FC2ブログ

ある性転者の告白 第17章

 いつの間にか眠りに落ちていた私が、ぼんやりと目を開けると枕元に涼子と田中が立っているのがわかりました。
「さあ、今日から奈緒美ちゃんの新たな人生の始まりね。よかったわね。生まれかわって。フフフ・・・」
 涼子が優しげな口調で言いました。
 私は一瞬口を開きかけましたが、言葉を飲み込みました。声を出せば、あの少女のような恥ずかしい高い声が出てしまうことを思い出し自制したのです。
「じゃ、シャワーでも浴びてさっぱりしなさい。新しい人生の誕生日なんだからね。ああ、そうそう、今日はお化粧はピンクの口紅だけでいいわ。その方が少女っぽくていいもの。今の奈緒美ちゃんにはその方が似合うし・・・ネ。それからお洋服はこれね。これに着替えておいてね。」
 涼子はそう言うと部屋を出ていきました。
 私は言われるまま、パジャマ姿で脱衣所に向かいました。鏡には可愛らしい美少女の顔がこちらを向いています。しかも以前には自分の顔全体を映し出すことのできた鏡が背伸びをしないと映し切れなくなっているのに気づきました。私の身長が明らかに低くっている証でした。私は全身の力が抜けたような絶望感に襲われたのでした。
(いっそのこと、死んでしまおう。うん、そうだ、死んでしまった方が・・・。)
 私は衝動的に自殺への思いが強まっていきました。
 身の回りに何か刃物がないかと探しましたが、何も見つかりません。
 次に舌を大きく突き出し、思い切り強く噛み切ろうしました。けれどもそれも叶いません。舌からはうっすらと血がにじむだけで、それ以上はどうしても思い切りがつかないのです。
(ああ、なんてことだ・・・死ぬことも・・・できないのか・・・・」
 私は無力感に襲われ、その場に泣き崩れてしまいました。
 とその時です。私の背後でドアの開く音が聞こえ人の気配を感じました。
 私はとっさに振り返りました。そこには無言のまま立っている田中の姿ありました。、思わず身を固くした私に近づくと、田中は以前よりずっと小さくなった私をそっと抱きしめるようにして言ったのです。
「いいか。やけ起こしちゃだめだぜ。いつか俺がここからお前を助け出してやるからな。それまで辛抱しろ。」
 私にはその言葉があまりにも意外だったので、抵抗しようとしていた腕から力が抜けていきました。
「な、なんで、そんなこと・・・。」
 私の怪訝そうな顔つきを見て、田中はうっすらと笑みを浮かべながら言いました。
「俺はな、お前が最初に女の格好した時から、本気で好きになっちゃったんだ。兄貴や充の手前、そういうそぶりは見せなかったけどな・・・。お前がこうして、本当の女になったんだったら、俺も本気でお前を好きになることができる。俺はお前のこと、本当の女だと思ってる。あいつらとは違うぜ。いいか、だから辛抱して、チャンスが来るまでは、あいつらのいいなりになってやれ。そうすれば、きっと俺が助け出してやる。」
 田中の言葉は真剣そのものでしたが、もちろんすぐに信じることなどできるはずはありません。彼らの言葉によって何度も騙されてきたからです。
 けれども、今までのように涼子や村井によって言われたものではなく、普段は殆ど口を聞くことのない田中の口をついて出たことに、言いようもない説得力があり、同時に頼もしくさえ思えたのです。いえ、この絶望感から死を選ぼうとさえ思っていた自分には、正にわらにもすがる思いだったのかもしれません。
「ほ、本当か? 本当に助けてくれるのか?」
 私の口からは無意識の内に、高い声には似合わない男言葉がついて出ました。
「ああ、本当だ。だけどな、言っておくけど俺はお前を女として愛してるんだ。だから、そういう言葉は絶対に使うな。あいつらにバレたら、ここから素っ裸でたたき出されるぞ。そうなったら、俺にはどうすることもできねぇ。いいか、お前は女なんだ。自分は女だってことをいつも心の中で念じていろ。そして、せいぜいあいつらを油断させるために、ご機嫌をとることだ。チャンスはきっと来るからな。」
 田中は意外なほど饒舌に説明を続けました。私はいつもとは違うその様子に彼の真剣さを感じ取って、疑う気持ちが少しずつ消えていきました。それに田中の言う、「バレたら素っ裸でたたき出される」という言葉が、村井たちなら本当にやりかねないことのように思われたのです。もしもこんな変わり果てた姿で全裸のまま、たたき出されたならどんな悲惨な目に遭うか、考えるだけで恐ろしくなります。私には生きるための唯一の拠り所として、この田中の言葉を信じる他はなかったのです。
「いいか。お前は女になったんだ。もう、絶対に男に戻ることはできない。だったら、女としての幸せを掴むんだ。お前を本当に愛してくれる男と一緒になってな。」
 確かに田中の言うように、私にはもはや男に戻る術は残されてはいないのです。そして死ぬ勇気さえ持てないなら、一人の女性として幸せに生きることしかありません。(私は女。女として生きるしかないの。もうそれしか生きる道はないのよ。)
 私は涙で目の前がおぼろげになりながらも、自らの心に言い聞かせたのです。
 するとどういうわけか、しばらく抱かなかった、女性の感情が再び呼び起こされてきたのです。恐らく長期的に体中を流れ続ける女性ホルモンによって、私の心はすっかり女性化していたのでしょう。病院での催眠療法により一時的に回復していた男としての意識がどんどん消え去っていくのがわかりました。
 私は無意識の内に、抱きしめる田中の背中に自らの細くなった腕を回していたのです。
「わ、わかったわ。聡さん・・・。奈緒美、もう、絶対に男の心には戻らないわ。それに、あの人たちの言うことも聞く。だから、お願い。奈緒美を助けて。お願い。聡さん。」
 私は田中のたくましい胸に顔を埋めながら囁くように言いました。それは、田中への哀願であると同時に、逞しい男性に頼る以外に生きることのできない、弱い女性になってしまった運命を自らに言い聞かせるための決意の言葉だったのかもしれません。


スポンサーサイト
[PR]

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

サテンドール

Author:サテンドール
=============================================
女性化小説なら国内・海外を問わず大好きです。

特に屈辱系・羞恥系・強制系・寝取られ系・立場逆転系・年齢退行系・SISSY系などなど・・・。

happy よりは、unhappy ending が好み。
(ちょっと、性格がゆがんでるのかも^^)

私事ですが、以前某サイトに 
「高野奈緒美」のペンネームで
『ある性転者の告白』という拙い小説を掲載させて頂いておりました。事情があって途中で掲載を止めましたが、その完結編も当ブログでご紹介できればと思っています。

それとランキングにも参加させていただきますので、
ポチッとクリックいただければ幸いです。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
アクセスカウンター
オンラインカウンター
現在の閲覧者数:
フリーエリア
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR