニンフ慶花』にプレイ内容の要望をする。ニンフはどんな要望も従うんだったよな?」
「え、ええ・・・その通りよ。どんな要望でも・・・お応えします。どうぞ、おっしゃって。」
「フフフ・・・では、今日はお前に『水瀬弘美』を演じてもらう。女になりたいと言って離婚までした変態男『水瀬慶太』の妻だ。どうだ、できるな?」
「そ、それは・・・」
 慶花は口ごもった。ニンフとして客の要望を拒否できないことはわかっている。だが、直也の意図がわからない。「弘美」の何を演じろと言うのだろうか。
「どうした?ニンフのくせに客の要望に答えられないと言うのか?だったら、またマダムに報告するぞ。」
「い、いえ・・・わ、わかりました。その・・・弘美・・・さんを演じさせてもらいます。」
「よし、今からプレイ中はお前は弘美だぞ、いいな。」
「は、はい・・・。」
「よろしい、では、聞く。お前の名前は何だ?」
「あ、あの・・・み、水瀬・・・ひ、弘美・・・です。」
「よし、じゃ、弘美、俺の横に来い。幼なじみ同士の再会だ。少し話でもしよう。」
 慶花は、直也が兄の誠也同様、弘美と幼なじみ同士だったことをすっかり忘れていた。
社内では誠也と違って、弘美と親しげに話をする様子もなかったし、解雇以来、弘美の口から直也の話が出たこともなかったからだ。

「弘美、久しぶりだなぁ。」
 直也は慶花がベッドサイドに腰を下ろすとすぐに「芝居」を始めた。
「そ、そうね・・・久しぶり、直也くん、元気にしてた?」
「ああ、元気だよ。ただ、弘美の旦那のおかげでさんざん苦労したけどな。」
「あ、ああ・・・ご、ごめんなさい・・・私・・・しゅ、主人に代わって・・あやまるわ。」
「いいんだよ。弘美のせいじゃないんだから。あのバカ亭主のせいなんだから。弘美もあいつがバカ亭主だと思うだろう?」
 慶花には直也の意図がわかってきた。自分に弘美を演じさせながら、「慶太」を貶めようというのである。何て心が歪んでいるのだろう、と慶花は思ったが、「芝居」を止めるわけにはいかない。心を落ち着けるように、一つ大きく呼吸をすると静かに口を開いた。
「そ、そうね・・・直也くんをクビにするなんて、本当にバカ亭主よね。」
「それに、聞いた話では、バカ亭主の上に変態亭主だったそうだね。」
「へ、変態・・・?」
「ああ、何でも、男を止めて女になったって言うじゃないか?それも自分から好きこのんで。」
「あ、え、ええ、そ、そうなの・・・。女に・・・なっちゃったの。」
「弘美はそれ聞いてどう思った?」
「え、ど、どうって・・・? 人それぞれだから・・・。」
 慶花は直也の表情を伺った。どのように答えればいいのかわからなかったのだ。
 直也は厳しい視線を返した。無言のダメだしである。
「ほ、本当に・・・あきれちゃったわ。あんな変態だとは思わなかったもの。」
 改めて直也の顔を伺った。今度は満足そうな笑みに変わっていた。
 直也の意図は完全に理解できた。つまり直也と一緒になって「慶太」をとことんバカにしろというのである。「芝居」とは言え、こんな屈辱的なことはない。だが、拒否することができないのなら、少しでも早く直也を満足させ、この時間を終わらせた方がいい。
(たかがお芝居じゃないの。いいわ、直也の望む「弘美」を演じてあげる。)と慶花は心の言い聞かせた。

「きっとそんな変態亭主だから、結婚しててもセックスは満足できなかっただろう?」
「本当にそうなの。エッチは下手だし、弱いし、もういつも不満だったわ。」
「きっとチ○ポも小さかったんじゃないか?」
「うん、本当に小さかったわ。だから、いつも大きなペニスに憧れてたわ。」
「ハハハ・・チ○ポが貧弱だから女になろうと思ったのかもしれないな。弘美を男として満足させられないって。」
「そうかもしれないわ。だからあんなやつ、女になって正解だったのよ。」
「じゃ、弘美は本当はこういうチ○ポを求めていたんじゃないか?」
 直也はそう言うと、そそくさとズボンを脱ぎ捨て下半身を堂々と露出させた。すでに半ば屹立したペニスが姿を露わにした。確かに巨根だった。「馬並み」という話は誇張ではなかった。
「すごく大きいのね。男らしくてりっぱだわ。あいつのみすぼらしいペニスとは大違いよ。」
「いいんだぜ、触っても。こういうのは好きなんだろ?」
「ええ、嬉しいわ。私こういうペニス一度でいいから触ってみたかったの。」
 慶花の背筋の悪寒と闘いながら、懸命に「芝居」を続けた。

「すごいわ・・熱くて、固くて・・・逞しいのね。」
「フフフ・・・これが本物と男のチ○ポだ。オカマ亭主のとは違うだろう?」
「ええ、全然違うわ。あんなのペニスとは言えない。」
「うむ、では何だ? ペニスでなければ何だ?」
「女を満足させられないんだもの・・・あれはきっとクリトリスだわ。あいつは最初からクリトリスしか持ってなかったの。生まれたときから女だったのよ。」
「ハハハ・・・つまり弘美は女と結婚してしまったってわけか。それは気の毒だったなぁ。じゃあ、離婚してよかったじゃないか。これからは本当のチ○ポとセックスができるぞ。」
「本当に騙されたみたいなものよ。でも、これからは本当のセックスが楽しめるんだもの。よかったわ。」

 慶花の手に直也の脈動が伝わってきた。どうやら恥辱的な思いを押し殺しながら「芝居」を続けた甲斐があった。直也は慶花の演じる「弘美」に興奮しているようだった。
(いまだわ。ここを逃してはダメ。直也を満足させて、この屈辱から解放されるのよ。)
 慶花はそう心に言い聞かせると、精一杯の妖艶な笑みを作り、直也に囁きかけた。
「ねぇ、直也くん、こんな男らしいペニス触ってたら、私もう我慢できなくなっちゃった。お願い、欲しいの・・・。」
「うん?欲しいって、アナルに入れて欲しいってことか?」
「う、ううん、そ、そうじゃないの・・・アナルじゃなくて・・・あの・・・おクチに・・ね、お願い。」
 慶花は慌て気味に言った。アナルセックスを避けるために無理して作っている媚態なのだ。その苦労が何にもならなくなるところだった。
「俺はフェラヌキより、アナルの方が好きだなぁ。」
「で、でも・・・お願い、おクチでさせて。これでも私、おクチでするの得意なんだから。」
「しかしなぁ・・・」
「ねえ、直也くん、意地悪言わないで。お願い、直也くんの男らしくた逞しいチ○ポ、弘美にペロペロさせて。ドロドロのザーメン、たくさん欲しいの。」
「う~ん、しょうがないなぁ。幼なじみの弘美にそこまで頼まれたら断れないよな。フェラさせてやるよ。そのかわりちょっとでも下手だったら、途中でも止めるからな。」
「嬉しいぃ・・直也くん、大好きぃ~ 弘美、がんばるからね。」
 慶花は内心涙が溢れるほど悔しかった。あの直也に自分はフェラ奉仕させてもらうための許可を取っているのだ。しかも嫌われないよう媚びまで売って。
 これほどの屈辱はあろうか。これなら力づくで有無を言わさず、ペニスを口に押し込まれた方がまだましだ、と慶花は思った。


 直也への屈辱的なフェラ奉仕を始めてすぐ、施設での特訓が実践的だったことが証明された。
 トレーナーの望月加奈子の厳しい指示の下、ディルドウに懸命な口唇奉仕をしたことも、近藤幹夫のリアルペニスを嘔吐しながらディープスロートしたことも、すべて役立った。
 直也のペニスに舌先が触れた瞬間、背筋に虫酸が走ったことと、口中深く飲み込んだ時、全身を嫌悪感が貫いたこと、そしてディープスロートを催促するかのように手で頭を抑えつけられ、ペニスが喉奥に当たった時の惨めなまでの嘔吐感。それらを除けば、後はトレーニングされたことを忠実に再現するだけだった。
 特に効果的だったのは、時折上目遣いで見つめながらジュルジュルとわざと大きな音を立てて刺激することと、ディープスロートの際に苦しそうに眉間に小さな皺を刻むことだったようだ。その度に口中のペニスがピクンと敏感に反応したことからもわかった。

 直也がくぐもったようなうめき声と共に、大量の熱い樹液を噴射した時、慶花はしっかり口中深く受け止め、燕下した。
 もちろん、特訓中に加奈子から言われたアドバイスも忘れてはいない。
「お客が口の中で発射した時、ニンフは一滴残らず飲み込むこと。いいわね。ただ、すぐに飲み込んではダメ。お客の発作が収まるまでそのまま待ちなさい。そして収まったと思ったら、ゆっくりと残りを吸い出すように口を離しなさい。で、離れ際には少し大きめに音を立てる。それからペニスの先に感謝のキスをするの。ああ、でもやりすぎてはダメ。イった直後のペニスはすごく敏感になっているからね。それからお客にセクシーな眼差しを向けながら、口を開いて中に溜まったザーメンを見せるの。よく見えるように少し大きめに開けてもいいわ。ザーメンが多すぎて少し零れてもいいわ。その方がかえってセクシーだと思う客もいるから。それから客の瞳を見つめながら、コクッって音を立てながら飲み込むの。飲み込む瞬間は楽しそうな顔してはダメよ。ちょっと苦しそうに、眉間に小さな皺を刻むくらいがちょうどいいわ。特にS気質の強い客にはね。そして口の中が空っぽになったのをお客に見せて、ちゃんとお礼を言うこと。わかったわね。」

 慶花はアドバイスを忠実に守った。加奈子の言うようにザーメンが多すぎて、一部が白い筋となって口元から滴り落ちたが、その姿を見た直也が満足そうな笑みを浮かべていたところを見ると、その部分のアドバイスも適格だったということだろう。 
 ただ、最後に、「全部、飲んじゃった・・・直也様のザーメン、とってもおいしかったわ。ありがとう。」と微笑みながらお礼を言った時、慶花の頬に屈辱の涙が流れ落ちるのを直也も気付いてはいなかっただろう。


「終わったわ、やっと・・・。」
 慶花は、客前では決して口にしてはならない言葉が思わず零れたのに気づき、ハッとした。幸いベッドで横になり、口内射精の余韻に浸っている直也には、その微かな囁きは耳には届いていなかったようだ。
 慶花が口を滑らせたのも無理はない。とにもかくにもロストバージンの危機は脱したのである。後は満足した直也が部屋を出ててくれさえすれば、この喉の奥にこびり付いているような精液の残滓をすぐにでもゆすぎ落とせる。
 ザーメンを燕下した後、どんなに気持ちが悪くても、客前でうがいをしたり口をゆすぐなんて失礼なこと絶対にしてはいけない、と加奈子からは厳しく注意を受けていたのである。 

 ようやく直也がベッドから上半身を起こした。その視線は露出したEカップの双乳に注がれていた。ブラはフェラチオの途中で行った「パイズリ」の時に外したままだった。
「お疲れ様・・・とても楽しかったわ。本当に今日はありがとう。」
慶花は口元に精一杯に笑みを浮かべて言った。
 直也も微笑みを返し、慶花に近づいた。
 お別れの握手でもするつもりなのだろうか、それとも頬にキス?もしかしたら唇に?
 できたら唇は止めて欲しいけど・・・・ と慶花が心を巡らせた、その時、直也は意外な行動に出た。慶花の身体をベッドに押し倒したのである。

「キャッ・・・」
 思わず小さな悲鳴が漏れた。
「フフフ・・・弘美とのプレイは終わりだ。ここからは慶花とのプレイに入る。」
「ど、どういうこと? 何をするつもり?」
 慶花は咄嗟に起きあがろうとしたが、直也の逞しい腕がそれを阻止した。
「決まってるじゃないか、『ニンフ慶花』のバージンをいただくんだよ。」
「そ、そんな・・・だってもう終わったんじゃ・・・」
「ハハハ・・・俺がたった一回で満足するわけないだろうが。最低でもひと晩に3発はしないとおさまらねぇよ。まあ、お前なら5発はいけそうだな。」
 直也の右手がむき出しになった美乳に伸びると、じっくりとまさぐり始めた。
「い、イヤッ・・・」
「こんなオッパイをぶら下げて、『イヤ』もないだろう。男に触られたくて巨乳娘になったんだろうが。ええ? 慶太さんよ?」
 直也の指先が敏感な乳首をつまみ上げた
「い、イタッっ・・・やめて・・・お願いっ・・・」
「止めて欲しかったら、ちゃんと答えろ。慶太は男なのに、どうして巨乳娘になりたかったんだ?」
 直也は問いかけながら、乳首をつねり上げた。
「い、イタッっ・・・お、男の人に・・・触られたかったから・・・です・・・痛い・・お願い、止めてぇ・・・」
「『慶太は男なのに』が抜けてる、やり直し!」
「ツ、ツゥ・・、け、慶太は男なのに・・・男の人に触られたかったから・・ですっ・・」
 直也の指先の力がわずかに弱まった。
「男に胸を揉まれるとどういう気分だ?」
「あ、あの・・・か、感じちゃいます・・・」
 直也の指先に再び、力がこもった。
「イタッ・・・止めて・・ちぎれちゃうゥ・・」
「『慶太は男なのに』が抜けた。やり直し。」
「け、慶太は・・・男なのに・・・男の人にオッパイを揉まれると・・・か、感じちゃうんですぅ・・・」
「感じるとどうなるんだ?本当の女のように男に抱かれたくなるのか?」
 慶花は無言のまま首を横に振った。直也の思い通りの答えをすれば、乳首の痛みからは解放されるかも知れない。だが、それがもたらす代償は余りにも大きいことを慶花は知っているのだ。

「答えろ!」
 直也は両手を使って左右の乳首をひきちぎらんばかりにつねり上げた。
「イタッ・・・! おねがい、やめて・・・言います、言いますから・・・ け、慶太は・・男なのに・・・男の人にオッパイを揉まれて・・・感じちゃうと・・・・男の人に・・抱かれたく・・・なっちゃいますっ・・・・イヤ、止めて・・・お願い・・・」
 直也の両手が双乳から離れた。慶花の呼吸はまるで全力疾走をした直後でもあるかのように乱れていた。
 だが、ホッとしたのも束の間、直也の右手がTバックに伸びてきた。
「な、何するのっ!」
「こんないい女に目の前で、『感じちゃう』と言われて、黙っている男はいないぜ。」
 直也はそう言うと、Tバックのストラップに手をかけ、一気に引きはがしにかかった。
 ビリッ・・・ストラップはあっけなく切れた。機能性を無視し、男の目を楽しませるためだけにデザインされたTバックはあまりに脆かった。
「イヤッ、止めて・・お願い・・」

 慶花の抵抗は、ものの30秒と持たなかった。か細い両手首は直也の逞しい左手に捕まれ、細くしなやかな両脚は筋肉質の両太股にがっちりと挟み込まれた。
「お願い・・止めて・・・お、犯すのだけは・・・アナルを犯すのだけは・・・やめて。他のことは何でもするわ。オクチでも・・・オッパイでも・・・お顔にかけてもいいわ。でも・・・アナルだけは・・・やめて・・・」
 慶花の瞳には大粒の涙が浮かんでいた。長い睫毛がフルフルと揺れ、唇は小刻みに震えていた。時折瞼を閉じるのは瞳に溜まった涙を目尻からより多くこぼすためである。男が、美女の涙ながらの哀願に弱いことを本能的にしっている女の振る舞いだ。そんな振る舞いがとっさの時に出てしまうほど、慶花の心は「女」になっていたのである。
 だが、そんは屈辱的な媚態も直也には逆効果だった。慶花の儚くも哀れな振る舞いは直也のようなS男性には刺激にこそなれ、同情心をもたらすものにはなり得なかったのである。

「ハハハ・・・そんなに俺のザーメンが欲しければ、これからはいつでもくれてやるさ。何しろ、ここでロストバージンが終われば、お前は俺から離れられなくなるんだからな。」
 慶花は直也の言葉にドキッとした。
 直也はすべて知っていたのだ。自分がロストバージンの相手を恋人と慕い、崇拝するよう精神操作されていることを。
「お前は憎むべきこの俺にバージンを奪われ、女にされ、だが心から愛するようになるのだ。だからこれからは好きなだけザーメンを浴びることができるんだ。嬉しいだろう?ハハハ」
「い、イヤ・・・そんなこと・・・絶対にいやぁ・・・」

 直也は慶花の身体を強引に俯せにさせると、ばたつく両脚をベッドの下に引きずり降ろした。ベッドサイドに慶花の形のいいヒップが突き出す格好になった。
 直也はとっさに起きあがろうとする慶花の頬に平手打ちを見舞った。
 パシッー・・・乾いた音がベッドルームにこだました。
「キャッ」
 慶花の口からは小さな叫びが漏れただけで、後の言葉は続かなかった。
 驚きと痛みと無力感が慶花の口を閉ざしてしまったのだ。

 直也は抵抗する気力を失った慶花のむき出しになったヒップの位置を自らのペニスに合わせるかのように微調整すると、すでに屹立したペニスをアナルに向けた。
 そして次の瞬間、アナルプラグの冷たさとはまったく異なる、熱い感触がアナルから伝わってきた。
「いよいよ、ロストバージンだぞ。本物の女になれるんだ。嬉しいだろう?」
「い、いや・・お願い・・やめて・・・」
 慶花は無駄とは知りつつ、最後の哀願を繰り返した。
 だが、直也の高ぶった性欲を止める助けにはならなかった。

 アナルをこじ開けようとする力を感じ、慶花は本能的に深く息を吐くと、緊張を弛めた。 アナルでディルドウを受け入れるとき、スムーズに挿入ができるよう身体の緊張を抜くテクニックを、慶花は無意識の内に行っていたのだ。
 心では頑なに拒否しているのに、身体がそれを迎え入れようとしていることが、よけいに慶花の心を暗くした。

「アンッ・・」
 ペニスの先端が門をこじ開けた瞬間、慶花の口から小さな声が漏れた。
 慶花の鍛え抜かれたアナルは、その後のペニスの挿入をまるで歓迎しているかようにスムーズに受け入れた。悲しいことに直也の巨根に対しても痛みすら感じないのだ。
「ハハハ・・・随分鍛えてるじゃないか、こんなスムーズに入っていくなんて。今までのニンフでここまでスムーズに入るやつはいなかったぜ。アナルは締め付けられるから気持ちいいのに、何か拍子抜けだな。」
 直也はいくぶん落胆したような口調で言った。
 慶花はその声を無視しようと目を瞑った。意識すると訓練で植え付けられたある反応が出てしまうと思ったからだ。
 実はトレーナーの望月加奈子が言う、「究極のテクニック」なるものを、慶花は訓練を通じて身に着けていたである。 
 それは挿入時と、挿入後で2種類の異なる感覚を客に味合わせるというものである。つまり挿入時には何の邪魔も感じさせないスムーズ感を与えるが、ひとたびペニス全体を飲み込んだ後は、究極の「締め付け感」を与えるというものである。
 加奈子は、括約筋の収縮と呼吸法によって自由自在にできるようになるまで、慶花にオーケーを出さなかった。そのため訓練は何度も繰り返されたわけだが、結果として条件反射的にディルドウが挿入されると、無意識のうちに締め付ける動作を行ってしまう身体になってしまっていたのである。
 今、慶花はその動作が出ないように注意を払っている。もしペニスを締め付ければ、口とは裏腹にアナルセックスを望んでいると直也に誤解されてしまうと思ったからだ。

「何だ、ガバガバじゃないか、お前本当に初めてだったのかよ。」
 直也はからかうように言うと、ゆっくりと腰を前後させた。
 慶花はシーツに押しつけられた顔をわずかに上げ、ドレッサーの鏡に向けた。そこには遠目ではあるが、バックから逞しい直也に犯されているか弱い女の姿が映っていた。
(ああ、とうとう・・・犯されているのね・・・あの直也に・・・女にされるのね・・・)
 そう思った瞬間、それまで意識していたアナルへの集中が途切れた。訓練で植え付けられた本能的な反応が表面化してしまったのだ。

「うおっ・・・すごいぞ・・・何だ、この感触は・・・し、締まるっ・・・」
 直也が驚嘆の声を上げた。
 巨根による直腸への刺激が誘発となり、慶花の本能を覚醒させた。
(だ、ダメ・・反応しちゃだめよ・・・力を抜くの・・お願い反応しないで・・・)
 だが、それは無駄だった。意識すればするほど、アナルの締め付けが増していくのだ。
「うう・・こ、こんな・・・す、すごいぞ・・・ちぎれそうだぁ・・・」
 直也の腰の動きが一気に早まった。
「あ、アアン・・・アア・・」
 慶花は、声が漏れるのを抑えようと、指先を噛んだ。だが、そんな無意識の恥じらいの仕草は、直也の陵辱欲を余計に刺激した。
 激しい腰の動きに伴って、巨根の先端が慶花の前立腺を的確に捉えていった。
「うう、すごいぞ、慶花・・・お前の、ケツま○こ、最高だ・・・し、締まる・・・」
「アんん アアアんんっ  んっぅ・・・」
 慶花の喘ぎが一段高くなっていった。
 そして直也の突き上げる動きにまるで獣のような速度が加わったと思った瞬間だった。
「おお、イ、いくぞ・・・イクゾゥッ・・・」
 雄叫びと共に、アナルに最後の突き上げを感じると、ビクビクっという熱い脈動が伝わってきた。
「い、イヤァ、だ、ダメぇ・・・中で出しちゃダメェェ・・」
 慶花は思わず叫び声を上げた。
 例え、ロストバージンを経験しても中だしさえされなければ、もしかしたら最悪の事態、つまり直也を恋人と思うようになることは避けられるかもしれないと思ったのだ。
 だが、そんな声を聞き入れる直也でない。彼は慶花の哀願を受け、よけいに奥まで届けとばかりに腰を突き出すと、慶花の細いウエストをガッチリと両手で固定した。
 その動きに伴って、慶花の前立腺に最後の一押しが加わった。慶花はアナルの奥にビュビュっというザーメンの放出を感じながら、自身の「クリトリス」からも透明の粘液が滴り落ちるのに気付いた。射精と言うにはあまりに惨めで弱々しい「滴り」であった。
(ああ、とうとう・・・とうとう、直也の女にされてしまったのね・・・)
 慶花はシーツに顔を埋めると、直也の前であることなどお構いなしに、声を上げて泣いた。できることなら、今この瞬間、誰かが入室してきて「精神操作なんてうそよ。新人ニンフをからかっただけよ。」と言ってくれないかと心から願った。 

スポンサーサイト
[PR]

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

サテンドール

Author:サテンドール
=============================================
女性化小説なら国内・海外を問わず大好きです。

特に屈辱系・羞恥系・強制系・寝取られ系・立場逆転系・年齢退行系・SISSY系などなど・・・。

happy よりは、unhappy ending が好み。
(ちょっと、性格がゆがんでるのかも^^)

私事ですが、以前某サイトに 
「高野奈緒美」のペンネームで
『ある性転者の告白』という拙い小説を掲載させて頂いておりました。事情があって途中で掲載を止めましたが、その完結編も当ブログでご紹介できればと思っています。

それとランキングにも参加させていただきますので、
ポチッとクリックいただければ幸いです。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
アクセスカウンター
オンラインカウンター
現在の閲覧者数:
フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。