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ある性転者の告白 第16章

 約半月もの長期入院の後、私は完全に生まれ変わった姿で、忌まわしい屋敷に戻ったのです。入院した時とは変わって、かつての恋人だった結花も加わって・・・・。
 病室を出て病院の長い廊下を歩いていた時、私は改めて自分の身長が十二センチも低くなったことを実感しました。入院時に通った時とは周囲の光景が違って見えるのです。それにそばにいる涼子と結花に向ける視線は、自然と見上げる角度に変わっていたのです。私は残酷な現実に、悲しさと悔しさを隠すことができませんでした。
 けれどもその時、そんな感傷的な思いを打ち消すかのような出来事が私の身体に起こったのです。病室を出たときに感じた、下腹部のかすかな違和感は、廊下の中程まで達したとき鈍い痛みとなって襲ってきたのです。私は退院の手続きを行っている涼子たちに黙って近くのトイレに駆け込んだのです。もちろん、女子トイレにです。
 私にはもはや女子トイレに入ることはごく自然なことになっていました。それは三ヶ月前に屋敷に足を踏み入れた日から習慣になっていたからです。それに去勢手術を受けてからは、私自身男子トイレで立って用を足すことを避けるようになっていました。と言うのも立って用を足す姿勢を取ると、いやがおうにも矮小化したペニスを指先でつまむときの惨めさを味わなければならなかったからです。そのために、いつしか洋式の便座に腰掛け、用を足すようになっていたのです。
 ただそれでも、手術後全身の拘束具が外され、初めて自らの足で女子トイレに行き、洋式便座に腰掛けたときのショックは今も決して忘れることはできません。
 手術前には、たとえ矮小化しているとはいえ男としての証であるペニスが残っていて、それがかすかな希望の光にもなっていたのですが、そこに現れたのは精巧に仕上げられた女性器そのものだったのです。私は思わず両の瞳を堅くつぶり、襲いくる尿意に抗いました。その変わり果てたその部分から放出される光景を目にしたくなかったからです。 しかし次の瞬間、限界に達した尿意は堰を切ったように放出を始めたのです。私は女性は男性よりもトイレが近く、尿意も我慢しづらいというこという話を思い出しました。私はその「トイレが近い」存在になってしまったのです。
 私はうっすらと目を開け、便器に打ちつけられる奔流に視線を向けました。放出される尿の流れは今までの直線ではなく、複数の迸りになって広がっていました。私は本当に自分の身体が女になったのを実感させられて、その惨めさに思わず大声を上げて泣き出したのでした。
 そしてその屈辱感から逃れるために、できるだけ水分の摂取を避け、尿意が襲ってくるのを抑えようとしましたが、そんなことは全く無駄な抵抗でした。どんなに水分を取らなくても、日に数回はどうしても避けることはできませんでしたから。
 
 私は徐々に激しさを増した鈍い痛みに襲われながら、パジャマの下とショーツを膝下まで下げると便座に腰掛けました。とその瞬間便器の透明な水に、小さな赤い点が落ちたのが見えました。
(え? なんだ? これ・・・? もしかして・・・血?)
 私は背筋が凍る思いがしました。そして自分の身に何が起こっているかを確かめるために、そっと自らの新しい『女の部分』に指先を触れてみました。ヌルっとしたなま暖かい感触が指先から全身に走りました。
(血だ・・・やぱり・・・)
 指先には明らかに赤い血が付いていたのです。
(どうしたって言うんだ? もしかして・・・これは、生理・・・?)
 私はあまりの衝撃に身体が凍りつきそうでした。しかし同時にそれを大きく否定する自分がいました。
(そんなはずはないじゃないか。だって、生理は・・・)
 そうです。いくら巧妙な技術で作り上げた女性器を持ったとしても、生理を迎えるためには子宮や卵巣といった完全な女性器官が必要だということは、男の私でもわかっています。
 まさかその時自分の身体に本物の女性器官が移植され、本当の「生理」を迎えていたなどということは、想像もしていませんでした。
(そうだ、そうに決まっている。生理のはずがない。これは手術後の出血だ。そうに決まってる。)
 私は自分に言い聞かせ、再びパジャマを上げると受付に戻りました。もちろん、その間も鈍い腹痛は断続的に続いています。
 
 受付に戻ると涼子たちは退院の手続きを済ませ、私が戻ってくるのを待っていました。私は涼子に近づき、どうやら手術後の影響で出血があり、そのために腹痛がするので、少し休ませて欲しいと告げました。涼子も、それなら少し休んでからにしましょうと言ったのです。ただ、その時の涼子の口元には、何かを悟ったかのような冷たい笑みが浮かんでいて、同時に結花に意味ありげな視線を送っていたのに気づきました。
 幸い腹痛は三十分もすると収まりました。私は念のためもう一度トイレに行きその部分を確かめました。出血は完全に収まっていて、ショーツのステッチ部分の赤い染みもかすかなものでした。私はホッと胸をなで下ろしました。生理などという現象はあり得ないと思っていた私には、それは手術の失敗という恐怖が晴れたことへの安堵感でした。 けれど、それは生理以外の何物でもなかったのです。ただ手術後間もないこともあって、移植された子宮と卵巣の働きがまだ不十分であったため、ごく少量の出血で終わっただけのことだったのです。
 そんなことを知るよしもないまま、村井の運転する車で屋敷へと戻り、部屋に通された私は倒れ込むようにベッドに入りました。とにかく目を瞑り眠ろうと思ったのです。けれども眠ることなどできません。
 私は何度も寝返りを打ち眠ろうと努めました。けれども、そうすればするほど身体的な変化に改めて気づかされ、頭の中に恐怖と不安が渦巻き、目が冴えてしまうのです。特に、仰向けになり胸に手を置いた時に感じる、とても自分のものとは思えないような巨大な乳房の波打つような動きと、その重量感に息苦しささえ感じるのです。私の瞑ったまぶたの端からは幾筋もの涙が伝って落ちるのがわかりました。

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プロフィール

サテンドール

Author:サテンドール
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女性化小説なら国内・海外を問わず大好きです。

特に屈辱系・羞恥系・強制系・寝取られ系・立場逆転系・年齢退行系・SISSY系などなど・・・。

happy よりは、unhappy ending が好み。
(ちょっと、性格がゆがんでるのかも^^)

私事ですが、以前某サイトに 
「高野奈緒美」のペンネームで
『ある性転者の告白』という拙い小説を掲載させて頂いておりました。事情があって途中で掲載を止めましたが、その完結編も当ブログでご紹介できればと思っています。

それとランキングにも参加させていただきますので、
ポチッとクリックいただければ幸いです。

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